恐竜は隕石の衝突で滅びたのか?     へいこく雑記帖



鳥は何故空を飛ぶようになったか


著者 田 敞

 

まえがき

 恐竜が滅びたのは隕石衝突が原因であるというのが昨今の定説である。しかし一つ不思議なことがある。それは、隕石衝突は偶然の事故であるのに、偶然の事故が、恐竜の中では鳥類だけを,そして、哺乳類の中では現在につながるすべての類を生き残らせたことである。

 恐竜のひとつの目である鳥類が、隕石衝突による激甚を生き残って新生代まで生き伸びたのなら、おそらく何百、いや、何千という種類がいたであろう鳥以外の恐竜にも生き残った種があっても不思議ではない。哺乳類は現在につながるすべての類が生き残っているのだから。どちらかというと生き残らないのが不思議である。

もうひとつの疑問は、新生代になって鳥が繁栄しているから、鳥が地上でもう一度巨大な恐竜に進化して哺乳類を駆逐して繁栄してもおかしくない。中生代はそうだったのだから。実際巨大な鳥が最近までいたのだから。しかし、鳥は空では繁栄しているが、地上では哺乳類が繁栄している。なぜ中生代のように地上で恐竜の子孫である鳥が哺乳類を押しのけて繁栄しなかったのだろう。実際、現在、鳥類の方が哺乳類より種数は多いのだから、地上性の鳥がさまざまに分化してもおかしくはない。しかしそうはなっていない。

恐竜絶滅の原因が隕石衝突だけではこれらの疑問に答えられていない。そこでこの問題を考えてみる。それを解く鍵は大きく二つある。

@ 飛ぶ

恐竜の中で鳥しか生き残らなかったということと、恐竜の中で鳥だけが飛べたということが偶然の一致だろうか、と考えることである。

A 酸素濃度

 古生代、中生代、新生代にかけて、大気の酸素濃度が、哺乳類の繁栄したときは高く、恐竜が繁栄したときは低くなっている。これは偶然の一致だろうか、と考えることである。

古生代に、爬虫類から、恐竜と哺乳類が進化する。最初は哺乳類の祖先が繁栄し、中生代になって、哺乳類は衰退し恐竜が繁栄する。そして新生代になって、恐竜は地上で衰退し哺乳類が繁栄する。この約2億年間に、哺乳類の繁栄と衰退、と、恐竜の繁栄と衰退が大気中の酸素濃度の増減と一致している。

Bその他に考えること。

ア 現在の鳥の繁栄の場所と、恐竜の衰退

恐竜の生き残りである鳥が、新生代になって、地上ではなく、空で大きく繁栄したが、地上では哺乳類に覇権を奪われたことと、地上の恐竜が絶滅したこととは関係があるのではないかと考える。

イ 哺乳類が生き残った理由

 また、哺乳類は中生代には多くの目に分化していき、白亜紀後期には現在につながるすべての目がすでに出現していた。それらの哺乳類は隕石衝突をものともせずにすべて生き残って現在につながっているのに、恐竜は鳥以外の目はすべて死に絶えたということの原因も隕石衝突だけでは説明できない。

ウ 恐竜絶滅の原因といわれていること

科学者は隕石衝突の衝撃、寒冷化、酸性雨で恐竜絶滅を説明しているが、この現象だけでは、哺乳類の現在につながる目のすべてと、恐竜の中で唯一鳥を生き残らせ、鳥以外の恐竜をすべて絶滅させた理由にはなりえない。なぜなら隕石は、生きものの生死を選別できないからだ。それができるのは何であろう。

 

そこで、これらの事を説明できる原因を探してみる。その手段を自然選択説に取る。

5億年前から今日まで、生物は、適者生存という自然選択で、繁栄と絶滅が連綿と続いてきた。隕石衝突説はこのシステムとまるで違うシステムである。天のいかずちが、人間の誕生に邪魔になる地上の恐竜を殺し、人間につながる哺乳類を生かしたのである。まるで神の摂理である。でも、科学なら、適者生存をそんなに簡単に手放していいのだろうかと考えなくてはならないと思う。適者生存が恐竜を滅ぼした原理だと考えなくて良いのだろうか。そこで適者生存は関係ないことだろうかと考えてみる。科学はあらゆる可能性を考えてみることが必要であるというから。

