へいこく雑記帖
鳥はなぜ空を飛んだか

恐竜は隕石(小惑星、彗星)の衝突で滅びたのか?


田 敞

 

まえがき

 恐竜は隕石の衝突で滅びたというのが今の科学界では一番支持されている説です。定説といってもいいくらいです。その前は、恐竜は被子植物の繁栄によって滅びたという説が支持されていました。昔、NHKでやっていました。隕石派からいっぱいクレームがついて、訂正に大わらわだったようです。

 隕石の衝突による絶滅は激変説といわれているものの仲間です。被子植物による絶滅は、適者生存の法則です。激変説は、キリスト教の聖書に由来するといいます。適者生存はダーウィンの進化論です。

 今は隕石衝突説がほぼ定説のようになっているけれど、隕石衝突では説明できないことが結構あります。では、適者生存で説明できるかというと、そうでもありません。ともに一長一短です。そこで恐竜絶滅の理由について考えてみたいと思います。

 

1 絶滅現象

 白亜紀末に動物の大量絶滅があったことは、大きな環境の変化が短時間で起こったことをうかがわせます。

 巨大な隕石衝突による地球環境の激変が多くの動物の絶滅をもたらしたとする考えはこれにマッチします。

 反対に、適者生存説では、この動物の一斉の大量絶滅はちょっと考えたくらいではありえないと思われます。

種は常に絶滅してきました。白亜紀だけを考えても、白亜紀初めにいた恐竜のほとんどは、白亜紀の経過時間の中でそれぞれに絶滅して新しい種類の恐竜に変わっています。これは、ダーウィンの適者生存の考え方で説明できる現象です。一斉ではなくバラバラの絶滅ですから、大量絶滅のように全体の生物が一気に極端に少なくなったということはありません。種の絶滅がいっせいに起こるということは、適者生存では説明しにくいようです。

 実際に、巨大隕石の衝突を裏付ける地層が世界中で発見されています。このことから白亜紀末の恐竜絶滅は、隕石衝突が原因であるということがほぼ定説になったようです。

 しかし、中生代から新生代に変わった時の生物の変化は、隕石衝突では説明できない現象も多々あります。どちらかといえば、適者生存説より隕石衝突説の方が説明できないことが多いのです。

2 二つの説の問題点

(1) 隕石衝突説では説明できない現象

@ 地上生の生きもの(植物も含む)で絶滅したのは、唯一地上生の恐竜だけだった。

A 数多くあった恐竜の中で鳥だけが生き残った。

B 哺乳類は現在につながる目がすべて生き残ったのに、恐竜は鳥以外の目がすべて滅んだ。

C 生き残った鳥(恐竜)が隕石衝突の影響がなくなった後、もう一度進化して地上を支配してもよさそうなのに、そうはならなかった。

D 植物は隕石衝突以前にすでに現在の時代、新植代に入っていた。隕石衝突では植物は時代が変わらなかった。

 

(2) 適者生存説では説明できないこと

@ 大量絶滅が起こった。

 

3 問題点を考える

(1)地上では恐竜だけが絶滅した。

 隕石は何故地上では恐竜だけを選択して滅ぼしたのか。隕石は生き残る種を選択する能力を持たないはずだ。選択できるのは適者生存の仕組みの方だ。このことから、地上生の恐竜を滅ぼした原因は適者生存の法則によると考える方が理にかなっている。

(2)恐竜の中で鳥が生き残った理由

@ 隕石衝突説で考える

 白亜紀にはかなりの種類の恐竜が繁栄していたと思われる。それが鳥以外の恐竜がすべて隕石衝突で滅びたということだ。隕石があまたの恐竜の中で鳥だけを選択して残した現象を考えてみる。

 隕石衝突が恐竜を滅ぼしたという説では、3つの理由がいわれている。

 1つは衝撃波と熱波である。2つ目は寒冷化である。3つ目は酸性雨である。

 衝撃波や熱波では、鳥は樹上にいたのだから、地上生の恐竜より、より爆風を受けることになるだろう。寒冷化では、鳥は今極地にもいるので寒さには強いようだ。しかし、シベリアから恐竜の化石が発見されているので、恐竜の中には、鳥以外にも寒さに強いものもいたのは確かだ。酸性雨にしても恐竜の中で鳥だけが酸性雨に強かったということもいえそうにない。

