銀河の赤方偏移は宇宙膨張の証拠になるか


著者 高田敞

1 銀河の赤方偏移と、宇宙膨張の関係の概略

(1) 銀河の赤方偏移とは

 銀河からやってくる光が、星を出たときより周波数が下がっている現象のことです。光は、赤いほうの周波数が低く、青いほうの周波数が高くなっています。それで、周波数が下がる現象を赤方偏移といいます。反対にもとの周波数より周波数が高くなる現象を青方偏移といいます。

(2) 赤方偏移現象の観測結果

ア ほとんどの銀河が赤方偏移している。

イ アンドロメダ銀河などいくつかの近い銀河は、青方偏移している。

ウ 銀河の距離と、赤方偏移の大きさは比例関係にある。遠い銀河ほど強く赤方偏移している。

 ハッブルが発見した現象。後にハッブル定数が生まれる。2倍離れている銀河は2倍の速度で離れ、5倍離れている銀河は5倍の速度ではなれ、1000倍離れている銀河は1000倍の速度ではなれる。したがって、遠い銀河は光速以上の速度で離れているはずである。しかし、光速で離れている銀河は観測することはできないといわれている。

3) この観測結果から考えたこと

ア 近傍の銀河以外は、全て地球から遠ざかっている。

イ 遠い銀河ほど速い速度で遠ざかっている。

ウ 地球は宇宙の中心ではないので、ほかのどの銀河からみても、同じように銀河が遠ざかっているように見えるはず。

エ 銀河だけではなく空間が膨張している。

オ その結果、過去にさかのぼると、全ての銀河は、1点に重なる。

カ その1点から宇宙は爆発的に始まったというのがビッグバン宇宙論です。

(4) 赤方偏移と銀河の遠ざかる速度との関係

 ドップラー効果といわれている現象からこのことが説明されています。

 ドップラー効果というのは、最初音で発見されました。どのような現象かというと、音源が観測者に近づいてくるときは、音が高くなり、反対に遠ざかるときは低くなる現象です。このことは、列車に乗ったラッパ手と、絶対音感を持った観測者との実験で確かめられたのが最初らしいです。現在は、車や電車など、速度の速い乗り物ができたので、日常的にも経験することができる現象です。私も、夜汽車で、通り過ぎるシグナルの音が微妙に変化するのを感じたことがあります。すれ違う車の音もその気になって聞いていると、微妙に変化しているのがわかると思います。

 これは、音が波として伝わることからくる現象として理論的にも説明ができています。

 光も波として伝わっていくので、これと同じ現象が起こります。観測者に近づいてくる光源から出た光は、周波数が高くなり、反対に遠ざかるときには周波数が低くなります。この現象を利用して、星の動きを観測したり、太陽や銀河の回転速度を見つけたりしています。

 そこで、赤方偏移している銀河は地球から遠ざかっていると考えました。それも地球が動いているためではなく、銀河が動いているからと考えたのです。なぜなら、もし地球が動いているために起こる現象なら、地球の進行方向の銀河や星は、近づいてくるために、周波数が高くなって青方偏移し、反対側の星や銀河だけ赤方偏移するはずだからです。

 ところが、近傍の銀河を除けば、全方位に渡って銀河は赤方偏移しているのだから銀河が動いていると考えられるわけです。それも、地球から遠ざかっているということです。

(5) 宇宙膨張

 そこで、全ての銀河が遠ざかるのは、宇宙が膨張しているからだ、となったわけです。そうすると、ハッブルが発見した、遠い銀河ほど速い速度で遠ざかる現象もうまく説明がつくのです。

 ここで、ほんの少しだけど、問題が残っています。近い銀河は、といっても、アンドロメダ銀河は、230万光年も先にありますが、その銀河が青方偏移していることです。これは、固有運動が宇宙の膨張を上回っているための現象だということで説明がなされています。

