へいこく雑記帖
インフレーション宇宙の速度

「宇宙論入門」(佐藤勝彦著・岩波新書)についての疑問

― インフレーション宇宙論への疑問 ―

 

著者 田 敞

(以下{ }内はこの本からの引用)
2023,1,25

 

まえがき

 このまえがきは直接にはこの本とは関係ないことです。

 19世紀ヨーロッパの教会が学問を奨励したということです。大学の始まりになったということです。目的は神の作ったこの世界の仕組みを科学で見つけることだったということです。ニュートンも、神の法則を解き明かそうとして研究をしていたということらしいです。

 その科学の目的の大きな一つに、神が宇宙を創造した仕組みを見つけるということもあったそうです。そしてルメートルという、牧師で科学者がビッグバン理論の元を造りました。キリスト教の人たちは、科学で天地創造が証明されたと喜んでいます。

この本では、ビッグバン理論の不備を補うために、インフレーション宇宙論を提案しています。もちろん、科学者ですから、この宇宙を神が作ったとは言っていませんし、神とは関係ないと言っています。しかし、ビッグバン論と同じようにキリスト教の天地創造にはうってつけの理論であることは言えます。

 どのような点が天地創造に似ているかというと、「無」の中に、突然火の玉ができ、それが膨張してこの宇宙になったというところです。これがなぜキリスト教会に歓迎されたのかというと、「無」という宇宙の一部にわれわれの住む宇宙ができたということです。「無」の宇宙は神の住む宇宙と解釈できます。神の住む宇宙とわれわれの住む宇宙との2重構造です。この二重構造はキリスト教にとってとても大切なことです。中世、プルーストという人はこの宇宙が無限であるという1重構造を述べて火あぶりになりました。宇宙がわれわれの住む宇宙だけだと神の住む場所がなくなるからです。間接的に神を否定することになったからです。キリスト教にとってこの2重構造はとても大切なことなのです。

 この本にある、プレーン宇宙やマルチバース宇宙もわれわれの住む宇宙が有限であるという理論です。その外に神の住む宇宙が広がっているということを暗に示唆しているということです。もちろん直接には神の住む宇宙があるとは言いません。科学者を疑われることになるからです。しかし、宇宙論者にはどうしても2重構造の宇宙が必要なようです。

 キリスト教の基本となる宇宙の2重構造を裏付けるのが現在の宇宙論であると言えます。

 インフレーションにしろビッグバンにしろ、火の玉で宇宙が始まっています。形としても、神が「光あれ」と言ってこの世界ができたという天地創造にぴったりです。ルメートルという牧師が提唱したビッグバン宇宙論は科学者だけでなく多くの人に受け入れられています。そのビッグバン理論が発展したのがこの本にあるインフレーション宇宙論です。そこで、インフレーション宇宙論を考えてみます。

 

 

問題 アインシュタインの重力場について

{物質を入れていた時空という入れものが変形してしまう}(P16)ことから重力が生じると述べている。

その仕組みを、{たとえるなら、ゴムで作った網のようなものである、何もあみの上にないときは、網はきれいな碁盤の目のようであるが、そこに何か質量の大きいものを置くと、網は下にたわんでしまう、その近くに小さな物体を置くと、それもわずかにこの網を下にたわませるが、それより質量の大きい物体が大きく網を下に引きずりおろしてしまうために、小さな物体はそちらに転がっていってしまうことになる、この作用がニュートンの万有引力である。}

考察 時空の変形の原理

{物質を入れていた時空という入れものが変形してしまう}ということだ。時空はどういう原理で変形してしまうのだろうかを、この本で述べている仕組みで考えてみたい。

時空とは空間と時間が合わさったものだという。しかし、空間がなにか実質があるものであることは観測されていない。このことから、空間は実質的になにもないということが分かる。なにも無いものが変形するというのは「なにもない」が変形して「変形したなにもない」になることである。「変形」というが、なにもないものに実質的な変形があるのだろうか。もちろん、実際には直接の観測は存在しない。

重力レンズがその証拠と言っているが、それは間接的な証拠であって、直接の観測ではない。アインシュタインがそう言っているだけだ。(重力レンズが空間の変形の証拠にならないことは後述)。

 では時空の一部、「時間」はどうだろう。物質がどのように作用して時間を変形させるのだろう。変形した時間とはどんな形をしているのだろう。その仕組みも述べていない。

 それらが合わさった「時空」が変形すると言っているのは、言葉を言い変えて分からなくさせて、あたかも変形があるように思わせているだけだ。言葉のごまかしであると言える。科学に必要なのは実証である。言い変えではない。

 その仕組みがゴムの網で説明されている。それについて検討してみる。

{そこに何か質量の大きいものを置くと、網は下にたわんでしまう}

 というのが時空が変形する仕組みのようだ。

 しかし、これは時空が変形する仕組みの説明にはなっていない。ゴム網が下にたわむのは、地球とゴム膜に置いた物体とが万有引力で引き合うからだ。置いた物体の質量がゴム網をたわめたのではない。この仕組みをそのまま太陽に当てはめると、時空に置いた太陽が下から何かに引っ張られて時空を変形させたということになる。太陽を下から引っ張るものは存在しないから、このゴム網の比喩は時空の変形の説明にはなっていないと言える。

ゴム網の実験を宇宙空間で行うと、網はたわまない。万有引力と遠心力が釣り合っているからだ。ゴム膜がたわむのは地球と置いた物質が引力で引き合っているから起こる現象で、質量のある物質が、質量があるからというだけでゴム膜をたわめているのではない。したがって、空間が物質によって変形するということとはまるで原理が異なる現象であるから、このことで物質が空間をたわめる原理とすることはできない。

{その近くに小さな物体を置くと、それもわずかにこの網を下にたわませるが、それにより質量の大きい物体が大きく網を下に引きずりおろしてしまうために、小さな物体はそちらに転がっていってしまうことになる、この作用がニュートンの万有引力である。}

 {小さな物体がそちらに転がっていってしまう}のは、小さな物体と地球が万有引力で引きあっているからである。ゴム網がたわんでいるからではない。もちろん「質量の大きい物体」が小さな物体を引っ張っているからではない。宇宙ステーションの中でこの実験をして見れば分かる。ゴム網はたわまないし、手でひっぱってたわませても、小さな物体は転がらない。大きな物体が網をたわませたから小さな物体が転がったわけではないことが分かる。大きな物体は関係ないのである。すべては地球の引力のなせる業である。ゴム網の実験は地球の万有引力が無ければ成り立たない実験であるから、これで万有引力を説明することは間違いである。

 このゴム網の比喩を太陽と地球に当てはめると、太陽が地球を引っ張っているのではなく、謎の引っ張る力がどこかから地球を引っ張っているので、やはり謎の引力に引っ張られた太陽がつくった時空の曲がりに沿って動いているということになる。謎の引力が必要ということだがそんなものは存在しない。

{このような時空のゆがみによって力が引き起こされているのである。}

 では実際の空間はどうだろう。もしアインシュタインの言うように物体が空間をゆがませるとする。その近くに小さな物体を置くとどうなるだろう。動くだろうか。動くにはエネルギーが加わらなければならない。そのエネルギーはどこから湧いてくるのだろう。{時空のゆがみによって力が引き起こされている}というが歪みはどのようにして力を引き起こすのだろう。その原理は述べていない。下に転がり落ちるというのはゴム網のところで述べたように小さな物体が転がったのは地球の万有引力の力であって、ゴム膜がたわんだためではない。たわみには力は存在しない。

ゴム膜の比喩で言っているように物質は重いからへこみに落ちるという考えなら間違っている。それはニュートン以前の、リンゴは重いからへこみに落ちるという考えである。その考えを否定したのがニュートンの万有引力の考えであるから、重いからへこみに落ちるという考えにのっとってニュートンの万有引力を説明することはできない。もし大きな物体が引力を持っているなら、空間がゆがまなくても小さな物体は引きつけられる。ゆがみは必要ない。

物質に引力が無ければゆがみも上下も存在しない。ゴム網がゆがむのも小さな物体が転がるのも万有引力が先にあるからである。万有引力がなければ何も起こらない。アインシュタインが言うように物質が空間をゆがめたとしても、それだけでは力は生まれない。

アインシュタインが、物質は重いからゆがみに落ちるという、りんごは重いから落ちるという考えに戻したのは間違いである。

また、これを太陽と地球で考えてみよう。太陽が重いから空間をたわませるということだ。ゴム網の比喩だと、物質はゴム膜に支えられている。時空のゆがみもこれと同じ仕組みなら、時空が落ちる太陽を支えていることになる。地球はどうだろう。ゴム網に沿って転がり落ちるということだから、地球もやはりゴム網が小さな物体を支えたように、時空でできた坂にささえられて、それに沿って落下していることになる。これから考えられることは、時空は何もないのではなく、重い物体や小さな物体を支えたゴム膜のように、太陽や地球を支え、動きに決定的な作用をする強靭ななにかであるということになる。

ゴム網は下にしかなかったが、時空は地球を取り巻いている。すると、地球の公転は前方にある強靭な時空にぶつかり、これを押しのけて進んでいることになる。ところがそのような現象は観測されていない。地球の公転はケプラーの法則で説明でき、そこには地球がぶつかっている時空の力は存在しない。時空は地球の下では坂になっていて、地球をころがり落としているが、前方には何もなくて地球は自由に進んでいるということになる。矛盾がある。このことからも、ゴム網の比喩では引力は説明できないことが言える。すなわち{物質を入れていた時空という入れものが変形してしまう}ということの説明はゴム膜の比喩では何一つできていないから、ゴム膜の比喩は間違いであると言える。もちろん、科学なら、比喩ではなく直接時空の曲がる原理を説明しなければならないはずだ。なぜかそれがない。

 

問題 {宇宙項―斥力の重力}

{重力は、別名、万有引力と言われ、常に引力(引き合う力)であって斥力は存在しない。}

考察

 上に書いたように重力と万有引力は根本的に違う考えである。

(リンゴは地球と万有引力で引きあってくっつく。リンゴは地球が作った時空の曲がりに落ちる。仕組みがまるで違うのである)

 引力は引き合う力であるから、離れた物体はポテンシャルエネルギーを持つ。引力が力であるからである。離れた所にある物質は引力により加速して接近する。衝突すると跳ね返って元の距離まで離れる。すれちがっても元の距離まで離れる。ポテンシャルエネルギーは引力が生んだ斥力と言える。万有引力は、引力と共に、ポテンシャルエネルギーという斥力をも生み出していると言える

 ではアインシュタインの重力はどうだろう。重力は物質がつくった時空のへこみに重いから落ちるということである。ここには引力はない。重いから落下するだけだから、斥力は生まない。ポテンシャルエネルギーの存在を規定するものがない。そこで、{では、どうすれば宇宙の収縮を押し返す力を方程式に含めることができるのか?これまた単純である。アインシュタインの方程式に斥力となる項を加えるだけでよい。}ということである。ほんと単純である。方程式とはそんなものでいいのだろうか。つじつまを合わせるために根拠がなくても何でも加えればいいのだろうか。

数式は科学者の思うままになる。自分に都合のいい項をちょこっと1字か2字書きくわえればいい。ところが現実はそうはいかない。人が都合がいいからと言って、勝手に現実になにかを加えたり引いたりできない。そこで、ほんとはあるんだけどそれは見えないだけだということにする。謎のエネルギーだ、ということにしてしまう。ほんと簡単なことだ。後に真空のエネルギーと名前は変わったが、謎のエネルギーであるという本質は変わらない。式には必要でも自然界には存在しないから、見えないことにする。単純なことだ。

 これについて、{宇宙項は、いわば空っぽの空間どうしが互いに押し合うという奇妙な斥力である。}(P22)と述べている。確かに奇妙な力である。空っぽの空間がどのようにして押し合うのだろう。空っぽの空間のどこに空っぽの相手を押す何かがあるのだろう。また押される何かがあるのだろう。なにもないものが押し合うなどということはできないはずだ。幽霊とお化けが押し合う方がまだ現実味がある。身近なことで考えてみよう。私の家の空間が膨張し、となりの家の空間が膨張し、境界線で押し合っている。空間はどちらに行けばいいのだろう。そこに行くと両方から押されるのだろうか。圧縮熱は出るのだろうか。地球の周りの空間が膨張する。月の周りの空間が膨張する。間でぶつかって押しあっている。どちらに行くのだろう。大きい地球の空間が、小さい月の空間を押し勝つのだろうか。作用反作用はあるのだろうか。

押し合うには押し合う何かが必要である。空っぽの空間には押し合うものも空っぽのはずだ。あるなら空っぽではない。もちろんこんなことは観測されていない。

式に勝手に文字を付け加えることは簡単だ、文字は紙とインクという実態があるからだ。しかし、空間には実際のものは無い。だから、どのように空間が押し合うのかの説明はできないから、その仕組みを説明していない。謎の斥力だ、で済ましている。適当もいいところだ。

 

問題 {宇宙は無限か}

 宇宙は無限ではないことを述べている。閉じた宇宙は{有限であるが「果て」は存在しない}と述べている。開いた宇宙では{空間は無限に広がることが可能である。}と述べているが、4次元や5次元を持ちだして開いた宇宙も{有限な閉じた空間である}と述べている。

 地球は有限である。しかし、そのうえを歩いて行くと果てしなく回ることになり、有限であるが果てはないということになるらしい。宇宙も真っ直ぐいっているつもりでも5次元とか6次元の周りをまわって元に戻るというわけだ。なんとしてもこの宇宙が無限に広がっていることを避けたいようだ。

