馬湾は香港空港から市内に向かうときに渡る長大な橋「青馬大橋」の片一方の橋脚が立つ島だ。エアバスや空港特急(AEL)ではあっという間に通過してしまうし、特別な観光名所もないため記憶にとどめる人も少ないだろう。
そのためか、香港市街地に割合近いにもかかわらず古き香港の漁村の雰囲気が残っていた。が、1998年に新空港が開港し青馬大橋ができると、この小さく静かな島にも変化が押し寄せた。
島東北部が大開発されたのだ。何にもなかったところが徹底的に掘り返されて、香港中どこにでもあるような細長い大型高層住宅がずらりと並んだ。そして、橋を通る8号公路(高速道路)にインターチェンジができて、島が道路で繋がった。
このバス路線はそのため、すごく新しく2003年ころからの運行だ。馬湾北東部に忽然と現れた一大住宅ビル群。その東端がこれまた真新しいフェリー埠頭(碼頭)とバスターミナルだ。バスターミナルはこれまた香港各地と同じく高層ビル群の根っこにある。フェリーはここから中環または荃湾を結び、バスは青衣島の駅と新界の葵芳駅を結ぶ。それぞれ、24時間運行だ。静かな島が俄然便利なホンコンの一部になってしまった。
青衣まではHK$7。高くはない。ピッとオクトパスで運賃を支払い、濃い黄色の新しい単層(1階建)バスに乗り込む。島の北側を海を見ながらぐるりと回り、新しい住宅街の中で時々停まってお客を拾っていく。島北東側を廻り終えると、一気に坂を駆け上がり、ループ状の道路で上空を走る橋上の高速道路に合流する。あたかも島西側の漁村は存在しないかのような走りっぷりである。真っ直ぐの青馬大橋からは左手下に珀麗湾の住宅ビル群を見おろせる。これは、空港から市内に向かうエアバスと同じ風景だ。
青衣島に入ると、すぐ左旋回。島内の普通道路に降りて再び路線バスらしくなる。青衣駅は地下鉄(MTR)東涌線と空港特急(AEL)両方が停まる便利な駅だ。
写真:馬湾西側の漁村。丘の向うに21世紀になって忽然と現れた高層住宅群。
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