「村山博士が語る宇宙の果てをめぐる最新宇宙論」(Newton2013年5月号)への疑問3

著者 高田敞





(以下{ }内は上記本からの引用)

問題

{ハッブルは、遠くの銀河ほど速く遠ざかっていることを発見した。この発見から、宇宙は膨張していることが明らかになった。}

考察

ハッブルが発見したのは、「遠くの銀河ほど赤方偏移している」、ということである。{速く遠ざかっていることを発見した}のではない。どうせ同じことだ、と言うのだろうが、現象は明らかに違う。銀河の赤方偏移と、銀河が遠ざかるということは違うことである。また、前は観測された現象であり、後ろはその解釈である。混同してはならない。

これについては、ハッブルも、赤方偏移の単位が、m/秒を使うからといって、速度と勘違いしてはならないと述べている。

科学者は、意図的に自分の主張に有利になるように改ざんしてはならない。観測事実と、解釈は違うものである。赤方偏移は観測事実である、しかし、遠くの銀河ほど{速く遠ざかっている}というのは、多くの宇宙論者が述べている、赤方偏移に対する解釈である。村山氏は、それを観測事実であるかのように述べている。科学としては明らかな間違いである。ハッブルも、その他の科学者も、実際に銀河が動いているのを測定したことはない。多くの宇宙論者が、赤方偏移は後退速度だ、と述べているから事実と言っていいというかもしれない。しかしいくら共通意見でも解釈は解釈である。観測事実ではない。昔、ガリレオが出る前は、そしてその後もしばらくの間は、天動説がほとんどすべての天文科学者の意見であった。その人たちは間違っていた。圧倒的多数というのは科学の判断には意味をなさないのは科学の歴史を見ればわかる。

以下に赤方偏移は、後退速度であるといえるかを検討してみる。

 

1 光が赤方偏移する原因

光が赤方偏移する原因には3つある。

@ 光源や、観測者の速度によるドプラー効果。

A 空間膨張によって、光が引き延ばされる。

B 光が、物質に当たってエネルギーを奪われる。

この3つであるが、理論や実験で証明されているのは、@Bである。Aは理論も、実証もないから、仮説になる条件さえ整っていない。

 ところが、ビッグバン説を取る宇宙論者は、Aを銀河の赤方偏移の原因としている。

 

2 考察

(1)赤方偏移が起こる原因

@は、波が持つ現象である。これは、星の固有運動、銀河の固有運動や回転、系外惑星の探査などに利用されている。理論もあり、実証もされているので、定説である。

また、これは初期のビッグバン論者が銀河の赤方偏移の理由に挙げていた。銀河が後退するから赤方偏移している。したがって、宇宙は膨張している。逆にたどると、過去に宇宙は1点に集まっていたはずだ。すると、そこから爆発的(ビッグバン)に膨張した、となった。ハッブルの発見した銀河や銀河団の赤方偏移が後退速度であるという理論である。しかし、これでは、遠い銀河ほど赤方偏移が大きいことの説明ができないので、そののち、赤方偏移はAが根本原因であるという解釈に変わった。

(注;村山氏は{ハッブルは、遠くの銀河ほど速く遠ざかっていることを発見した}と述べていることから、@の意見であるようである。しかし、その根本原因はAである。空間膨張の為に銀河が後退している、というのが、宇宙論者の考え方である。銀河の赤方偏移の原因が@Aかは宇宙論者によって異なるようであるから確定はしていないのかもしれない。あるいは、ビッグバン論者にも決められないのかもしれない。空間膨張があるというのだから、広がっていく銀河は後退する。そして、空間膨張すれば光も、膨張するということだから、どちらの現象もあることになる。決めることができないのだろう。だが、どちらも、根本原因は空間膨張であるという主張はおなじである)

Bは光が電磁波であることから起こる。

この現象は、太陽の光に見られる。太陽は中心で核融合によってγ線が発生する。それが、太陽の構成物質である水素の層を通り抜けて、太陽表面に到達するときは、エネルギーを失い可視光線になっている。γ線から可視光線までに赤方偏移したのである。

原理は、光(電磁波)が水素を通り抜けるとき、水素の電子を揺り動かしたり、はじきとばしたりするので、その動かすエネルギーを取られるために、光のエネルギーが減少する。エネルギーの減少=赤方偏移である。

この現象は普通身の回りでも起こっている。電気を消すと瞬時に光は消える。これは、壁に当たった光が反射しながら次々に壁に当たり、その都度、壁の電子を動かすことでエネルギーを減じて、赤外線になり目には見えなくなるために起る。光のエネルギーは壁の熱を上げることに使われたのだ。光はエネルギーを失うことで、赤方偏移している。

銀河系の星でも、赤化現象が観測されている。星の光が、銀河系の星間物質を通り抜けてくるから、それに衝突してエネルギーを減じて赤方偏移する現象である。

このことから、銀河の光も、銀河間物質に衝突して、エネルギーを減じ赤方偏移することが類推できる。銀河間にも銀河団の間にも、水素を中心とした、分子や、原子があることは確実なのだから、これに光が衝突しているのは確実である。実際衝突の証拠は、銀河のスペクトルに暗線となって現れている。