 4次元や5次元は観測されていない。理屈の中に存在するだけだ。架空のもので現実は証明できない。4次元や5次元が事実であるなら、それを実証しなければならない。この後、10次元や11次元を持ちだして、プレーン宇宙なるものも提案している。4次元や5次元では足りなくて10次元や11次元に変えている。そのくせ、10次元なのか、11次元なのかも決められない。ひとつ次元が変われば世界はまるで変わる。3次元が4次元になったらどのように世界が変わるか考えることさえできないくらい変化するのだ。それなのに、平気で10次元だ11次元だといっている。4次元や5次元から一気に10次元や11次元に変えている。まるっきり適当なのである。宇宙項と同じように自分の論理を正当化するためには何だって都合次第で出てくるのが、ビッグバン宇宙論のようだ。

 ところで、なぜこの宇宙が無限であったらだめなのか。昔、プルーストという人が、宇宙は無限に広がっていると言って、キリスト教会によって火あぶりにされた。理由はこの宇宙が無限に広がっていると、神の住む宇宙がなくなってしまうからだ。間接的に神を否定することになるから、火あぶりにされた。同じころガリレオが地球は動いていると言って、軟禁された。なぜ火あぶりにならなかったかというと、地球が動いても神の住む場所を否定したことにはならないからだ。

ところで、有限な宇宙の外はどうなっているのだろう。インフレーションは、「無」の中のなにかの揺らぎから生まれたということだ。そして、インフレーションは急激に膨張したということだから、無の広がりの中でこの宇宙が膨張したことになる。この宇宙の外に、「無」という宇宙が広がっているということだ。この「無」はどれくらいに広がっているのだろう。この宇宙が130億光年と広がっても壁に突き当たらないことから、少なくともそれ以上には大きく広がっているということになる。その「無」には果てはあるのだろうか。それともその「無」も何次元かの膜になっていて有限な閉じた「無」になっているのだろうか。

 今なぜ理論にはあっても現実には存在しない4次元や5次元や10次元や11次元を持ちだして、この宇宙は有限であると言わなければならないのだろう。解釈次第では、有限の宇宙を取り巻く「無」という宇宙はキリスト教会では神の国になる。神の国の存在にはとても重要な理論なのだ。

この宇宙は無限であると言っても火あぶりにはならないのに。それとも、学会から白い目で見られるのかな。

 

問題 ハッブルの法則

銀河の赤方偏移から、ハッブルの法則が導かれた。その原理を説明している。

赤方偏移は、{銀河や星が私たちから、遠ざかっていることを示す。}理由は{ドプラー効果である。}

{銀河の後退速度が距離に比例するという「ハッブルの法則」である。}

考察

 ドップラー効果でどの銀河も地球から後退していると述べている。これでは、地球はじっとしていて、すべての銀河や星が遠ざかっているということになってしまう。地球が宇宙の中心ということになる。これでは困るから次のように説明を変えている。

{宇宙には中心が無く、銀河が互いに距離に比例した速度で一様に遠ざかっていることを意味する。}といっている。

 ご都合主義である。後退速度やドプラー効果からはこれは出てこない。

 そこで図1−9で風船の表面に銀河を書いて、風船が膨らむと銀河どうしが離れると絵に描いて説明している。それだと地球からすべての銀河が遠ざかることになるのだが、地球が宇宙の中心でもなくなる。うまい説明である。しかし、これは宇宙に適用はできない。絵の銀河は風船の表面に書いてある。風船は中に空気を入れて膨らませている。だから、風船の表面は風船の中心から外に向かって移動していることになる。この原理を宇宙に適用すると、3次元の宇宙空間が風船の表面になり、3次元の中に4次元目5次元目があってそこに空気の代わりのなにかが入りこの宇宙が外に向かって移動することでこの宇宙が大きくなっているということになる。今のところ、観測できた半径130億光年の宇宙には風船の空気のように何かがこの宇宙の真ん中に入ってこの宇宙を宇宙の外側、4次元目に膨らませているという現象は観測されていない。

この本にはプレーン宇宙という理論が書かれている。10次元や11次元の宇宙の表面がこの3次元宇宙であるという理論だ。10次元や11次元が風船の空気で、この3次元宇宙が風船のゴムということだ。ところが、この理論では10次元や、11次元は、小さく丸まってミクロの大きさだという。ということは多次元宇宙が膨張して、この宇宙を風船のように膨らませているのではないということだ。

また、ビッグバン論では、高温高圧だから爆発したことになっていて、風船のように中に何かが入って膨らんだのではない。

このように、現象が異なるし理論もないので風船が膨らむ現象では{銀河が互いに距離に比例した速度で一様に遠ざかっている}ことの説明にはならないと言える。

 そこで他の人は、空間が膨張すると言っている。

 この本が言うように空間膨張があるとして考えてみよう。例えば、A、B、Cの銀河が並んでいるとする。A,B間の空間が膨張する。また、B,C間の空間が膨張する。真ん中のBは両方から押されてつぶれてしまうことになる。空間の膨張は銀河団を高速で動かすほどの巨大な圧力を持っていると言っているから、真ん中の銀河はその圧力に耐えられなくなるだろう。これはA,B,C,D,の4つの銀河でも同じだ。真ん中のB,C間の空間は周りの空間の膨張圧力に耐えられないだろう。これは多数の銀河間でも同じだし、多数の銀河団間でも同じことが起こる。空間どうしが押し合う場合は風船のようにはいかないのだ。なぜなら、風船は中に空気が入りその圧力で表面が外側に押し出されることで銀河間が伸びる仕組みだから、圧力は表面に書かれた銀河間ではなく外側にかかっているからだ。絵に描かれた銀河間は伸ばされるだけで互いに押し合うことはない。ところが、宇宙は空間自体が膨張するということだから、宇宙の外側に膨張するのではなくお互いが押し合うことになるから、圧力は互いにかかってくる。銀河間の空間が膨張すると空間そのものが押し合いへしあいになるから銀河がつぶれてしまうことになる。

力のかかり方が風船と宇宙ではまるで違うのである。風船の比喩は宇宙膨張を表しているとはいえない。ゴム膜に銀河を複数書いて、それを両側から引っ張って、空間膨張の仕組みだと言っている人もいる。しかし、ゴム膜は外から人が引っ張っている。これも押し合う力ではない。引き伸ばされる力だ。これも空間が押し合って膨張しているという宇宙空間の膨張の仕組みを表しているとはいえない。

 もし空間膨張で宇宙が広がっているとしたら、地球はつぶれてしまう。すべての銀河が地球から後退しているというのが観測結果だ。すると空間はすべての銀河を地球から反対方向に押しやっているのだから、その反作用で、全方向から空間膨張の力が地球にかかってくる。銀河を押しやっている力である。その反作用がかかってくれば地球などひとたまりも無くつぶれてしまうだろう。

これはドプラー効果ですべての銀河が地球から遠ざかっているという観測結果をそのまま使うと地球が宇宙の中心になってしまうから、これでは困るので、空間膨張が原因としたことに原因がある。その根本原因は{ドプラー効果ですべての銀河が地球から遠ざかっている}としたことである。この解釈が間違っていたからである。

では銀河の赤方偏移の原因は何なのだろう。

空間膨張は銀河の赤方偏移のようには直接観測されてはいない。地球が宇宙の中心であっては困るから、無理やり創り上げた理屈だからだ。なにも無い空間が膨張したり巨大な銀河を押しやったり、空間どうしが押し合うなどという荒唐無稽な現象があるわけがない。銀河の赤方偏移は、何人かの科学者が気づいている、宇宙の塵やガスに光が衝突して赤方偏移していることが原因であるとすれば、日常普通に起こっている現象として矛盾なく説明できる。光が物資と衝突すると赤方偏移することは日常身の回りでいつも起こっている現象である。また、銀河の光が宇宙空間で分子に衝突しているのも、銀河の光のスペクトルの観測から実証されている。この二つの事実だけで、銀河の赤方偏移は、光が宇宙空間のガスや塵に衝突して赤方偏移していると言える。これだと衝突した光はそのエネルギーを衝突した塵の熱を上げることでエネルギーを下げるので、エネルギー保存則にも反しない。(この塵の熱が宇宙の2.4kの宇宙背景放射と呼ばれている光である)ところが、空間膨張で光がエネルギーを下げる(赤方偏移)ときは減じたエネルギーはどこに行ったかという問題が生じる。エネルギー保存則に抵触する。

塵に衝突することで赤方偏移するとなると宇宙は膨張しないことになる。ビッグバン論が間違いになってしまうから、これを言われた科学者は、非科学的な理由、ガスに衝突したら銀河はぼやけるはずだ、ぼやけていないから衝突はしていない、とかで無理やり否定している。衝突していることがスペクトルで証明されているにもかかわらずである。光が物質に衝突すると赤方偏移するということは観測事実である。理論もある。空間が膨張している、という、観測も理論も無い現象とは違う。

 またこの図にはふたつ問題がある。ひとつは風船の表面に書いた波模様だ。これは光の波のつもりだろう。風船が大きくなる(宇宙空間が膨張する)と波が大きくなる、これは波の間隔が大きくなるということだから、空間が膨張すると光が赤方偏移するということを表したつもりなのだろう。この絵の問題は、波光も高くなっていることだ。波高が高くなると光は強くなる。遠い銀河ほど明るくなるということになる。実際の宇宙とは一致しない。波高が高くなるのが間違いなら、波長が伸びるのも間違いになる。この図では宇宙膨張によって光が赤方偏移することの説明にはならないということだ。

 もうひとつは、銀河の絵だ。銀河間は広がっているが、銀河自体は、風船が大きくなっても大きくなっていない。実際の風船では銀河の絵自体も広がる。理論の都合で、実際の風船では起こらないことを書いている。このことも風船では宇宙空間の膨張を説明できないことを表している。

 銀河が広がらないことの説明は、空間膨張の力より重力が強くて銀河は膨張できないである。そうだろうか。今、230万光年離れているアンドロメダ銀河と銀河系は重力のために接近しているという。230万光年離れていても空間膨張の力より重力の方が強いということのようだ。では、両銀河ができたと言われている100億年前を考えてみよう。このころ、ビッグバン論ではできてから37億年だから宇宙は非常に小さかったはずだ。アンドロメダ銀河と銀河系は今よりはるかに近くにあったことになる。するとそのときには、互いの重力が今より強く働き、ハッブル定数によると膨張速度は距離に比例するということだから、真空のエネルギーの作用は今より小さかったはずだ。それなのにそれから100億年かけて、両銀河は今の距離以上に離れたということになる。それから互いに近づきだしたということだ。互いの重力が強く働き膨張力は弱いときに離れていき、互いの重力が弱くなって膨張力が強くなってからまた重力で接近しているということになる。つじつまが合わない現象だ。

宇宙には衝突している銀河がたくさん見つかっている。これらの銀河も100億年前近くにあったときは空間膨張で離れていき、その後遠くなってから重力で接近して衝突していることになる。不可思議な現象である。

ではもっと過去ならどうだろう。宇宙が半径230万光年の大きさだったときは宇宙の全銀河がその中に詰まっていたはずだ。宇宙は重力で膨張出来ないはずだ。ところが膨張したという。矛盾している。直径1億光年の宇宙のときでも、全銀河がその中に入っていたら、重力で膨張出来ないだろう。

 風船の比喩では説明できないことばかりである。

 

問題 フリードマン宇宙とルメートル宇宙

 大砲の弾を打ち出すことで宇宙の膨張と収縮を説明している。弾を撃ちだす力が脱出速度より弱いとやがて弾は落下する、強いと宇宙をどこまでも飛んでいくということだ。

 初速度の速さが宇宙の膨張と収縮を支配しているという意見だ。宇宙は最初に巨大な力で爆発したということである。宇宙項とか、真空のエネルギーとかで膨張しているという考えとは異なる。いったいどちらなのだろう。

 1点から爆発で膨張したら、宇宙には中心ができる。中心は爆発地点である。初速度が足りなくて宇宙が収縮するときは{ビッグバンを逆にたどるような過程を経て、密度無限大の「特異点」で最期を迎える。}とあることからも、宇宙には中心があるということを示唆している。

 また、爆発で宇宙が広がっているなら、地球と同じ方向に飛んだ銀河は地球との相対速度が遅く(=銀河の速度−地球の速度)、反対方向に飛んだ銀河とは相対速度が速くなる(=銀河の速度+地球の速度)はずだ。ところがそんな現象は観測されていない。ビッグバン論の根拠となったハッブルの銀河の赤方偏移はどの方向も同じである。そこから後退速度や、空間膨張が出てきたのがビッグバン論だから、この初速度と脱出速度の考え方とは相いれない。

 ルメートルは宇宙項を基に考えているので、今の真空のエネルギーが宇宙を膨張させているという考えと同じようだ。しかし、{「原子の原子」から宇宙が始まったと論じた}ということなので、やはり始まりの1点が宇宙の中心になることになる。

宇宙が原始の原子であったとき真空は非常に小さかっただろうから、ほとんど真空のエネルギーは無かったはずだ。真空のエネルギーは増えも減りもしないと言っている。真空が増えるので全体の真空のエネルギーが増えるということのようだから、原始の原子のときの宇宙に宇宙全体を爆発させたり、膨張させたりする真空のエネルギーがあるわけがない。このことから、最初は高温高圧の火の玉が、高温高圧によって爆発したと云っているのではないだろうか。