 以上のように、恐竜の中で鳥だけが生き残ったという現象は隕石の衝突では説明がつかない現象であるといえる。(適者生存で考えるのは後述)

(3) 哺乳類は現在につながる目がすべて生き残ったのに、恐竜は鳥以外の目がすべて滅んだ。

@ 隕石衝突説で考える

 隕石衝突では鳥以外の恐竜が滅び、現在につながる哺乳類が生き残った理由が不明である。これは上に書いた、鳥が生き残ったのに、他の恐竜が滅びた理由が不明なのと同じである。

{「哺乳類の進化」(遠藤秀紀)東京大学出版会}による。(以下{ }内は「哺乳類の進化」よりの引用)

今までの哺乳類の仲間で、{「狭義のママリア」は総計51目、絶滅種を24目としておく}{51目のうち現生目がおよそ半数の27目として,その27目は,哺乳類全体の歴史を目単位で認識するうえでとても有効なのである。たとえば,正獣類に関していえば,絶滅目はおおざっぱにいえば,中生代の初期群,新生代初めの“実験的”な小群,隔離された南アメリカで放散した奇妙な有蹄類,それにごく一部の対応するニッチェのわからない謎の目である.目の数でいえば,およそ半分が絶滅しているが,放散の実態に関しては,現生目の詳細な検討で,新生代後半の大まかな全体像に迫りうるといえよう.このことは有袋類でも大同小異である.}

 このことからわかることは、哺乳類の仲間の目の絶滅は中生代の終りの隕石衝突とは関係なく起こっているということだ。絶滅は中生代の途中でも起こっているし、新生代になっても起こっている。特に隕石衝突のときに特異的に目の絶滅が起こっているということはない。これは哺乳類に関しては、隕石の衝突ではなく、ダーウィンの適者生存による盛衰に一致しているといえそうである。

 衝撃波にしろ、寒冷化にしろ、酸性雨にしろ、地上生の恐竜だけがそれらに弱くて、哺乳類の仲間が強いという根拠はない。

(4)生き残った鳥(恐竜)が隕石衝突の影響がなくなった後、もう一度進化して地上を支配しなかったのか。

 現在の地球上では、地上を哺乳類が支配し、空を鳥類(恐竜)が支配している。

 では何故そのような現象が起こったかを考えてみる。

ア 鳥(恐竜)の進化

ダチョウなどいくらかの鳥は飛ぶことを止めて地上生活をしている。このことから、鳥も地上生活をするように進化したものがあったといえる。したがって、新生代になって、鳥も地上に降り、巨大化したりして、もう一度地上に鳥(恐竜)が君臨しても良かったはずである。ティラノザウルスにも羽毛があったということからも、鳥とティラノザウルスは近縁であったということからも、鳥が再度地上を支配してもおかしくはない。

新生代になったころは、哺乳類はまだ小さかったらしいから、鳥との競争では同じスタート地点に立っていたと考えられる。現在、鳥の方が種類数では哺乳類の倍近くいる。新しい種を数多く生んだのは鳥(恐竜)の方なのだ。中生代には、恐竜の中でも鳥の仲間がティラノザウルスのように最強の捕食者を生んでいたのだから、生き残った鳥から強い鳥が生まれても不思議ではないはずだ。時間は哺乳類と対等にあったのだから。鳥が地上を支配できなかったのは,適者生存から考えると、地上環境では鳥の方が哺乳類より適者ではなかったからではないだろうか。

a 現在の地上を哺乳類が支配している現象

 哺乳類のいない離島では、飛べない地上生活の鳥が繁栄しているという。しかし、そこに哺乳類が入ると、飛べない鳥は絶滅してしまう現象が観測されている。

 このことから、現在の地上では鳥(恐竜の子孫)より、哺乳類の方が適者生存にかなっているということがいえる。このことから、新生代には、地上では哺乳類の方が鳥(恐竜)より強かったことがうかがわれる。新生代の環境では、地上の適者は哺乳類だったから、哺乳類が、鳥(恐竜)を押しのけて地上を支配していったということがいえる。

b 鳥が空を支配している理由

 では空はどうだろう。空はほとんど鳥が支配している。哺乳類は、コウモリぐらいだ。コウモリの多くは夜行性である。猛禽類のいない離島では、昼行性のコウモリがいるという。コウモリは、昼間は、鳥に襲われるから夜行性になったと考えられる。

