回ってしまえば簡単なんですが、実は2時間以上待機しました。

これから慣らし運転!


 シリンダーヘッドのフィンは、排気口側のみです。試運転の結果、濃い混合気の場合は非常に冷え冷えです。(燃料は食いますけどね。)したがって、おそらくこれで正解かと思います。RCで使用した場合のスロー飛行の連続でどうかですね。
 右写真のクランクシャフトにはM6のネジを切りました。本来なら国際基準の1/4−28山で行きたかったのですが、ダイスがなかったし製作が面倒(って、どのパーツも面倒なんですが。)なクランクシャフトで失敗したくなかったので、一般的なM6となりました。強度的には1馬力くらいの動力伝達は平気なのでしょうが、脈動になっている動力は怖いですから、ちょっと心配でした。今後の全開運転、耐えるかなあ?
 

細かいところは、いかがでしょう?!


 模型用エンジンのスロットル回りって、ものすごく細かいし寸法的にゆとりがありません。以前1ccクラスのそれを製作して懲りましたからね。今回は小さい加工にもしっかりとしたワークをしました。面倒でしたけどね。実は今回、撮影してはいませんが、小さなジグもたくさんあったんです。
 単品生産ではありましたが、これらによって明らかに精度は向上し、失敗は減少しています。

 今回の製作で、最も特徴的なのは「詳細図面を用いない」ということでしょう。事前に製作したのは基本的な外形と吸・排気のタイミングだけです。極端な話、クランクケースなんかシリンダー部と排気口、フロントハウジング部のみ精度を追求しました。冷却フィンなんか、「何本切ったかなあ?」状態。つまり、必要な部位の整合性は確保しつつ、立体造形の困難さを克服と言いますか、なんとかかわそうとしたわけです。例えばクランクケースとフロントハウジングを組み付けると「スロットルが付かない!」なんてことがあります。市販エンジンでもそういうことがあって、スロットルの一部を削ったり、マフラーバンドを変形させたりしてました。
 もちろん正確な図面はあった方が良いのは、言うまでもありません。ただ、全てのパーツが1/100mmほどの精度で仕上げられればの話です。第一、詳細な図面なんか3D−CADなんかで描いていたら、それだけでとんでもない時間になります。(やったこと、ありますけどね。)実際問題として、今回クランクシャフトのクランクピンは、0.1mm外側にずれていました。やっぱ、こうなるかあ。
 

今後の指針
 まだ慣らし運転ですので、燃料は約400ccを使用。総運転時間は約20分ってところでしょうか。9インチプロップでかなり濃い混合気での運転でした。CLスタントであれば「この回転音では飛ばないな」と言うところです。常時ヘッドを触れる状態ですから、最高回転数はまだまだ上みたい。それでも8000rpm近辺だったんですね、スロットルが冷えすぎて「つゆつき」を起こしている割には回っています。  「エンジンは回ってなんぼ」です。展示のみや外観だけのレプリカなどには、私は興味がありません。今回は回りましたがまだ慣らし中ですし、目標は機体に搭載して飛行させるということです。飛行になると信頼性と性能が要求されますから、よほどの自信がなければできないことです。

 今回のエンジン製作に関して、「有限会社塩谷製作所」から技術協力をいただきました。つまり、市販のSS30エンジンを参考にさせていただいたわけですが、製作が進むにつれてどんどん形状や寸法が変化して行き、結局互換性のあるパーツはほとんどありません。特にスロットルなんかパクリに見えるでしょうが、実際の寸法は全然異なります。今まで培った自分の技術や理論が、SS30を飲み込んだようです。
 本音では、「不安なパーツをSS30のそれと交換できるように」作戦だったのですが、技術屋としては「嬉しい誤算」なんでしょうね。
 今までもそうでしたが、この手の製作で体感できるのは「1/100mmの大きさ」や「人間の感覚の鋭さ」等です。「1/1000mmは、目で測定する」というのも今回実感したことです。さらに模型用エンジンは、汎用機械でも製作できるということが証明できましたし、これは「ものづくりの世界」を深く・広くする以外のなにものでもありません。皆さんに「やってみれば!」と簡単に言えないところがネックですが、なかなかおもしろいですよ。工場は暑かったですけどね。

 製作過程で、エンジンのタイミングやら効率やらという熱力学を復習しました。模型用エンジンの資料もひもときまして、いろいろ雑学が増えたのですが、スポーツエンジンに限っては飛び抜けた数値などはありません。だいたい、スポーツエンジンなんかへたにいじったら、強度が持たずに破壊しますよ。
 工作精度と材料の特性、取り扱い等でエンジンの性格は変わります。むやみにあやしい「チューン」をするより、ていねいに扱った方が、エンジンって良く回りますね。丸ごとエンジンを造ると、よーく分かります。

 要した製作時間は70時間あまり。技術料を入れた時給を2000円(そんなに安くはないぞ!)としても、14万円!

 だれかあ、このエンジン20万円で買わなあい?

 (2006年8月9日)

飛行時の様子はこちらです。