 

1 鳥が新生代に繁栄し、他の恐竜が絶滅した原因

(1) 恐竜の中で、鳥だけが飛ぶことができた。

これが他の恐竜と鳥との最大の違いであるから、これが鳥だけが生き残って繁栄した原因ではないだろうかと考えてはどうだろう。

 隕石衝突の結果起こった爆風、炎、寒冷化、酸性雨が恐竜を絶滅させたのなら、鳥も絶滅させたはずだ。恐竜の中で鳥だけが唯一爆風に強くて、炎に強くて、酸性雨に強くて、寒さに強いという形態的な違いは今のところ見つかっていない。したがって、この原因では、鳥だけが生き残った理由が説明できない。偶然が鳥に味方したという考えもあるかもしれないが、哺乳類は今につながるすべての目が生き残っているのに、恐竜は鳥以外の目がすべて絶滅しているのは偶然としてはあまりにもできすぎている。隕石衝突が鳥以外の恐竜絶滅の唯一の原因なら、哺乳類にも大打撃を与えて、現在につながるすべての哺乳類の目が生き残ることはできなかったはずだ。もちろん、偶然生き残った哺乳類が今につながっただけで、他の哺乳類が生き残ったら、その哺乳類が繁栄しただろうという反論もありだろう。それにしても、恐竜に比べてあまりにも生き残りすぎているのではないだろうか。

 そこで、最大の違い、「飛ぶ」ということが恐竜の中で鳥だけが生き残ったことと関係があるのではないかと仮定して、適者生存を基に考えてみる。

 

1 鳥はなぜ飛んだか

 その理由は、木に登った恐竜が滑空を始めた、とか、走っていた恐竜が崖に駆け上がり、そこから飛び立ったとかいわれている。それはあった可能性が高い。しかし、そこに木があったから登って飛んだ、とか、崖があったから駆け上がって飛んだとかだけでは、新生代になって飛ぶ恐竜(鳥)が繁栄したことの説明にはならない。なぜならそこには適者生存の進化の原則がないからだ。

遺伝子の変化で手に入れた能力は、生存により有利な能力なら集団の中で広がり、不必要な能力ならすぐに捨てられていくのが適者生存の考え方だ。鳥が羽の力を強め、やがて飛びたち、さらにその能力を高めていったのは、それが生存に有利に働いたからだと考えられる。すなわち飛ぶ能力を手に入れたのは、生存のために飛ぶ必要があったからだということになる。崖があったから飛んだとか、木から飛び降りたとかの偶然の理由ではないはずだ。

 そこで鳥が飛ぶ必要に迫られた理由を考えてみる。

 大きな理由は二つ考えられる。

 一つは、能動的な理由である。それは獲物を狩るために空から襲ったということである。それは現在の鷹などがやっている狩りの方法だ。始祖鳥や、その他の鳥型恐竜は、鋭い歯を持っている。空から獲物を見つける、襲いかかる、逃げる獲物を追いかける、など有利な点が多くある。また、飛ぶことで、木の実や、飛ぶ昆虫などの食料も手に入る。これが鳥が飛ぶ能力を発展させていった原動力である可能性がある。

もうひとつは、受動的な原因である。それは捕食者から逃れるために飛んだということである。飛翔力が弱い時でも、近くの木の枝に飛び上がるだけでも、捕食者から逃れるのにかなり有利に働いたであろう。飛翔能力が向上すると、やすやすと捕食者から逃れられただろう。

 この二つのどちらか、あるいは、双方が、鳥が飛んだ原因であろうと考える。どちらが最初でどちらがあとかは分からないが、飛べるようになったらどちらも使っただろうと考えられる。現在の鳥が両方を使っているように。

