へいこく雑記帖
インフレーション宇宙論への疑問

インフレーション宇宙の速度

著者  田 敞

問題


 佐藤勝彦氏はその著書「宇宙論入門」(岩波新書)で下記のように述べている

 インフレーション宇宙論は、10−36秒ごとに宇宙が倍々に成長するという理論だ。


考察

佐藤氏は、宇宙が倍々ゲームで100回膨張すると、太陽系の大きさになり、140回繰り返すと今見えている宇宙の大きさを越えると言っている。かりに、宇宙が倍々を繰り返して直径が地球太陽間の距離まで膨張したとしよう。そして、宇宙がその後も倍々ゲームで大きくなったとする。すると次の10−36秒で宇宙は地球太陽間の2倍の大きさになる。これは全方向に地球太陽間の半分の距離膨らむことである。太陽と地球の間は光で約500秒かかるという。ということは、宇宙の膨張速度は一番速いところで光の速度の250×1036倍になる。10−36秒間でこの速度に加速するということだ。

銀河系の大きさの宇宙ならどうだろ。見える星の部分の直径は10万光年になる。これが10−36秒で倍に膨れるということだ。平均速度は光速の5万×365×24×60×1036倍ということだ。この速度に10−36秒で加速するということになる。これがインフレーション宇宙論だ。科学者がこんな奇想天外なことを言っている。

一休さんは殿様に毎日倍々で米をくださいと言った。1粒から始めた。なんと欲のないと殿様は思った。1ヶ月後殿様は降参する。渡す米が無いからだ。たった1ヶ月で降参するのだ。インフレーション宇宙論者はこの殿さまだ。殿様のように、倍々ゲームで宇宙が広がるのは最初は欲のないと思うことかもしれないが、1秒とかからずにとてつもない現象になる。米がなくなるように、倍々ゲームだからといって宇宙がこのような超光速になるわけがない。宇宙論者はこの速度をどのように考えているのだろうか。たぶん考えていないだろう。殿様が先のことを考えずに欲のないことと思ったように。

インフレーション理論家はこの速度と、それに至る加速の仕方を説明する必要がある。倍々ゲームだ、などと非科学的な理由ではなく、ちゃんとした科学の理論として、光速の150×1036倍に10−36秒で宇宙を加速したり、光速の5万×365×24×60×1036倍に10−36秒で加速したりする原理を説明する必要がある。できないでしょう。今分かっている物理の理論で説明できる現象ではないからだ。

問題はもうひとつある。インフレーションの終わり方だ。

インフレーションは突然終わってビッグバンになるという。光速の5万×365×24×60×1036倍以上の速度になった宇宙をどのようにして停止させたのだろう。インフレーションが終わり、膨張エネルギーが熱に変化したから膨張が止まったと言っているが、停止させるシステムはどうなっているのだろう。広大に広がった宇宙が、どのようにして一瞬より短い時間で同時に停止したのだろう。50億光年の宇宙が10−36秒で倍の100億光年に膨張するときは、光速の250億×365×24×60×1036倍の速度で広がる。この宇宙をどのようにして瞬時に停止させたのだろう。

また、ビッグバン宇宙論では地平線問題というのがある。光速で情報が伝わってもそれより離れているところ同士では同じ現象は起こらないはずだという考えだ。インフレーションが終わるときも巨大に広がった宇宙で同じ現象が起こるのではないだろうか。

停止の信号を100億光年以上に広がっている宇宙全体に10−36秒以内に伝えたのだろうか。情報伝達が10−36秒を越えると100億光年の宇宙は200億光年の宇宙に膨張してしまう。その次の10−36秒では宇宙は400億光年に膨張してしまう。佐藤氏は光速を越えて伝わる情報はないと書いている。100億光年を越える宇宙が10−36秒以内に一斉に停止するための情報の共有は不可能であるということだ。しかし、インフレーションは一瞬で停止したと言っている。インフレーションは光速をやすやすと越えていることから、停止の情報も簡単に光速を越えられるのだろうか。インフレーションは突然終わった、と言うのは簡単だ。だけど現実に10−36秒以内に情報を100億光年の宇宙全体に伝えることなどできるわけがない。