 このときの爆発と、ハッブルの法則はどのように関係があるのだろう。爆発で飛び散ったなら、飛び散る速度は慣性の法則で一定になる。初速度より速くなることはない。距離によって速度が変わることもない。いつ、爆発から宇宙項による空間膨張に変わったのだろう。それを述べている人はいるのだろうか。この本には載っていない。

 

問題 ビッグバン宇宙

1 根拠

{現在の宇宙が膨張しているということは、過去にさかのぼると銀河がひしめき合っていた時代があったことになる。さらに遡ると、狭い空間に物質が押し込められていたはずである。膨張の際に物質は運動エネルギーを失うから、過去においては物質の運動エネルギーが大きい、高温の状態であったはずである}

{宇宙は非常に密度が高く、高温の火の玉状態で誕生した}

2 考察

(1){過去にさかのぼると銀河がひしめき合っていた時代}の銀河はどのようにして遠く離れていったのだろう。

上に書いたように、銀河の引力で衝突している銀河がある。アンドロメダ銀河と銀河系のように230万光年離れていても互いの引力で接近している。ひしめき合った銀河は引力で引きつけ合って、現在のようには離れることはできないはずだ。

(2){さらに遡ると、狭い空間に物質が押し込められていたはずである。}

 すべてがそのまま遡るという根拠はあるのだろうか。昔、精子の頭の中に縮こまった人が入っているという理論があった。それと同じで、現在の宇宙が圧縮されていたという考え方だ。それは間違いである。人は最初の卵子と精子から、他からの物質やエネルギーを徐々に取り入れて大きくなって現在に至っている。それと同じように、宇宙も徐々に物質が生まれて現在に至っているということも可能である。宇宙のすべてが一瞬で火の玉となって生まれたという可能性があるなら、少しずつ長い時間をかけて粒子が生まれ続けて現在に至っているということも可能である。最初は火の玉であったという根拠は存在しない。

(3){過去においては物質の運動エネルギーが大きい、高温の状態であったはずである}

 膨張する前の火の玉の時にすでに物質が生まれていたということだ。これはインフレーションの前の状態なのだろうか、それともインフレーション後のビッグバンの時の状態なのだろうか。どちらも火の玉であるから、どちらも物質の運動エネルギーが大きい状態であったようだから、両方がその状態だったのだろうか。この本ではインフレーションでも物質があると書いていたり、インフレーションの終わりに素粒子ができたとも書いている。どちらでもいいし、両方でも良いが、理論がその時々の都合で変わるのはいただけない。確定してもらいたいものだ。

 どちらにしろ、高温ということは物質があったということになる。現在の温度は物質の振動である。{膨張の際に物質は運動エネルギーを失うから、過去においては物質の運動エネルギーが大きい、高温の状態であったはずである}ということからも、物質が最初から存在していたと言っている。

地球1個だってビー玉くらいの空間に押し込められるとブラックホールになるのだから。宇宙全体の物質がミクロな空間に押し込められていたら完全にブラックホールになるはずだ。なぜ爆発できたのだろう。今のところブラックホールは、蒸発はしても爆発できないことになっている。最初の宇宙はどのようなシステムで爆発できたのだろう。もちろん、宇宙項という真空のエネルギーでは無理だ。真空のエネルギーでは地球の重力にさえ負けて地球を膨張させられないのだから宇宙全体の物質が集まっているのを膨張させることなどできるわけがない。

(4)どこから生まれたか

 宇宙全体の物質が高温の火の玉状態で誕生したということだ。この火の玉はどこから生まれたのだろう。

 現在の宇宙には巨大な質量がある。これが火の玉として生まれたということになる。また、星々が離れているということは、現在の星は巨大な位置エネルギーを持っているということだ。この位置エネルギーをつくったのも火の玉の温度だということだ。どこからこの巨大な温度がうまれたのだろう。

 遡れば、ということだが、時間は遡れないから今ある宇宙から火の玉ができたのではないことは明らかだ。最初に火の玉ができ、それが膨らんで今の宇宙になったはずだ。最初の火の玉はどこかから生まれたということだ。どこからこの宇宙の物質や熱や、位置エネルギーを生む高温の火の玉が降ってわいたのだろう。0,01秒後1000億度ということだ。とてつもないその高温はどこから生まれたのだろう。ここではそれに触れていない。過去にさかのぼれば、が理由らしい理由であるが、書いたようにそれは理由にならない。

 

問題 火の玉の化石

 ビッグバン直後の火の玉の光が{生き長らえていることを予測した。その光は宇宙全体を満たし、あらゆる方向からやってくるだろう。}

考察

 火の玉の光が直進を始めたとき、地球の前駆物質もその火の玉の中にあったはずだから、地球の前駆物質も宇宙膨張(それがあればだが)と共に広がり始めた。光は地球の前駆物質の速度よりはるかに速いから、火の玉の光は地球の前駆物質を追い越して宇宙の彼方へ飛んでいってしまっただろう。なぜそれが今ごろ、全方向からやってくるのだろう。どこかでUターンしてきたのだろうか。

 光は満ちることができるのだろうか。その仕組みはどのようなことなのだろうか。この本には書いていない。そんな仕組みはないのだから、書けるはずはない。密閉した部屋を考えてみよう。電気を付けると明るくなる。消すと一瞬で暗くなる。部屋を光で満たすには電気を付け続ける必要がある。なぜなら光は光速で飛んでいるからである。宇宙を光で満たすには常に光をつけ続けていなければならない。光は光速で飛び去るからだ。ところが宇宙の晴れ上がりは137万年前に終わってしまったと言っている。光源は消えてしまったのだから見ることはできないはずだ。なぜ今、137億年前に消えてしまったと言われている光を見ることができるのだろう。137億光年離れているからということが書いてあるが、光速で直進している光を見るためにはその光を追い越してその前にでなければならない。しかし、書いたように地球はすでに137億年前に火の玉の光に追い越されているはずだ。通り過ぎた光は見ることはできない。

(部屋の光が消えるのは光速で光が壁に次々に当たって跳ね返るからだ。光は壁の分子を振動させてエネルギーを失い、赤方偏移をして、電波になり見えなくなる)

問題

{当時4000度あった温度は、宇宙膨張により低下し、現在では絶対温度にして数度程度になっているであろう。}

考察

 宇宙空間が膨張すると光の温度が低下する仕組みが書かれていない。図1−9に風船に書いた波模様が、風船が膨らむと大きくなることが描いてあった。空間が膨張すると光も膨張するということのようだ。他の本にもそれは書いてあるから、そういうことなのだろう。しかし、この本では波長が伸びると共に波高も伸びている。波高が大きくなるということは光が強くなるということだ。遠い銀河ほど明るくなる、ということになる。観測とは一致しない。波高が伸びると光が強くなる。これはエネルギーが増えたことだからエネルギー不変則に反するから起こらないという意見もあるかもしれない。すると波長が伸びて赤方偏移すると光のエネルギーが減る。エネルギーが減るのもやはりエネルギー不変則に反するから起こらないことになる。波高は伸びず波長だけ伸びる仕組みはどのような理由からだろう。それを科学的に述べているのはまだみたことがない。

 この本にも空間が膨張すると光も膨張する仕組みが書かれていない。風船の図はゴム膜と空気とマジックで書かれた絵の仕組みだ。なにも無い空間とそれを膨らませている何かと光のことではない。まるで違う仕組みのはずだ。風船の図は、何の説明にもなっていない。

 火の玉の光は137億年前に飛びだした。それを今見ているということは、地球から137億光年先に光源があるということになる。(アンドロメダ銀河の光は230万年前に飛びだした。だから230万光年先にアンドロメダ銀河がある)地球から全方向にその光が見えるということは、137億年前にすでに宇宙は地球を中心として半径137億光年の球状に広がっていたということになる。ハッブルの法則とは相いれない。

 A・ベンジアスとR・W・ウイルソンが発見した宇宙背景放射がその光だということだ。しかし、ビッグバン論が出る以前には、宇宙の塵が2.4kの温度であるという理論があった。宇宙の塵がその温度なら、塵はその温度に応じた黒対放射(光)をする。それが2,4kの宇宙背景放射であるともいえる。塵は電磁波を放出し温度を下げる。そして他からの電磁波を受けて温度を上げる。電磁波を媒介とした宇宙の塵の平均温度だ。これなら、地球に全方向からまんべんなく降り注ぐ。137億光年先に光源がある必要もない。何の不都合もない。この本ではそれについて、何一つ触れていない。科学は一番不都合なことをまず取り上げよという方法論がある。この本では不都合なことは無視し都合のいいことだけを取り上げている。科学の方法論に反している。

 

問題 {非常に面白い点は、現在にいながら、100億光年前の宇宙をみることができる、さらに宇宙開闢の瞬間をも原理的には見ることができる。}

考察

 これの説明に、アンドロメダ銀河の例が書いてある。230万光年の距離があるから光が届くのに230万年かかる。だから230万年前のアンドロメダ銀河をみている。また、グレートウォールとは3億光年の距離があるから3億年前のグレートウォールを見ていることになる。だから、100億年前の宇宙を見ることができるし、宇宙開闢の瞬間をも見ることができるといっている。

 問題は距離にある。アンドロメダ銀河とは230万光年離れているから230万年過去にアンドロメダ銀河を出た光を見ることができる。グレートウォールとは3億光年離れているから3億年前にグレートウォールを出た光を見ることができる。

では、100億光年前の銀河はどうだろう。ビッグバン論では100億年前は、宇宙は今よりはるかに小さかったことになっている。今100億光年離れていても、100億年前にその銀河から光が出たときは、地球との距離は今よりはるかに近かったはずだ。(もちろん地球は今の形をしていない。さまざまな恒星の中にバラバラにはいっていた可能性がある。ガスであった可能性もある)地球の元になった物質がその銀河から離れる速度より光の方がはるかに速い。100億年前にその銀河を出た光は100億年経つ間に地球を追い越してしまうだろう。追い越された光を見ることはできない。ビッグバン論では地球は昔からここにあったわけではない。46億年前に突然ここに誕生したわけでもない。137億年前に、火の玉の一員として他の物質と共に誕生したことになっている。宇宙開闢の光を見るためには、その光と同じ速度で飛び続けていなければならないことになる。137億年の間地球は光速で飛んでいたことになる。現在の観測とは相いれない。

 100億年前の銀河をみるためには100億光年の距離がいる。137億年前の宇宙開闢の姿をみるためには137億光年の距離がいる。宇宙が膨張していてはこの距離をつくることはできない。すべての星は宇宙の晴れ上がりのときには、どんなに離れていても数10万光年以内にあったからだ。宇宙開闢の光はあっさり物質を置いて光速で飛び去るだろう。

遠くの銀河が見えるためには宇宙は停止していなければならないということだ。すなわち、今120億光年とかそれより遠くの銀河が観測されているということは、宇宙は膨張していないということの実証になる。

(ハッブルの法則では、326万光年の距離で、秒速60キロから70キロの膨張速度だということだ。すると宇宙が膨張して326万光年の大きさになったとき、宇宙の端は秒速60から70キロで膨らんでいたことになる。そのとき光は秒速30万キロで飛んでいただろう。光はあっさり宇宙の端を通り過ぎて、宇宙でないところに飛びだして行きそうだ。飛び出した光はどこを飛んでいるのだろう)

 

問題 宇宙創成

真空の揺らぎ

@{量子論で考える真空}は{電子と陽電子が対でポッと生まれてきて、それが合体して消える。そのような生成・消滅を繰り返している状態が真空である。}

A{真空ではエネルギーが与えられない限り実際の電子・陽電子対を取り出すことはできないということである。}

B{量子論ではエネルギーの一番低い状態のことを真空と呼んでいるのである。}

考察

 @とAは矛盾している。@ではエネルギーを与えなくてもかってに電子と陽電子が生まれているのに、Aではエネルギーを与えなくては生まれないと言っている。実際は、Aである。@は理論上の現象、あるいは、研究者の願望であるからである。

 一歩譲って@がありえるとして考えてみる。

量子論で作れるのは、{電子と陽電子が対でポッと生まれ}るくらいである。Bからも分かるように、真空にできることは非常に小さなエネルギーを生むのがせいぜいである。これでは、全宇宙をつくることができる火の玉を真空から一瞬でつくりだすことは不可能であることが分かる。火の玉宇宙の創生は量子論以外から見つけるしかないということである。

 しかし、量子論の解説は書いてあるが、火の玉宇宙がどのようにして生まれたかは書いていない(後ろの方に書いてあるが、そのことについては後述)。

ここでの問題は、量子論を火の玉宇宙ができる仕組みのように思わせていることである。その後火の玉宇宙は既成の事実として理論が展開していくことからもそれが分かる。ごまかしである。どのようにして火の玉宇宙が生まれたのかが分からないなら分からないと書けばいい、いや書くべきである。それが科学のやり方のはずだ。

 現在の宇宙を過去に遡れば宇宙は高温高圧の宇宙になるから、それが始まりだ、という考えも述べられているが、その{振動宇宙モデルは実現できないことが示されている。}ということで否定している。後に、大きな宇宙がマイナス時間をたどって収縮するという考えも述べているが、それについては後述。

 火の玉宇宙ができる仕組みはここでは何一つ説明されていないと言える。

 

問題 相転移の始まり

{宇宙の温度1028度で起こる相転移が1時相転移ならば、どのように宇宙の進化が変わるかを調べた。}

{宇宙が素粒子のような小さな大きさから始まったとしよう。}

考察

1 このふたつは仮定であって、根拠はない。

2 素粒子より小さい宇宙が、1028度の温度になることは可能なのだろうか。温度は分子の振動である。素粒子より小さい宇宙がどれくらい振動すれば1028度の温度になるのだろう。また、そのエネルギーは何によってもたらされたのだろうか。{量子論ではエネルギーの一番低い状態のことを真空と呼んでいるのである。}と述べているから、量子論の真空からは宇宙の温度が1028になることはないと言える。