新生代になっても、この能力が空では哺乳類を押さえ、鳥を繁栄に導いたと考えられる。現在、鳥が空を支配しているのは飛翔に適した、気嚢と、羽を持っているからである。

 

次にその順序を考えてみる。

@ 初めに羽毛ができた。

 この羽毛は、哺乳類の毛のように、身体の保護や体温の維持などに役だっただろう。それが生き残るのにより有利に働いて、羽毛が恐竜の集団に広がっていったと考えられる。

A 翼を持った

 これは、セックスアピールや、保温、威嚇、走る時の補助、そして雛の保護として役立つようになっていった。

B 捕食のため

 逃げる餌をとらえるために、走るときに羽ばたいて速度を上げたり、方向転換や体の安定に使った。この能力の高い恐竜が適者となり、より進化した。

C 捕食者から逃げるため

 捕食者と対峙したとき、羽を広げて、身体を大きく見せる道具として羽を役立てた。また、逃げるとき羽をはばたかせて速度を上げたり方向転換をすばやくするためになどにも役立った。これが羽を発展させ、より強い翼へと進化させた。

 現在の鳥も、羽を広げて威嚇したり、ニワトリなどが逃げるとき、羽ばたいて推進力を高めることに見られる。

D 飛ぶ力をつける

 これらの能力が高い固体が餌を多く獲れたり、捕食者から逃げる個体が多くなり集団の中で生き残る確率が高くなり、この遺伝子が集団に広がり、集団をより、翼の大きい集団に進化させていった。

 その中で、羽ばたいて飛ぶ固体が現れ、その個体がより環境適者になり。そして、より遠く高く飛ぶ固体がより生き残り、その遺伝子が集団に広がり、やがて空を飛びまわる恐竜、鳥が生まれた。

 偶然から生まれた翼の変化が、他の個体より、より餌を多く取り、また、敵から逃れることができて生き残る確率をあげたために集団内に広がり、それが発展していって、飛ぶ恐竜、鳥が生まれたといえるのではないだろうか。

 特に、捕食者から逃れるとき、木の枝に飛び上がったり、木から木へ飛び移る能力は生存に大きく貢献しただろう。また、木の上の食べ物、木の実や昆虫などの生き物を取ることができることは、食料確保の幅を広げて、他の地上性の恐竜に対して優位に立てただろう。特に地上の食料は、他の恐竜や動物との奪い合いになるけれど、木の上や空は競争者のいない新天地であっただろう。飛ぶことは繁栄のための素晴らしい手段になったであろう。地上の食料確保では弱者であった恐竜の種が、木の上や空に食料を求めて飛ぶ力を強めたというのは環境適者としては,ありえることだろう。

 このように考えると、飛ぶことが必然になる。木から滑空した、や、崖から飛び降りたでは、たんなる偶然の現象にしかすぎない。生存に関係ない能力は集団に広がっていかない。それが生き残りに有用であることが、その遺伝子が集団の中へ広がり集団の主流の性質になるには必要不可欠である。

E 鳥を空に追いやったもの

 では鳥を空に追いやったものは何者であったのかを考えてみる。

ジュラ紀後期に最初の鳥といわれている始祖鳥が竜盤竜から進化した。その後、白亜紀になるとさまざまな鳥型恐竜の化石が発見されている。

 白亜紀になると、鳥盤竜がそれまで全盛を誇っていた竜盤竜を次第に押しのけていっている。それ以前のジュラ紀は、竜盤竜が全盛を誇っていて、鳥盤竜は、片隅に細々と生息していたようだ。

 これと呼応する環境を考えてみる。大気中の酸素濃度である。古生代の石炭紀に上昇し始めた酸素濃度はペルム紀に最高に達している。それが中生代に入ると急激に落ちていく。その時、生物の最大の絶滅が起こっている。その後三畳紀、ジュラ紀と酸素濃度は低く推移していたが、白亜紀になると酸素濃度は、一転上昇に転じている。

