上野・陳澄波 2014・9・17

          今年初めに台湾でそのオリジナルを見た陳澄波の日本での展覧会が開催され、日帰りで東京へ出かけた。
          東京芸大・正木記念館での陳澄波油彩画作品修復展、東京芸大美術館3Fでの「台湾の近代美術」展・・・二つの会場で陳澄波の絵を鑑賞した。
          陳澄波1895-1947は、1924-1929東京美術学校の図画師範科、研究生。その後1934,1936,1939と訪日。


東京芸大・正木記念館

     まずは正木記念館へ。
     チラシによると、国立台湾師範大学藝術学院文物保存維護研究発展中心と東京藝術大学大学院文化財保存修復油画研究室との共同研究発表とある。
     後で2Fに上がり、ビデオで修復過程の様子などを見た。当初、陳澄波の遺族の依頼で数枚の絵の修復を東芸でやり、その後多くの絵の修復を台湾師範大で手掛けたらしい。
     陳澄波の絵は色が命ってとこがあり、さすがに修復の成果はたしかで、南国の空気まで感じさせる色彩に仕上がっている絵がほとんどだ。
     展示されている絵の下には赤外線などの分析写真類が3枚貼られていた。ちょっと素人にはよくわからなかったけど。
     1Fには大きな絵が5点。
          1934「嘉義街中心」 電柱の影や猫の影。
          1936「岡」 うねる畑がゴッホ的か
          1938「椰林」
          1934「緑陰」
          1941「新樓(一)
     その他にも裸婦、静物画、小さな絵があった。すべてたぶん台南近辺で見ているが、あらためて嘉義時代の風景画がベストだと思った。


芸大美術館  ポスターの絵は李石樵1945「市場の入り口」

     芸大美術館3Fでの「台湾の近代美術」展は、留学生たちの青春群像(1895-1945)とサブタイトルにあるように14人の台湾からの留学生の自画像その他の作品が展示。
     陳澄波の絵は10点と一番多かった。印象深かったのは、
          1928「自画像」 これは留学時代の絵でほんとゴッホなのだ!
          1930「祖母像」 上海時代の絵
          1934「嘉義の町中」 台湾にもどってからの絵。電柱や家の影など南国の雰囲気。
          1934「嘉義公園一景」  猿檻見学風景、これは一番好きな絵だ。1月の訪台時もそう感じたが、やっぱりよい。
           ?「私の家族」 これも代表作だ。構図と色彩の暖かさがすばらしい!
     年初の台湾での展覧会は4つの会場で展示されていたし、規模は較べることもできない。だが上野という陳澄波油絵の出発点での展覧会の意義は大きいと思う。
     正木記念館も芸大美術館も無料だった。
     この展覧会開催は、ほんとうに御遺族の強い意志と努力の結果だ。感服します。
     陳澄波以外の絵も目をひくものがあった。
          李石樵1908-1995はリアリズムぽい感じ。
          李梅樹1902-1983は以前に大渓で見た。
          陳植棋は1906-1931と短命だが、1930の2点の自画像と1927「夫人像」はバックの赤い服が印象的。1928「卓上の静物」も色がいい。

     この後、言問通りを歩いて蕎麦屋でランチ、弥生美術館へ。
     村岡花子と『赤毛のアン』の世界展で大盛況だった。東和の先生たちの写真、愛読書、白蓮関連の展示、赤毛のアンの原画などなど見ごたえのある展示。
     隣りの夢二美術館では、ベルリンでの絵(前日にニュース)2点も公開されていた。だが圧倒的に弥生美術館がにぎわっていた。TVの影響はすごいね。

              2014年1月の台湾・陳澄波へ                                                                                    ホームへ