すべて不明である。インフレーション宇宙論のための都合のいい仮定を述べているにすぎない。それも現実にはありえない仮定だ。

アインシュタインの宇宙項を持ちだしているが、計算したら宇宙に合わないからと入れたり削除したりしている。答えをうまく出すためにやったことで、実質的な根拠は0である。偉い人が言ったからと言って、それが正しいということの証拠にはならない。

 

1次の相転移、2次の相転移

水が氷に相転移するとき、1次の相転移の時は熱が発生するが、2次の相転移の時は熱が発生しないと書いてあるが、そんなことはない。どちらも凝固熱が発生する。水の熱が奪われるから氷になるのである。熱の発生が急激かゆっくりかの違いだけだ。間違いである。

 

問題 真空の相転移の過冷却

考察

 水の1次の相転移の時は過冷却が起こる。同じように真空の時も過冷却になるということだ。空間が膨張すると温度が下がるということのようだが、空間の温度はいったい何が担っているのだろう。どのような原理で温度が下がるのだろう。また、どのような条件の時過冷却されるのだろう。水が膨張すると温度が下がるのは分子がまばらになるからだ。しかし、空間には何もない。何もないものはまばらになりようがない。何もない空間の冷却と物質である水の冷却が同じ原理であるはずがないから、空間の温度を担うものとその冷却のシステム自体を書かなくてはならないはずなのに水のことしか書いていない。もし水と同じというならその根拠を書かなくてはならない。それもない。

 また、真空の潜熱はいくらなのだろう。真空1cmが相転移するときの熱量は書いていない。{量子論ではエネルギーの一番低い状態のことを真空と呼んでいるのである。}とあることから、かなり小さな熱量であると思われる。

 真空の相転移が遅れる理由も書いていない。水が過冷却する理由は書いてあるが、真空が過冷却する条件は書いていない。

 本来関係のない水と氷の相転移でごまかしているにすぎない。

 

問題 宇宙の「指数関数的」急膨張

{真空のエネルギーは、宇宙項と同じように、空間を押し広げる斥力の働きをする。}

考察

 宇宙項は、アインシュタインが勝手に思いついたエネルギーである。実証はされていないし、どのようなエネルギーかも分かっていない。宇宙項は、真空のエネルギーが存在するということの証明にはならない。

真空のエネルギーが空間を押し広げる斥力の働きをする、と事実のように述べているが、真空のエネルギーは、あると便利だからというので、思いついただけである。実際に観測されていないし、今物理学で分かっている4つの力以外の力である。これは理論も確定していないということを示している。この本にも宇宙創成から、時間の経過とともに4つの力が分岐していく図があるが、その中に真空のエネルギーは書かれていない。理論も実証もないのだから、科学ならそんなものはない、となるところなのだが、いまだに「謎」と言って、あることにしている。確かにビッグバンにしろインフレーションにしろこのエネルギーが膨張の根幹であるから、それがないと両方ともなくなってしまうことになるから困るのだろう。

 真空のエネルギーが、空間のどこにどのように作用して空間を押し広げるのかは理論も実証もない。

 真空のエネルギーで膨張する前の空間と膨張した後の空間は何が違うのか。地球は空間の中を自転し公転しているが、空間からは何一つ影響を受けていない。空間は何もないからである。なにも無い空間が膨張しても何もないに変わりがない。なにも無いものに変化は存在しない。変化も「ない」はずだからである。

 

問題 

{宇宙が最初この陽子の大きさだったとして、倍々ゲームを100回繰り返すとこの宇宙は太陽系を越え、140回繰り返すと現在見えている宇宙の大きさを越えてしまう。}

考察

ア なぜ倍々ゲームなのだろう。

5倍5倍ゲームなら。もっと速く宇宙は膨張できる。1万倍1万倍ゲームなら、もっと高速で宇宙はでき上る。1.1倍1.1倍ゲームならかなり遅くなる。0.1倍0.1倍なら宇宙は収縮する。それらの中でなぜ宇宙は倍々ゲームなのだろう。倍々ゲームになる根拠は書いていない。著者の都合だけだ。

イ 真空のエネルギー

 真空は最低のエネルギーであると言っている。それが、空間を倍々ゲームで膨張を起こすことができる巨大なエネルギーを持っているのだという。

根拠は、超新星爆発の時、ニュートリノが「中性流相互作用」を起こすということが関係あるというように書いてあるが、それはニュートリノの作用であって、真空の作用ではない。真空とニュートリノはまるで違うものだ。

また、超新星爆発は倍々ゲームの爆発ではない。そのうえ桁が違う。超新星爆発は星1個の爆発だ。人から考えれば巨大な爆発でも、宇宙に比べれば、ケシ粒1個が壊れたほどにもならない微々たる現象だ。少なくとも1020個はあるだろう恒星のその一つが爆発しただけだ。宇宙には痛くも痒くもない。

超新星爆発と、宇宙の倍々ゲームとはまるで違う現象である。なに一つ類似点はないのに、それで説明できたように言っているのは間違いである。書くならば、超新星爆発ではなく、中性流相互作用が、真空の倍々ゲームを起こす原理を書くべきである。難しすぎるから素人向けの本には無理だ、というかもしれない。そうかもしれない、しかし、そのときは関係ない超新星のことを書くべきではない。素人は超新星爆発と火の玉の爆発が類似の現象と勘違いしてしまう。

ウ 倍々を繰り返したのは100回なのか、140回なのか、それとも100万回なのか

 繰り返す回数で宇宙の大きさが劇的に異なる。100回で太陽系を越え、その後40回繰り返すと今見えている宇宙の大きさを越えるという。太陽系は宇宙に比べれば点にもならない。大きさがまるで異なる。どちらか決めなければならないはずだ。宇宙の大きさと太陽系の大きさのどちらかが決まらないなどというのはあまりにも適当すぎる。

 もし宇宙より大きくなったなら、ハッブル定数はどうなるのだろう。ハッブル定数があるから、宇宙は膨張したことになっているのに、それを無視して宇宙は膨張したことになる。

ハッブル定数の根拠は銀河の赤方偏移の観測だった。観測事実を根拠にしている。ところが、インフレーションを支える観測事実は存在しない。インフレーションで、1秒もかからずにこの宇宙より大きい宇宙ができているなら、宇宙はその後膨張する必要はない。もう宇宙はでき上っているのだから。なぜもう一度ビッグバンで宇宙は最初から膨張しなければならないのかその説明はない。おそらくインフレーションは、ビッグバン宇宙の難問を解決するために考え出された理論だからだ。ビッグバンが前提だからもう一度ビッグバンを起こす必要があるのだろう。自然界の必要ではなく、理論の不備を補てんするために考え出されただけなのだ。

これででき上る宇宙は、最初からあった「無」という宇宙。その中にできたインフレーション宇宙。またその中にできたビッグバン宇宙、という3重構造になる。それぞれの境界線はどうなっているのだろう。無もインフレーション宇宙の真空もビッグバンの真空も、何もないは同じだから区別はつくのだろうか。

エ 宇宙膨張の停止

 倍々ゲームで急膨張した宇宙は急停止している。自動車を急発進させて、そのままにしておくと走り続ける、停止するには、加速したのと同じ大きさの反対方向のエネルギーがいる。自動車の場合はブレーキだ。自動車の運動エネルギーをその摩擦熱に変換することで止まる。慣性の法則だ。

 宇宙がインフレーションで光速の何万倍もの速度に加速されたのなら、停止させるにはその加速したエネルギーと同じ大きさの反対向きのエネルギーがいるはずだ。それはどこからどのように湧いてきたのだろう。

 巨大になった宇宙のどこにどのようにどんなエネルギーを加えると、光速の何万倍もの速度で膨張する巨大宇宙を1秒以内に停止させることができるのだろう。その仕組みも書いていない。太陽系の大きさでもその周りすべてにもれなく力を加えるにはかなり大変だと思われる、まして、この宇宙より大きくなったら、止めるのは不可能だろう。

 また、0m/sから光速の数万倍に加速して、それをまた0m/sにまで減速するのに、1秒とかかっていない。このようなことは不可能である。文字で書くのは簡単である。私の指でもできる。しかし、宇宙全体を光速の数万倍に加速しまた減速するのを1秒以内でやるなんてことは現実にはできるわけがない。明らかに机上の空論である。

 

問題 

{真空のエネルギーの存在する真空そのものは、あたかもゴムのように、引き延ばされると、元の状態に戻ろうとする負の圧力を持つ。真空というゴムを引き延ばし、そのエネルギーを増大させたのは宇宙の膨張であり、このエネルギーは宇宙の膨張からきている。つまり真空のエネルギーは、アインシュタイン方程式を通じて急激な宇宙膨張を起こし、それによって自らの全エネルギーを増大させる。この機構によって、たんに小さな宇宙空間的大きさを大きくするというだけでなく、宇宙内部にエネルギーをつくりだしているのである。}

考察

 {真空のエネルギーの存在する真空そのものは、あたかもゴムのように、引き延ばされると、元の状態に戻ろうとする}ということだから、宇宙膨張により引き伸ばされた真空は、元の状態に戻ろうとして収縮するはずである。ところが{つまり真空のエネルギーは、アインシュタイン方程式を通じて急激な宇宙膨張を起こし}と反対に急激な膨張を起こすと述べている。アインシュタイン方程式が強い力で論理をひっくり返すようだが伸ばされた真空がそれによりさらに伸びていくというのは、伸ばされたゴムがそれによりさらに伸びるということと同じことだ。そのようなことは実際には起こらない。これは{元の状態に戻ろうとする負の圧力を持つ}という言葉のマジックによる。本来は「負の張力」と言わなければならない所を、{負の圧力}といっている。張力に対する「負」は収縮である。しかし、圧力に対する{負}は膨張になる。本来収縮するはずなのに、張力を圧力と言い替えて、膨張することにしたのである。言葉のトリックである。

もし圧力を云うなら。ゴムの塊を押し縮めたらそれに逆らう負の圧力が生じるというべきだ。このときは圧力に逆らうことになる。すると空間が縮まったら、負の圧力が生じて、空間を押し広げる真空のエネルギーが生じるかもしれない。しかし、この場合は引き伸ばされると言っている。圧力は生じない。

{急激な宇宙膨張を起こし、それによって自らの全エネルギーを増大させる。}が起こるなら、投げ上げたボールが地面から離れたことでさらにエネルギーを得て急上昇を続けるということになる。アインシュタイン方程式がどれほどのものかは知らないが、実際の現象としてそのようなことは起こらない。

 どちらにしろ、このゴムのような真空は、地球や太陽系では確認されていない。ゴムのように地球をしめつけている真空も、引き伸ばされた真空も太陽系では観測されていない。これは太陽系にはそんなエネルギーは存在しないということである。

{宇宙の膨張}

 水の膨張は熱を加えることによって起こる。熱は分子の振動だから、エネルギーを加えると分子の振動が激しくなり分子間の距離が離れて膨張する。物質の熱による膨張は同じ仕組みだ。では、空間はどのような仕組みで膨張するのだろう。空間は何もないから、分子の振動はない。熱を造るものがない。水は熱で分子間が広がるから水全体が外側に押し広がる。空間はなにが広がるのだろうか。空間自体はなにも無いのだから膨張すらないはずだ。なにも無いものが膨張しても何もないには変わりがない。それでも膨張するなら、空間が膨張するということ自体が物質の膨張とはまるで異なる現象になるはずだ。それを何の説明もなく物質と同じ「膨張」という言葉で言っている。これは明らかに間違いである。宇宙が膨張するということはどういうことかという定義がまずいる。それが無いのは分からないからだろう。

{このエネルギーは宇宙の膨張からきている}

 次に、エネルギーの問題だ。{このエネルギーは宇宙の膨張からきている}ということだが、宇宙の膨張のどこにどのようなエネルギーがあるのかは述べられていない。宇宙の膨張を起こしているのは真空のエネルギーであるというのがビッグバンの考えである。その真空のエネルギーは、宇宙膨張からきていると言っている。真空のエネルギー → 宇宙膨張 → エネルギーが生まれる → 真空のエネルギー増大 → さらなる宇宙膨張 → という具合にエネルギーはどんどん増えていく。うまい仕組みだ。これなら何もないところからどんどんエネルギーは生み出されてくる。なにも無い真空が膨張して、膨張した何もない真空になる。するとそこに含まれていた真空が増える。真空とは真に空(くう)ということだから、真に空が増えるということだ。ところが真に空なのだけれど、そこには真空のエネルギーという謎のエネルギーが存在する。だから、真空が増えると、真空エネルギーが増えるというわけだ。ここになにも無いはずの空間の膨張からエネルギーが生まれてくるトリックがある。うまいやり方だが、何もないところに真空のエネルギーがどんどん増えていくというのはエネルギー不変則に反している。

 

問題 

{急膨張がビッグバンを引き起こす}{重力ポテンシャルの中で物体が落下するとき、その運動エネルギーが増大する現象とアナロジーが成り立つ。}{この場合に運動エネルギーが増大するのは、同時に物体のポテンシャルエネルギーが減少するからである。}

考察

 {物体が落下するとき}と、空間が急膨張するのがアナロジーと言っている。そうだろうか。{物体が落下するとき}とアナロジーなのは空間が収縮するときではないのだろうか。