 このことと、恐竜や哺乳類の盛衰とをくらべてみる。

 大気中の酸素濃度が高かった古生代ぺルム紀には、爬虫類から進化した、恐竜と哺乳類の祖先では、哺乳類が地上の覇権を握っていた。恐竜は細々と生きていた。それが中生代に入って、三畳紀、ジュラ紀と酸素濃度が低下すると、哺乳類は夜に押しやられ小型化し、変わって恐竜が覇権を握り大きくなる。そして、白亜紀になって、酸素濃度がふたたび上昇するにつれ、恐竜の中で、鳥盤竜が繁栄を始め、哺乳類も種を増加させていっている。

 これと、それぞれの呼吸法を比べてみる。竜盤類、鳥盤類、哺乳類では呼吸法が異なる。一番酸素を取り入れる能力が高いのは、竜盤類であり、その次が、鳥盤類であり、最後が哺乳類である。

 大気中の酸素濃度が低い時は、竜盤竜が栄え、酸素濃度が高い時は哺乳類が栄えている。その間が鳥盤竜だ。大気の酸素濃度とその時栄える生物の酸素取り入れ能力とが一致している。

 竜盤竜は、気嚢システムを備え、酸素取り入れ能力が高かった。哺乳類は横隔膜を備えていたが、この方法は、空気の流れが出たり入ったりで、気嚢システムの一方向に流れるのに比べ酸素取り入れ能力が劣る。

 これが大気中の酸素濃度と繁栄した種の関係だろう。三畳紀、ジュラ紀と、哺乳類は、高い山に登った人のように、苦しくて、のろのろしか動けなかったと言っている人がいる。

 竜盤竜はジュラ紀末から白亜紀にかけて、まず鳥盤竜にニッチを奪われていった。この圧力で、竜盤竜の一部が羽を利用し出した。これがやがて鳥になっていく。その後、白亜紀になって、哺乳類が恐竜のニッチに入り込んできた。これが追い打ちをかけるようにして鳥が飛ぶことになったと考えたらどうだろう。

E 鳥が空で繁栄した理由

 鳥は竜盤竜だから気嚢システムを持っていた。これは白亜紀に酸素濃度が高くなってくると、地上では無用の長物になった。しかし、空は高度が高くなるにつれ酸素濃度が低くなるから、飛ぶ鳥は環境に有利な能力を持っていることになる。飛ぶためには地上にいるよりも多くの酸素を必要とすることも酸素取り入れ能力の高い鳥に有利に働いている。そのほかに、気嚢システムは、骨を中空にしているから、大きさに対して身体を軽くできる。これらを持っていない飛ぶ哺乳類のコウモリは鳥に勝てないことになる。また、羽は、コウモリなどの被膜より飛行能力が優れているといわれてもいる。

 これらのことが重なって、空は鳥が覇者となった。哺乳類のコウモリは、夜行性になった。これはジュラ紀の哺乳類が夜行性であったのと同じだ。恐竜にニッチを奪われたので、暗闇に逃げ込んだのだろう。

 太平洋の離島には、昼行性のコウモリがいるが、猛禽類がいる他の島では夜行性だ。昼間に進出したいのだがそれが鳥によって阻まれているといえる。

結論

 鳥は、最初、竜盤竜の中でニッチを奪い合うことで羽を持ち、おそらく最初の鳥、始祖鳥を生んだのではないだろうか。その後、白亜紀になって鳥盤類の圧力を受けて、様々な飛ぶ恐竜が進化してきて、さらに追い打ちをかけるように哺乳類の圧力を受け、空に飛び立ったと考えられる。それは、鳥が恐竜から進化した時代と、鳥盤竜や、哺乳類が、勢力を伸ばしていった時期が重なることから類推できる。

 最後には、哺乳類が追いかけて、恐竜を空に飛ばしたのだう。

 では飛べない恐竜はどうしただろう。哺乳類にニッチを奪われ続けたのだ。それが恐竜の絶滅につながったのではないだろうか。

 

