第23章 回転基準体上の時計と測量棒の関係

問題1

 まず、(まったく特殊な場合から出発する。適当に選んだ運動状態の基準体Kに対して相対的に重力場が存在しないような、ひとつの時空領域があるとせよ。)

 (そのKにたいして相対的に回転している第2の基準体Kに準拠させて考えることにする。)

 この回転体は平らで一様に回転している。そのへりに観測者が腰掛けている、という設定です。

 この観測者は(直径方向に外方へ向かう力を感ずる。)

 この力を、基準体Kにいる観測者は、(慣性の作用〈遠心力〉と解釈)する。Kにいる観測者は(円盤のほうを〈静止している〉基準体とみなすかもしれない。一般相対性原理にもとづけば、そう考えても正しいのである。かれは、自分及び一般に円盤に対して相対的に静止している物体に働く力を、重力場の作用として把握する。もちろんこの重力場の空間的な配置はニュートンの重力理論からは不可能であるような代物である。)

考察1

KとKについて考えてみます。

基本的状態 

 Kはガリレイ基準体だから、慣性運動をしているはずです。Kは、円盤の回転運動という前提です。

ア 第1の解釈〈ニュートン的解釈〉

○ 円盤上の観測者の状態

(直径方向に外方へ向かう力を感じる。)とあるとおり、遠心力という力を受けています。

 したがって、観測者は、何かに捕まらないかぎり外に放り出されることになります。放り出されたときには、観測者は円盤の接線方向に飛び出すことになります。アインシュタインはこのことを考えないことにしているようですが、そんなにのんびり腰掛けてなどいられません。そこで円盤の中心からロープで縛り付けておくことにします。

 このとき、彼に働く力は、外向きの遠心力〈回転しているので常にその方向は変わっている〉と、それと同じ力で、ロープにかかる力が働いています。これが等しいとき彼は円盤上の同一地点にいることができます。

 ロープがない場合は、円盤面との摩擦力で、やはり、外向きの力と同じ大きさの力が円盤にかかっています。

 ロープにかかる力も、円盤にかかる力も、普通は熱エネルギーになって発散していきます。この場合、既成の運動法則や、エネルギー保存則で、すべて説明がつきます。

イ 第2の解釈〈一般相対性原理の解釈〉

 アインシュタインいわく(円盤状に腰掛けている観測者は、円盤のほうを〈静止している〉基準体とみなすかもしれない)

○ 円盤上の観測者の状態

  (彼は、自分及び一般に円盤に対して静止している物体に働く力を、重力場の作用として把握する)

・ 彼は何ゆえ、それを重力場と把握したのだろう

 この理由が明記されていません。彼がどのように考えようが、それは彼のかってです。しかし科学となればそうはいきません。それが重力場であるという、客観的な証拠を提出しなければなりません。

 特に、その力は、もともと遠心力であると言明していたし、(もちろんこの重力場の空間的な配置はニュートンの重力理論からは不可能であるような代物である。)とも述べているのですから、理由もなく重力に変えるわけにはいかないはずです。この場合、その証拠も、客観的事実も提出されていないので、これは、重力場ということはいえません。そのため、(かもしれない)という表現をしています。(かもしれない)という言い方は、ほとんどそうではないが、ひょっとしたら、そうなる可能性がある、というくらいのとても低い確立の場合に使います。ところが、この後、ほとぼりが冷めた頃に、いつの間にか理由もなく重力場であるように断定してしまいます。

・ 彼に働く力は存在するか。

 彼に働く力はどこから来るのでしょう。彼は、円盤は静止しているとみなした。ということは円盤は静止しているということです。だから、遠心力はなくなっているはずです。それまで、遠心力以外の力は働いていなったのだから、彼にはどのような力も加わっていないはずです。
 みなしただけだから、本当は円盤は回転しているので遠心力は働いているといいたいのでしょうか。みなしたということと、本当とは違うというなら、科学はみなしたことより、本当を基準に考えなくてはなりません。本当は円盤に働いていた力は遠心力です。それ以外のものはありませんでした。なぜ彼が(かもしれない)と考えただけで、遠心力が突然重力になるのかを、理論付けなくてはなりません。今まで書いてきたというのでしょうが、それがいかに手前勝手な考え方に過ぎないかは、反論を書いてきました。
 現実は、本当のことだけが存在するのです。考え方や、感じ方で、本当の現象が変わったりはしないのですから。