光が物質に衝突してエネルギーを減じるために起る赤方偏移は、身の周りの現象から宇宙の現象まで満遍なく起こっているのである。

Aは、現在のビッグバン論の信奉者が述べていることである。

これは残念ながら理論も実証もない。

空間が膨張すると、どのような原理で光が引き延ばされるのかの理論はない。観測されている銀河の光は進行方向のみ引き延ばされ、高さも、横幅も引き延ばされていない(見られるのは赤方偏移のみである)。一方向のみ引き延ばされる理論ももちろんない。

そもそも、空間とはなにか、も解っていないし、空間膨張の理論もないし、実証もない。ないないづくしである。分かっていることは皆無である。

(2)空間膨張は直接観測されたか

地球上や、太陽系など、正確に観測できるところでは、空間膨張の現象は観測されていない。空間膨張があると引き起こされるだろう現象も観測されていない。たとえば、太陽系の、惑星や、彗星などの公転が、46億年間の間に、空間膨張の影響を受けたという形跡は報告されていない。

空間膨張の力より、太陽重力の方が大きいから、という宇宙論者もいるが、それは何一つ根拠のない意見である。太陽系は、太陽と惑星の重力で計算して公転軌道がぴったり分かる。空間膨張の力は一つもかかわっていない。遠く、冥王星の小さな重力にさえ何一つかかわっていない。空間膨張の力は、巨大な銀河団を光速に近い速度で動かしているというのにである。そのように巨大な空間膨張の力が働いているなら、必ず、惑星の公転軌道にも影響するはずである。それがないのは、空間膨張の力が太陽系では働いていないということである。

すなわち、太陽系では空間膨張はない、ということがいえるということだ。

太陽系は、宇宙に一般的な恒星と同じ構造であるようだ。ということは銀河系のほとんどの恒星の周りでも空間膨張は起こっていないといえる。

また、銀河系が、できてから100億年(これも、本当かどうかわからないが)といわれているが、その間、空間膨張の影響を受けて銀河系が膨張したという現象は観測されていない。また、銀河系と、大小マゼラン星雲や、アンドロメダ銀河、との間も、膨張の影響を受けているという現象は観測されていない。すなわち、銀河系と、アンドロメダ銀河の範囲にも宇宙空間の膨張はないと言える。

このように、近くて、観測が正確にできるところには、空間膨張がないというのは観測事実である。もちろん、空間膨張より、重力が大きいと証明できる観測事実は存在しない。

したがって、空間膨張はないとはいえても、重力の方が空間膨張より勝っているから現象として現れないとはいえないことになる。 

 

宇宙膨張は、理論もない、実証もされていない、Aを原理としている。理論も、実証もされているBなら、なんの問題もない。遠くなるほど、銀河間物質が増えるために、遠い銀河ほど赤方偏移することになる。観測では、赤方偏移にばらつきがある。その原因は、銀河間物質が引力により濃淡ができることから来るとすれば説明が付く。

銀河の光が、通る道筋に、物質のばらつきがあるために起こっていると推測される。これは、銀河系の星の赤化現象が、星間物質の濃度が場所によって違うために、赤化の度合いが違うことと、同じ現象である。一方、もし、赤方偏移が空間膨張が原因であるなら、赤方偏移にばらつきは基本的になくなるはずである。なぜなら、空間膨張は一定であるはずだから、赤方偏移も一定でなくてはならないはずだからである。

観測結果のばらつきは、原因が空間膨張ではなく、銀河間物質であることの方に一致している。

3 結論

したがって、Aを理由に{ハッブルは、遠くの銀河ほど速く遠ざかっていることを発見した}と言い換えることはできない。

また、銀河や銀河団の赤方偏移は、宇宙空間物質に光が衝突することで、エネルギーを下げていることから起こっていると言える。

 

4 科学の方法

もうひとつ大切なことは、言い換えることで、真であるかどうかの判断材料を読者から奪っていることになる、ということである。科学は、観測事実と、その解釈を示すことで、受け手にその理論が真であるかどうかを、判断できるようにしなければならない。それが、解釈をあたかも観測事実のように断定して伝えることで、判断の材料を奪って、結果的に自分の解釈を押しつけていることになっている。

かつて、科学者とローマ教会は、どうしても「太陽は動いている」と言いたかったように、今、ビッグバン論者とローマ教会が、宇宙は膨張している、とどうしても言いたいことからくるとは思いたくはないが。

ビッグバン論者は、宇宙は膨張しているという直接の証拠は、今のところ何一つ観測されていないし、空間が膨張するという実験もできていないし、現象も観測されていないし、空間膨張の理論もないということを、真摯に受け止め、みんなに知らせるべきである。そして、空間とはなにか、どのような構造をしているのか、空間膨張とは空間の構造がどのようになることか、そのエネルギーは、その仕組みは、と、解き明かしていかなければならないはずだ。

しかし、それに取り組む人はいない。できないことを知っているからだ。

5 結論

{宇宙は膨張していることが明らかになった。}と断定するのは、間違いであるといえる。