哺乳類が繁栄した理由

 中生代において、低酸素に適応した恐竜は、より低酸素に適応するように変化していって繁栄した。

 その間哺乳類は、酸素吸収能力ではかなわないので、他の力を伸ばすことで生き抜いてきただろう。恐竜から逃れるために、小型化し、夜行性になることはその表れである。そのほかにも、こっそり生きていくための能力を発達させただろうと推測する。そのひとつが知能であろう。捕まらないようにうまく餌を探すには知能の発達が有利であろう。

 捕食から逃れるために、他の恐竜にはない、飛ぶという能力を鳥が発達させたように、恐竜から身を守るために、哺乳類は知能を発達させていったのではないだろうか。それが白亜紀になって、大気中の酸素濃度の上昇につれ、低酸素による運動の制約から解かれていき、ニッチを広げ、種の分化が進んだのであろう。それが、白亜紀末に、酸素が適者の条件でなくなったとき、他の能力を伸ばしてこなかった恐竜に対して、他の能力を伸ばしてきた哺乳類が一気に地上の恐竜を滅ぼしたのではないだろうか。しかし、哺乳類は鳥にだけは空では勝てなかった。それが、新生代に鳥だけが生き残った理由ではないだろうか。

 

終りに

 これはあくまで推測である。ただ隕石衝突では恐竜絶滅を説明するのはあまりにも不都合なことが多すぎるので考えてみた。隕石衝突はインパクトが大きいから、いわゆる絵になる考えだろう。天のいかずち、となると、これはもう素晴らしい映画のクライマックスだ。でも、もう少しつじつまが合わなくてはならないだろう。隕石の爆風、炎、酸性雨、寒冷化、が、哺乳類の敵である地上性の恐竜だけを殺したということの根拠があまりに乏しすぎる。いや、一切触れていない。まるで人間を生まれさせるために、神が小惑星を投げつけたかのようだ。

 小惑星は殺す相手を選択できない。選択できるのは適者生存である。科学なら、いかずちより、進化論をもっと考慮する必要があるだろう。

 2019,4,10 完

 著者 田 敞

 

 

 

二つの違いは、竜盤竜は気嚢システムがしっかり発達して低酸素世界でもしっかり生きられたが、鳥盤竜は気嚢システムがないかあってもあまり発達していなかったから低酸素状態の時代には生きにくかったと考えられる。

 ジュラ紀は酸素濃度が極端に低い時代であった。白亜紀になると酸素濃度が徐々に増えていく。空気中の酸素濃度が増えるにつれて、竜盤竜が衰退し、鳥盤竜が発展していくのを考えると、低酸素に適応していた竜盤竜が、酸素濃度の増加によって、生きやすくなった鳥盤竜にニッチを奪われていったと考えられる。

竜盤竜の仲間である鳥型恐竜の祖先もやはり、他の竜盤竜と同じように鳥盤竜から圧力を受けていたと考えられる。

「恐竜はなぜ鳥に進化したのだろうか」(ピーター・D・ウォード)によると、酸素濃度の高かったペルム紀から三畳紀にかけて、哺乳類の祖先である単弓類や獣弓類が繁栄している。その後、低酸素時代になった三畳紀半ばから、白亜紀半ばまで、酸素吸収能力の高い恐竜、中でも竜盤竜の仲間が哺乳類を押しのけて全盛を誇り、やがて、それほど気嚢システムが発達していない鳥盤竜にニッチを侵食され、新生代になって、台頭してきた哺乳類に完全に地上を奪われるに至っている。

哺乳類は、酸素濃度の高い時に繁栄し、恐竜は、酸素濃度の低い時代に繁栄しているといえる。

ジュラ紀後期から、次第に大気中の酸素濃度が増え始めたのに呼応して哺乳類の種が増え、白亜紀には、今ある哺乳類の目がすべて出そろっていたのはそのあかしであろう。

そこで、鳥がより飛ぶようになったのは、鳥盤竜と共に、発展してきた哺乳類に追われて哺乳類のいない、空に新天地を切り開いたためであろう。その捕食圧が飛ぶ鳥をよりそれに適応させたのだろう。

