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ジャズ・ギタリスト
JESSE VAN RULLER

◆ 1996年にデビュー・アルバムをレコーディングした、オランダ出身の若手ジャズ・ギタリスト。最近は本当に少なくなった、プレイ・レベルが高い、オーソドックスなスタイルを持つギタリスト。フル・アコースティックのギターに太い弦を張って、バリバリ弾く。テクニック的には、ほぼ完璧と言ってよく、複雑なフレーズも難なく弾きこなす。

◆ 特筆すべきは、ソロ・ギターにおけるサウンドの良さ。曲のアレンジメントの出来も秀逸。聞き飽きる事がない。ソロでのライブも成立しうるのではないだろうか?

◆ フレーズ的には、純粋なバップ・プレーヤーというよりは、1980年代以降のポスト・フュージョンのスタイルも含む、現代的なタレント。無機的なフレーズも織り交ぜ、感覚的には、ピアニストの BRAD MEHLDAU などにも通じる部分があるかもしれない。リズムのとり方はスクエアで、これも現代的。基本的にはナチュラルなフル・アコのギター・サウンドをメインとしてるが、4ビート以外の楽曲で部分的に、効果音的にエフェクターも駆使する。また、ナイロン弦のギターの演奏も、極めて素晴らしい。

◆ おまけに、ジャズ・ミュージシャンとしてはルックスも良く、音楽以外のおいしい仕事も手掛けて行くのかもしれない。テクニックのひけらかし的プレイはしない。常に音楽はソフト。ギター・ヒーローとしては、軟派なのか?

◆ 既にテクニックが完成されていると感じるという事は、逆に、今後の展開が見え難いとも言えなくもない。聞き手をハッとさせる新鮮な感動を聴衆に与え続けるのか?音楽的成熟度を深める方向へ進むのか?アルバムが何枚かリリースされ、どれも佳作であるが、今後決定的な名盤を制作する事が出来るのであろうか?

(記2002.3.8)

JESSE VAN RULLER / EUROPEAN QUINTET (bluemusic 1996.9.16,17)

MUSICIANS / JESSE VAN RULLER : g , JULIAN JOSEPH : p , NICOLAS THYS : b , MARK MONDESIR : ds , PETER WENIGER : sax
● 現在のヨーロッパのジャズ・ミュージシャンの質の高さを、如実に示す。複雑なシンコペーションを持つ JESSE VAN RULLER のオリジナル曲を、リズム・セクションが快適に進行させて行く。その上で、ギターのアドリブが縦横に綴られる。
● CDの2曲目に堂々と登場する、ギター・ソロでのスタンダード・ナンバー、"BEWITCHED"。表現力の素晴らしさが、聞き手を引き込んでしまう。
(記2002.3.3)

JESSE VAN RULLER / HERBS, FRUITS, BALMS AND SPICES (bluemusic 1997-8)

MUSICIANS / JESSE VAN RULLER : g , FRANS VAN GEEST : b , MARTIJN VINK : ds , and others
● ギター、ベース、ドラムスのトリオを中心に、一部にトランペットなどを加える。オリジナル曲が中心。ガット弦、スティール弦、共に素晴らしいサウンド。全体的には地味な作品。"LOVE FOR SALE" の超スピード7拍子には圧倒されるが。
(記2002.3.5)

JESSE VAN RULLER / CATCH! (bluemusic 2000.7)

MUSICIANS / JESSE VAN RULLER : g , KAREL BOEHLEE : p , FRANS VAN GEEST : b , MARTIJN VINK : ds , ROY HARGROVE : tp,flu
● フェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノの使用、一部でのギター・エフェクターの導入、ファンキーなリズムの活用、ROY HARGROVE のゲスト参加など、バラエティに富んでいる。多少はコンテンポラリー・ジャズ寄りだが、決して過激な手法は用いない、常にソフィストケイトされている、それが現在の彼の音楽のスタイルである。そして、多様なジャズのスタイルの中で、JESSE VAN RULLER のギター・サウンドの芯は、既に確立して揺るがない、と言える。
(記2002.3.8)

JESSE VAN RULLER カルテットの日本公演(2001.4) 、衛星放送による放映

● 何しろ、バンドのコンビネーション、サウンドが素晴らしい。JESSE VAN RULLER のオリジナル・ナンバーは、ライブでドライブ感を増している。ギターのテクニックは、映像を通して目にしても、やはり的確。アップ・テンポの曲でも、ピッキングは乱れない。リズムはスクエア、ミドル・テンポの曲でもフレーズを"遅らせる"事をしない為、ドライなイメージ。コードを弾く時、親指で6弦を押さえるのが目を引いた。
(記2002.3.9)