物質が落下するときは物質の持っていた位置エネルギーが運動エネルギーに変化する。反対に物質が上昇するときは物質の持つ運動エネルギーが位置エネルギーに変化する。空間が膨張する場合、一緒に物質もバラバラになると考えられる。物質がバラバラになるのは、物体の上昇と同じ(アナロジー)である。最初1点にあった物質の位置エネルギーは0である。物質がバラバラに離れるとその物質をバラバラにする運動エネルギー(上昇エネルギー)が物質の位置エネルギーに変化し物質は位置エネルギーを獲得する。このように、宇宙が急膨張するときは、運動エネルギーがポテンシャルエネルギーに変化するはずであるから、物体が落下するときとはエネルギーが逆に流れるはずだ。アナロジーは成り立たないと言える。

(ここで重要なのは、位置エネルギーは物質が持つエネルギーであることだ。これは物質が持つ万有引力が生み出す。だから、物質のない空間だけでは位置エネルギーは生じない)

宇宙膨張の場合、最初にミクロの宇宙が持っていたという、高温高圧のエネルギーによって、物質が飛び散り。その運動エネルギーが位置エネルギーに変化することになる。ここでは急膨張が、位置エネルギーから運動エネルギーを獲得しさらなる膨張を加速させると言っているが、ミクロの宇宙には位置エネルギーは存在しないはずである。現在の自然界の現象とは反対の現象である。このようなことは起こっていない。この考えは間違っていると言える。

問題

{宇宙が急膨張するときには、宇宙膨張を記述する方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し、エネルギー保存則が成り立っているのである。}

考察

 一般的には膨張すると、上に書いたように、重力ポテンシャルが増加し、運動エネルギーが減少する。反対に収縮するときは重力ポテンシャルが減少し、その減少分が運動エネルギーに変化する。たとえば、ボールを投げ上げると、運動エネルギーがボールの上昇と共に位置エネルギーに変化し、運動エネルギーが位置エネルギーに全て変化したときにボールの上昇は止まる。そして落下を始めると位置エネルギーが運動エネルギーに変化する。地面に落ちたとき位置エネルギーは運動エネルギーに全て変化している。

宇宙で考えてみる。ビッグバン理論では宇宙は最初1点であった。このときポテンシャルエネルギーは0である。地上に置いたボールとアナロジーである。それが膨張して、物質が散らばると、その上昇にしたがってポテンシャルエネルギーが増えていく。これが普通の現象である。{重力ポテンシャルに対応する項が急減少}というのはありえない現象である。たとえば、地球と月も元はその1点の中にあったことになる(もちろん素粒子ではあった)。それが今膨張で離れているので巨大なポテンシャルエネルギーを持っている。膨張の時の運動エネルギーが位置エネルギーに変わったからだ。月が地球に落下したら地球は火の海になるだろう。これは月と地球の引力による位置エネルギーが運動エネルギーになって地球に衝突すると、その運動エネルギーが熱エネルギーに変化するためだ。一般的な現象では膨張(上昇)は運動エネルギーが位置エネルギーに変化し、収縮(落下)は位置エネルギーが運動エネルギーに変化する。

 {宇宙が急膨張するときには、宇宙膨張を記述する方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し}とあるが、この現象は一般的な現象とは反対の現象である。普通は「急膨張すると重力ポテンシャルに対応する項が急増加し」となる。物質が離れるときはポテンシャルエネルギーが増大し、それを造る膨張エネルギー(物質を動かす運動エネルギー)が減少するはずである。宇宙膨張により物質が離れる(上昇することである)ことで重力ポテンシャルに対応する項が普通なら急増加するはずである。急減少するのは運動エネルギーである。

エネルギー保存則を成り立たせるための方策なのだろうが、一般現象とは反対の現象が起こる理由が書いていない。

{宇宙膨張を記述する方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し、}

 重力ポテンシャルは、重力があるから発生する。重力が無ければ重力ポテンシャルは存在しない。すると、宇宙の相転移の時にはすでに重力があったということだ。重力は物質が持っている力である。重力があるということは物質があるということになる。ところが、物質はインフレーションが終わった後にインフレーションの潜熱でできると書いてある。するとこのときまだ物質はできていないということだ。すると重力も無い。{重力ポテンシャルに対応する項}とは何なのか。不明である。言葉だけの代物である。

(注:ここでは宇宙が膨張するという意見を基に考えているが、宇宙が膨張しているということには疑問を持っている)

 

問題

{この急激な加速膨張はいつまでもつづくのではない。}

考察

 加速したものを減速するには加速と同じエネルギーがいる。ニュートンの慣性の法則である。光速の何十倍、何万倍にも加速した空間の加速を止めるには加速させたエネルギーと反対向きに減速のエネルギーを働かさなければならないはずだ。そのエネルギーが無い。どのような方法で、どのようなエネルギーが働いて宇宙膨張が停止したのか説明する必要がある。膨張には相転移の潜熱があるということだが、減速のためのエネルギー源が書いていない。かってに止まっている。

時速100kmで走る車を止めるのには、1秒では足りない。宇宙全体が光速以上の速度で膨張しているのを止めるのにはどれくらいの時間が必要だろう。0から光速以上に加速し、また0に戻すのに1秒とかからないというのは不可能である。宇宙に比べ無きに等しい車でさえ1秒では止められないのに、光速で膨張している宇宙全体を止めるのに1秒の半分もかからないというのはあまりにも現実離れしている。言葉の中だけの現象である。「宇宙が倍々ゲームで膨張する」とこれだけ書くのにも1秒はかかる。それなのに宇宙全体を光速に加速し、またもとの停止にするのに1秒もかからないなどというのは実際の現象としては不可能である。この考えは空論である。

問題

{真空の相転移の終了とともに、何百桁と増大した真空のエネルギーは潜熱として開放され、普通の熱エネルギーとなる。これは水蒸気が水になるとき、また水が氷になるときと同様である。}

考察

 真空のエネルギーはインフレーションやビッグバンでは空間を膨張させるエネルギーと言われている。それは謎のエネルギーである。その不思議なエネルギーが普通の熱エネルギーに変化するということだ。どのような仕組みなのだろう。宇宙を巨大に膨張させていたエネルギーが、なぜ突然(T秒もかからずに)物質の振動(熱)に変化したのだろう。何億光年から何百億光年にも広がっている宇宙の全真空のエネルギーを一瞬で熱エネルギーに変化させることなど不可能である。できるというなら説明がいるが、この説明がない。結論だけで仕組みや根拠が書いていない。水で説明しているが、水の潜熱と真空のエネルギーは似ても似つかないエネルギーである。水の潜熱で説明できるわけがない。真空のエネルギーが普通の熱エネルギーに変化する仕組みが分かっていないから、水の潜熱でごまかしているだけである。科学なら、真空のエネルギーが普通の熱エネルギーに変化する、しかも全宇宙の真空のエネルギーが一瞬で熱エネルギーに変化する仕組みを直接書かなければならない。

 

問題

 相転移が終わったとき{真空のエネルギーが潜熱として開放され、普通の熱エネルギーとなる。}{このエネルギーによって、いろいろな素粒子―クオークやレプトン、光子など―が生まれ、宇宙は過冷却の状態から一挙に火の玉宇宙が生まれる。}

考察

 {普通の熱エネルギー}から、どのようにして素粒子が生まれたのだろう。反応の順序が逆である。普通の熱は分子の振動であるから、普通の熱に変化するときにはすでに素粒子が生まれていなければならないはずだ。なにもないところには普通の熱は存在しないのだから。もし熱ができてそれが素粒子を作ったのだとしたら、この熱は特殊な熱であるといわなければならないはずだ。実際、現在の宇宙では何もないところに熱が発生しその熱エネルギーから素粒子が生まれている例はない。このことから見ても特殊な熱であることは確かだ。ところが普通の熱だという。そのうえ、ここでは熱から全宇宙の物質や光が簡単に生まれている。言葉だけの話で実証はない。

 

問題

{宇宙は過冷却の状態から一挙に火の玉宇宙が生まれる。}

考察

 相転移が始まる前にも宇宙は火の玉であった。{相転移が起こったのは、温度にして1000兆度(1015.エネルギーに換算して約100ギガ電子ボルト)}とあるから、火の玉は、インフレーション前と、ビッグバン前の2度起こったことになる。もちろんこのエネルギーがどこから湧いたのかは不明である。また何が温度を担っていたのかも不明である。普通の温度は分子の振動であるがこの時期(相転移直前)にはまだ物質はできていないので何が温度なのかは不明である。

 インフレーションで宇宙は巨大になっている。その巨大な宇宙のどこにエネルギーが集中してビッグバンを起こす火の玉になったのだろう。巨大になった宇宙に広がった全エネルギーを1点にどのようにして集めたのだろう。火の玉から1光年離れたところの真空のエネルギーを熱エネルギーに変えて、火の玉まで運ぶには光速で運んだとしても1年かかる。10光年離れたところのエネルギーは10年かかる。全宇宙のエネルギーを集めるにはどれくらいの時間がかかるのだろう。どのような方法で熱を移動させたのだろう。集まってくる間にも火の玉の熱は電磁波となって放射されていることだろう。

 巨大な熱があるから火の玉になった、ではあまりにもずさんではないだろか。なんとしてもビッグバンにつなげたいから、という理由だけで火の玉にしたのではないだろうか。その仕組みを{水蒸気が水になるとき、また水が氷になるときと同様である。}とごまかしては科学ではない。水の相転移と真空の相転移は何の関係もない現象なのだから。真空より水の方がエネルギーははるかに大きい。真空の相転移は宇宙を造るほどの熱を出しているのに、それよりはるかにエネルギーが大きい水の相転移はほとんどなにもしていない。最低のエネルギーしか持たない真空の相転移が宇宙を生むなら、その何兆倍も大きいエネルギーを持っている水が相転移したら、それこそ宇宙が何兆個も生まれそうだがその気配さえない。相対論の計算ではそうなるのかもしれないが、同じ相対論ではE=MCである。水は巨大なエネルギーの塊である。

 この話は、まず結論(ビッグバン)ありきである。出来レースであることは否めない。

 

問題

{相転移が起こると物質密度のデコボコ、つまり「密度ゆらぎ」が生まれる。}

考察

ア 物質は相転移の後に相転移の潜熱から生まれたという記述と矛盾している。

イ 物質があるということは、相転移で物質を光速の数百倍から数万倍の速度に一瞬で加速したということになる。これは不可能である。相対論では、物質は光速を越える速度にはなれないと言っている。ま、インフレーションは今分かっている物理理論とは無関係な現象だからそれもありかも。ようするに理屈のためには何でも起こるというのがインフレーションだから。

ウ 加速された物質はエネルギーが加わらなくなっても、慣性の法則で最終速度で直進する。これを停止させるにはかかったエネルギーと反対方向に同じ大きさのエネルギーをかけなければならない。そのエネルギーはどこにあるのだろう。加速は述べているけれど減速は述べていない。

 真空のエネルギーは相転移の終わりとともに熱エネルギーに変化したと書いてあるから、真空のエネルギーではない。重力としても、宇宙の全物質が、光速の数百倍から数万倍の速度で飛んでいくのを1秒以内に止めることはできない。その重力を振り切って光速の数百倍から数万倍に加速したのだから、もともと重力では膨張を止めることはできない。もちろん、加速膨張させた真空のエネルギーが潜熱になったため、加速膨張のエネルギーがなくなったから膨張が止まったということではない。慣性の法則は新たなエネルギーが加わらなくても速度を維持する。

 このときダークマターはできていたのだろうか。密度ゆらぎがあったということはビッグバン論ではその主役であったダークマターもあったと考えられる。ダークマターは慣性質量を持っているのだろうか。慣性質量があるならば、ダークマターも超光速で飛び続けるだろう。慣性質量がないなら、膨張エネルギーがなくなったとたんその場で停止するだろう。すると超光速で飛び続ける物質と衝突を繰り返すことになる。といってもダークマターは物質と反応しないからすり抜けるだけだろうが。しかし、飛び続ける物質と、停止したダークマターは重力で引っ張り合うことにはなりそうだ。ところが、物質を引きつけるには停止を続ける慣性質量がいるから、ダークマターに慣性質量が無ければ、ダークマターは慣性質量を持っている物質に一方的に引き寄せられることになる。{こうして作られた密度ゆらぎの密度の濃い部分に物質が引き付けられる}と述べていることからも、ダークマターは慣性質量を持っていると考えられる。とすると、インフレーションが終わった後も、通常の物質の6倍もあるダークマターも慣性の法則で光速の何百倍もの速度で直進し続けるはずである。

しかし、このダークマターの密度ゆらぎが、通常の物質を引き付けて宇宙の構造を作ったということだから、ダークマターはほぼ停止していることになる。ダークマターが光速以上で飛んでいると、物質は追いつくことはできないからだ。もし追いついたとしたら、物質は超光速で飛ぶことになる。今の宇宙とは相いれない。もちろんダークマターが一瞬で停止する原理はない。まあ、不可思議な現象だ。

 

問題 

{この「ゆらぎ」は大きく引き伸ばされ、急膨張が終わったあとでは、きわめて広大な大きさになる。こうして作られた密度ゆらぎの密度の濃い部分に物質が引き付けられ、だんだんと成長するであろう。このようにして銀河団や超銀河団など宇宙の大構造ができてきたと説明できると考えたのである。}

