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METHENY MEHLDAU QUARTET
NHKホール
2007.9.26 19:00

Pat Metheny パット・メセニー : g,syng
Brad Mehldau ブラッド・メルドー : p
Larry Grenadier ラリー・グレナディア : b
Jeff Ballard ジェフ・バラード : ds

◆ Pat Metheny のフル・アコースティック・ギターの弦の音がいつになく生々しい。何らかの方法で、ピックアップとは別のマイクをギターに仕掛けてミックスしているかもしれない。思えば、昨年の Gary Burton のバンドの時もギターの音が妙にリアルで、既に今回と同じシステムを用いていたのかも。これまで、Pat Metheny のライブでのギターの音はスタジオのものとは違い、独特のエレキ・ギターっぽさがどうして残ってしまっていた。Metheny 本人は、このギターの音のスタジオとライブでのギャップをどうにかしようと苦労したと思うが、今回のシステムである程度は克服できたかもしれない。残念なのは、ギターの音だけ飛びぬけてリアルで、生ピアノの微妙な音の陰影を少しかき消してしまっていたのでは、という点。スタジオ盤では、Brad Mehldau とのデュオで絶妙なコラボレーションを聴かせていたが、今回のライブでは良くも悪くもやりとりが荒々しく、期待していた点とやや異なる展開であった。ジャズ系のミュージシャンのコンサートは、例え音響の良いNHKホールであっても、小さなライブ・ハウスでやるのとは違って、アコースティック系の音の微妙さは消されてしまうのは仕方ない。しかし、それを割り引いても、有り余る程の驚くべき演奏を見せつけられたコンサートではあったが。

◆ アンコール2回を含めて2時間半を超える、例によって Pat Metheny が自分のやりたい事をやり尽くしたライブ。デュオの曲は計5曲で時間にして30分程度と、思ったよりも短かった。Pat Metheny は、今回のプロジェクトは自分と Brad Mehldau の双頭バンドで、なるべく Mehldau を自分と同格の位置付けに持っていこうと考えているハズ。しかし、Metheny がフロント一人のバンドとして一度音を出してしまうと、Metheny の存在が強烈過ぎて、今までと同じような Metheny がリーダーのバンドと同じになりがちである。"BETTER DAYS AHEAD" の冒頭で、Brad Mehldau の長くて素晴らしい、ピアノのリズミックなソロが聴けたが、個人的にはこのようなピアノ・ソロの時間帯がもっとあって良かったと思う。Brad Mehldau というのは、持ち時間が長くないと良さが出にくいミュージシャンである気がする。

◆ Larry Grenadier というのはサウンドが強力なベーシストで、正確なビートと、音数よりもリズミックなアイディアで勝負するタイプであった。Chick Corea のトリオのドラマーとして強烈な印象を残した Jeff Ballard は、音楽の幅が広い今回のバンドで、独特のポリリズムを更に縦横に展開していた。Pat Metheny 以外の3人は共演歴が長いので、いくら難しい仕掛けをしても崩れない、絶妙のコンビネーションを見せていた。

- set list -
* UNREQUITED
Metheny と Mehldau 、肩を組んで登場。演奏が密であれば別に肩を組まんでも良いと思うのは筆者だけろうか?デュオのスタジオ盤の1曲目が、コンサートのオープニング。テーマから2人のインプロビゼーションに突入したが、一瞬にして完全に宇宙に行ってしまった。スタジオ盤を圧倒的に上回る超絶な展開。巨人による格闘というか、本当に恐ろしい人たちである。
* ALL THE THINGS YOU ARE
引き続き、宇宙に突入。あの展開で、よく構成を見失わないものだ。
* BETTER DAYS AHEAD
Brad Mehldau の長く素晴らしいソロのあと、Metheny の名曲のテーマが開始された。ピアノのアドリブのバックのギターがやや目立ち過ぎ。今までのライブでのモコモコっとしたギター・サウンドであれば逆に良かったが、クリア過ぎる弦の音ではちょっと厳しい(あくまで個人的な見解)。普通のギタリストなら、ボサノバ的奏法で地味に演ると思うが、Metheny はピックでガンガン弾いていた。
* 28
Pat Metheny 、例のチューニングのバリトン・ギターに持ち替え。
* A NIGHT AWAY
Larry Grenadier と Jeff Ballard が登場。唯一無二のバンド・サウンド。
* NEW BLUES (A Blues 4beat)
* SILENT MOVIE
* RING OF LIFE
尋常でない速いテンポは、スタジオ盤と同じ。ギター・シンセの GR-300 への持ち替えがあった。
* THE SOUND OF WATER
Pat Metheny 、ピカソ・ギターに持ち替え。ギターに非常に深いリバーブがかかっていた。ここでも、やや Brad Mehldau の音を覆い隠していた。
* SECRET BEACH
BOSSA NOVA 的な曲。Brad Mehldau のアドリブが良かった。
* VERA CRUZ (Gm fast latin)
Jeff Ballard の超絶に長いソロあり。最後に Metheny と Mehldau の掛け合いがあった。Metheny と Mehldau 、肩を組んで @_@; 仲良く退場。
(EC1)
* BACHELORS III
アンコールとしては地味な感じの曲。
(EC1)
* BLUES FOR PAT
やたらとセッションっぽい、たらたらっとしたエンディング。Brad Mehldau のソロがやたらと地味で、こういうセッション的なブルースの時にはガンガンには弾かないんだろうか。

(改 2007.9.29)
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