日本原子力発電(株)東海第二原発の
東日本大震災による被害状況

掲載日2011年8月5日                 斉藤 清

一部修正日2011年8月14日                斉藤 清

 日本原子力発電(株)東海第二原子力発電所、略称は「げんでん東海」。日本初の百万kW級沸騰水型軽水炉である。なお隣接する日本最初の商業発電用原子炉を持つ東海第一原発は、廃炉になっている。東海第二発電所の発電電力は東京電力と東北電力に売電されている。

発電設備:1号機(現在1号機しか設置・稼働していない。東日本大震災時、定期検査かトラブルで停止中、その後再稼働していない。)

東日本大震災での被災状況

 2011年3月11日の東日本大震災時、当原発は定期検査かトラブルなどで停止中だったらしい。しかし原子炉の圧力容器内には核燃料が装てんされたたままだった。

 常用の外部電源も停止
したことから、非常用ディーゼル発電機3台を起動して運転に必要な電源を確保したが、津波によって1台のディーゼル発電機用海水ポンプが故障したため、残るディーゼル発電機2台で原子炉冷却に必要な電源を確保した。その後外部電源が回復し、3月15日0時40分に原子炉水温度が100℃未満の冷温停止状態となった。その間は注水と、水蒸気を逃がすための弁操作の綱渡り的な繰り返しだった。

 しかし、高さ6.1m(想定津波5.7m)の防波壁に到達した津波の高さは、ギリギリの5.4mであったが、工事中のため防波壁には穴が開いていた。その穴から入った海水によって、全3台の海水ポンプが水に浸り(2台は水深が低かったため稼動)し、非常用ディーゼル発電機1台も停止した。2台の非常用ジーゼル発電機で原子炉は冷却し続けられたが、もう少し波が高かったら、全ての電源が失われ、福島第一原発と同じ状態になっていたかもしれない。日本原電は、「(冷却機能が全て失われた)福島第一原発の事態になった可能性は否定できない」と述べている。

 また3月13日には使用済核燃料プールの溢水が確認されている。幸いなことに、外部への放射性物質の散逸はなかった。

 尚、2006年に国の耐震指針が改定され、2007年7月の柏崎沖地震(柏崎刈羽原発が被災した)直後に、茨城県が2007年10月に出した「津波浸水想定」に基づき、東海第二発電所では対策を実施。冷却用海水ポンプを守るため、従来あった3.3mの海側に面した防護壁に加えて、側面にも防護壁を設け全体の防護壁の高さを6.1mにした。津波は5.4mと福島第一原発の半分以下だったこともあるが、ポンプや電源は一部浸水したものの、冷却を継続できた。津波対策を講じなかった福島第一原発とは明暗を分けた。

 それにしても、震度6強の東海村にある原発で、福島第一原発と同様に、すべての外部電源が一時的にでもストップするとは、驚いてしまった。そんなに外部電源がもろいものとは知らなかった。また工事中のため防波壁には穴が開いていて、そこから津波が入りこんだが、工事責任者もまったく津波の危険性を認識していなかったらしい。

 下図は東海第二原発と、そこから半径10km、15kmの範囲を示す。

 
東海第2原子力発電所から半径10km、半径15kmの範囲を示す。 

 筆者のひたちなか市の家は、東海第二原発から半径8.5kmしか離れていない。しかも原発は、全く遮蔽物の無い海岸に建っているのである。常磐線からも国道245号線からも、原発は丸見えである。福島第一原発の場合、半径20km以内は避難指示区域、半径30km以内は屋内退避区域に指定されているが、ひたちなか市の家は、福島原発の避難指示区域20kmの半分以下の距離(8.5km)しかないのである。東海第二原発から半径10km以内に、東海村はすっぽり入り、ひたちなか市の中心街も大部分入ってしまう。また日立市の南部の日立製作所関係の工場も殆どが入ってしまう。半径15km以内には県庁所在地の水戸市の常磐線・水戸駅や、日立市の大部分が入ってしまうのである。東海第二原発は、発電出力110万kWの原子炉が1基しかないが、福島第一原発の1号機は46万kW、2号機は78万kWであるから、福島第一原発と同様の事故が発生すれば、その1号機と2号機が事故になった時とほぼ同様の放射性物質がまき散らされる、放射能汚染規模になると想定されるのである。

 JR常磐線、常磐自動車道、国道6号線、国道245号線、国道349号線も半径10km以内を通るので、交通が完全に遮断され、大変な事になるところだった。日立市は西側に阿武隈丘陵が南北にあり、太平洋とに挟まれたうなぎの寝床のような地形であるから、日立製作所とその関連工場が沢山ある日立市は、誰も住めない陸の孤島になってしまうところだった。

 原電東海第二原発の再開は、確実な津波対策と3ヶ所以上の信頼性の高い外部電源の確保を行い、日本国の「原子力安全保安院」はまったく信用できないので、世界の専門家集団の技術審査を受けてOKが出てからにしてほしいものである。

 原電東海第二原発から半径20km以内に住んでいる人口は、多分日本の原発の中で最も多いと思われる。なぜ、この問題(人口密集地に建つ東海第二原発の東日本大震災での被災状況)について、マスコミでまったく報道されないのか不思議である。また、地元でもあまり真剣に議論されていないのも??である。

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