へんろ旅 17日目 (雨後晴れ)

35番清瀧寺 36番青龍寺

(ひどく疲れている。これまでと違って、精神的にも疲れているのが大きい。歩くのを中止して、帰ろうと思っている。この旅の中で始めてである。前日、旅の間に知り合った人といっしょに飲んだのがひとつの原因。飲みすぎたわけではない。初日に出会って、何度かいっしょに歩いた女の人が大きい原因であるとも思う。心がまた動いたこと。年甲斐もなく。でも本当の原因はそうではないと思う。そう、お大師さんの怒り。それまでなら決して信じないだろうそういったことが、当たり前のこととして、信じられる国。それがここ、へんろ道の不思議である。)

(それでもとにかく清瀧寺までは行くことにする。荷物を宿に置き往復する。)
椎の木の 下で一服 雨降り続く
若きころ、習った万葉の歌 思い出し
雨強く 今日は小鳥も 鳴かざりき
われ一人 山の木陰の 雨宿り
花冷えの 雨果てしなく 清瀧寺
来た道も 行く道も 雨けぶる
もうここまでと 見下ろす町は 雨の中
(清瀧寺を打ち終え、家に帰るつもりでバス停に向かっていると、手招きしているおじいさんがいる。結局、その人に、青竜寺までバスで行く方法を教わる。お大師さんの罰があたった。でも、死んだ父が助けてくれた。今でもそう思う。そんなことがあって当然の国。と思う。この間の10キロほどを、バスで行く。この後、結願まで、乗り物は使わなかったので、lこの日と次の日の朝までが最大のピンチだったのがよく分かる。この日までもそうだったし、この後も、たくさんの人が助けてくれた。困っているとき、あるいは、困るだろうというときは事前に誰かが出てきて必ず助けてくれた気がする。四国の人のやさしさだけではなく、父や母が見守っていてくれたのだと思う。そしてもう一人。でもこの人は、見守るのではなく、試練を与えることで、歩ませているようだ。そんなことが信じられる道。遍路の道。)

雨上がり 山浮かぶ 宇佐の海
知り人の背 小さな岬へ 消えていく
海山の 狭間に漁港 生きている
座り込み だんまり決めてる 青竜寺
また遇えるよと 笑っていく人 心先
(昨日、飲んだ人たちを送る。この人を最後に、徳島で出合った人とは、遇わなくなった。) 

フェニックス 夕日に揺れてる 宇佐の海
憧れし海 はるか遠き 先にあり
鳶たち そこから見えるか 足摺の海
憧れを あこがれのまま 明日帰ろう
歩めども 歩めども 海山寂し一人旅
人いれば 人いるゆえに つのる寂しさ

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