全国の原発の運転、停止、建設状況
掲載日2011年8月18日 斉藤 清
信濃毎日新聞の2011年7月10日の記事に、「全国の原発の運転、建設中などの状況という、分かりやすい資料があったので、それをこのHPに引用して掲載しておく。今後の原発関係の記事をこのHPにアップする時、対象原発の場所を確認するのに便利だからである。
全国の原発の運転、停止、建設状況(信濃毎日新聞2011年7月10日号より引用) |
東電が作成し提出した「福島第一原発3号機の
耐震安全性」についての資料の表紙。原子炉の地震応答解析モデルは1次元モデルだった。
最後の「9.まとめ」には次のように書かれている。
「中越沖地震において柏崎刈羽原子力発電所で観測された地震波データ用いた概略評価の結果、並びに基準地震動Ssを用いて評価した結果、福島第一原子力発電所3号機の原子炉を「止める」、「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」に係わる安全上重要な機能を有する主要な施設については、耐震安全性が確保されていることを確認した。」
現在の解析技術は建設当時と較べると格段に進歩しており、解析精度も高くなっている。原子炉建屋とその中の構造物(格納容器、圧力容器など)だけでなく、タービン建屋の解析モデルも含めた詳細な3次元の解析モデルを作って再計算するべきと思うが、官庁に提出してお墨付きをもらうためだけに作成した資料としか思えない代物であった。内容を見てがっかりしてしまった。
今回のストレステストでも、これと似たレベルの解析(テスト)では、全く意味が無いと思った。現に福島第一原発は、津波の襲来前に地震で重要部が破損している可能性が高いので、昨年作成された耐震安全性の解析結果は、見事に外れてしまい、無意味だったことが証明されているのである。特に各種の機器間を繋いでいる蒸気や冷却水の流れる配管や、制御用電線の保護配管の耐震性の解析は、ほとんど行われていないに等しい資料だった。タービン建屋と原子炉建屋の基礎上のロッキング振動の固有振動数は異なるはずであるから、地震の経過時刻と共に両者の揺れ方にずれが生じはじめ、反対位相で揺れ始めることもあるのである。その時、両者の配管などの相対変位による応力は許容値内に入っているのか、解析結果には全く記載されていなかった。
今回実施されるストレステストでは、最新の解析手法を用いて、細部の配管まで含めた耐震解析を行う必要がある。それをチェックする「原子力安全保安院?」は、そこを見逃さずに厳密にチェックしていただきたい。
原発が立地する自治体の多くは、ストレステストの結果を見極めるまで、停止中の原発の再稼働には同意しないとみられる。佐賀県の知事は、九州電力の玄海原発2,3号機の再稼働を7月中旬に判断するといっていたが、このストレステストの導入により、その判断を見送った。これは年内の再稼働は事実上無いということであると思う。
8月16日のTVニュースによると、北海道電力の調整運転中の泊原発3号機に対して、北海道知事はストレステストを省いて再稼働を許可する意向を表明したとのこと。今年3月の初めから調整運転と称して実際に発電・送電中であり、最近、政府から再稼働しても支障が無いとの連絡があったからだそうだ。泊原発3号機も来年3月以降、13ヶ月以内の法定の定期検査に入るので、その時、ストレステストをやるつもりらしい。泊原発3号機は、当初から発電電力にカウントしているため、これで北海道電力の電力供給に余力が出来たことにはならない。それにしても定期検査完了前に調整運転が数ヶ月も続くとは、車検中の車を路上で運転する行為と同じではないか。このようなことが認められて良いものなのだろうか?原子力安全保安院は、いったい調整運転をどう考えているのだろうか??調整運転中の泊原発3号機を一旦停止すると、再稼働の手続きが大変になり、再稼働時期が大幅に遅れることを心配して、原子力安全保安院側から調整運転の長期間実施を要請したと疑われてもしようがないと思う。
現在稼働中の原発の定期検査入りの予定を下表に示す。合計19基になる。原子炉は最大13ヶ月毎に定期検査をするよう法律で定められている。(自動車の車検のようなものである。)定期検査期間(プラント停止期間)は一般に3〜6ヶ月であるが、新鋭機は1ヶ月で完了することもあるし、補修個所が多い稼働年数の長い原子炉の場合、1年以上掛ることもある。
定期検査入り の時期 |
原発名 | 電力会社 |
2011年7月下旬 | 大飯4号機(定検入り) | 関西電力 |
高浜4号機(定検入り) | 関西電力 | |
2011年8月 | 柏崎刈羽1,7号機 | 東京電力 |
泊2号機 | 北海道電力 | |
2011年9〜11月 | 伊方1号機 | 四国電力 |
川内2号機 | 九州電力 | |
高浜3号機 | 関西電力 | |
2011年12月 | 美浜2号機 | 関西電力 |
大飯2号機 | 関西電力 | |
玄海1,4号機 | 九州電力 | |
2012年1〜2月 | 島根2号機 | 中国電力 |
伊方2号機 | 四国電力 | |
柏崎刈羽5号機 | 東京電力 | |
高浜3号機 | 関西電力 | |
2012年3月以降 | 柏崎刈羽6号機 | 東京電力 |
泊3号機 | 北海道電力 | |
大飯1号機 | 関西電力 |
ストレステストの実施や、福島原発の甚大な事故被害の影響で、定期検査入りする全ての原発が検査が終了しても再稼働できない事態も予想され、その場合は来夏には電力各社と日本原子力発電が保有する原発54基がすべて停止する可能性が大きくなった。
現在運転停止している原発は、定期検査中や東日本大震災で被災したりした37基。(但し福島第一原発の1号基〜4号基は廃止が決定しているがカウントした。また日本原子力研究開発機構の「もんじゅ」は、負荷試験時は短時間ではあるが発電して電力会社に送電しているが、実験炉のためカウントしなかった。なお「もんじゅ」は、たび重なる事故で、運転再開の目途も立っていない。)
筆者は長野県在住なので、中部電力から電力の供給を受けている。菅内閣から浜岡原発の3基の原発全ての停止要請を受け、中部電力は全ての原発が停止している。域内にはトヨタとその関連会社などの自動車産業や精密機器や電子機器のメーカーが多いため、今夏の電力のひっ迫に対処できるか非常に心配されたが、休止火力発電所の再開、各事業所の自家発電電力の積み増しと節電努力や操業曜日の変更と、一般家庭などの節電努力で、ピーク需要が発電設備容量の90%以内になんとか収まっている。