 地球と、アンドロメダ銀河の間の宇宙空間の膨張が、秒速100キロ程度とすると、アンドロメダ銀河が、銀河系と引き合って秒速200キロで近寄っていたら、差し引き、100キロで近寄っていることになる、ということです。

 では、遠い銀河はということになります。遠い銀河ほど、膨張速度が大きいので、(遠い銀河は秒速1000キロとか2000キロとかもっと遠くなると光速の3分の1とか、4分の1とかで遠ざかっているということです)固有運動より膨張速度の方が大きくなり、みんな遠ざかることになるのだそうです。

 このことから、宇宙の膨張は、打ち上げ花火のように、火の粉(物質)が飛び散るのではないということだそうです。銀河が飛び散るのではなく、それを含んでいる空間というものが膨張していくということだそうです。

(6) 空間膨張

  いろいろな説明があります。

ア 長い棒

 長い棒があります。これの5箇所に1から5まで番号をつけます。この棒の長さが2倍になったとします。すると、1から2の間も、2から3の間も3から4の間も4から5の間もそれぞれに元の長さの2倍になっています。すると、1に立ってみると、2は2倍の距離動いていることになります。3は1が動いた距離の4倍の距離になっています。4は6倍の距離を動いたことになります。

 このように、棒を空間とすると、空間が膨張すると、遠い銀河ほど同じ時間で動く距離が大きくなり、速い速度で遠ざかっていることになるという説明です。

 また、このとき、観測者が3番に立てば、4番も5番も遠ざかるのと同じに1番と2番も、反対方向に遠ざかるように見えるというのです。したがって、地球が宇宙の中心でなくても、全ての銀河が遠ざかって見えても不思議ではないということです。

イ 風船

 棒だと、1次元なので、2次元で考えます。風船の表面に点をいくつか書きます。この風船を膨らましていくと、点と点の位置は離れて行きます。この点を銀河、ゴムのところを空間と考えれば、空間膨張によって銀河が離れていく様子がよくわかるというのです。

ウ ぶどうパン

 二次元より3次元だというので、ぶどうパンで考えます。これを焼くと膨れていきます。このときのパン生地が空間で、ぶどうが銀河だという説明です。これだと風船と違い、3次元になるというのです。

エ ジャングルジム

 同じく3次元です。ジャングルジムを考えます。その一つ一つの四角が大きくなります。すると全体が大きくなります。空間が膨張するイメージだそうです。


2 空間膨張に対する疑問

 このように、空間膨張についていろいろな解説があります。もし、空間が膨張していればこのようになっているだろうという現象のようすはこれでよくわかったような気になります。しかし、肝心の、空間とはどんなものか、何でできていて、どのような力を持っていて、何と相互作用をして、どのようなエネルギーで、なぜ膨張しているのかとかの、空間膨張の原理はこれだけでは分かりません。

  超新星というのがあります。星の爆発の現象のひとつです。この場合は、エネルギーがどのように発生し、どのように星に作用し、爆発するのかとか、そのあとどのように物質が変化し、エネルギーがどのように移動するのかを、物質の観測、光の観測、ニュートリノの観測などで、理論的にも、観測でもよく考えられています。

 打ち上げ花火でも、どこにどのように火薬を詰めれば、爆発したとき菊の花になるというのは花火師には分かっています。どの薬品を混ぜればどの色になるのかも分かっています。火薬が、どうして、エネルギーを出すのかという、爆発の原理も分かっています。

 しかし、この、空間が膨張するというのは、「遠い銀河ほど強く赤方偏移しているから、空間が膨張している。そう考えると、距離と、赤方偏移の大きさが比例していることが矛盾なく説明できる」だけです。あとは、ぶどうパンとかジャングルジムだけです。原理に対しては、何一つ、科学的には究明されていないのです。

