例えば君と一緒に雪を見て過ごすのも僕の幸せです。

     Little Happiness the Future
       雪の日の幸せ

それはとある冬の日のことだった。

「周助さん、起きて起きて!」

朝も早くから部屋に飛び込んできたの声で僕は目を覚ました。
今日は休日だというのに一体何事だろう。

「おはよう、。一体どうしたの?」
「雪だよ、雪。」

尋ねる僕にはひどく興奮して答える。

「朝から降ってるの、しかも積もってるの。いいから外見て。」

僕は正直まだ眠たかったんだけど、せっつくが何だか可愛いから
起き出して付き合ってあげることにした。
(うん、そんなこと言ってる辺り、重症なのはわかってるよ。)
上着を羽織ながらに引っ張られて部屋の窓に行くと

「うわぁ。」

思わず声が漏れた。
見慣れたはずの外がすっかり変わっている。
下の地面も、向こう側に見える建物の屋根も、
全部真っ白な雪をかぶっていて雰囲気が全然違う。
一面の銀世界とはよく言ったものだけど、やっぱり綺麗なもんだね。

「随分と積もってるね、寒いはずだよ。」
「でも何か楽しくない?」

うきうきしたように言うに僕は思わず笑いを禁じ得なかった。

「何がおかしいの、周助さん。」
ったらすっかり子供みたいになってるよ。」

指摘したらは軽く膨れた。

「そんなことないもん。」

十分そんなことある、と思ったけどそれは言わないであげることにした。
のそんなところも好きだったから。

「ねえ、朝御飯食べたら外行ってみない。」
「いいよ、せっかくだから雪景色の写真も撮りたいしね。」
「やった。」


そういう訳で、朝御飯を済ませると僕とはさっそく雪降り積もる外に出た。
外に出た途端、が妙にはしゃいじゃってるのが楽しい。
雪を見た途端、触ってみたり蹴飛ばしてみたりまるで子供に戻ったみたいだ。
勿論僕も満更じゃなくて、良さそうな景色を見つけてはシャッターを切っていたけど、
(ついでに遊んでいるの姿も幾枚か)

「うわぁ、あそこの建物雪積もって全然違うのに見える。
あ、こっちの木も真っ白になってる、凄い。」

近所の馴染みのものに雪が積もってるのを発見しては
指差したり駆け寄ったりするのに忙しくしているの姿を見ていると
ふと手が止まっている自分に気がつく。

「周助さん。」

カメラを構えていた僕にが声をかける。

「何。」
「こっちこっち。」

手招きするの所に行ってみると、足下に何かがある。
可愛いでしょ、とニコニコしながらが指差すそれは
両の手のひらで包み込めるくらいの雪ウサギだった。
近くに木の葉や木の実がなかったせいか、
目はくり貫いてあったし耳は指で線を入れてある。

らしいね。」
「なぁに、それ。」

尋ねるに僕はわざと聞こえない振りをする。
さすがの僕も『可愛いって意味だよ』なんて外で言う勇気は無い。

そうして2人して言葉を交わしている時のことだった。

「あ。」

ふいに目の前をハラリと過ぎていった小さなものに気がついて僕は声を漏らした。

「また降ってきたね。」

が言って、手袋をした手でそっとそれを受け止める。
白くて小さなものはの手袋に触れた途端、あっさりと姿を消してしまった。

「ねえ、周助さん。こうして見たら何か凄いよ。」

に習って僕も空を見上げる。

「本当だ。」

そのまましばらく僕もも黙って空から舞い落ちる儚いものにみとれていた。
僕はせっかく持ってきたカメラを構えるのを忘れていた。
ただ隣にはがいて、降っては消えていく雪はカメラ越しに見るのはおしいくらいで…

「綺麗だね。」
「うん。」

僕は頷いた。

「また見に行けるよね。」
「うん。」

僕はもう一度頷いてからこう付け加える。

「今度は二人じゃなくて三人でかもしれないけど。」
「だといいね。」

もうしばらくそうして浸っていたかったけど、冷え込みが
きつくなったのでさすがに家に戻ることにした。


その後も雪は降り続けていて、
僕とは2人でスープをすすりつつ窓からその景色を見つめていた。
その間中僕は、本当に今度は二人じゃなくて三人で
こういう景色を見れたらいいな、なんて考えていた。

雪の日の幸せ 終わり。



作者の後書き(戯言とも言う)

長らくお待たせしました。久々更新です。
(もう誰も読んでなかったりして。) 時間かかりすぎで何かえらいことになった気がします。
そもそもこれを最初書き始めた時は夏で花火ネタの
ハズだったのに気がつけば冬で年越しちゃって雪ネタに…。
何でやろ?

2006/01/08


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