JESSE VAN RULLER / TRIO (EmArcy 2001.10)

MUSICIANS / JESSE VAN RULLER : g , FRANS VAN DER HOEVEN : b , MARTIJN VINK : ds
● 安定したギター・サウンドとテクニックは有効に使われ、楽曲へのアプローチの、様々なアイディアを聴き取る事が出来る。トリオというシンプルな編成だが、多様なアイディアを用いて、聴き応えがある。スタンダードとオリジナルの配分のバランスも申し分ない。
(記2002.3.8)

JESSE VAN RULLER / HERE AND THERE (CRISS CROSS JAZZ 2001.1.17/10.28)

MUSICIANS / JESSE VAN RULLER : g , DAVID HAZELTINE : p , NAT REEVS : bs , JOE FRANSWORTH : ds , FRANS VAN GEEST : bs , WILLIE JONES V : DS
● 遂に出た、JESSE VAN RULLER のスタンダード集。カルテットとトリオというシンプルな編成での、ストレートなジャズ。全てのジャズ・ファンに推薦出来る。この作品で JESSE VAN RULLER への評価は、確定的になるのではないだろうか?アップ・テンポの曲でも、ピッキングに淀みなく、フレーズも尽きる事がない。選曲に対するアイディアも渋い。特に、リー・コニッツの"SUBCONCIOUS-LEE"は凄い。キーはオリジナルのまま、テーマ部の徹底コピーに用いるテクには驚くし、アドリブも凄い。エリントンの"PRELUDE TO A KISS"のバラード・プレイも、相変わらずの説得力。
● オリジナル曲は、アルバム"EUROPEAN QUINTET"に収録済みの、"DABITS AND CREDITS" のみ。しかもキーを変更し、アドリブの素材として用いるまでに曲を消化している。
● ある意味、ジャズ的な"いい加減さ"を感じさせる、CRISS CROSS レーベル的な録音。ここでの"いい加減さ"は、誉める言葉となっている。オーバー・プロデュースにならず、音がクリア過ぎない。ギターの音に迫力がある。
(記2002.4.13)

JESSE VAN RULLER / CIRCLES (CRISS CROSS JAZZ Dec.15,2002)

MUSICIANS / JESSE VAN RULLER:g , SEAMUS BLAKE:ts , SAM YAHEL:org , BILL STEWART:ds
● スタンダード・ナンバーが中心だった前作とは趣きを変え、オリジナルの楽曲を中心にアルバムを構成している。"SECRET CHAMP"は、再演。ちょっと聴くと捉えどころが無い微妙なコード進行に変則的な構成という、馴染み難い曲が並ぶが、JESSE VAN RULLER のアドリブの好調さは恐ろしいほどである。BILL STEWART のドラミングも相変わらず快調だが、スティック・ワークが余りにも滑らかなので共演者の個性が強烈でないとサラサラっと聴き流してしまう事もあるし、このアルバムはいつもよりも集中して聴く必要があるかもしれない。
(記2004.1.29)