 空間の様子については、ビッグバンの始まりのとき、時間といっしょに生まれ、時空を作った。最初ゆっくり膨張し、その後インフレーション膨張を起こした。その後、ビッグバン膨張に変わり、現在はまたインフレーション膨張を起こしている。

と説明されています。

 宇宙の始まりの説明に、偽真空、量子的揺らぎ、相転移、インフレーションなど、難しい説明が出てきますが、これらは物質や、エネルギーのできていく理論であって、空間ができて広がっていく原理ではありません。いつの間にかできて、いつの間にか銀河を引き連れて広がっていくのです。

 そこで、空間が膨張するとはどのような現象なのか、少し考えてみます。 

 

(1) 長い棒の疑問

 5メートルの棒を考えます。1メートルごとに、0から5まで数字を打ちます。この棒が2倍に膨張したとします。観測者は0にいます。ここが支点になります。ほかの部分に対して、動かない部分です。すると、1は2メートル先に、2は4メートル先に、3は6メートル先に、4は8メートル先に、5は10メートル先に移動します。

 0を固定した場合は、すべての数字が5のほうに動いて、5は元の位置から5メートル動くことになります。

 0を固定しない場合は、0も押されて動くので、0と5はそれぞれ反対側に2.5メートルずつ動きます。この場合の支点(動かない部分)は棒の真ん中あたりにある重心になります。

 棒全体が均一に膨張すると、両方に同じだけ伸びるからその真ん中あたりに右にも左にも動けないところが出てくるからです。では、細かく見て見ます。0と1の間が膨張しているので、0と1は反対方向に同じだけ動こうとします。1と2も同じように反対方向に動こうとします。1は0の方に、2は3のほうに動きます。すると、1のところで、0と1の間で発生した膨張の力と、1と2の間で発生した膨張の力がぶつかり合います。同じことが2の上でも3の上でも4の上でも発生します。棒が軽いうちは左右に延びます。しかし、棒が長くなると、うまく左右に延びません。途中でぐにゃぐにゃになって、曲がってしまいます。

 昔の鉄道線路は、夏、熱で膨張して曲がってしまうのを防ぐために、つなぎ目を大きく開けていました。そのため列車はガタゴトガタゴトリズムを刻んで走ったものです。それでもあまりに熱いので膨張が大きすぎて曲がってしまった線路の写真を見たことがあります。

 棒も同じことが起こります。何十キロも何百キロも長い棒になると、膨張するとぐにゃぐにゃになってしまいます。宇宙空間に浮かべて、摩擦をなくしても同じです。棒は慣性質量を持っているので、何千キロもの長さの棒になると、膨張でうまく延びられなくなります。たとえば、1メートルで、1秒間に1センチ伸びたとします。すると、100メートルの棒だと、1メートル延びます。左右に延びるので、端は秒速0,5メートルです。これなら何とかなります。しかし、1キロメートルの棒だと秒速5メートル、100キロメートルの棒だと秒速0.5キロメートルになり、音速を超えます。1000キロメートルの棒だと秒速5キロにもなります。棒はぐにゃぐにゃになります。
 先ほどのように、どこも押さえてないと、棒の中心が動かない点になってそこから左右に伸びることになります。棒の端は、秒速2.5キロメートルで、反対方向に伸びます。単純に考えても、この反作用のエネルギーが真ん中の支点にかかります。ほかの場所も、押し合いへしあいしているので、やっぱり大きな圧力がかかります。したがって、曲がるか、膨張の圧力が押さえ込まれて、伸びなくなるか、ゆっくりになります。今の鉄道線路は、膨張の力より大きな力で線路を押さえ込んで、膨張しないようにしているそうです。

 宇宙空間はどうでしょう。空間はどのような構造になっているのか分かりません。ただ質量はないようです。だから、膨張しても、慣性質量で動きが阻害されることはなさそうです。倍倍に膨張して、遠いところが光速で遠ざかっていても問題はなさそうです。空間はどうせ何にもないのだから、それがどのようにふくらもうが、変形しようが、何もないのは、何もないのだから、結局元と同じことです。

