ジャスミンの風

                                         
                                           
4 -2- アンコール遺跡



8/15(金) 晴れ;

  いよいよ待望のアンコール遺跡群探訪に出発。朝6時40分頃 我々4人はトンレサップ川沿いの船乗り場に到着。船はKhemara号という130人乗りのス
ピードボートで、通常料金25$の指定席。 乗船前にペットボトル入りの水を買って乗り込む。外国人を中心に満席で 定刻7時に出航。雨期に入っており水
かさが増して茶色く濁っているトンレサップ川を朔行し 一路300kmほど北西方にある街シエムリアップを目指す。船には屋根が付いており その上に登る
ことが出来るし、また船の前面(運転席の前の船外)にも立ち入ることが出来る。前面に座っていると時速60kmぐらいだろうか風を切って進むので涼しい。
両岸には日ごろとは違う角度から高床式の民家やらお寺やら砂糖椰子の風景やらを臨むことができ、カンボディアに居ることを実感する。

          

時々子供が大声を出して両手を振ってくれるので、こちらまでうれしくなってくる。そこに座り込んだまま目をつぶっていると 今自分がカンボディアにいるこ
とをフーッと忘れてしまう。川幅が広くなったり狭くなったりということを繰り返しながら3時間余り走り続けただろうか突然視界が開けた。水面積が琵琶湖
の3倍以上あるというトンレサップ湖だ。大きくて対岸は見えない。雨季には水面積がさらに3〜4倍になるらしい。トンレサップ湖を北西方向に進むこと約
1時間で水上生活者の集落に入って行く。しばらくするとパイロット船がやって来て、ロープをくくりつけ細い水路を引っ張り始める。30分ほどそういう状態
が続きやがて前方の岸辺に大勢の人々が見えてきた。上陸地点だ。

    

荷物を持ってゾロゾロと細い橋板を渡り、日本語ガイドと運転手を探す。しばらくキョロキョロしているとYOKOYAMA TAKEHIRO様と書いた白い紙を掲げ
たガイドを発見。ホッとする。12時に着いたので丁度5時間かかったことになる。快適な船旅だった。我々4人とガイドは専用車(10人乗り)に乗り込み シエ
ムリアップ市内に向かう。クメール人のガイドはきれいな日本語をしゃべるが、日本には行ったことがないと言う。途中トンレサップ湖畔にそびえる丘上式
寺院のあるプノン・クロムを左手に見ながら、雨季の最中にはすぐそばまで冠水するという土砂道を走ること約30分でシエムリアップの中心部に到着。シ
エムリアップの第一印象は空気が澄んでいて、さすが観光都市らしく埃っぽいプノンペンと比べて清潔でゴミゴミしていないということだった。車の数もはる
かに少ない。SARSの影響がまだ残っているのか観光客も思ったより少なく見える。昼食後ホテルで小休止した後 早速車でアンコール・ワットの前を通り
過ぎ、アンコール・トムの東側に位置するタ・プローム(1,186年建立)を訪れる。途中の料金所で3日分有効の入場料金40$を支払い 顔写真付きの共通
入場パスを受け取る。タ・プロームは広大な敷地の中に砂岩が往時のまま積み上げられており、巨大なガジュマロの幹が大蛇のように容赦なくそれらの
石積にからみついているのを目の当たりにすると、ついこの間までジャングルの中に眠っていたことが否応なく実感でき 自然の猛威に圧倒される。あた
りは薄暗く神秘的な雰囲気が漂っているようで、一瞬現在の地球に住んでいることを忘れそうな錯覚に陥る。

    

    

  1時間ほどでタ・プロームを辞し、待望のアンコール・ワット(12世紀前半に建立;朱印船貿易の盛んだった17世紀に訪れた日本人は これこそが祇園精
舎だと信じて疑わなかった という)を訪ねる。ナーガ(蛇神)の欄干の付いた西参道から両側に環壕(周囲5.4km)を見ながらまっすぐに 須弥山を模したとい
う中央祠堂を頂点とする5つの尖塔を目指して進む。西参道の南半分は旧宗主国であるフランスチームによってきれいに補修されているが、モルタル等
の近代的な材料を用いて修復されており、ちょっと周辺の景観とは似つかわしくない。一方 北半分は凸凹に沈下したままで、上智大学グループを中心と
する「アンコール遺跡国際調査団」によって現在修復の真っ最中であって、赤茶色のラテライト(紅土岩)等の石材が所狭しと並べられており、クメール人の
職人たちが炎天下で昔通りの手法で石を削ったり積んだり 熱心に作業をしている。文化という面からも将来を担う若いカンボディアの専門家たちの成長
と活躍を期待したい。テラスを過ぎて参道の両側に経蔵や聖池を眺めながらさらに進む。

          

アンコール・ワットではやはり何といっても中央祠堂を中心として至る所の砂岩に彫刻されているデバター(女神像)の立ち居振る舞いの素晴らしさであろ
う。未完の像もたくさんあり工程が想像でき楽しい。また窓格子に彫られた連珠模様も見れば見るほど素晴らしい。もちろん第一回廊の南東面に彫られ
た天地創世神話「乳海撹拌」や「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」等古代インドの叙事詩を題材としたレリーフも物語性があり、深く興味を引かれ感動す
る。とにかく当時の支配者の権力の強さが思い知らされ、何を見ても素晴らしいということに尽きる。


          

天候にも恵まれ暑い。と突然携帯電話が鳴り 取り上げると我がメイドからだった。用件を訊くと 毎日戸締まりをするように頼んでおいた当方の居間の鍵
が見つからない、ということだった。分かった、そのままでいい と言って切る。中央祠堂付近でJICAの健康管理員夫妻にバッタリ出会う。帰途 土産物店で
絹製のクロマー(スカーフ)を2枚購入。
  一旦ホテルに帰って休憩したあと、今度は夕陽を見るためにアンコール・ワットとアンコール・トムの間に位置する聖山プノン・バケンに登る。急勾配の
参道を20分ほどで登りつめると(象に乗って登る道もあり)、テラス状の広場があり 奥には丘上ピラミッド式の遺跡がある(10世紀初めに建立)。すでに欧
米の観光客で満杯状態となっている。東南の方角には樹海に埋もれたアンコール・ワットの尖塔や満々と水をたたえた西バライ(今も灌漑用水として利
用)を見下ろすことが出来る。昔日を思いやると感動的な風景である。また遠く北側にはアンコール王朝発祥の地 プノン・クーレン丘陵の山並みを臨むこ
とが出来る。西バライの向こう側の密林にアッという間に沈んで行く夕陽は荘厳そのものだった。足元が暗くならないうちに下山する。


          

夕食時には天女の舞い「アプサラダンス」を見ながらのバイキング方式のディナーショーを楽しんだ。最後は舞台上でダンサー達と記念写真を撮ってお
開きとなった。ホテル帰着は20時過ぎ。

       





                                         
                                           


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