 

 

 

 

C 羽のある恐竜

 始祖鳥はジュラ紀に生きていた。翼を除けばほぼ恐竜の体である。飛ぶことができたといわれている。その後も、複数の羽のある恐竜化石が発見されている。飛ぶことができたのもあれば、羽ばたいても飛べなかっただろう恐竜もいる。

 羽ばたいても飛べなかっただろう恐竜も、その羽が何らかの形で生き残るために有利に働いていたはずである。もちろんその後滅びているから、それが有利であったのは短い期間であったと推測される。

 羽や体が、環境により適応するように進化していった恐竜が鳥の形であろう。鳥型恐竜はさまざまに変化し現在の6000種ほどの鳥になったのだろう。しかし、飛べない恐竜は、台頭してきた哺乳類にニッチを奪われ滅んでいったのだろう。このような仮説が考えられる。

 

しかし、それなら、恐竜が絶滅したことと関係ないことが絶滅の原因になる。また、飛べない鳥が存在する現在とも矛盾する。

 哺乳類のいない、絶海の孤島には飛べない鳥が繁栄している。それが哺乳類が進出すると、飛べない鳥が減ったり、絶滅したりするということだ。このことから考えると、白亜紀にも、飛べない鳥、恐竜の天敵が哺乳類であったことが類推できる。

 一番は哺乳類である。

 小型恐竜にとって、中型や大型の恐竜は捕食者であっただろう。そのほかに、哺乳類の台頭があったのではないだろうか。

 白亜紀になって、植物は動物より一足早く新植代に入っている。これは、裸子植物が、被子植物にとって代わって繁栄していったことによって区分される。この環境の変化によって、動物界も変化していったことが考えられる。実際、白亜紀になると、哺乳類が種を増やしていく。白亜紀の終わりになると、現在につながるすべての目は現れていた。

 これは、哺乳類が、恐竜のニッチを奪っていったということになる。これはこの哺乳類が、小型恐竜の捕食者になっていた可能性は十分考えられる。夜行性であった哺乳類が、能力を高め昼行性になり恐竜のニッチを奪っていったのではないだろうか。それにつれ、小型恐竜は追われ、飛ぶ能力を高めていったのではないだろうか。

 どのように大型の恐竜も卵の時代がある。また、幼獣の時代がある。強くなった哺乳類はこれらを捕食し、やがて、大型恐竜も死に絶えたのではないだろうか。

 

「ありえない!?生物進化論 北村雄一、サイエンス・アイ新書」によると、始祖鳥は1億5000万年前のヨーロッパに住んでいたとある。両手両足に翼をもった恐竜であるというミクロラプトルは1億2000万年前の中国に住んでいた。同じ中国の同じころに住んでいたカウディプテリクスは原始的な翼を持っていた、とある。

 北村氏は、始祖鳥は鳥であるが、ミクロラプトルとカウディプテリクスは恐竜であるという見解だ。カウディプテリクス→ミクロラプトル→始祖鳥→鳥と進化してきたということだ。翼の形状から判断したと思われる。しかし、カウディプテリクスやミクロラプトルの3000万年も前に繁栄していた始祖鳥が、カウディプテリクスやミクロラプトルから進化したというのは、年代的に不可能な現象である。未来の生き物から、過去の生きものが進化できるわけはない。

このことから、鳥の祖先から多くの、鳥や鳥に似た恐竜が派生したと考えられる。あるいは、何度か鳥に似た恐竜が生まれたということも考えられる。環境が似ているとき、他の生物が同じような体を持つことはよくあることである。カウディプテリクスやミクロラプトルと始祖鳥は3000万年の間がある。3000万年といえば、キツネザルのような動物から、ゴリラや、人間が進化することができるくらいの年月だ。小型恐竜が大型恐竜に進化できる年月だ。始祖鳥とは別の、翼のない恐竜が翼を持つことができるように進化するのにも十分の時間はある。環境がそれを要請していたら、十分あり得ることである。