 しかし、星やガスは違います。質量があります。それもものすごい量です。見えている星やガスばかりではなく、可視光では透明で見えなくても、銀河と銀河の間にも、銀河団や銀河団の間にも物質はあります。これが、お行儀よく上手に広がるとは思えません。押し合いへしあいそれこそ大騒ぎになるはずです。
たとえば、太陽系の空間が広がったとします。すると、その空間は隣の空間を押します。前後左右すべての空間を押します。ところが上の空間も膨張しています。すると上の空間は反対にこの太陽系の空間を上から押します。押し合いになります。
 うまく広がれません。いや、押し合わずにすんなり広がる、という考え方なら、考えて見ます。やはり太陽系です。膨張で、5キロメートル膨れました。すると上の空間は全体に上に5キロメートル移動します。この中の星間物質も移動させたことになります。太陽系と同じ大きさなら膨大な質量があるはずです。かなりのエネルギーが要ります。ところがそれだけではすみません。その上にもやはり空間があります。この空間も押し上げたことになります。またその上にも空間があります。それも押し上げています。すなわち太陽系の周りのすべての空間を5キロメートル押しやったことになります。ということは太陽系を除くすべての星と星間物質を、5キロメートル移動させたことになります。ものすごいエネルギーです。不可能です。

 棒にしろ、風船にしろ、ぶどうパンにしろ、ジャングルジムにしろ、これは同じです。小さいうちは素直に膨張することができます。膨張による押し合いへし合いの力がまだ小さいので、それを支えるくらいの物質の硬さがまだあるからです。膨張のエネルギーも些細なものです。しかし、地球ほどの大きさになったら、風船も、パンも、ジャングルジムも、膨張するとつぶれてしまいます。しかももものすごいエネルギーが要ります。

 ビルの模型は一人で、手作りで、紙で作ることができても、本物は、一人で、手だけで、紙では作れないのと同じです。まして宇宙は限りなく大きいのです、質量も計りきれないくらい大きいのです。そう素直には膨張させてはくれません。

 

(2) 風船からの疑問

 風船に点をいくつか書きます。それを膨らませると点同士の間隔が広がって行きます。それが宇宙膨張の様子だと説明されていると書きました。しかし、この説明でどの本にも書いてないことがあります。それは、風船に書いた点は、風船が膨らむのといっしょに広がっていくということです。これは絵の描かれた風船を膨らませたことのある人は、絵がいっしょに広がっていくのを見たことがあるとおもいます。

 空間が膨張するということは、これと同じ現象です。すなわち、その中に含まれる全てのものがいっしょに膨らんでいくのです。遠い銀河と銀河の間だけではなく、銀河そのものも、星も、地球も、山も、川も、人も、飛んでいる鳥も、そのほかの何もかもです。もちろん原子自体も大きくなっていくはずです。

 もし、空間というものが、何らかの実体を持っていて、ビッグバン論者のいうように、膨張したり、収縮したりするならそうなるはずです。

 しかし、そのようなことは起こっていません。

 観測では、銀河や、星は膨張していません。膨張しているのは遠い銀河と銀河の間だけなのです。これに気づいたのか、点の変わりに風船にご飯粒をくっつけてあるのを見ました。なるほどこれならご飯粒は膨張しません。でも、これは何の解決にもなりません。膨張している風船とご飯粒は別の世界にいることになります。銀河が、空間の外にあることになります。ご飯粒を細かく観察すると、風船に接しているところは、ご飯のねばねばが、ゴムに引きずられて伸びて行ってるのが観測されます。これでは、空間膨張が、遠い銀河と銀河の間にしか起こらないということの説明にはなりません。

