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何時くらいに寝付いたんだろう?
外は、まだまだ真っ暗。
ポツンポツンとついている灯りの下では、きっとみんな、
仲良く笑い会ったり、求め合ったりしてるんだろうなあ。
私、どうしたらいいんだろう…速雄に明日会ったら、どんな顔をしたらいいんだろう…
眠ろうとしても目がさえて仕方がない。
少し冷たい空気を入れて、気分を変えようと窓際に向かったそのとき、シャンシャンシャンシャン……
空の向こうから、鈴の音が聴こえる。
幻聴、じゃないよね。
しかも、その音は、わたしの家の方に近づいてくるのだ。
…私は、窓越しに、トナカイに引かれて空に浮かんだソリに座り、
紅白の服を着て、大きな袋を抱えている恰幅のいい男の人の姿を見た。
「サンタクロース…ほんとに、サンタクロースなの?」
もちろん、わたしの呟きに答えてくれる人などいやしない。
それに、今のわたしには、このあまりに幻想的な光景ですら廃墟に等しい。
「速雄、あなたがサンタクロースだったら、よかったのにね」
ダメだ、また涙が出てきた。「恋人がサンタクロース」なんて、嘘。
こんな夢になんか、騙されないと自分に言いきかせ、ベッドに戻ろうとした、そのときわたしは、自分の眼を疑った。
空中を右にカーブしたソリは、よく見てみると小型のオープンカーのようになっており、
運転席には、トナカイの着ぐるみを着た人間だったのだ。
そのうちのひとりは女性らしくて、地図を見て隣の男と何やら話している。
そして、彼女の隣に座っている男は、間違いなく速雄。
雪まみれだけど、真剣な顔で運転している顔を、
いつも助手席に座っているわたしが、間違えるわけないじゃない。
ソリはあっという間にその場を去ってしまったけれど、
わたしは、なんだか可笑しくって、でも涙をポロポロこぼしながら泣き笑い。
こんなときまで、縁の下の力持ちなんだから…
明日は、速雄のためにとっておきの料理を作ってあげよう。
速雄は子供たちの喜ぶ顔を見られなかっただろうから、
その分、わたしの笑顔を見せてあげよう。頑張らなくっちゃ!
わたしたちのクリスマスは、まだまだこれから。
トナカイさん、あなたは私にとって、世界でただひとりのサンタクロースなんだからね。