UEDA55 作ってます。

 西麻布の巨匠から呼び出されました。「少しずつ整理しないとね」とのたもうておられましたが、「もう、先も長くないだろうから・・・」というセリフから何年経っただろう。相変わらず元気良いです。

 今回は、UEDA55のパーツをいただきました。全部そろっています、ならば組めばよかろうものを。ところが、相手はウエダですからね。(巨匠は「ハングリー(飢える)ジャンク(駄)」だそうです)

 どこがハングリージャンクかと申しますと・・・・まあ、たくさんございますこと。

 たとえばカバープレート。ダイキャストで製造されておりますが、クランクケースとの接触面は、切削加工してございません。他メーカー品でも同様の加工で済ませているものがありますが、あちらはもっと平面が出ていますね。このへんまで荒れた平面だと、厚いガスケットでも吸収できない場合があります。従って、追加工でしょうね。

 旋盤で旋削加工するためには、パーツを固定しなければいけません。「ワーク」ってやつです。今回はやといを使用して、そこにカバープレートのへこみ部を圧入しました。圧入って言ったって、ちょいときつめに仕上げただけです。それでもしっかりとホールドされていましたけどね。

 その後に高速で少しずつ切削します。切削抵抗が怖くてゆっくりと切削すると、かえって吹っ飛んでくることがあります。切り込みは縦方向に0.05mmずつくらいでした。あとはじわじわ手送りね。

 デフレクター付きですからクロスフロー掃気なのです。その割にはシニューレみたいな燃焼室形状。圧縮比、低いだろうな。アンダーパワーだろうな。始動性悪いだろうな。ウエダだもんな。

 なぜかツインプラグ仕様になっております。

 45はラップピストンなのですが、55エンジンではリング仕様。しかも2本。

 ENYAの45BBは、「初期型の2リング仕様の方が性能が良い」なんて言われるベテランCLマニアがいらっしゃいました。理由は教えてもらってません。メーカーの話では、「当時は精度が悪くて1本では圧縮がもれる。従って2本にしただけ」だそうです。つまり、摩擦抵抗が多いので、1本リングの方が高性能に決まってるって。

 それよりも、ピストンピン細くないか?φ4かな。しかも、結構上にあるように見えます。そしてピンは中空かい?!

 今回いただいたパーツは、上写真の通りです。全てそろっているのですが、なにせ上田ですからね。せめてもの救いでしょうか、スロットルがカバン製になっています。よしよし。でも、45の時のスロットルの問題って、取り付け方と精度だったんだけどなあ。 

(2010年6月6日)

 で、飢え駄です。振動の多さを気にしての対策でしょうか。それともユーザーの仕業でしょうか。いや、違うだろうな。

 巨匠は「USAから入手した」っておっしゃられておりましたが、ここまで手を加えることは無いでしょうね。やっぱ、メーカーの仕業か。

 実はこのエンジン、噂通りの下死点でして。つまり、下死点時に、スリーブの排気口よりも、ピストントップが下がるんです。計測しましたら、その下げ幅は1.8mm。やるなあ。巨匠は、それを修正しろって言うんです。おかげでコンロッドは作り直し、ついでにピストンピンも強化し、当然変化する圧縮比を調整ってところでしょう。外観に変化がない割には手間ばかりかかる宿題です。もっと簡単でおいしいやつをよこせよな。

 宿題のヒントとして、スーパータイガー60用コンロッドもいただいたので、こちらを計測するとエンド間はほぼぴったり。スモールエンドはφ6なので、強度は充分。ビッグエンドはウエダ55の1/4インチ径に対し、φ7もありましたので、こちらはメタルの入れ直しで対処します。

 小柄なクランクケースに合わせてビッグエンド周りをスリムにして、エンドの位置関係やら厚さやらのつじつま合わせを行って完成です。実際に組み込んでみないと分かりませんけどね。

 コンロッドのメタルは、いつもの真ちゅうです。砲金ではございません。今まで問題はありませんでしたので、大丈夫でしょう。

 1/4インチなどというリーマなんぞ持ち合わせておりません。仕方ないので、ここは必殺の「単純に、ドリルで開けちゃえ作戦」です。φ6.1から0.1mm飛びに丁寧に広げて行くと、結構正確に、きれいに仕上がります。

 コンロッドは中古で傷がありましたので、強度が確保できるであろう範囲で、目立つ部分を切削しておきました。結果、エンド部の厚さは約6mm。そのままではクランクシャフトの(追加された)カウンターバランサーに当たりますので、2mmのスペーサーをクランクピンに入れておきました。もちろん、このスペーサーも自作ね。手間ったらありゃしない。

 問題のピストンピンです。もちろん右がノーマルのφ4.5。左はSUS304で製作したφ6のピンです。ピストンの肉厚が充分なので、ピストンに加工してリテーナー(「の」の字のスプリングです)を追加しました。これで脱落もシリンダー擦りもないでしょう。それにしても、細いな。

 そうそう、借り組みしたら、案の定ピストンがヘッドに当たりました。ピストン位置のみ上げたのですから、当たり前ですね。仕方がないので、ガスケットを作ってはさんでおきました。なんか、ヘッドスクリューも短いみたい。

 まだまだ先は長そうですね。

懲りずに、続く
 

(2010年6月7日)