 理由は鳥の方が空に適応しているということだ。

 理由の一つは、鳥は気嚢を持っていることだ。気嚢は酸素取り入れの能力が哺乳類の横隔膜による肺呼吸より効率がいいといわれている。鳥の方が酸素の薄い高空でも、酸素をより効率よく取り入れることができるということだ。

第2点は、鳥は骨が中空(気嚢の一部)になっていることである。骨の中が詰まっている哺乳類より同じ大きさなら体を軽くできる。

 第3点は羽毛だ。羽毛はコウモリの被膜より飛翔に適しているといわれている。

以上のことから、鳥が哺乳類を凌駕し空を支配したと推察できる。

 このことから、現在の哺乳類と鳥(恐竜)の関係は、巨大隕石衝突があったとしても、その後の適者生存の法則によって現れた現象であるといえる。このことから、巨大隕石の衝突がなくても、いずれ、地上は哺乳類が支配し、空は鳥(恐竜)が支配している現在のような状態になった可能性があるといえる。いえば、恐竜は、隕石ではなく哺乳類に滅ぼされたということもできそうである。

(5)哺乳類は現在につながる目がすべて生き残ったのに、恐竜は鳥以外の目がすべて滅んだことを適者生存説で考える。

ア 哺乳類の台頭

 ジュラ紀になると、哺乳類が分化を始め、白亜紀の終わりごろには今につながる哺乳類の目がでそろっていたという。

 このことは、遅くとも白亜紀末には恐竜のニッチに哺乳類が進出していたということを表している。これは、白亜紀後期には哺乳類の方が恐竜より環境に適応しだしたニッチが増えていったということを表している。また、白亜紀後期になると、白亜紀末に向かって恐竜の化石が少なくなっているというデーターがある。隕石衝突説の人はこれを認めたがらないが、実際、化石は少なくなっているということだ。

このことは白亜紀後期になると、それまで、環境に一番適応していたと思われる恐竜が、哺乳類にとって代わられ出したことがうかがえる。これは恐竜や哺乳類が変化したこともあるだろうが、地球の環境が変化したということも考えられる。

では、その環境の変化というのはあったのだろうかを次に考える。

イ 環境の変化を考える

a 時代区分

 時代区分には、動物化石にもとづく時代区分と、植物化石にもとづく時代区分がある。

 古生代、中生代、新生代という区分は動物化石による区分で、植物化石による時代区分は古植代、中植代、新植代という名称だ。

 問題は、植物の代は動物の代と同じではないということだ。植物の代は、動物の代に先駆けて始まっているという。古植代は古生代の始まりより前に始まり、中植代は中生代より前に始まり、新植代は新生代より前に始まっているということだ。時代は、まず植物の変化から始まり、その後動物の変化が起こっている。これは植物の変化が動物の変化を誘発しているのではないかと考えられる。

 新植代は中生代の終りの白亜紀の半ばにはすでに始まっているということが分かっている。植物は、巨大隕石衝突で変わったのではないということだ。植物は、ダーウィン的変化、適者生存の法則で中植代から新植代に変化しているということだ。そして、動物を絶滅においやり、中生代から新生代に激変させたといわれている白亜紀末の巨大隕石衝突でも植物は変化せずに新植代のまま続いている。ここでも巨大隕石は植物には手を出さずに、動物だけを狙い撃ちしているかのようだ。

b 原因を考える

新植代を特徴づける被子植物は、白亜紀前期には出現しているのが化石からわかっている。やがて被子植物は裸子植物を追いやり新植代になる。この変化には、巨大隕石の衝突も、巨大火山の爆発も関係していない。たんに、適者生存の原理だけが影響していると考えられる。

