「重力とはなにか」(大栗博司著)への手紙5

著者 高田 敞






(以下{ }内は上記本よりの引用)

 

問題{重力は幻想である=第五の不思議}

{何か壁のようなもので遮っているわけでもないのに、重力が「消える」ことがあるのです。}

エレベーターや、ジェットコースターの体験や、飛行機の自由落下の無重力実験から、{重力は感じなくする、すなわち消すことができる}{自由落下している人は、重力は感じないという事実に気付いたところから、アインシュタインは自らの重力理論を大きく発展させました。}とあります。{重力は感じなくする、すなわち消すことができる}は真であるか考えます。

考察

自由落下において、重力が消えるという主張である。{飛行機と同じ速さで落下すると、重力を全く感じません。窓から外を見れば自分が落下していることが分かりますが、窓が無ければ、単に自分がフアフアと浮かんでいるとしか思わないのです。}というのが根拠であるようです。

そこで、アインシュタイン得意の思考実験を私もしてみます。

 第1の実験

エレベーターがあります。

一つは、地上から100mの所から、もう一つは地上から、1mの所から落とす。窓はない、という条件です。

両方とも、中の人はフワフワ浮かんでいるように感じるから、相対論の主張からすると重力は消えています。

ところが、重力が消えているにもかかわらず、数秒後、片方の人は即死する。片方の人は、尻もちをつく。どちらが尻もちで、どちらが即死か普通の人は分かるはずです。

相対論者の人はどうでしょう。どちらも重力が消えているのでフワフワ浮かんでいるから、どちらが、即死したのか分からないはずです。でも、何度同じ実験をやっても結果は、地上100mの方の人が死んでしまいます。両方の人に重力が消えているのだから、重力による落下はないはずです。無重力の時間が短いと、尻もちをつき、無重力の時間が長いと激突死するという理由を相対論者は示さなければなりません。できますか。

万有引力なら簡単です。万有引力は、宇宙の果てまで及ぶというから、エレベーターの中の人も、地球と引っ張り合い、地球に加速しながら接近します。常に引き合う力が働いているから、力は運動エネルギーに変化し、人は加速されて地球に激突します。引き合う時間が長ければ長いほど、万有引力が人に与えたエネルギーが多くなり速度が速くなるから、100mの人は地球に激突し、1mの人は尻もち程度で済むのです。中の人が、フワフワ浮いていると感じようが、感じまいがそんなことは地球に向かっての加速には何一つ関係ありません。窓が無いエレベーターでよかった。外が見えないから私はフワフワ浮いている。だからエレベーターのロープが切れているけれど、私は落下しない、と思ったって駄目です。

物理学者にこんな常識を説明する必要はなかったかも知れませんね。

ところが、相対論の重力では、窓のないエレベーターの中の人には重力が消えているのですから、重力による人の加速はなくなっているはずです。人が、地球に激突するための運動エネルギーはどこから受け取ったのでしょうか。相対論者はそれを説明する必要があると思うのですが。

第2の実験

上記のエレベーターで、ともに大きな窓が付いているとします。

落としたとき、中の人は外を見るから、自分が落ちていることが分かります。しかし、フワフワ浮いている感じは変わりがありません。このときは重力は消えないのでしょうか、それとも消えるのでしょうか。二つの違いは、壁が、ガラスでできているか、鉄板でできているかの違いだけです。壁の一部が、鉄か石英かで重力が変わるのでしょうか。{窓が無ければ、単に自分がフアフアと浮かんでいるとしか思わないのです。}とありますが、窓がある場合は重力がどのようになるかは明記していないから分かりませんが、結果は上のエレベーターと同じになります。1人は尻もちをつき、一人は即死します。起る現象は、窓の有無に関係ないといえそうです。

第3の実験

 上記のエレベーターにミミズを乗せます。落下してもミミズは重力を感じないと認識しません。この場合も、重力は消えるのでしょうか。ただ、一方のミミズは死に、一方のミミズは生き残るのは人間と同じでしょう。

第4の実験

 人間より、はるかに高度な知能を持った生物を乗せます。落下とともに、彼らは、自分が地上に向けて加速しながら、引きつけられているのを知ります。彼らは、その加速度が、落下の法則と同じであることを瞬時に計算します。

この場合は、重力は消えるのでしょうか。ただ結果は同じです、一方は死に、一方は生き残ります。

なぜ、重力が消えている第1の実験まで、片方の人は死ぬのでしょう。重力が消えたのだから、落下は止まるはずです。

この結果からわかることは、エレベーターの形がどのように変わろうと、中の生き物が、外のことを知ろうと知るまいと、どのように自分の状態を感じようと感じまいと、現象はみんな同じということです。100mからら落下したエレベーターの中の生き物は死に、1mから落下したエレベーターの中の生き物は生き残るということです。

その原因はエレベーターでしっかり覆っても、目隠ししても、知らんぷりしてもフワフワ浮いていると感じても、万有引力は、中まで届き、中の物も引きつけているということです。重力は消えるのかもしれませんが、万有引力は消えていないということです。

ようするに、{重力は感じなくする、すなわち消すことができる}が間違っているのです。重力を感じない=重力が消えた、ということは言えないのです。いや20世紀最大の天才アインシュタインが言っているのだから重力は消えるのだというのなら、なぜ100mから落下したエレベーターの中の人の方だけ死ぬのかを説明する必要があります。彼が死ぬほどの激突をするまで加速させたエネルギーを示さなければなりません。できないでしょう。引力以外にないのですから。

結論

「重力を感じない」、は、人の感覚です。ところが重力は物理量です。基準が違うのだから、比較することができないはずです。比較できないものを比較して、ごまかそうとしているのではないでしょうか。もし人間の感覚がすべて正しいのなら、錯覚や錯視や幻聴はみんな事実になってしまいます。この場合も、重力が消えたと思い込んだのは、単なる錯覚にしか過ぎません。それくらい科学者なら分かるだろうに。そんなことさえ分からないとは、と思ってしまいます。天才の言うことはわれら凡人には分からないのかもしれませんが。