上で紹介したとおり、確実に相続税の基礎控除以上に相続財産のある親から子への贈与は、結果として相続時点で税金がかかるため、実際には、特にメリットがない場合も多いです。
しかし、たとえば、親が賃貸マンションを所有している場合、この制度を使ってこのマンションを子に贈与すれば、この賃貸マンションから生じる不動産所得を親から子に移転でき、節税になります。
確かに親が亡くなって相続が開始すれば、その時点で贈与された賃貸マンションは親の相続財産に加算されて相続税が課せられます。しかし、賃貸マンションからの不動産所得は子に贈与した時点から子に移り、親の財産が増加することはなくなります。結果として、相続税対策にもなり、かつ、(親が高額所得者の場合)親の所得税対策にもなります。
(6) 「相続税の対象にはならない方」の場合
2,500万円(相当)以内なら贈与税の心配なく親から子に財産を贈与することができます。
従来、相続税のかからない圧倒的多数の方にとっては、親から子への財産の移転は、贈与税のからみで相続まで待っていた方が有利でした。このため、生前贈与による親から子への財産の移転を促そうと設けられたのがまさにこの制度ですので、このような場合に一番利用されることが予想されます。
2 住宅取得のための資金の贈与を受けた場合の特例について
前の項では、平成15年度の税制改革において、「相続時精算課税制度」が創設されたことを紹介しました。この制度には、住宅資金取得資金を贈与する場合に、特例が設けられました。住宅取得資金3500万円までの贈与なら、贈与税を非課税とするものです。この特例の注意点は下記のとおりです(この特例は、平成17年12月31日までとされています。継続されるかどうかについては国会での審議の結論待ちとなっています。)。
(1)対象者
「住宅取得等のための資金」の贈与であること(※)
※ 「住宅取得等のための資金」とは
次のいずれかに該当する新築、取得または増改築の対価に充てるための金銭をいいます(土地を含みます)。
・住宅用家屋の新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得
・既存住宅用家屋の取得(マンション等の対価建築物は築後25年以内、対価建物以外のものは築後20年以内)
・住宅用家屋の増改築等
(3)そのほか注意点
・平成15年1月1日以後の贈与についてこの特例を適用した場合には、贈与の年以後5年間は、その贈与者からの贈与について相続時精算課税制度の適用はできません。
・この特例の適用は、3年間の時限措置のため、2005年末で期限切れとなります。
(4)具体例
住宅取得等のための資金(4,000万円)の贈与を受けた場合
・3,500万円までは贈与税は無税
・3,500万円を超えた500万円に20%の贈与税100万円がかかります。