そして、被子植物と昆虫が共進化する。それと共に、おそらく恐竜や爬虫類や哺乳類も被子植物と影響し合いながら進化したことだろう。植物の変化による新しい環境に適応しなければ滅んだろうから。現在のスギ林と、落葉広葉樹林の違いを見れば明らかであろう。シダ植物と、草の違いも明らかだ。植物が変化したことによる新しい環境に適応できなかった種は滅び動物界も植物界も変化していったはずだ。

裸子植物が被子植物に変わっていく白亜紀後期に向かって哺乳類は種類を増やしている。白亜紀末期には、現在につながる科はほぼ出そろったという。それに反し、恐竜の化石は少なくなっているということは、被子植物の環境に恐竜は哺乳類ほど適応できなかったという可能性がある。これは、隕石衝突説が主流を占める前に考えられていた説である。

新生代は、植物の新植代から遅れること6000万年後のことである。この間に新しい植物の作った環境に適応した新しい動物が進化し、新しい動物の時代が出現する準備ができていったと考えられる。隕石が衝突する前に哺乳類の出番は確実に準備できていたといえる。これは大量絶滅後に、生き残った恐竜の子孫(鳥)と哺乳類の子孫が競争し、地上で繁栄したのが哺乳類であったことからも、新しい環境には、白亜紀の末期の時代からは、地上では哺乳類の方が適応していたことが類推できる。また、鳥の進化が、白亜紀後半から顕著であったことから、空は、恐竜の方がより適応していたと考えられる。これは、地上の恐竜の一部が住みかを奪われて空に逃げた、あるいは追いやられたということも示唆している。最初、哺乳類は小型であったから、まず小型の恐竜のニッチを奪ったと考えられる。その小型の恐竜の中の鳥が空に逃げたのだろう。シイラに追われてトビウオが飛び立つように、哺乳類に追われた恐竜が空に飛び立ったのではないだろうか。そして、空を飛ぶことができた恐竜だけが、哺乳類から生き残ることができたのではないだろうか。

 

 どうしても、恐竜や、哺乳類に目がいきがちだが、植物も地球上の大きな位置を占めている生きものである。植物なくして地球の生命の循環はない。生物の大部分は、太陽エネルギーを元に生きている。すなわち、植物が、太陽エネルギーを炭水化物などの生き物が利用できる形に変え、それを草食、あるいは植物食の動物が食べ、それを、肉食の動物が食べるという食物連鎖がある。最初の植物が変化すると、それを食べる草食の生き物が変化し、その生き物に合わせて、肉食の生き物が変化するという順番である。そして動物が作る環境の変化に応じて植物もまた変化していく。環境の変化に応じて生きものは変化していくという進化論である。

 現在の植物と動物の関係を見てみよう。

 まず、昆虫との関係はどうだろう。虫媒花というのがある。花粉を昆虫が運ぶ。かわりに蜜や花粉を食料としてとる。また、葉や幹を食べ物として利用する。昆虫と植物は切っても切れない関係を持っている。この関係は植物と昆虫が生まれたときから、互いに進化してきた過程で生まれてきた関係である。

動物はどうだろう。動物も同じである。新植代の被子植物や、その後のイネ科の植物を食料にしている動物は非常に多い。一部の肉食の哺乳類や海の哺乳類を除いてほとんどの哺乳類は被子植物に頼っているといえるだろう。リスが、食料としてドングリを食べることで、ドングリを離れた場所に運んだり、鳥が実を食べることで種子を遠くに運んだりする。鳥が蜜を吸う代わりに花粉を運んだり、木を食べる昆虫を食べたりする。反対に、食べられないように、植物は、アルカロイドを作ったり、とげを作ったりする。動物はそれに耐えられるように進化する。これも長い年月をかけて進化してきた関係である。哺乳類も被子植物と共進化してきたといえる。

 このように植物の変化は、そこに住んでいる動物の変化を促す。隕石が衝突しなくても、いずれ動物の時代も、被子植物が繁栄した新植代に適応した新生代に変化しただろうということがいえそうである。隕石の影響がなくなった後の長い年月、恐竜(鳥)が再び地上を支配せずに哺乳類が支配したのは、白亜紀後期の流れの延長上にあるといえる。隕石の衝突があろうとなかろうと動物は新生代にはいり、哺乳類が地上で繁栄しただろう。

