ディオニュソスとペプロフォロス
ー東京大学ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査隊の一成果」


         東京大学・校門前案内板


私はこういう展覧会があることを知らなかったのだが、Takさんの記事を読みどうしても行きたくなった ミロのビーナスもロダンもマイヨールの女性たちも今までの私にとって作品だった そこに、急にローマ人が迫って来たのだ

2003年の9月の夕方「東京大学ソンマ・ヴェスヴィアーナ発掘調査」の手によって見つかった2000年前ローマ時代の彫刻 この発見の経緯はパンフレットに詳しく載っているのだが、感動する 


・・・即座に掘削を中止し、刷毛でその白いものを掃いてみると、なんだか「渦」が巻いている。「これは、もしかして?」と思うものの、半信半疑の状態であった。「彫像ならばいいな」と思う気持ちと、「違うかもしれないな」という気持ちが交錯している・・・パンフレットより抜粋


私はアガサ・クリスティの小説が好きで(クリスティ氏は考古学者で婦人は発掘に同行している)、考古学の発掘現場の描写を読んだことあるので、地道な根気の要る仕事らしいこと分かり、その幸運の感動が伝わる

東大は構内に入ったこともなく、傍で見たことさえなかった 構内は広く、レンガの建物に緑が多かった 守衛さんに聞いて向かった先は目立たない建物だった 博物館なので、入り口の部屋から化石やなにやらの展示物があるが、向かうのは奥の部屋で他を観る余裕はなかった 

2つの部屋を抜けると、暗い部屋の中のそこだけ明るく「ディオニュソス」が白く浮かび上がっていた 






ディオニュソス



傍で見ると女性のような美しい顔立ちだった 表情にも立ち姿にも柔らかい甘さがあった (写真では足がありますが、膝から下は他の素材で足してあります)後姿は細っそりしていて少年だった お尻がきりっと盛り上がっていて触りたくなるようだった 

「ペプロフォロス」と比べてみると分かるが、「ディオニュソス」には少しオレンジが色が入っている これは大理石の模様だろうかと考えたのだが、今まで大理石の彫刻で目立つ模様のある作品は見た事がないので、地中にあった時に何かが付着して出来た色なのだろう・・

その色模様は顔にはなく、淡く黄色味がかった大理石にオレンジ色の模様はかえって彫刻を暖かい物にしていた 





ペプロフォロス






「ペプロフォロス」は「ディオニュソス」と比べると、真っ直ぐに立った姿は硬い印象だった 

日本人の巨乳好きで感じるのだが、ギリシャ・ローマ彫刻の女性に巨乳を見た事がない ミロのビーナスにしても、今の女性と比べたらずいぶん体格はいいが、寄せる必要も垂れる心配もないようなキレイな円錐形のオッパイだ 「ペプロフォロス」もそうだった 日本人から見ると胸の位置がずいぶん高いなと羨ましく眺めた 

頭の波模様を見ながら、これが土の中から出てきた時のことを思った この頭がだんだん出てきた時どんな気持ちだっただろうか・・・ まだ土を被った写真の展示もあり、感激が伝わった

これらは2000年も前のローマ人の手で作ったもの 2000年前の彼らがノミをふるい、彼もドキドキしながら上から下から眺め、石のカスを落としながら大切に作ったもの 2000年前の彼らが、撫でて触りながら作った石に触れたかった 2000年前の作家の手のあとに私の手を重ねてみたかった 重ねたら、ローマ時代の人と2000年を超えて手が繋がった気分になっただろう

私は、昔のものが残っているとそれだけで感動する 大切されたから残った、大切にしたくなるから残った そこに幸運が重なって・・

このレポには学術的なことは何も書きませんが、観に来ていた人の殆どは芸術として観ていたのではなくて学者として気になった人のようでした 


今回の展示は、日本人が発掘した事へのイタリアの感謝・好意の貸し出し展示です もう日本で観られる事はないでしょう 興味があったら是非観てください 本郷3丁目駅からすぐでとても空いているし無料です



* 「弐代目・青い日記帳」のTakさんのレポは、とても分かやすく良いので、是非ご覧下さい

*ディオニュソスとペプロフォロスの写真は「パンフレット」からお借りしています



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