1歩譲って、停止の情報が光速で伝わるとする。しかし、光速では膨張の方向には伝わらない。膨張の方がはるかに速いのだから。だから停止の情報が宇宙の中心から発せられた場合、停止の情報の速度は宇宙膨張の速度を上回らなければならない。ところが宇宙は10−36秒ごとに速度を倍々に上げている。いくら追いかけてもとても間に合わない。そのうえ、外側の宇宙は倍々の速度ですっ飛んでいくのだから、中心の停止情報ですでに停止している宇宙と外側の倍々に膨張している宇宙の間が乖離してしまう。その乖離しているところは何が占めているのだろう。まあ、インフレーションで膨張しているのは真空だし、乖離しているところも真空だから変わりはないかもしれない。真空は真空なのだから。しかし、インフレーションの真空は宇宙膨張のエネルギーであると言っているから、この乖離した部分の真空のエネルギーは宇宙膨張のエネルギーとしてさらに宇宙膨張を促すことになり、宇宙は停止するどころか、倍々ではなく3倍3倍くらいに膨張を速めるのではないだろうか。すると停止部分と膨張部分の乖離はさらに大きくなり、膨張エネルギーは飛躍的に増え、膨張速度は10倍10倍どころか100倍100倍くらいに大きくなり、宇宙はアッという間に、1000兆光年以上に大きくなってしまいそうである。まあ、倍々でもアッという間に宇宙は100億光年を越えて大きくなるから、そんなに差はないか。言えばインフレーション宇宙は法螺話と大差はない。嘘は大きくつけということだ。

反対に膨張の最先端から止まれの情報が出たとする。そのときは10−36秒以内に100億光年以上の距離を飛んで情報が真ん中まで伝わらなければならない。これも大変困難が予想される。宇宙は超光速で外に広がっている。それも10−36秒で倍の速度になる。それを逆走するのだ。超光速で上っているエスカレーターをかけ下りるようなものだ。情報は超超超光速でなければならない。その場合でも外の宇宙が停止しているのに、情報がまだ伝わっていない中の宇宙が膨張を続けるから、外の停止した宇宙に中の膨張している宇宙が追突してしまう。追突した宇宙はどうなるのだろう。真空と真空が追突しても何もないと何もない同士だから、何もないの2乗になるくらいか。

また、宇宙の表面が同時に停止するには、情報を表面全体に同時に伝えるには超超光速がいる。それも大変だ。まあ、インフレーションなんてありえない現象だけでできているのだから、どんなありえないことでも起こるのだろう。

まあ、インフレーション論者にはこんなささいなことはどうでもいいことなのだろう。もちろんささい過ぎて答えることはできないだろうから、無視するしかないだろう。

インフレーションによる宇宙の膨張が停止した原因は、膨張のエネルギーが熱エネルギーに変わるから膨張しなくなったと述べている。

慣性の法則だと加速のエネルギーがなくなっても同じ速度で動き続ける。空間はどうなのだろう。インフレーション空間には質量がないから、当然慣性質量もないから加速エネルギーがなくなると瞬時に停止するのかもしれない。しかし、そのときは倍々で膨張する宇宙を加速するときもそれまでの速度は継続されないから、常に0から加速しなければならない。倍々ゲームに反することになる。

こんなことが現実に起こるわけがない。もちろん光速より速いものはないという相対性理論にも反しているし、光速では時間が止まるという相対論にも反している(注:私は相対論は間違っていると思っているが、宇宙論者は相対論も根拠にしているので)。佐藤勝彦氏もその著書「宇宙論入門」の中で光速を越えるものはないと述べている。同じ著書の中でインフレーションは超超光速であるとも述べている。矛盾も甚だしい。そのことも説明しなくてはならないはずだ。必要なら説明する事象によってころころ原則を変えるのでは科学とはいえない。加速膨張にエネルギーが必要なら,停止にもエネルギーが必要なはずだ。そのエネルギーはどこから湧いてどのようなエネルギーなのだろう。科学的説明がいるはずだ。倍々ゲームには停止のことについての科学的説明はない。まあ、倍々ゲームだって科学的説明はないのは同じだけど。

結論

ありえない現象だけで成り立っているのがインフレーションの倍々ゲームだ。だから今の宇宙が謎のものが95%も占める宇宙になることになる。

 一休さんの殿様は1カ月で米がなくなり降参したけれど、インフレーションは1秒とかからずに破たんすることになる。

 これはインフレーション論者の都合で何でもありの妄想であって科学ではない。