・ 彼に働く力をアインシュタインはどう思っているか

 基準体Kに対して、はじめから円盤が静止している場合は、円盤には遠心力が働きません。彼が円盤は静止している、とみなした場合にだけ、重力場ができるようです。
 すなわち、本当の静止の場合は、重力場はできない。見てくれだけの静止の場合は、重力場ができる、ということです。
これは、基準対Kに対して、円盤が本当に静止しているときは、円盤には遠心力も、重力も働かない。基準対Kに対して、本当に円盤が回転しているときは遠心力が働き、重力場ができるということです。このとき、遠心力は、見方によって、重力場になるという考え方のようです。

 ということは、(彼)は円盤が静止しているとみなしているが、本当は、円盤は回転している、と考えているということです。力を感じているとするなら、静止しているという彼の考えが間違った考えであるということです。なぜなら、彼は円盤が静止していると思ったから、重力と思ったのだけれど、本当は、円盤が回転しているために起こっている力なのだから、そこから生まれる力は本当は遠心力です。(彼)の誤認です。

○ この力が、重力場であるかの検討

 ・ アインシュタインの理由

 ここには書いてありません。

・ アインシュタインが語る、一般相対性理論の重力場とニュートンの重力場理論との不一致の理由

 アインシュタインは、(もちろん、この重力場の空間的な配置は、ニュートンの重力理論からは不可能であるような代物である)とニュートンの理論と違っていると述べています。その理由が、(その重力場は円盤の中心で消滅し、中心から外側へへだたるに連れて増加する。)と述べています。

 しかしそうでしょうか。アインシュタインは万有引力を誤認しています。

 万有引力は物体が物を引きつける力です。

 地球を考えてみます。中心へいくほど万有引力は弱まります。中心では消滅します。引力の元になる質量が中心には存在しないのですから。反対に、全方向に外向きに引っ張られます。
 地球内部では、円盤とよく似た現象が起こっているということです。

 したがって、アインシュタインはこのことで(観測者は一般相対性理論を信じている)とか、このことを、(正しく説明するような、一般相対性理論が打ち立てられることを希望するのである。)とか言う必要はないのです。堂々と、万有引力と同じ現象であるというべきなのです。 (信じている)とか(希望する)とかいう非科学的なことばを並べる必要はまったくありません。

 では、なぜアインシュタインは、ニュートンの重力場理論と相容れないと思ったのかを考えてみます。

 彼は、重力を、重さと思っているからです。重さは、万有引力と違って地球中心に行くほど増加していきます。地球中心では一番圧力が高くなります。彼はこの力と比べています。でもこれは万有引力ではありません。万有引力の結果生まれた重さの現象なのです。

 アインシュタインの重力はニュートン以前の重力の考え方に共通します。すなわち、引っ張りあう力である、引力を考えずに、物は重いから落下するという考え方です。古い考え方に立っています。

 では、地球の万有引力と円盤の力とは一致したので、これは万有引力と考えられるかを考えてみます。

 