  銀河が膨張しないわけに言及している本はまだ知りません。そんなこと当たり前なのか、それとも、説明が難しいのかは分かりません。多分、これに対しては、星同士の引力が強くて膨張しないということになっているのでしょう。銀河系と、アンドロメダ銀河が接近しているのと同じ理由です。膨張の速度より、固有運動の方が大きいというのでしょう。

 でも考えてみましょう。赤方偏移からすると、遠い銀河やクエーサーは秒速数千キロで離れて行っているということになっています。重い銀河やクエーサーをそこまでのスピードにする力があるのです。また、初期の宇宙は、物質がぎゅうぎゅう詰めでした。全宇宙の星や星間物質が一箇所に詰め込まれていました。それを、一瞬で膨張させました。それに比べれば銀河なんてスカスカです。お互いの重力は始まりのころの何千兆分の1もないでしょう。どうして今は重力の方が勝っているのでしょう。

 星だってそのころに比べたらまるっきりスカスカです。匹敵できるのは、中性子星とか、ブラックホールぐらいでしょう。初期の宇宙はそれを難なく膨張させたのだから、普通の星くらい軽く膨張させてしまうはずです。

 ミクロを考えてみます。原子です。原子は核子と、電子でできています。どんな様子かというと、東京ドームの真ん中にテニスボールを浮かべます。端にビーズを浮かべます。そんな感じだそうです。ほとんど空っぽだそうです。このドームの中に電磁力のバリヤーが張り巡らされていると考えればだいたいの様子だそうです。

 この空間は風船のように膨張しないのでしょうか。電磁力が強くて膨張しないことになるのでしょうか。しかし、同じ仲間の電磁波である光は、ビックバンのとき放出されて、宇宙膨張にともなって膨張して、今背景放射になって地球に届いているといわれています。電磁波は平気で膨張させています。宇宙の晴れ上がり以前の宇宙は、この原子の中以上に濃密だったはずです。それを難なく膨張させています。

 

 では核子や、電子は膨張しないのでしょうか。風船に書いた点のように、核子そのものは膨張しないのでしょうか。おそらく強い力の方が空間膨張より大きいから膨張しないというのでしょう。でもそうでしょうか。空間膨張とは、先ほど書いた風船のように、全てのバックグラウンドが膨張することです。拡大印刷と同じことです。B5の大きさからA4の大きさにすれば、字も大きくなります。線も太くなります。漢字もひらがなも、句読点も同じ比率で大きくなります。