 恐竜に比べて植物は地味である。しかし、生命の進化、あるいは変化において、科学的には同等である。恐竜の絶滅は重要だが、植物の絶滅は取るに足りないということではない。恐竜が巨大隕石の衝突で絶滅し、哺乳類に変わったなら、植物も巨大隕石の衝突で絶滅し、新たな植物に変わるのが順当であろう。ところが、植物の変化は小惑星衝突以前に起こっている。反対に隕石衝突では変化は起こらなかった。哺乳類も衝突によって絶滅するのではなく、変化せずに発展している。絶滅したのは地上の恐竜だけである。

植物も哺乳類も昆虫も鳥も、地上生の恐竜と違ってダーウィンの進化論にあるように進化したといえそうである。

 

中生代

新生代

植物

   被子植物の発展→繁栄

被子植物の繁栄

動物

哺乳類の祖先の衰退→現代の哺乳動物の先祖が分化発展

恐竜の繁栄            恐竜の衰退

                  鳥出現

昆虫の繁栄

哺乳動物の繁栄

地上恐竜の絶滅

鳥の繁栄

昆虫の繁栄

考察

このことから、植物も、哺乳類も、鳥も、昆虫も巨大隕石の衝突の衝撃で絶滅することなく通り抜けていることが分かる。影響されなかったのではないかとさえ思われる。

巨大隕石の衝突で絶滅したのは地上生の恐竜だけだということだ。

いや、巨大隕石の衝突で、恐竜が絶滅したから哺乳類が繁栄した、というのが今の主流の考え方だが、そうだろうか。

巨大隕石の衝突説の最大の問題点は、どのように大きな隕石でも、生物(動物も植物も)の絶滅の種の選択はできないということだ。地上の恐竜だけを絶滅させる選択はできないということだ。それに反して、ダーウィンの適者生存説では、滅びるものと、繁栄するものが選択できる。適者が繁栄し適さないものは滅びる。恐竜が滅び、哺乳類が繁栄したのは、適者生存では説明できても、隕石衝突では説明できないということだ。

実際、白亜紀から新生代への生物の流れは、隕石衝突がなくても、新生代になっただろうという流れになっている。

ではなにが恐竜より、哺乳類の方が適者になった原因なのだろう。

哺乳類の祖先である{ハドロコディウムはジュラ紀におけるママリアよりも進歩的な側枝であったとさえ,認識することができるのである.脳容積の拡大は顕著で,単孔類や多丘歯類,後獣類と同等とされる.先述のように,脳容積の拡大と歯骨−鱗状骨関節の成立は同時に起こるという主張があったがこれは狭義のママリアの誕生を説明するだけでなく,ジュラ紀のママリアアフォルム相に多系統的に起こり得た現象として,ハドコロディウムの系統にもあてはめて解釈することができるだろう.脳幹の拡大と耳小骨の分離の関係を化石の形態から理論づけ,下顎後方の構成骨分離と耳小骨の確立を,年代的にジュラ紀前期とする見解がまとめられて一定の説得力を得ている.}

耳小骨は、哺乳類と、爬虫類や恐竜との大きな違いである。哺乳類を特徴づける骨の変化である。これと、脳幹の拡大が同じに起こっていることは、脳幹の拡大も哺乳類の大きな特徴であると考えられる。

脳幹の拡大は、環境に対する適応力を高めたと考えられる。これこそ、哺乳類が、恐竜に対して戦いえた最大の力ではないだろうか。

 

仮説

ここで、このことからの仮説を考えてみる。

中生代にはいって、最初は、哺乳類の祖先である、獣弓類が優勢になったが、やがて、恐竜が優勢になり、大型獣弓類は滅び、哺乳類は小型化し夜行性となる。これは、哺乳類の祖先が恐竜に昼の陸上のニッチを奪われたためであると考えられる。その後、ジュラ紀、白亜紀ととおして恐竜の全盛時代が続く。一方哺乳類も中生代を通して進化が続いていた。そして、白亜紀半ばに植物が新植代に入り、裸子植物から被子植物に変わり、大きな環境の変化が起こった。それにつれて、哺乳類がニッチを広げ、まず小型の恐竜を追いやった。そのために、小型恐竜の中の鳥が、空に逃げ、独自の発展を遂げる。やがて、哺乳類は少しずつ大型化し、地上生の大型恐竜の卵や子供を食べるようになる。このことで、大型恐竜は急激に滅び、新生代にはいることになる。

