第134夜 幻の傑作騎手RPG!「ジョッキーズロード」
ゲームの紹介はこちら。
プレイヤーが競馬の騎手となって、大レースを勝ち抜いていくゲームというのは、僕の記憶の限りではファミコンの「ファミリージョッキー」(ナムコ)にはじまり、ギャロップレーサー(テクモ)やG1ジョッキー(KOEI)など、さまざまなゲームが発売されてきました。ゲームセンターには、ここでも取り上げたことがある「ファイナルハロン」(ナムコ)なんていうのもありましたし。
しかし、数あるこの「騎手ゲーム」の中で、僕がいちばん面白かったのが、この「ジョッキーズロード」なのです。
主人公(=プレイヤー)は、競馬学校を卒業したばかりの厩舎所属の新人騎手としてデビューします。そして、レース日以外は厩舎めぐりをして騎乗馬を集めたり(これがまた妙にリアルで、最初のころは「お前を乗せてやるから、ありがたく思え」という扱いなのですが、自分が腕を上げて評価が高くなると「ぜひ乗ってください!」みたいな感じになってきます。きっと、実際の騎手もそういうものなのでしょう)、調教に乗せてもらって馬の調子を上げたり(最初のほうは、調教に乗っても失敗ばかりで「もう乗りたくない…」とか思うのですが)しながら、週末のレースに出て、少しずつ技術を磨いていくのです。
このゲームはかなり操作が特殊で、X−boxのコントローラーの2本のレバーをうまく操って、馬を加速させたり曲がらせたりしなければならないのですが、実際にやっているうちにものすごく「自分で馬を動かしている」ような気分になってくるのです。ゲーム内でのパラメーターの上昇とともに、プレイヤーの操作技術そのものも向上してきて、最初はレースに出るのが憂鬱だったのが、どんどん勝てるようになっていくという快感を味わえるのです。「俺って、天才騎手なんじゃないか?」というような充実感。
乗せてもらえる馬もどんどん強くなっていきますし、【勝つ→周りから評価されていい馬に乗せてもらえるようになる→さらに勝てるようになる】というポジティブスパイラル。
実際のレースでの駆け引きも面白くて緊張感もあるし、乗れる馬には「気性が荒くてムチを入れると暴れる馬」とか「逃げられないと全然ダメな馬」とか個性もいろいろいて、本当によくできています。最初はスタートがうまく決められなくて、ものすごく苦労しましたけど。
そして、このゲームの最大のポイントは、そのストーリー性です。単に「騎手として成長していく」だけではなく、その合間には、さまざまなドラマチックなイベントが起こっていきます。競馬学校の同窓生たちとの微妙な関係や、愛馬との別れや、ライバルとの戦い、しかもそのイベントが、競馬フリークにとっては、「こ、これはメジロマックイーンのあれだ…」とか「福永洋一のあの事故だ…」とかいうような、聞き覚えのある競馬界のドラマを体験できるので、「騎手のゲーム」というより「騎手の世界をモチーフにしたRPG」と言ったほうがいいのかもしれませんね。競馬の世界に興味がない人にとっても、けっこう楽しめるゲームだと思います。
ただ、イベントのために「なぜかスタミナ切れのはずの馬が直線で猛ダッシュ!」というような「プレイヤーにとっては、不可解な強制進行」が発生するというのは、ちょっとどうかな、と思うこともありますが、それも許容範囲だと思えるくらい「面白い」のです、このゲーム。
本当に、もっと話題になって、売れてもいいゲームだと思うのですが、残念なことにX−boxのみでの発売だったため、あまり世間に評価されることはありませんでした。もちろん、X−boxのゲームとしては、それなりに売れたようではありますが…
できれば、PS2とかでもう一度陽の目を見せてあげたいゲームだなあ、と思うのですが、コントローラーのレバーが2本必要だし、難しいかな、やっぱり。
正直、僕がX−boxでまともに遊んだゲームって、本当にこの1本くらいのものなのですが、このゲームで遊べただけで、X−box買った甲斐があった、という気もします。
それにしても、このゲームをやっていると、武豊の騎手人生って、なんて「ゲーム的」なんだろう…とか考えてしまうのです。本物のゲームよりもゲーム的な、ドラマチックな人生。
ちなみに、去年の秋には、廉価版も出たみたい。でもX−box……