第1話「新しき羽の初陣」
Written by ハティ







「AMS接続・・・正常」 俺の心が機体と一体となる。

「機体状況・・・オールグリーン」

1度消えた感覚が再び広がり、本来の身体と同じように感じられる。

「VOB接続・・・完了」

「全工程の終了を確認。全システムオールグリーン、出撃準備完了」


さぁ・・・ミッションを始めよう。

「ジェネレータ機動・・・初陣よ、必ず帰ってきて。リンクス。」

翼をもがれた鴉は、再び翼を持ってよみがえる。


・・・そう、あれはいつだったか。ノーマルを駆る傭兵として、

その道ではかなり名が売れていた私にとあるミッションが依頼された。

さる企業(規定によりクライアントネームを喋る事はできない)のノーマルAC部隊に加わり、

相手企業の研究所の1つを襲撃する作戦だった。

作戦はうまくいっていた・・・あの悪魔が現れるまでは。


「悪いが、それ以上やらせるわけにはいかない。」

そう通信機がこの1言を拾った時までは・・・

俺がいた部隊は壊滅した。

いや、その作戦に従事していた全ての部隊は、たった1機のACによって壊滅した。

俺は率いていた小隊に全ての火力を集中するように命じた・・・

だが、それでもたりなかった。

砲弾は避けられ、ミサイルは撃ち落され、機銃弾はPAによって弾かれた。

圧倒的な暴力によって、数週間から数ヶ月をかけて立案、計画、実施された作戦は無に帰った。

部隊が全滅しても奇跡的に生きていた俺は、事後処理に来た企業に拾われ、AMS適正を見出された。

そして・・・とある人と知り合い今に至る。


「・・・よって作戦目標はラインアーク主権領域境界線に展開している守備部隊を撃破することになります。」

事前情報によれば、目標はMTが十数機とノーマルが2個小隊。

初陣のリンクスとはいえ、ネクスト1機を動かすだけの価値もあるまいが・・・

「・・・このミッションはあなたの試金石でもあります。確実なミッション遂行を期待しています。」


それだけ俺の実力は過小評価されているということか・・・

ならば刮目してよく見ておくがいいさ。

これが俺が獲た、力だ!



VOBを切り離し、着地した地点のすぐ近くにMTの小隊が3つ、レーダーにはそれ以外にも2個の分隊が映っている。

「じゃあ、恨みはないけど死んでもらうよ!」

俺の機体には右手にマシンガン<03-MOTORCOBRA>、左手にショットガン<SAMPAGUITA>、

背中左側にはハイアクトミサイル<POPLAR01>が装備されている。

フレームはインテリオル製最新鋭軽量機<Y11-LATONA>を使用。

近接戦を前提とした軽量機体だ。

ブースタを吹かかし、QB(クイックブースト)で距離を詰める。

右手のマシンガンで1番近くに展開していた小隊をなぎ払う。

いまさら狙いを付け始めたMT達を嘲笑うかのごとく飛翔。

空中でショットガンを発射。


PA以外のネクストの装甲にはそれほど効果のないショットガンだが、

装甲の薄いMTにはその1〜2発が充分な脅威だ。

ショットガンに2〜3機が撃ち抜かれ、生き残ったMTもマシンガンの掃射でなすすべなく鉄屑に変わっていく。

あっという間にMTの小隊3つが壊滅、橋の上に展開しているMTも同じ末路をたどった。

「くそっ!効いているのか!?」

「PA(プライマルアーマー)だ!まずはPAを減衰させるんだ!」

通信が混線しているのか。敵MT部隊の隊員と指揮官との会話と思しき通信がはいってきた。

そう、その指揮官がいっている事は正しい・・・だがMTではそれすらかなわない。

かといって・・・・・・

このままいってもつまらないな。

少しスリルを味わってみることにしよう。


トンネルの向うに展開しているMT部隊を見据える。

OB(オーバードブースト)を展開、弾丸のごとき速度でMT部隊の真っ只中に踊りこむ。



・・・瞬間、世界は光で染まった。

MTのパイロット達は、何も分からないまま光に飲まれ、消滅した。

AA(アサルトアーマー)、ネクストの防御力の要であるPAを全て攻撃に使う技術。

圧倒的な威力、まさしく光の奔流。

しかしAAの直後、ネクストの防御力はノーマルと同程度にまで低下する。

当然だ、本来防御用のPAを攻撃に転用するのだから。

AAを使った後はPAを展開する事は出来ない。

また、必然的に発生する光によってカメラ機能も一時的に低下する。

防御を捨て攻撃を最重視するこの技術はまさしく諸刃の剣。

だが相手はノーマルだ。

ネクストの機動性についていけない相手にはPAなどあってもなくても変わらない。

OBを切り、QBで橋から離れる。

1瞬前にネクストが存在していた空間にバズーカが撃ち込まれる。

バズーカは避けても反対側の橋にいるノーマルから放たれたミサイルは、

その本分を全うしようと猟犬のようにくらいついてくる。

ロックオン機能が戻る、FCSが迫り来るミサイルをロック、右手のマシンガンが火を噴いた。

6発のミサイル全てを迎撃、同時に左肩のミサイルポッドを起動、ロックオン開始。

ノーマルがバズーカを構える。

大丈夫だ、こちらのミサイルのほうが早い!

ポッドから放たれたミサイルはロックオンした的に喰らいつく。

ネクストのミサイルはPAに着弾してもダメージを与えられるよう航続距離よりも威力を重視している。

ノーマルの装甲ではひとたまりもない。

2機のノーマルはバズーカを撃つ前に直撃を喰らい吹き飛んだ。

残りの2機もマシンガンとショットガンで仕留め、ミッションコンプリート。

やはりこの程度の戦力では、スリルすら感じないか。

敵の弾丸は数発当たったようだが、全てPAに弾かれている。

こちらの損害は0、どうやらホワイトグリントが来る前に帰れそうだ。


「お疲れ様でした、リンクス。」

「レイルさんも、オペレートお疲れ様。」

輸送機に揺られ、カラードから支給された格納庫にACを入れた。

後は整備班の人がメンテナンスなどをやってくれる。

報酬もきちんと振り込まれたようだ。

オペレーターのレイルさんから報告が来ていた。

ネクスト・・・圧倒的な暴力の象徴。

企業軍の主力はAFに移ったとはいえ、いまだその戦術、戦略的価値は高い。

この力を・・・俺は扱いきれるのか。

「力を過信したものは、その力によって我が身を滅ぼす。」

本物のレイヴンだった養父は常々そういっていた。

いいさ。扱いきれなかったときは、即ち俺の死であるのだろうから。

今日は初陣でいささか疲れた。

今日ぐらいはシャワーを浴びて寝るとしよう。


明日から、またレイヴンとして。



金のあいだを渡り歩く1羽の鴉として血で血を洗う毎日に戻るのだろうから・・・









あとがき(?)

え〜何を思ったのか勢いで書き始めてしまった小説です。

自分に文才はないので批判、忠告どしどし下さい、善処します。

ただし作者の技量が追いつくかどうかは別の問題ですが・・・


    

投稿小説 〜新しき羽の初陣〜

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