白亜紀後期に向けて、哺乳類の台頭が始まり、それが、ある時点で、一気に恐竜を滅亡させたというのはどうだろう。我慢に我慢を重ねていたのが一気に崩れおちたという考え方だ。それが数万年間で起こったということは可能であろう。それまで食料にしていた大型恐竜が滅びたことで、その子供や卵を食料にしていた哺乳類も一時的に激減した。

このストーリーだと、地上生の恐竜だけが滅びたことの説明ができる。また、恐竜の中で鳥だけが生き残ったことの説明もできるし、その後も、鳥が地上に降りて繁栄できなかった理由も説明できる。

これは、書いたように、地上生の恐竜が、哺乳類に地上のニッチの奪い合いに負けて地上から姿を消し、恐竜の一部が空に追いやられ、空は、鳥の方が優勢適応していたから鳥は繁栄したということで適者生存で説明できる。

海の中でも巨大な爬虫類が滅んでいる。そのかわりに、クジラなどの巨大な哺乳類が繁栄している。これも適者生存でも考えられる現象である。

地上と海、ともに、哺乳類が進出した。これも、巨大隕石が哺乳類にえこひいきした結果であるということではないと思われる。哺乳類が何らかの原因で、新しい環境(新植代)に、恐竜や海の爬虫類より適応できたからだと考えることもできる。

 

恐竜が、隕石衝突のような天変地異で激変したなら、植物も天変地異で激変したと考えられるがそれはない。哺乳類も多くが滅びたと考えて当たり前だ。すると、隕石衝突前に哺乳類が分化していたというのは、つじつまが合わなくなってくる。恐竜では鳥しか残らなかったように、ほとんどの哺乳類も隕石衝突で滅びて生き残った1種か2種の哺乳類が新たに分化して増えていくことになるはずだ。そして、細々と生き残った恐竜と、やはり細々と生き残った哺乳類が競争して、適応した方が繁栄することになる。適者生存である。しかし、そうではないようだ。上記「哺乳類の進化」に{批判を受けることを承知で思い切った言い方をすれば,「たまたまではあるが,哺乳類の歴史上重要な諸目の大半がしっかりと生き残っている」と表現してよいのかもしれない。}とあるように、地上では、隕石衝突はなぜか哺乳類には手を出さず、恐竜だけに甚大な被害を与えているようだ。植物と動物では違うし、恐竜と哺乳類では違うけれど、隕石が恐竜だけに的を絞ったということは変な話だ。いや、海でも、様々な動物が滅んだというだろうけれど、それでも、隕石衝突による被害が陸上の生き物に選択的に働いた理由の説明にはならない。

今の、恐竜絶滅の原因は隕石衝突であるという考え方は、何としても激変説、天からの雷、神の一撃である隕石衝突に結び付けようとしてその証拠を探そうとしているかのように見える。科学的に公平に原因を探ろうとしているようには思えない。

もちろん、巨大火山の噴火や隕石衝突等による、環境の変化も大いに影響することは考えられる。しかし、ダーウィンの進化論の適者生存は、生き物がつくりだす環境の変化も大いにかかわっている。

今のところ、植物が、中植代から新植代に移行した原因は隕石の衝突とは関係ないところで裸子植物から、被子植物への移行がなされている事から、それに伴って起こった環境の変化が、恐竜から、哺乳類への移行の原因である可能性が高いといえそうである。

