「村山博士が語る宇宙の果てをめぐる最新宇宙論」(Newton2013年5月号)への疑問7 (p30〜31)
著者 高田敞
問題
{私たちが現在観測可能だとしている領域が,膨張する前には原子よりも小さかったとしても,やはりその外側に端のない宇宙が広がっていたと考えられるのです。}
考察
村山氏は、{私たちが現在観測可能だとしている領域}と、{その外側に端のない宇宙が}あるという。外側の宇宙は、いつどのように生まれたのか述べていない。観測可能な宇宙とともに、ビッグバンで生まれたのだろうか。
しかし、ビッグバンとともに、外側の宇宙も生まれたなら、やはり、最初は小さな1点であるはずである。すると、端は存在することになる。一点がいくら膨張しても必ず端は存在する。人間に観測できようができまいが端は存在する。
あるひとのビッグバン説では、最初、偽真空という宇宙があって、その中の1点が量子の揺らぎからブランク時間で生まれ、インフレーションを起こし、その後ビッグバンになったという筋書きである。この説では、果てのない宇宙、と言えるのはビッグバン以前からあった、偽真空の宇宙である。
ビッグバン論では、果てがないのは、ビッグバンが始まる前から存在した偽真空の宇宙で、ビッグバンでできた宇宙ではない。最初から、端のない、無限の偽真空に満たされた宇宙があり、そこの中にビッグバン宇宙が生まれたことになる。だから、他のビッグバンも生まれる可能性があり、(宇宙の中から子宇宙が次々に作られているのかもしれない」というような考え方もできるのである。
村山氏の考えは、ビッグバン説とは少し違うようだ。
{その外側に}ある端のない宇宙はどのようなものかはっきりさせなくてはならない。村山氏の{私たちが現在観測可能だとしている領域}は、ビッグバンでできた宇宙の一部であると言っていることから、{その外側に}も、ビッグバンでできた宇宙があるはずだ。すると、村山説では、まず地球を中心とした、ビッグバンでできた{観測可能な宇宙}があり、{その外側}にビッグバンでできた宇宙があることになる。他のビッグバン説では、{その外側}の外側に、ビッグバン以前からある宇宙が広がっているというのだが、村山氏の説ではそのあたりがはっきりしない。それは、はっきりしなくてはならないのではないだろうか。
結論
端がない宇宙が明確ではない。村山氏のいう{私たちが現在観測可能だとしている領域}は、人間中心の宇宙である。事実の宇宙は人間の観測があろうとなかろうと関係なく存在する。それを無理やり、{私たちが現在観測可能だとしている領域}というものを作って、それが事実に影響するように考えているから、変になるのである。宇宙は、人間が見ようと見まいとただそこにある。
{その外側が}ビッグバン宇宙なら、1点から膨張したのだから、どんなに大きくなろうとも膨張の端があるはずだ。{その外側}に、ビッグバン以前からある、と言っている宇宙があるなら端はないかもしれない。このあたりがあいまいである。