 推測

 始祖鳥は他の恐竜との生存競争から生まれた鳥型恐竜であろう。他の恐竜との食料の奪い合いや、捕食者からの逃走や戦いの必要から翼が発達したのだろう。そこには、セクスアピールもあったかもしれない。

 カウディプテリクスやミクロラプトルもおそらくそういうことから進化してきたのだろう。始祖鳥と異なるのは、その後、これらの鳥は哺乳類の台頭という新たな勢力との闘争の圧力を受けたと思われることだ。彼らは、強力なライバルに成長していった哺乳類という敵から逃れるために、空に生活の場を移したと考えられる。翼を持たない鳥(恐竜)がやがて絶滅しても、捕食者から空に逃れた鳥は安全な場所で、繁栄していったのが現在の鳥だろう。

 

1 遺伝子の変化

 遺伝子の変化によって、恐竜が羽毛を持つようになった。

 羽毛が変化して飛ぶことができる羽を持つようになった。

 これはいも虫が蝶に変化したり、水中のヤゴがトンボになったりする変化が遺伝子の変化によって起こったのと同じ仕組みだ。

 適者生存の法則でいくと、個々の個体の遺伝子の偶然の変化が積み重なって集団の大きな変化になる。その変化は、環境に適応したものになる。環境が変化すると、それにつれてより適応した固体が生き残り、その遺伝子が集団の主流になっていく。そして集団全体が新たな性質を持つことになる。

 鳥も、飛ぶことができた恐竜が環境の変化により適応して飛ぶ恐竜としての集団ができ、鳥になっていったと考えられる。そこで、なぜ飛ぶ恐竜が主流になっていったかを考える。

2 恐竜が鳥しか残らなかった理由

 

 地球環境の変化から考えてみる。

 白亜紀の途中から、空気中の2酸化炭素の比率が徐々に減り、酸素が増えたことが大きな原因であると考える。この結果、恐竜が哺乳類より環境適応能力において有利であった酸素取り入れ能力が最大の適応条件ではなくなり、代わりに、哺乳類が白亜紀において高めていた知能が、環境適応条件の有力な条件になっていった。

 これは翼竜が、白亜紀後期に滅びた原因でもある。2酸化炭素が減ると、空気の比重が下がり、揚力が低下する。そのため体重の重い翼竜は飛べなくなり、滅びてしまった。

 白亜紀が進むにつれ哺乳類は分化していった。白亜紀の終わりには、現在につながる目は出そろっていた。それはとりもなおさず、哺乳類が白亜紀が進むにつれてニッチを広げていったことを示しているということである。それは恐竜のニッチを奪っていったということでもある。

3 恐竜が飛んだ理由

 恐竜が飛ぶようになったのは、二つの意見がある。一つは、木に登って滑空したことに始まるという意見。二つ目は、走っていって、急な坂を駆け上って、そこから飛んだという意見である。これはあったかもしれない。今も、ムササビや、モモンガなどは滑空する。滑空するトカゲや、蛇もいる。崖をかけのぼるために羽を使うというのもありそうであるが、原罪ではそれを得意とする生きものは見かけない。

 共にありそうだが、それで、恐竜が滅びたのに飛ぶ恐竜だけが繁栄したというのには説明不足である。たまたまそういう恐竜がいたとしても、それが環境の適者になって勢力を広げ、鳥だけが繁栄したというにはその根拠がなさすぎる。

 では適者生存の法則から考えてみる。

 現在の鳥(恐竜)は、羽を大きく広げて敵を威嚇したり、地上生の鳥には敵から逃げるとき羽を羽ばたいて速度を上げるものもいる。 

 初期の羽毛恐竜も、このようにしていたことが類推できる。羽ばたいて走る恐竜の中でより羽が大きくなり推進力が大きくなった恐竜が、捕食者からより逃れられたと考えると、反がどんどん強くなっていくことが考えられる。その中から少し飛べる恐竜が出てきた。これらは遺伝子の変化で起こった。そしてより遠くまで飛べる恐竜が捕食者からより逃れることができ、集団の中に占める遺伝子の割合が増加していった。