 遠い銀河の間と、光だけが都合よく膨張して、あとはそのままというのは、はあまりにもご都合主義です。

 理屈が通っているようでも、つごうのいいとこだけ取り上げて、現象にあわないことは知らん振りしているだけなのです。

3 空間膨張と、物質膨張の違い
 (1) 物質膨張の限界
 物質膨張には、(1)長い棒の疑問で述べたように、必ず動かない点(支点)が出てきます。これは、風船でも同じです。風船は、立体だから支点は、風船の表面ではなく、風船の中にできます。風船の中心あたりです。そこから、周りに向かってゴムは放射状に動いています。ゴムが広がっているように見えますが、実際は、ゴムの各点が、外側に動いているのでそのように見えるのです。
 物質の膨張では、必ず支点ができます。そうすると、互いに離れていく速度に必ず上限ができます。
 このことを棒で考えます。均質の棒です。真ん中が支点です。左右に離れたいく相対速度は、両端の速度を足したものです。両端が時速50キロどうしだと、足して100キロが、互いに離れていく相対速度になります。棒は物質だから、この両端の速度には必ず限界が出てきます。棒にかかる膨張のエネルギーと、棒の強度と、慣性質量によって決まってきます。ニュートンによると、加速度は、速度の2乗に比例するので、膨張速度が大きくなればなるほど、急激にエネルギーも強度も大きくなくてはならなくなります。自然界では、すぐにエネルギーの限界二到達します。
 風船でもこれは同じです。風船の中の通信に支点が有ります。ここから互いに反対方向にあるゴム幕の点が、外に広がっていく速度を足したものが、2点間の相対速度の限界になります。ゴム幕が中心から時速50キロで膨らんでいたなら、ゴム膜状のどの2点間も時速100キロ以上の速度では広がれません。同じ量の空気を入れていくと、風船の広がる速度は風船が大きくなればなるほど遅くなってきます。風船が外側に広がっていく速度を同じにするためには、中に入れる空気を加速度的に増やしていかなければなりません。棒のときと同じに、膨張エネルギーを加速度的に増やさなければならないのです。
 したがって、物質膨張は、空間膨張のようにはうまく倍々に速度が増えていくわけにはいかなくなります。まず上限が決まって、それを割り算して、各部分に分けていきます。いえば、帰納的になります。
 もし、銀河が、物質の法則で膨張するなら、速度に限界があります。宇宙に膨張の中心があります。ビッグバン理論なら、ビッグバンが始まった点です。そこから飛び散ります。最高速は、その点から、正反対に飛んでいる銀河の速度を足したものです。
 これに対して、空間は演繹的考えです。まず部分があって、それを足し算していけば、全体になります。だから、部分が増えれば増えるほど、全体は大きくなって、限りがなくなっていきます。机上ならこれは可能です。相対性理論で考えているはずのビッグバン宇宙論者も光速で銀河が離れていってもいいといているのはそんなところです。詳しく言えば、、「すべてのものは、相対的に光速度を超えて動くことはない」という理論です。ところが、地球と、遠い銀河は相対的に光速度を超えて動いているというのです。これには、空間膨張だから、光速度を超えても、光速度ではないという特例を設けていいことにしています。これもビッグバン論者の得意技のひとつです。ただそれだけに通用する法則を作ることです。もちろん、机上の論で、実証されません。私などは、秒速30万キロではなれているのなら、その間の空間が曲がっていようが、回転していようが、燃えていようが寝てようが、銀河と地球が、秒速30万キロではなれていることに変わりがないと思うのですがね。空間膨張を差っ引いて、秒速800キロの固有運動分だけだとでも言うのでしょうか。後退速度のために、赤方偏移しているというのなら、実際にその速度で動いているということの証拠でもあるのでしょうけれでね。太陽の赤道の片方が赤方偏移し反対側が青方変移しているのが、実際に太陽が自転しているために起こっているのと同じだと思うのです。実際に動いているから赤方偏移しているのです。そのときは、間の空間が膨張しているからだという論に変えるのでしょうけどね。(遠い銀河の赤方偏移は、前に書いたように、光の速度低下が原因ですが)
 これは、アンドロメダ銀河の青方偏移でも同じです。すなわち、この法則は、太陽系や、銀河系や、局部銀河群までの、かなり正確に観測できるところには適用されない法則です。これは、いつものように、それよりはるかに遠い、誤差しかないところの法則です。

(2) 空間膨張の限界 
空間膨張については、私には何もわかりません。今までも書いたように、空間とは何かがわからないからです。
 空間はビッグバンのときできて広がったといいます。では、それ以前の空間がないときと、できてからはどのような違いがあるのでしょう。その違いを証明できる人はいるのでしょうか。ともに、何もないということしかわかっていないのではないのでしょうか。空間は無数のばねのようなものでできているという本も見たことがありますが、空論としか思えません。エーテルと同じです。空間が何かわからないのに、それが、膨張する原理がわかるわけがありません、まして、それが、銀河を引き連れて動く原理がわかるわけがありません。
 誰にも何もわからないから、使い方は自由です。都合のいいことだけ起こって、都合の悪いことは一切起こりません。それが空間というものです。かつてのエーテルや、今のダークマターと同じです。わからないことをうまく説明するために編み出される便利な道具です。
 
銀河の赤方偏移の理由
ビッグバン宇宙の間違い 目次
アラングースのインフレーションユニバースの矛盾