考察

 ビッグバンではなくインフレーションの相転移だけで、今の宇宙ができたということになる。相転移の後に火の玉ができビッグバンになったという説明と矛盾している。

 もし、ビッグバンが無く、相転移からそのまま宇宙ができたなら、ハッブルの法則はどうなるのだろう。ビッグバン論では137億年かけて1点から宇宙は膨張したということだが、インフレーション宇宙論の相転移では1秒以内にこの宇宙ができていることになる。物質も飛び散っている。すると銀河の赤方偏移から、銀河が後退しているので、宇宙が膨張しているというビッグバン宇宙論はどうなるのだろう。インフレーション後にインフレーションのエネルギーが火の玉をつくってビッグバンになったというのはどうなるのだろう。

ビッグバンには少なくとも銀河の赤方偏移という観測事実があった(解釈は間違っているが)。しかし、インフレーションには観測事実による根拠はない。あるのはビッグバンでは矛盾があるから、それを無くすためにインフレーションを考え出したということだから、ビッグバンが元になっている。ビッグバンがなくてはインフレーションも無いのにビッグバンを否定したら、元も子もないということになる。

 

問題 

{宇宙の大構造になるような構造の種を造るためには光速よりも速く物質を移動させなければならないからである。}

考察

 相対論では光速より速い速度はないということだ。ここでは光速より速く物質が移動している。相対論を理論の根拠の一つにしている宇宙論が、相対論を破っている。ご都合主義だ。

 光速より速く物質が移動しなければ成り立たないのであれば、ハッブルの法則で膨張するビッグバンではそれが不可能なのだから、ビッグバン理論が間違っているということを示唆している。それでは困るから、インフレーションを起こして、光速より速く物質を移動させようというのだろうが、それではハッブルの法則は必要ない。インフレーションでまたたきする間にこの宇宙ができ上っているのだから。まるきりの矛盾である。

 

問題

 {どのようなインフレーションモデルでも、インフレーション前の宇宙が完全に一様ではなく場所によって真空のエネルギー密度が高いところや低いところがあるとエネルギー密度の高いところはある条件が満たされれば子ども宇宙へと進化する。}

考察

 インフレーション前の宇宙は陽子より小さいと述べている。そんな小さな宇宙に真空があり、場所によって真空の密度が違うというのだ。超高温で、超高圧があって、真空にむらがあるという。自分たちの理論に必要なら、何でもありだ。いったいどのような事実がそれを証明しているのだろう。根拠は「無」であるのは確かだ。

 

問題

 {「カオティック・インフレーション」という、宇宙がやはり無限に生まれる理論を提唱している}

考察

 この宇宙には、たくさんの宇宙がバラバラに存在しているという考えのようだ。まあ、たくさんのシャボン玉が空に飛んでいるのの巨大なもののようだ。1個1個のシャボン玉が宇宙というわけだ。

 シャボン玉が飛んでいるところは空だ。空気が満ちている。では、たくさんの宇宙が浮かんでいるのはどこだろう。宇宙と宇宙の間は何なのだろう。「無」なのだろうか。シャボン玉には膜があるから空気との境界があるが、宇宙と「無」の間の境界はあるのだろうか。宇宙の真空とその外の「無」とはどう違うのだろう。混ざり合わないのだろうか。混ざるものがあればだが、「無」にはなにもないし、真空にもなにもない。なにもないものどうしは混るものもないし、区別もできない。

 結局、今の宇宙には銀河が浮かんでいる。その間は稀薄なガスがあるとしても、真空しかなく境界はない。たくさんの宇宙が浮かんだ大宇宙も、子ども宇宙に端の境界の膜が無ければとなりの子ども宇宙との間が銀河間より巨大なだけで、無というひとつの宇宙の中で、銀河が集まった場所(子ども宇宙)と銀河がない場所(無)があるだけではないだろうか。今観測されているこの宇宙がバブル構造をしているように、大宇宙も銀河の代わりに子ども宇宙が散らばってバブル構造をしているのだろうか。とすると、その大宇宙が散らばっている巨大宇宙が存在しても不思議はない。そして、その巨大宇宙が散らばっている超巨大宇宙があっても不思議ではないことになる。

 空想は果てしなく広がるものだ。ただ、科学なら、それを実証しなければならない。実証しようがないから実証はいらない、理論だけでいいというならSFファンタジーと変わらない。空想は自由だけどそれだけでは科学ではないと言える。

 この宇宙観も、キリスト教の神の住む宇宙と、人間などの住む宇宙との2重構造である。西洋科学はこの構造から離れられないようだ。

 

問題 {ミクロの揺らぎからの誕生}

{宇宙は無から生まれた}{無とは単に物質が存在しないという意味ではなく、その入れ物である時空(時間と空間)も存在しない状態である。}

{ビレンケンは、極めて小さいが真空のエネルギーに満ちた閉じた宇宙が、量子重力効果によりつくられるというモデルを提唱した}

{もし、何らかの別の存在から作られたと答えるなら、当然それが何から作られたかと問われ、これは無限につづくからである。}

考察

何もない無から、量子重力効果で宇宙の元ができるということのようだ。無なのに量子重力効果はあるということだ。時間も空間も何もない無には、量子重力効果を起こすなにかだけはあるようだ。宇宙論者に邪魔なものはないけれど、必要なものだけはちゃんとある。とても親切なのが「無」であるようだ。

自分に都合のいいものだけで作る宇宙は科学といえるのだろうか。一番不都合なことを真っ先に取り上げよという科学の方法論はここにもないようだ。まあ、ビッグバンにしろインフレーショにしろ、不都合なことは無視しろというのが鉄則のようだ。

 

問題

 {無の状態から宇宙を造ろうとしているのであるから、全エネルギーはゼロと考える。つまり、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの合計はちょうど0であるとする。}

 考察

{無の状態から宇宙を造ろうとしている}

 無からこの全宇宙の元になる巨大なエネルギーを持った超高温、超高圧の火の玉を造らなければならないのだから、かなり無理をしなければならないだろう。量子論では真空から、プラスとマイナスのふたつの量子が出てくるということだ。これは非常にエネルギーの小さい量子だということだ。しかし、インフレーション論では、この宇宙を凌駕するほどのエネルギーの火の玉が生まれるというのだから、かなり大変なことだ。たんにゆらぎぐらいでは出てこないエネルギーだ。もちろん大嵐でもとても間に合わない。超新星爆発でもとても間に合わないエネルギーだ。どのようにしたら、10−32秒でそのようなものができるのだろう。とてつもない奇跡×1032くらいには起こりえないことだ。まあ、宇宙を一瞬で作ろうというのだからそれくらいの奇蹟は必要かも。その作り方を見てみよう。

 無なのだから、運動エネルギーも無であり、ポテンシャルエネルギーも無であるはずだから、0+0=0である。{運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの合計はちょうど0であるとする。}などというのがおかしいのだ。それなのに合計している。たとえば、5と−5を合計すると0であるとしたいようだ。これは無ではない。ペテンである。それは次のことに現れている。無なのに山がある、ボールがある、投げ手もいる。これのどこが「無」なのだろう。これは「有」である。言葉は意味を変えては言葉にならない。

問題

{図の右下の、山の裾野から、ポテンシャルエネルギーの山に向かって、左向きにボールを投げ上げたとしよう。するとボールの全エネルギーは0なので、ちょうどポテンシャルエネルギーがゼロのところまで登ったところで運動エネルギーも0となり、方向を変えて今度は落下を始める。}

考察

普通の場合、ボールを投げ上げるにはエネルギーがいる。上昇が止まったところで運動エネルギーは0になる。これは{ポテンシャルエネルギーがゼロのところまで登ったところで運動エネルギーも0となり、方向を変えて今度は落下を始める。}とあるように、ボールは最初運動エネルギーを持って上昇している。そして上昇が止まったところで、運動エネルギーが0になっている。ところが{するとボールの全エネルギーは0なので}と述べている。ボールの全エネルギーが0ならばボールは山を登れないはずだ。

ボールが登った山の中腹が、{ポテンシャルエネルギーがゼロのところで}、と言っているが、これは普通の現象ではない。このようなことは地球の山では起こらない。普通は、投げ上げたボールが停止し、落下を始める地点ではボールのポテンシャルエネルギーは最大になる。

今さらポテンシャルエネルギーの生まれる仕組みを偉い人に話すのもなんだが、義務教育で習った考えと異なっているので一応書いておく。

義務教育で習ったのでは、ボールは上昇と共に運動エネルギーをポテンシャルエネルギーに変えながら速度を落とす。これは万有引力の働きだ。万有引力がボールを下に引っ張っているから速度を落とす。このとき上昇するボールは、高さに応じたポテンシャルエネルギーを持つことになる。ボールが最高点に達したとき、ポテンシャルエネルギーは最大になり、運動エネルギーは0になる。上昇が止まった後落下すると、ボールは万有引力で加速されながら落下していく。ボールの位置が低くなるとともにボールの持つポテンシャルエネルギーが小さくなる。これと共に加速されていくボールの運動エネルギーは増加していく。ポテンシャルエネルギーが運動エネルギーに変わったということだ。これが運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの関係である。

ところが,ボールの最高点がポテンシャルエネルギーが0のところになっている。普通ではありえない現象だ。投げ上げられたボールのエネルギーが両方とも同時に0になることはない。高さを持ったボールは必ずポテンシャルエネルギーを持つ。

ボールを山の中腹まで上昇させた運動エネルギーはどこに行ったのだろう。エネルギー不変則に反している。

{ポテンシャルエネルギーがゼロのところまで登ったところで運動エネルギーも0となり、}とあるように、ポテンシャルエネルギーがゼロのところまでは運動エネルギーがあるという設定だ。エネルギーなしでは山登りはできない。どこの「無」からそのエネルギーはでてきたのか。書いていない。「無」のはずなのに運動エネルギーがあるというのは困った問題だ。

{ポテンシャルエネルギーが0のところで、方向を変えて今度は落下を始める}、とあるが、ポテンシャルエネルギーが0の時は落下しない。落下するためには落差がいる。落差があるところには必ずポテンシャルエネルギーがある。地球上では必ずそうなる。高さや動きがあるところには必ずエネルギーがある。

{ポテンシャルエネルギーがゼロのところまで登ったところで運動エネルギーも0となり、}

普通の山ではポテンシャルエネルギーが0のところは山裾である。中腹ではない。なぜ山の中腹がポテンシャルエネルギーが0のところになるのだろう。そこから下はポテンシャルエネルギーは何になるのだろう。まさかマイナスのポテンシャルエネルギーとかいうのではないだろうね。山の裾野にボールを置いたら中腹まで転がり上がるとか。現実にはそんな現象は存在しない。山の中腹がポテンシャルエネルギーが0になる原理はどうなっているのだろう。地球上ではありえない現象である。両方のエネルギーが0になるところは地球では地球の中心しかない。

現実世界では、ポテンシャルエネルギーは万有引力が作る。引力の無いところにポテンシャルエネルギーは発生しない。ポテンシャルエネルギーの山があるということは、引力があるということだ。「無」なのに引力もあるようだ。

そもそもポテンシャルエネルギーの山とは何なのだろう。どんなものでできているのだろう。その説明から始めるべきだ。実際は紙に書いた、あるいはパソコンの画面内に書いた図以外には存在しないのではないだろうか。それならそこには線しかない。現実世界にはポテンシャルの山なるものは存在するのだろうか。はなはだ疑問である。宇宙創成のためだけに特別に宇宙論者のために出てきてくれた山ではないのだろうか。。

「無」はなんにもないのではなく、インフレーション学者が望むものは一式揃っているようだ。とても都合のいい「無」である。

 

問題

{大きな半径を持った宇宙が無限の過去(マイナス無限大の時刻)から収縮してきて、時刻t=0に大きさがLになったところで跳ね返り、今度は永遠に(プラス無限大の時刻まで)膨張を続けるという仮定に対応している。}

考察

 「無」から直接この宇宙の元になる高温高圧の火の玉を造るのはさすがに無理があると考えたようだ。そこで、火の玉の元になる宇宙が先に有って、それが収縮して火の玉になったと考えたようだ。この考えは、ビッグバン論の始まりと同じ考えだ。この宇宙が膨張している。すると遡ると宇宙はどんどん小さくなって、点になる。すると高温高圧の火の玉のはずだ。そしてそこから今度は反対に膨張してきて今の宇宙になった、という考えだ。しかし、時間は遡れない。ではどうやって火の玉にするのか、普通の時間が遡れないなら、マイナスの時間をつくればいい。マイナスなら反対に動くから遡れる、というわけだ。しかし、マイナス時間だからこの宇宙が遡れると言っても実際の宇宙は遡ってはいない。そこで工夫が必要になる。{大きな半径を持った宇宙が無限の過去(マイナス無限大の時刻)から収縮してきて、時刻t=0}で火の玉になるということにした。

 もちろん、マイナス無限大の時刻とはどういうものなのかは書いていない。説明不足である。この世界には残念ながら、マイナス時刻というものは存在しない。これは数直線からの類推だろう。しかし現実の数直線にはマイナス記号はあっても、マイナスの物質はない。紙も実際のものだ。引かれた線もインクだし、マイナス記号もインクだ。0、も便宜上つけた単位記号だし、マイナス符号も単位記号である。記号であって実際のマイナスではない。現実にはこの宇宙にマイナス世界というものは存在しない。

現実世界で時刻t=0点が存在するかは不明である。t=0点より左がマイナス時間であるということも不明である。数直線なら記号だけだからマイナス符号をつければ済むが、実際の世界で、時間が0の時すなわち時間が始まる瞬間以前がマイナスの時間になるということはあるのだろうか。