 では何故哺乳類が、恐竜より、地上では適者であったのか。これは不明である。隕石衝突がまずあるから、適者生存説は捨てられ、研究している人も無いのであろう。

 ただ、恐竜と、哺乳類の祖先が、爬虫類から分化したとき、まず、哺乳類の祖先が大きくなって優位に立っている。その後、恐竜が覇者となって、中生代の地上を支配している。それが、また、逆転して、新生代の哺乳類優位の世界になっている。この間の地球環境の変化が大きな影響をしていることだろう。それに大きくかかわっているのが、呼吸機能と知能の違いではないかと考えている。恐竜は呼吸器官で酸素取り入れ能力が哺乳類より高い。一方、知能では恐竜より哺乳類の方が高い。(知能が哺乳類の方が高いというのは推測である)酸素濃度が低い時代は、呼吸機能が優位な恐竜が哺乳類を凌駕し、酸素濃度が高い時は、知能が優位な哺乳類が恐竜を凌駕したと考えたらどうだろう。中生代は、炭酸ガス濃度が高く、地球が温暖化していた時代だという意見もある。鳥が、酸素の薄い空でも敏捷に動くのは恐竜から受け継いだ、気嚢システムのおかげだということだ。

 炭酸ガスが多くて酸素が少ない世界では、哺乳類は、苦しくて敏捷には動けなかっただろう。一方、恐竜は平気で動きまわれただろう。それが被子植物の繁栄で炭酸ガスが減り、酸素が増えると、知能に応じた敏捷性や、行動能力が発揮でき、恐竜を上回った哺乳類が恐竜を凌駕していったのではないだろうか。これは憶測である。

 

終りに

生物の時代は、まず植物の時代が替わり、その後、動物の時代が替わっている。植物の代替わりには、巨大隕石の落下や、巨大火山の爆発はいわれていない。動物の代替わりばかりが大きな天変地異が原因であるといわれているのはなぜだろう。

 植物が、古植代、中植代、新植代と変化したのに遅れて、動物の代も、古生代、中生代、新生代と変化している。明らかに連動している。

動物の生きるためのエネルギーは、ほぼすべて植物に始まることを考えると、この植物の変化が動物の変化を誘引したことはほぼ確実であろう。

 植物の変化が、天変地異と関係なく起こったとするなら、動物の変化も、天変地異とは関係なく、植物の変化による環境変化て起こっても不思議ではない。

 たとえば、初めての植物、シアノバクテリアが生まれたために、地球に酸素が増え、それまでの嫌気生の単細胞生物から好気生の単細胞生物に入れ替わり、酸素をエネルギーに利用する生物が生まれた。大きなエネルギーの代謝システムを生物が手に入れたことで、生物は大きく進化することになる。火山や隕石による天変地異ではない。生物自らの変化が、全体の変化を生んだのだ。また、陸上に植物が進出したことによって、動物も陸上に進出することができた。植物の変化が大きく地球環境を変えたことによって、動物もまた大きく変わっている。

このように、植物の変化による、食物連鎖の変化や環境の変化によって動物は変化していったのではないだろうか。植物代が常に、動物の代に先行していることはこれを表しているのではないだろか。

植物の代が、動物が絶滅したといわれるような火山の爆発や、隕石衝突には何の変化も起こさず、適者生存的に変化しているように、動物もまた適者生存で変化していっているのではないだろうか。ただ、それでは大量絶滅がなぜ起こったかは説明ができないのが現状だが、植物も、動物も、ほとんどの時間が適者生存の原理で変化していっていることや、上に書いたように大量絶滅を挟んでも適者が生存していることから考えると、新しい種の急激な台頭によって、絶滅がおこったという可能性はないのだろうか。たとえば、哺乳類が台頭して、小さな恐竜を滅ぼし、一部を空に追いやった後、大きな恐竜の卵やこどもを食べつくして恐竜を数万年で滅ぼしたとか。

不必要な機能や能力はエネルギーの無駄だから発達させないのも適者生存の一つであるから、低酸素世界に呼吸器官で一番適応していた為、他の能力はおざなりになっていた恐竜と、呼吸器官では不適応だったために他の能力を発達させるしかなかった哺乳類が、酸素濃度が高くなったとき、その他の能力を持っていた哺乳類が新たな環境に適応していって恐竜を凌駕したということも考えられる。

この考えは憶測にすぎない。しかし、適者生存では大量絶滅は今のところ上手く説明できないけれど、隕石衝突でも、やはり、中生代から新生代になった時に恐竜だけを地上から絶滅させた理由は説明できないし、現在につながる哺乳類の目がすべて生き残ったことも説明できない。ともに真の理由とするには根拠が足りない気がする。

ご教授を。