○ アインシュタインが述べていない、万有引力と(彼)のいっている重力との違い

・ (彼)は、支えがなくなると、円盤の接線方向に飛び出します。万有引力なら、その方向に、重力源がなくてはなりません。しかし、そのようなものはありません。

・ 飛び出した後の(彼)〈4つの見方がある〉
@{基準対Kから見た場合}〈Kが静止〉
 (彼)は等速直線運動〈慣性運動〉をします。万有引力の場合は、重力源に向かって加速運動をします。それも加速度は重力源に近づくほど増加していきます。大きな違いです。
A{円盤から見た場合}〈円盤が静止〉
 (彼)は等速で遠ざかりながら、円盤の周りを回転する。1周に要する時間は一定である。したがって、回転する速度は遠ざかるにつれ、速くなる。彼の速度を上げているのは、円盤の重力場だと考えられそうですが、その場合重力源が円盤にあるはずなのに、円盤から(彼)が離れていくのは、万有引力とはまるで違う現象です。このとき基準対Kの周りを回転する。
B{(彼)から見た場合}〈(彼)が静止〉
 (彼)から見ると、円盤と基準対Kが同じ速度で(彼)から遠ざかる。円盤は回転している。円盤とKを動かしている力はどこから来たのか、不明である。円盤の重力場としたら、どのような作用をすれば、円盤と、Kが同じ方向に同じ速度で動き出したのかを説明できない。もちろん万有引力とは、大きな違いがある。
C{絶対速度とした場合}〈絶対0の空間が基準〉
 K、は等速直線運動。円盤は、等速直線運動をしながら、回転している。(彼)は等速直線運動〈円盤の等速直線速度+回転速度・離れたときの向きだ速度が変わる〉円盤には重力場は存在しない。
 このようどのように考えても、アインシュタインの重力場は、万有引力とはまるで違う作用をする。
・ 地球を飛び出したロケットは、地球の大気圏を離れても、地球の引力に引かれ続けます。しかし、彼が円盤を離れると、円盤にあるという重力場に引き付けられません
・ 彼は、引っ張られて円盤から離れるのではなく、彼をつなぎとめていた、ロープあるいは、摩擦力が切れたために円盤から離れます。新たな力が加わったためではありません。彼自身が持っていた運動エネルギーのために慣性運動をするだけです。

 万有引力ではこのようなことはありません。万有引力より大きな力が働いたときにその差に応じて重力源から離れていきます。新たな力が必ず要ります。物を投げ上げる。ジャンプする。飛行機で飛ぶ。ロケットで飛ぶ。これらはみな、エネルギーを必要とします。

○ 円盤が静止したときの他の物体との関係

・ 円盤を静止しているとみなしたとき、(彼)が見る基準体Kは円盤の周りを回転しているはずです。基準体K上の観測者はこのとき遠心力を感じるでしょうか。見かけ上の運動だから、遠心力は発生しないのでしょうか。

・ このとき(彼)の見る宇宙は、やはり、円盤の周りを回転することになるはずです。地球を静止していると考えたとき、太陽や星が1日1回転して見えるのと同じ現象です。彼がとてもすばらしい望遠鏡と観察力を持っていたら、回転する星が観測されるでしょう。元の円盤が、1時間にに1回転していたら、円盤が静止しているとみなした場合は、星は1時間に1回円盤の周りを回るのが見えるはずです。そのとき、星は光速の何兆倍もの速度で動かなくてはならなくなります。これも、見かけ上のことだから、本当に起こっていないのだから、そのことを考えることは必要ないというのでしょうか。それとも、星は、遠く離れすぎているので、どのような観測機器でも見えないから、関係ないとでもいうのでしょうか。

 もし、見かけ上だから考慮する必要がないなら、円盤が静止しているとみなしても、円盤に起こることはみんな考慮する必要がなくなります。理屈に必要なこと〈静止しているのに外向きの力が働く〉は取り上げ、困ること〈基準体Kや星の回転〉はないものとするのは科学的方法ではありません。


○ 現実と比較してみる。
 地球は回転しています。赤道上の人を考えます。彼は地球が静止しているとみなすかもしれません。すると、重力場が発生します。地球には、万有引力のほかに、彼が(かもしれない)と思ったことでも重力場が発生しています。緯度によって、回転速度が違うので、この重力場は、緯度によって大きさが違うことになりそうです。
 この重力場は、太陽や、月にどのように影響しているのでしょうか。これは観測されているのでしょうか。
 つきに対して、赤道の重力場の影響と北極の重力場の影響の違いはどのように現れているのでしょうか。これは観測されているのでしょうか。
 太陽も自転しています。したがって、その回転のために重力場が発生しているはずです。その重力は、地球にどのように影響しているのでしょうか。それは観測されているのでしょうか。
 字際にはそんなものは観測されていません。すなわち、〈彼)がどのように(みなそう)と回転によって発生しているという重力場は、現実には、存在しません。すなわち、回転による重力場は、存在しないということです。  