この本の図では、マイナス時間もプラス時間も同じ方向に進んでいる。時間の矢は同じ向きである。プラス時間とマイナス時間の違いは存在していない。t=0でも何の変化もなく連続して時間が進んでいる。t=0があってもなくても同じだ。プラス、マイナスの符合がなくても同じだ。時間はt=0以前も以後も過去から未来に流れる時間があるということだ。違いはひとつもない。理論を進めるための都合で数直線を書き符号をつけただけの話のようだ。

 {時刻t=0に大きさがLになったところで跳ね返り、}とある。跳ね返ったら元来た方向に進むのが普通である。するとマイナス無限大の過去に戻ることになる。現在に進むなら、t=0ではね返るのではなく、通り過ぎなければならないはずだ。跳ね返ったと言っているのに通り過ぎている。変な話だ。これは現在の宇宙が遡れば宇宙は小さくなり火の玉になる、というビッグバンの考え方をそのまま使ったからだろう。遡って時間が0(t=0)になったところで跳ね返り今度は逆に宇宙が膨張してきたという考えだ。だから、遡るから時間はマイナスになる。t=0で跳ね返って、今度は普通の時間の進み方(+)になる。しかし現実の時間は遡らない。そこで、無限大の過去からの数直線にした。t=0点をすり抜けるはずなのに跳ね返っているのは、ビッグバン論にとらわれているからだろう。

{大きな半径を持った宇宙}はいつどのようにして生まれたのだろう。

 この理論が正しいとすると、無限大の過去でどのようにして大きな半径を持った宇宙が生まれたのだろうという疑問が出てくる。その説明が必要だ。無限の過去のそのまた過去にマイナス無からマイナス火の玉が生まれマイナス時間とマイナス空間が生まれマイナスインフレーションが起こりマイナスビッグバンが続きそれが{大きな半径を持った宇宙}をつくったとか。なんにしろ、巨大な宇宙の突然の出現は解き明かさなければならないだろう。突然巨大なエネルギーを持った火の玉が現れるのと、突然巨大な宇宙が現れるのとでは、どちらが現実離れしているだろう。まあ、どちらもどちらで現実離れしていることはいえる。もし突然巨大な宇宙が現れるなら、マイナス無限大の時刻に現れなくても、137億年前に突然巨大な宇宙が現れてもいいのではないだろうか。

宇宙が収縮と膨張を繰り返すという振動宇宙論は1章で否定している。1回だけならいいということなのだろうか。

 無とは{その入れ物である時空(時間と空間)も存在しない状態である。}と述べている。ところがマイナスの時間があると述べている。無にマイナスの時間が存在する。理屈が通らない。

 {大きな半径を持った宇宙が}と、無なのに宇宙まで存在している。無の中には科学者の論理に必要なものは何でもあるようだ。

マイナスの時間の中に存在するという大きな半径を持った宇宙はどのような宇宙なのだろう。物質はあるのだろうか。星や銀河はあるのだろうか。マイナスの宇宙だから、マイナス銀河やマイナス星なのだろうか。マイナスの時間の中の原子はどのようなものなのだろう。なにも言っていない。そんな宇宙は存在しないからだ。

大きな宇宙はどのようにして収縮したのだろう。物質は引力で収縮するとしても、空間は引力では収縮しない。どのような原理で収縮したのだろう。示してほしいものだ。謎のマイナス真空のエネルギーでもあるのかもしれない。

{時刻t=0に大きさがLになったところで跳ね返り}とある。大きな宇宙を跳ね返すにはかなり大きなエネルギーがいるはずだ。無のどこにそんなエネルギーがあるのだろう。それともどでかい「無の壁」でもあるのだろうか。

 

問題

{ビレンケンは、量子論特有のトンネル効果(ポテンシャルエネルギーの山を突き抜ける現象)によってポテンシャルの山の中をくぐり抜け、宇宙が創生されると考えたのである。つまり有限のLという大きさを持った宇宙がポッと生まれるのである。}

考察

 {有限のLという大きさを持った宇宙がポッと生まれる}

 この宇宙が{大きな半径を持った宇宙}なのだろうか。そんなものがポッと生まれるのでは、なんだってポッと生まれそうだ。地球ひとつだってポッと生むにはとてつもなく大変だろうに、その10245倍ほどの宇宙を生むのだからかなり大変だと思うのだが、それをポッと生むというのだから、ポテンシャルの山はすごいトンネルを持っている。

 ところで、ポテンシャルの山がどこにあったのかが不明である。ポテンシャルの山はいつできたかも不明である。ポテンシャルの山は何でできているかも不明である。普通ポテンシャルエネルギーは引力によって生じる。万有引力で引き合っている物質どうしが持つエネルギーである。無という何もない世界にポテンシャルエネルギーはどのようにして生まれるのだろう。自分の理屈に必要だから、勝手に作ったエネルギーである。すなわちビレンケンの空想エネルギーが創り上げた山であると言える。

 量子論特有のトンネル効果というが、量子論では非常に小さな量子の世界だ。宇宙がどのようにしてトンネルを抜けるのだろう。陽子より小さな宇宙だから抜けることができる、ということなのかもしれない。しかし、それはこの宇宙をつくりだす巨大なエネルギーを持っているということだ。ポテンシャルの山よりはるかに巨大なエネルギーを持っている。トンネルなどなくてもポテンシャルの山をあっさり突き破るだろう。蟻がとうせんぼしているところを像が通るようなものだ、それの10346くらいは大きさに差がある。

 もちろん、ポテンシャルの山は実証されていない。マイナスの時間も実証されていない。ポテンシャルの山のトンネルも実証されていない。そこを通り抜ける、形は小さいが、巨大なエネルギーを持った宇宙の卵も実証されていない。ないないづくしである。まだ空想から一歩も出ていないと言える。

 

問題

 {虚時間の世界で最大半径となった時点で宇宙は今度は実時間の世界へとつながると考えるのである}

{実時間の世界だけで見れば、大きさLの宇宙が突然生まれることになる。生まれた宇宙の大きさは、10−34センチメートル程度で、陽子や中性子よりもはるかに小さい宇宙である}

考察

虚時間の世界で最大半径になった宇宙が実時間の世界に現れると、10−34センチメートルだという。とても小さな最大半径だ。では虚時間の最小半径とはどれくらいなのだろうか。これは、インフレーションにしろ、ビッグバンにしろ、小さな火の玉からはじまったのだから、どうしても小さくしなければならなかったのだろう。

先ほどはマイナス時間の中の大きな宇宙が収縮して小さくなって、このプラス時間につながったが。今度は虚時間のなかで大きくなったところで実時間につながっている。まあ、マイナス時間や虚時間なるものは数式にはあっても現実世界では存在しないから、そこでは何でもありなのだろう。

 

問題

{この宇宙には真空のエネルギーが存在するものの、その全エネルギーは現在の100億光年を越える宇宙に存在する全物質のエネルギーに比べると、無に等しい。この宇宙はただちにインフレーションを起こし、エネルギーに満ちたビッグバンへと成長するのである。}

{創生と同時にインフレーションを起こし巨大な宇宙へと成長する道筋である}

考察

 {この宇宙はただちにインフレーションを起こし、}ということだから、無に等しい真空のエネルギーが、一瞬より短い時間で、全宇宙を光速よりはるかに速い速度で吹き飛ばすということになる。宇宙が光速を越える速度になるというのだから、せめて、無の1050倍くらいのエネルギーはあって欲しいものだ。加速するのにも、せめて10万年くらいはかけて欲しいものだ。現実にそんなことが起こるわけがない。言うは易しである。行うは難しである。言葉だけならなんとでもいえる。10−34秒で宇宙が100万個できた。言葉なんてこんなに簡単である。しかし、実際にこんなことは起こらないと宇宙論者は笑うだろう。だがその宇宙論者が、1秒とかからずにこの宇宙ができたという。100万個の宇宙はだめでも、無に等しいエネルギーで宇宙1個を一瞬で作るなら大丈夫なのだ。

インフレーションで倍々ゲームだからできると言っている。最初の陽子より小さい宇宙が、10−36秒(インフレーション理論ではこの時間で倍になるそうだ)で倍の大きさになるのはあり得るかもしれない、しかし、10−36秒で、太陽系が倍になるわけがない。直径10億光年の宇宙が直径20億光年の宇宙に膨張するはずがない。直径20億光年の宇宙が直径40億光年の宇宙になるわけがない。この場合、1秒間隔でも光速の60×60×24×365×20億倍の速度である。10−36秒間隔ならその1036倍である。そんな速度に10−36秒で全宇宙を加速できるわけがない。文字で書くだけでも数秒かかるのである。こんな現象が可能なら、10−36秒で宇宙が100万個できることもたやすいことになる。1万倍1万倍ゲームで宇宙ができる、と書けばいいのだから。文字なら誰でも簡単に書ける。しかし現実はそうはいかない。

 一休さんは殿様に毎日倍々で米をくださいと言った。1粒から始めた。なんと欲のないと殿様は思った。1ヶ月後殿様は降参する。渡す米が無いからだ。たった1ヶ月で降参するのだ。米がなくなるように、倍々ゲームだからといって無尽蔵に宇宙が広がるわけがない。無尽蔵にエネルギーが湧くわけがない。

 インフレーション理論家はこの加速の仕方を説明する必要がある。倍々ゲームだ、などと非科学的な理由ではなく、ちゃんとした科学の理論として、光速の60×60×24×365×20億×1036倍に10−36秒で宇宙を加速する原理を説明する必要がある。できないだろう。

 これはインフレーション論者の都合で何でもありの妄想であって科学ではない。

 

問題

 {しかし、無境界の条件を満たす量子宇宙は虚数の時間(虚時間)から始まらなければならない}

考察

 今度はマイナス時間ではなく、虚時間だ。何でもありの世界だ。

虚時間は実際に存在するのだろうか。それは実証されたのだろうか。虚時間とは現実にどのようなものなのか、言える人はいるのだろうか。数式の中だけにしかない時間から、この現実世界が生まれるわけがない。この宇宙はホモサピエンスの数式の中から生まれたのではない。この宇宙はホモサピエンスの数式の中にあるわけではない。

 

問題

 {現在、インフレーションを起こす真空のエネルギーを担うものは、インフラトンと呼ばれている.ようするにその正体は分からないのだから、かってに都合のよい条件のものを理論的に仮定し、そう呼んでいるのである。}

考察

 理論が間違っているのだから、それを正しいとするには謎のものを持ちだすしかない。その典型である。現在の宇宙膨張にも、ダークエネルギーという謎のエネルギーを持ちだしている。結果、宇宙の96パーセントが謎のものでできているという宇宙になってしまっている。観測と96パーセントも違っていても平気である。ハッブル宇宙望遠鏡や、すばる望遠鏡の観測はなんなのだろう。世界中の様々な観測施設と技術でとらえたものが宇宙のたった4パーセントで、それらで見たことも無いものが宇宙のほとんどをつくっているというのはどういうことなのだろう。普通なら、そこまでして観測できないならそれはないということになる。宇宙論では実証はいらない、理屈さえでっちあげれば通るということなのだろう。

 理論が行き詰まって、それを解決するために新たな理論を呼び、それがまた行き詰ってさらなる理論を呼ぶ。理屈が理屈を呼んで、結局、インフレーション宇宙は謎のもので始まり、ありえない膨張をし、ありえない停止をし、ありえない火の玉を生み、結果、96パーセントが謎のものでできているという、ほとんどすべてが謎でしかない宇宙になっている。宇宙論はスタートラインに戻れと言いたい。すなわち、銀河の赤方偏移の原因は銀河の後退速度でいいのかということだ。ハッブルは単位が速度になっているが、後退速度だと決めつけるのは気を付けろと言っている。そこに戻れるかな。無理だろうね。キリスト教国が今の宇宙論を先導しているかぎり。

 

問題 プレーン宇宙

{プレーン宇宙というモデルが提唱され、興味深い展開をしている。インフラトンの正体のヒントもこの展開の中で得られるものと期待したい。}

{プレーン宇宙とは{われわれの住んでいる3次元の空間と1次元の時間からなる世界は、実は10次元や11次元という高い次元の時空に浮かぶ膜のようなものだ}ということです。

考察

 謎が謎を呼ぶということだ。10次元や11次元、(この本の最初は5次元、6次元だった。人によって違うようだ)は観測されていない。これからも観測されないだろう。理由は高次元の方向には{空間が小さく丸まっているからである。これらの方向は無限に広がっているのではなく、プランク長さ(10−33センチメートル)のきわめて小さな円や高次元の球なのである。}という理由である。ビッグバン論でも、宇宙の96%は観測できない謎でできているということだった。これも観測できない、で済ませている。肝心なことはみんな見えないのだ。なぜそんなことになるかというと、自分の理論に都合がいいようにでっち上げたものだからだ。そんなものは存在しないからだ。

 この宇宙は{高い次元の時空に浮かぶ膜のようなものだ}いうことだ。一方、高次元宇宙はプランク長さの小さな球だという。この宇宙はその小さな球に浮かぶ膜であるということになる。地球からどの方向にも130億光年離れた所まで銀河があるのが観測されている。観測されている、地球を中心として130億光年の巨大な球体がプランク長さの小さな球に浮かぶ膜にどのようにしてなれるのだろう。そもそもプランク長さの多次元空間に、半径130億光年の宇宙が浮かぶわけがない。1匹の蟻が像を1000万頭支えているようなものだ。大きさをどのように考えているのだろう。直径130億光年の宇宙のどこかに、プランク長さの多次元宇宙が漂っているというなら、少なくとも大きさは大丈夫だ。