 恐竜が飛ぶようになった理由は捕食者の捕食圧力であっただろうと推測する。捕食者は、同じ恐竜であっただろうが、白亜紀の後半になると、台頭してきた哺乳類による捕食圧が次第に大きくなっていったのではないだろうか。

白亜紀の後半になって飛ぶ恐竜が増えていったのと、哺乳類の種類が増えていったのとが相関していることはこの現れであろう。

 

4 鳥はなぜ空で発展したか

 空には昆虫と、翼竜がいたが、昆虫は食料になり、翼竜は滅びたので、空では鳥の敵は鳥だけになった。空のニッチを鳥が一人占めしたことで鳥はその種類を増やし発展していった。

4 鳥はなぜ地上ではなく空で発展したか

 捕食者の圧力が考えられる。捕食者とは、白亜紀の中ごろからさまざまな類に変化していった哺乳類がいろいろなニッチに進出したために、地上生の鳥が滅ぼされた。鳥は哺乳類から逃れるために飛ぶことになった。飛ぶことが優れたものが哺乳類から逃れる確率が高くなりより生き残り、やがて、様々な鳥へと分化していった。

5 恐竜が鳥しかいなくなった理由

 地上は哺乳類によって征服されてしまった。これは、地球の環境の変化に恐竜より、哺乳類の方がより適応した結果であろう。これは、哺乳類のいない孤島に哺乳類が入ると地上生の鳥が絶滅していく例から類推できる。新生代になって、地上生の鳥より、哺乳類の方が地上を支配していることもこの証拠である。白亜紀には徐々に哺乳類の目が増えていることから、徐々に哺乳類のニッチが増えていったことが分かる。これはとりもなおさず、恐竜が占めていたニッチを奪っていったと考えられる。

 生き残ったのは空を飛ぶ鳥だけだ。これは飛ぶことに関しては、哺乳類より鳥類の方がより適応していたのが原因だと考えられる。

 呼吸では、酸素の吸収に優れている鳥の気嚢システムの方が哺乳類の横隔膜システムより、高度による酸素濃度の変化に強い。

 構造では、骨が中空になっている鳥の方が軽い骨組みを作れる。

 羽では、羽毛の方が、哺乳類の被膜より飛行能力に優れている。

 このことから、鳥が空を支配し、コウモリは夜行性になったことが考えられる。猛禽類のいない南海の孤島では昼行性のコウモリがいるのもこの証拠の一つであると考えられる。また、コウモリが、鳥の入らない、洞窟や小さな隙間に住みかを選んでいるのも、この為であろう。

 木と木の間を飛ぶムササビなども、地上に降りることの危険を避けて滑空することを選んだといわれている。しかし、やはり鳥の脅威は避けられないので、夜行性になったのだろう。

6 鳥はなぜ小さいか

一点は、飛行能力の限界であろう。

飛ぶためには、体重が重くては飛べなくなる。飛ぶ鳥はそのために、体重制限があるのであろう。

2点目は捕食者の圧力であろう。

捕食者が強いと、被捕食者は早く大人になり、小さくたくさんの子供を産む傾向があるということだ。このために、小さな鳥が増えたのではないだろうか。

3点目は大きな鳥は狙われやすいということだろう

大きな獲物ほど、えられる肉が多い、そのため捕食者は狙うのだろう。哺乳類のいない島に大きな地上生の鳥がいたが、人間が入ったとたんに滅びている。

7 結論

鳥も、コウモリも、ムササビも、遺伝子の変化によって手に入れた飛行能力をより伸ばすことによって、環境により適応していったのだろう。

地上の権力を哺乳類に奪われていった恐竜に唯一残された安全なニッチは、空だけだった。哺乳類のいない空で鳥は発展していったと考えられる。鳥が飛ぶ能力を高めたのは、哺乳類から逃れるためであったと考えられる。その力のなかった恐竜は滅んでいったと考えられる。