まとめ

 この円盤に生じているという重力場は、アインシュタインも認めているように、万有引力とは似ても似つかない代物です。すべての現象は上に書いたように、回転体の現象にそっくりです。すなわち、重力場は、万有引力ではなく、遠心力のことです。
 見かけ上のことと、本当のことが区別されていません。だから、エネルギーの問題が合わなくなるのです。科学は手品ではありません。見かけと本当を同じものとすることはできません。この論は、矛盾しかありません。

 

問題2 

円盤の中心とへりでは時間の進み方が違う。

考察2

 これは特殊相対性原理のところで述べたように、現実には起こっていないことです。

〈例〉{ヘリの時計と中心の時計は、1年に1秒違うとする。この円盤が45億年回転したら、45億秒の違いが出てくる。中心がへりより45億秒速くなる。}

 これは約142年に相当します。へりから中心に歩くと142年後の世界に行くことになります。未来へ歩いくことになります。反対に中心からへりに歩くと過去にさかのぼることになります。いったり来たりすると、過去と未来をいったりきたりすることになります。

 45億年も回転するのは常識はずれだというなかれ。これは普通に存在する事実です。それよりも長く回転しているものさえざらにあります。数十億年の単位で回転しているほうが実は普通なのです。そのことを次に考えてみます。

 地球は46億年間回転を続けています。回転だけで考えると地球の中心は未来になっています。中心から地表に向かって、時間がどんどん積み重なって、現在の地球表面に至ります。

 すると、地下水は、未来の地中を通って現在に湧き出しています。マグマは、未来からやってきて、現在の地表に噴出します。地震は、未来の地割れから発生して、現在の地表を揺らします。

 こんなことが起こっているわけはありません。何物も、未来からやってくることはできません。

 星はみんな回転しています。45億年よりもっと長く回転しているものや、中性子星のように、超高速で回転しているものや、さまざまな星があります。星はみんな中心と表面が何年も何百年もあるいは何千年も時間がずれているのでしょうか。同じ星の中で、現在と未来が同時に存在してもうまくいくしくみをアインシュタインは提示しなくてはなりません。それはどのようなことなのか説明する必要があります。

 回転体の中心とへりで時間が異なるという事実は存在しません。したがって、この考え方はアインシュタインの間違いです。

 

問題3 運動と長さ

 円盤のへりに回転の接線の向きに測量棒を置くのと、直径方向に置くのとでは、長さが違う。

考察3

 回転方向は縮むと書いてあります。すると、円盤のへりは、回転のため、中心より縮んでいるはずです。円盤はひずみを起こすことになります。このひずみは回転体で観測されているのでしょうか。

 さまざまな車輪が世の中にはあります。その数は膨大です。それらは回転するたびに、へりが縮んでいるのでしょうか。光速に比べると、小さな速度だから、実際には誤差にもならないくらい小さな縮み率だから、観測されないということで済ませるのでしょうか。

 高速度で回転する、中性子星や、ブラックホールはどの程度へりが縮むのでしょうか。そのときの縮みによる圧縮はどのように現れるのでしょうか。

 圧縮や、乾燥や、温度による縮みと違い、空間そのものとともに縮む縮みは、現実世界の中で、どのように現れるのでしょうか。ものさしも同じ率で縮むのだから、計りようがないといえばそうなのだけれど、かなり難しいことのようです。その現象があるというなら、その物理的仕組みを、解き明かさなくてはなりません。
 これも、今という時刻に、過去や、未来の現象が同時に存在する仕組みについて、なにも述べていないのと同じです。縮んだ空間の物理的特性や、仕組みについて、アインシュタインはなにも考えていません。

追記
 相対性理論の重力場と万有引力との違い

一般相対性理論の重力場 ニュートンの万有引力
重力場の原因 回転する円盤は、外向きに重力場が生じる 質量のあるものしか重力場は生じない
重力源と、落下の方向 彼が動いていく方向には、重力源はない 彼が動いていく方向に重力源がある
落下の仕方 円盤から離れた場合螺旋を描きながら等速で遠ざかる〈円盤が静止しているとみなした場合〉。円盤が回転しているとみなした場合は、等速直線運動をしながら遠ざかる。どちらの場合もその方向には重力源はない 地球から離れた場合。地球に向かって加速しながら、進む。理論上は、地球も彼に向かって加速しながら進む。


 
表紙

第24章 ユークリッドおよび非ユークリッド連続体