JESSE VAN RULLER
LIVE AT MURPHY'S LAW
(55 RECORDS)◆ MUSICIANS / JESSE VAN RULLER:g , FRANS VAN HOEVEN:b , MARTIJN VINK:ds , JOS MACHTEL:b , JOOST VAN SCAIK:ds
◆ 2004.7.7-8
● バックがベースとドラムスのみという自由な音の空間を、縦横無尽に駆け巡る。止め処も尽きないフレーズのアイディアには、本当に驚かされる。正統派ジャズ・ギタリストとしての圧倒的なテクニックと、超バカ・テクを感じさせないナチュラルさは、フル・アコースティック・ギターの音色を生かした奏法にあるのは間違いない。弦の音と箱の鳴りが素晴らしく、どの場面でも音に淀みがない。バラードの解釈も、相変わらず素晴らしい。今回はオリジナル曲は全くナシだが、"ISFAHAN"、"DETOUR AHEAD"、"GOODBAYE"といった選曲も渋すぎる。他のミュージシャンの演奏も素晴らしく、ヨーロッパのジャズを聴く機会を増やしていく必要もあるのかもしれない。
(記2004.12.5)
JESSE VAN RULLER
VIEWS
(CRISS CROSS)◆ MUSICIANS / JESSE VAN RULLER:g , SEAMUS BLAKE:ts , SAM YAHEL:org , BILL STEWART:ds
◆ Recording:2005.10.19
● "CIRCLES" と全く同じメンバー、全曲オリジナル。リバーブが短い CRISS CROSS レーベルに特徴的なサウンドで、まさに "CIRCLES" 続編という印象。オルガンとテナー・サックスを配置した楽器編成とこのメンツを、JESSE VAN RULLER は相当気に入っていると思われる。例によって JESSE VAN RULLER 的な、難解かつリズミックな曲が並ぶ。バンドの演奏は極めて快調、難曲にも全く動じることがない。このバンドでのライブも、是非見てみたいところ。
(記2006.4.22)
JESSE VAN RULLER
IN PURSUIT
(55 RECORDS)◆ MUSICIANS / JESSE VAN RULLER:g , BERT VAN DEN BRINK:p
◆ Recording:2006.6.1 , 2006.5.6
● ギターとピアノのデュオによるこのアルバムを聴いて、どうしても連想してしまうのが、BILL EVANS と JIM HALL の "UNDERCURRENT" 。JESSE VAN RULLER と BERT VAN DEN BRINK という現代の名人達の技量にしても、歴史的な名盤である "UNDERCURRENT" の音楽的な完成度には容易に追い付けないのが、改めて分かった。とは言え、"IN PURSUIT" も凄いアルバム。アップ・テンポでしかも7拍子でも崩れない LOVE FOR SALE でのコンビネーションは驚異。バラードの ESTATE や QUIET NOW も素晴らしい。次々く繰り出される2人の掛け合いのが延々と連続し、単調に陥る事がない。"UNDERCURRENT" と "IN PURSUIT" が異なる点は、曲をリードするのが、"UNDERCURRENT" はピアノで "IN PURSUIT" はギターであるところ。ギターとピアノのデュオでは、楽器の性質上、ピアノがリズムをリードするのが安定するのは確かである。"IN PURSUIT" では、全て JESSE VAN RULLER の主導で曲が進行する。JESSE VAN RULLER の高度なテクニックに裏打ちされたメカニカルなフレーズは早いテンポでも崩れないのではあるが、リズムやコードやフレーズなど全ての面で難なくフォローする BERT VAN DEN BRINK のプレーにも驚かされる。もしかしたら、"IN PURSUIT" に対する評価は、"UNDERCURRENT" に迫る日が来るのかもしれない。
(記2006.9.5)
JAZZ ORCHESTRA OF THE CONCERTGEBOUW
RIFFS'N RHYTHMS - LIVE AT THE MIMHUIS
(55 RECORDS)Riffs & Rhythms / Tusks & Trunks / Bird's Eye / Chinese Dance / Espece / Somewhere Between The Stars / Nacho's Nerve / Slow Walk / Brothers
◆ MUSICIANS / Henk Meutgeert:conductor , Allard Buwalda:as,ss,fl , Jorg Kaaij:as,ss,fl , Jan Menu:ts,cla , Sjoerd Dijkhuizen:ts,cla , Juan Martinez:bs,b-cla , Jelle Schouten:tp , Wim Both:tp , Rini Swinlels:tp , Ruud Breuls:tp , Jan van Duikeren:tp , Jeroen Rol:tb , Bert Boeren:tb , Erik van Lier:b-tb , Jesse van Ruller:g , Peter Beets:p , Frans van Geest:b , Martijn Vink:ds
◆ Recording:2007.5.6

(記2008.10.13)
JAZZ ORCHESTRA OF THE CONCERTGEBOUW
SILK RUSH
(55 RECORDS)Silk Rush / Here Comes The Sun / Amsterdam / Vienna Night Express / The Ruler / Have A Heart / Circles / M. M. / The Secret Champ
◆ MUSICIANS / Henk Meutgeert:Conductor , Joris Roelofs:ss,ss,cl,fl , Jorg Kaaij:as,fl , Simon Rigter:ts , Sjoerd Dijkhuizen:ts,cl , Juan Martinez:bs,b-cl , Jelle Schouten:tp , Ray Bruinsma:tp , Rini Swinkels:tp , Ruud Breuls:tp , Jan van Duikeren:tp , Jan Oosting:tb , Jan Bastiani:tb , Hansjorg Fink:tb , Martin de Kam:b-tb , Jesse van Ruller:g , Peter Beets:p , Frans van Geest:b , Martijin Vink:ds
◆ Recording:2008.3.2

(記2008.10.13)



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