半径130億光年の宇宙にプランク長さの多次元宇宙があったとしたらこの宇宙にどんな影響を与えるだろう。重大な影響を与えているというのがプレーン宇宙論者の言い分だ。太平洋に直径1ミリの砂粒1個が落ちたら、太平洋にどんな影響をするだろう。大きさはその101000倍以上の差がある。11次元だからと言ってプランク長さの宇宙にどれほどのことができるだろう。10次元とか、11次元とかはとてつもなく珍しいからと言って、あまりにも小さいのだ。ダイヤモンドだってプランク長さだと誰も見向きもしないだろう。

 これと違う様々なプレーン宇宙が提唱されているようだ。ではそのプレーン宇宙の多次元宇宙はいつどのようにして生まれたのだろうか。多次元無があり、多次元インフレーションが起こり、多次元ビッグバンが起こったのだろうか。10次元宇宙も、30次元宇宙の膜なのだろうか。ではその30次元宇宙は何の膜なのだろうか。結局際限なく膜宇宙が続くことになる。最後はプレーン宇宙論者の都合のいいところで止めることになるのだろう。では、なぜ唯一観測できている、これからも観測できる、3次元宇宙で止めないのだろう。なぜこの宇宙が形さえ想像できない膜でなければならないのだろう。3次元宇宙だけではこの宇宙が無限に広がってしまうから困るのだろうか。それでは神様のいる宇宙がなくなってしまうからだろうか。なんとしてもこの宇宙が有限であるとしたいのだろう。中世じゃないから、宇宙が無限だと言っても火あぶりにはならないと思うよ。

 

問題

{宇宙の見えない主役}

{1970年アメリカのベラ・ルビンは、渦巻き銀河を観測し、光らない物質が隠されていなければ銀河の中での星の回転速度をうまく説明できないことに気づいた。}{銀河の中心の周りに円盤状に回っている星しかないとすると、銀河の外側では急激に重力は弱まり、星の回転速度は遅くなるはずである。}

考察

 {銀河の中心の周りに円盤状に回っている星しかないとすると、}という前提が間違いであった。この当時観測されていた物質は今に比べてはるかに少ない。現在、銀河系は直径57万光年のガスの塊に埋もれているということが観測されている。1970年代には見えなかった物質だ。銀河系は直径57万光年のガスの中に直径10万光年、高さは厚いところでも1万光年の薄っぺらな渦巻である。

{銀河の中心の周りに円盤状に回っている星しかないとすると}という仮定は、現在の観測で否定されている。星以外にその当時には見えなかったガスによる巨大な重力源があるということだ。ガスは中心から離れていくに従って薄くなるが、体積は3乗倍で増えていくから、ガスの質量はそれほど減ってはいかない。銀河系は巨大なガス楕円銀河と考えてもいい。楕円銀河は外の星も速度を落とさないことが観測されている。この本でも、{銀河全体を包み込むような大きな領域をハローとよぶが、ここに暗黒物質が広がっているのである。}と述べている。このハローに多量のガスが観測されたのだ。ニュートラリーノも、アクシオンも観測されていない。ハローの暗黒物質はガスであると言える。ベラ・ルビンには見えなかった巨大な質量がガスとして存在していたのだ。

またダークマターが{銀河団を取り囲むようにも存在していることが分かった}とある。この部分にも巨大なガスが観測されている。もちろん、ニュートラリーノもアクシオンも観測されていない。しかし、宇宙論者はどうしても謎の物質だとしたいようだ。インフレーションから始まる宇宙が構造を持つためには謎の物質が必要だし、通常の物質ではヘリウムの量も多くなりすぎるというためだ。このことから、銀河のダークマターと、インフレーションのダークマターは根本的に異なる考えであるということが分かる。銀河や銀河団のダークマターは観測から出たものだが、インフレーションのダークマターは理論から出たものである。

このベラ・ルビンなどが言っている銀河や銀河団にある謎の物質(ミッシングマス)を、インフレーション理論家はインフレーション理論から生まれるダークマターの証拠としたいようだが、銀河や銀河団のダークマターは謎の物質ではなくガスであるといえる観測がなされている。しかし、宇宙論者は、ニュートラリーノという、宇宙論者の願望以外になにも証拠がない謎の物質を最有力候補としている。その最大の特徴が、観測が非常に難しいということである。ここでも、観測が難しいから観測できなくて当然である、と逃げている。真空のエネルギーと同じである。観測できないからそんなものはないという考えを封印するためである。うまい方法である。一向に観測できないニュートラリーのとは反対に、バリオンは、観測技術の向上とともに次々に観測事実が増えている。大きな違いである。ところが宇宙論者はこれを認めようとしない。銀河や銀河団が巨大なガスの塊の中に浮かんでいる事実をいまだに無視している。ビッグバンにはバリオンでは困るのだ。そこで、マッチョ等、燃え尽きた星や、小さな星やブラックホールがダークマターだと言っている。それらは少ししか見つかっていないしこれからも必要量は見つかりそうにないから、謎の素粒子の地位を脅かさないから安心なのである。ガスがダークマターの主なのだから、そのほかの物質では足りないのは決まっているから、ダークマターの候補をそれらにしておけば、見えない物質はそのほかにあることになり謎の素粒子が存在することになる。うまいやり方だ。

 

問題

 {2008年に稼働を始めた加速器LHCでは、数年以内に超対称性粒子が見えてくると期待されている。もしそうなれば、暗黒物質は超対称性粒子であることが決定的になるであろう。}

考察 

とある。しかし、2022年現在発見されていない。{数年以内}はとっくに過ぎている。この事実は{暗黒物質は超対称性粒子でないことが決定的になるであろう。}ということになる。観測されている星の6倍もあるという、超対称性粒子が、まるで見つからないのは、それが無いという証拠である。しかし、宇宙論者はそれを認めない。見つけるのが困難、から、見つけるのが非常に困難に表現を変えて、頑張っている。なんとしてもビッグバン宇宙論を死守したいのだろう。そのためにインフレーションを編み出したのだから。インフラトンを編み出したし、謎の真空のエネルギーも編み出したのだから。結果、宇宙は謎で始まり謎に包まれ謎に終わるしかなくなってしまった。それが今の宇宙論だ。

 

問題 暗黒物質の証拠

{2007年、国際プロジェクトCOSMOSは重力レンズ効果を使って、宇宙の大構造が暗黒物質で形成されている証拠というべき、暗黒物質の3次元地図を描きだした。}

 {100億光年遠方の銀河団を透かして見ているとしよう。銀河団のほとんどの質量を担うのは暗黒物質であり、その重力レンズ効果によって遠方の銀河の像は大きく湾曲し、アーク状に見えたりする。逆に重力レンズ像からどれだけの暗黒物質が存在するかを推定することができる。}

考察

 {100億光年遠方の銀河団を透かして見ている}ということは銀河団の中を遠方の銀河の光が通過しているということである。先に書いたように。銀河団は、巨大なガスの塊の中に埋もれているのが観測されている。ガスは光を屈折させる。これは空気(ガス)が光を屈折させる現象からも実証されていることが分かる。理論も確定している。

 したがって、銀河団の中を通過する遠方の銀河の光は、銀河団のガスによって屈折するはずである。アーク状に見えたのはガスによる屈折現象といえる。

 一方、ダークマターが謎の物質であるという観測はいまだにない。また、重力レンズは仮説であって、実証されていない。エディントンの観測も、太陽コロナ(太陽の空気)による屈折現象といえる。彼の観測値は、ばらつきがあった。原因はコロナの激しい動きにより、屈折の角度が変わったためであると言える。地上から見る星の光が瞬いている現象と同じ現象である。もし、太陽の重力が原因なら、太陽の重力が星の光をまたたかせるほどの急激な変化を起こすことはないから星の観測値に変化(またたき現象)は起きないので、観測値にばらつきが出ることはない。

エディントンの観測は、太陽コロナによる屈折としたらぴったりだが、重力によるとしたら、正確な観測ではない、とか、あの当時の観測器では正確に測れなかったとか言われているように、アインシュタインの理論とは一致していない観測結果であったと言える。

 仮に一歩譲って、重力レンズによる屈折があったとしても、銀河団のガスによる屈折も必ず起こっているはずだ。ガスによる屈折は、地上ではありふれた現象なのだから。地上では観測された事の無い重力レンズの現象だけとは言えない。

 ということで、このダークマターの地図は、暗黒物質が、普通のガスの塊であることの証拠にもなるということである。

 この3次元地図も、ダークマターが謎の物質であるというインフレーション論者の願望によると言える。銀河団をうずめているガスの可能性を完全無視している結論であると言える。一番不都合なことをまず取り上げなければならないという科学の方法論に反している。{普通の物質は、宇宙全体の膨張や運命を決める役割においては、ますます片隅の脇役に過ぎないことになってきたのである。}ということを言いたいがために、不都合なことは無視するという、科学ではやってはならないことをやっていると言える。

 

問題

 {普通の物質は、宇宙全体の膨張や運命を決める役割においては、ますます片隅の脇役に過ぎないことになってきたのである。}

考察

 宇宙を構成しているものは、普通の物質は4%しかなく、暗黒物質が23%、暗黒エネルギーが73%であるということだ。

 96パーセントが、謎のなにかであるということだ。実際に観測されているものは、星や銀河や、ガスなどの普通の物質だけである。なぜ。96パーセントのものが観測できないのだろう。

 簡単である。この宇宙がインフレーションやビッグバンでできたからである。謎の火の玉で始まり謎の膨張をし、謎の重力源や謎のエネルギー源でできたからである。謎で始まった宇宙が謎だらけになるのは決まっている。

 ダークマターは、先に書いたように、ミッシングマス(銀河や銀河団の回転を支える引力源)である可能性が高い。銀河や銀河団を包んでいるガスということだ。銀河の見える部分は銀河のガスの中のほんの一部分であるのが観測されている。銀河系のガスはアンドロメダ銀河まで続いているという観測もある。銀河団は銀河が集合している。その銀河間は何百光年も離れている。その銀河団を大きく包んでガスが存在するという。ガスが希薄であっても体積は非常に巨大なのだから、ガスの量はとてつもなく巨大といえる。書いたように、このガスで銀河団のダークマターは説明できる。この観測事実から、ダークマターは観測できない謎の物質で説明するのではなく、観測できたもので説明することができる。

 ダークエネルギーも理論からの要請だ。観測された、銀河の赤方偏移の結論だ、というが、銀河の赤方偏移は宇宙膨張の証拠であるということは証明されていない。ビッグバン論者が、そう考えているだけだ。銀河の光の赤方偏移は、宇宙の塵に衝突したためであるという考えもある。しかし、この考えに科学的な反論をしているビッグバン論者はいない。ここでも不都合なことは無視している。

銀河の光が宇宙の塵に衝突していることは、銀河の光のスペクトルで観測されている。光が物質に衝突するとエネルギーを減じることは身の回りでも日常的に観測されている。この二つは科学的実証がされているから、銀河の光が宇宙の塵に衝突して赤方偏移していることは十分考えられる。一方、光が空間膨張によって引き伸ばされて赤方偏移するということは憶測だけで、科学的実証はなされていない。ちゃんとした理論もない。それなのに、銀河の赤方偏移が、宇宙に浮かぶ塵のために起こるという考えには一瞥もしないのは、それを科学的に否定することができないからと思われる。そうなってはビッグバンそのものが否定されてしまうからだ。ビッグバンがなくなれば、この宇宙が無限に広がってしまい、神の住む場所がなくなってしまい、光あれと言って、宇宙をつくった神様の存在が証明されなくなってしまうからではないのだろうか。ルメートルは牧師だということだ。法王がビッグバン論を知って、これこそ神の証明だと喜んだとき、喜びを出さないでください、科学者が宗教だと言ってそっぽを向いてしまうから、と言ったとかいわなかったとか。

 空間が膨張する仕組みは謎である。ダークエネルギーは謎である。ダークエネルギーが空間を膨張させる仕組みも謎である。膨張した空間が銀河団を動かす仕組みも謎である。空間が膨張しても地球の運動には一切影響しないのも謎である(巨大な銀河団に働きかけ高速で動かすのに、小さな地球になにもしていないのは変である。重力が強いからというがそんなことで説明できるほど空間膨張の力は弱いのだろうか。銀河団をそっくり動かす力があるのに)。

小さな1点から今の巨大な宇宙に膨張したということは、この宇宙の外に空間があるということになる。それはいつから、どれくらいの大きさであるのか不明である。この宇宙の膨張の最先端はどうなっているのか不明である。この宇宙と最初からあった空間は衝突しているのだろうか。それとも何もないから衝突はしないのだろうか。この宇宙の空間と前からあった空間とは違いがあるのだろうか。この宇宙の空間が膨張すると、前からあった空間は圧縮されるのだろうか。何もかも不明である。

 

終わりに

 なぜこの宇宙は謎が96パーセントも占めているのかというと、ビッグバン理論のためである。ビッグバン理論が間違っているからである。ビッグバン理論が正しいとすると、それを裏付けることができるのは謎しかない。この宇宙が96パーセントの謎でできていなければならないような理論は、間違いであるという証拠でもある。

 そのビッグバン論の不備を補うために考えられたインフレーションもありえない現象ばかりでできている。もちろん、インフレーションもビッグバンも実証はない。現在のどの爆発もそれらの爆発とは程遠い。仕組みもまるで違う。この宇宙の96%を占めるダークマターも、ダークエネルギーも実証はない。インフレーション宇宙論はすべて実証されていない現象でできていると言える。科学としては成立していないと言える。