オズの魔法使い?

キャスティング

 

 

ドロシー    ・ギル 大部屋やその他にて登場。
トト      ・リク 小説での登場予定未定。
かかし     ・リオン 大部屋で登場。
ライオン    ・ランド 「アニマル」にて登場。
ブリキのきこり ・クガイ 「fate」にて登場。
オズ      ・シロン 小説での登場予定未定。
悪い魔法使い  ・アーク どっかにいます。
王女      ・レアン 「MIND SPIRIT」にて登場。

「ギル、ギル!大変だよ!急いで!!」

と、ある田舎町。広大な大地にたたづむ一軒の家、そこから聞こえてくるは一人の青年の声。

「うるせー・・・。」

それに答えるのは寝ぼけた声の、少年と青年との狭間の男の子。

「寝てる場合じゃないって!!本当に大変なんだから!!」

青い髪をした青年は、一生懸命ベットで寝ている茶色い髪をした男の子を起こそうとしているが、
一向に男の子が起きる気配はありません。

「ギル!! 竜巻に巻き込まれちゃうよ!!?」

「っるせーな。家ん中にいんだから平気だろ。」

青い髪の青年の慌てように、ようやくギルはベットから体を起こしました。

しかし、時既に遅し。

「うわああー!!ギルの嘘吐きー!!平気じゃないじゃんー!!!!」

ギルと青い髪の青年は、家ごと竜巻に巻き込まれてしまいました。

 

 

大きな振動と共に、今まで竜巻に巻き込まれ回転していた家が動きを止めました。

大きな回転に巻き込まれていたので、家の中はグチャグチャです。

「・・・あ、助かった・・・?」

「リク、外を見てみろ。」

リクと呼ばれた、青い髪の青年が安堵の溜め息を吐くと同時に、ギルが窓の外を指差しました。

リクが恐る恐る窓の外を覗いて見ると、窓の向こう側は、今までいた世界とはまるで別世界でした。

可愛い小さな家が沢山並ぶ、小さな町。

恐る恐るこちらを覗いてくる、可愛らしい服を着た、見慣れぬ人々。

「・・・・。ここ、どこ?」

「知るか。」

呆然と呟くリクに素っ気無く言い放つと、ギルは窓から外へ飛び出しました。

「うわ!ちょ、ギル!!」

慌ててリクがギルの後を追います。

外に出ると、ますますここが自分達が居た世界とは異なることを実感させられました。

見た事もない不思議な植物がほんのりと光っていたり、空の色にどことなく違和感があったり。

呆気に取られていると、いきなりリクは手を握られました。

「っへ!!?」

驚いて下を見ると、緑のローブをすっぽりと被った小さな男の子が、リクの手を握り、喜んでいました。

「ありがとう!!」

「ありがとう!!!」

「???」

回りからも喜びの声が上がり、ギルを見ると、ギルと双子の様にそっくりな男の子に手を握られ、肩が外れるんじゃないかと思うぐらい、上下に振られていました。

「なんなんだテメーらは!」

「あ、ゴメン。嬉しくってつい。僕の名前はキリ。この町に住んでるんだ。」

キリと名乗ったギルとそっくりな男の子は、ニッコリと笑った。

「この町はとても平和な町だったんだけど、最近悪い魔女がイタズラをしていて困っていたんだ。今日も魔女がこの町に来ていて、大変だったんだけど、君達のおかげで魔女を退治する事が出来たんだ!!」

ありがとう!と、また沢山の声が上がります。

何の事だろう?と、リクが頭を悩ませていると、ギルが何かに気が付いてリクを呼びました。

「リク、家の下見てみろ。人の足があるぜ。」

「足!?」

振りかえったリクは、自分達の家の下に下敷きになった人の姿を見つけました。

「あんた達が悪い魔女を、この家でやっつけてくれたんだ!」

緑のローブを被っている小さな男の子がそう言いました。

「んな事より、ここは何処だよ。」

「そ、そうだよ!帰らなきゃ!」

慌てるリクの様子に、ローブを被っている男の子は頭を傾げました。

「帰る?何処に?」

「俺達、カンザスって村から来たんだけど、どうやって帰ったら良いか知ってる?」

リクが尋ねると、この町の住民は固まって相談をし始めました。

「どうしよう…。俺達帰れるのかな?」

「平気だろ。」

不安げなリクの様子とは対照的に、ギルは言いきりました。

何故言い切れる、的視線でリクがギルを見ると、ギルはリクを見上げ、事もなく言い放ちました。

曰く。

「帰れなかったら、そんときゃそんときだ。」

リクの全身から力が抜けた事は、言うまでもありません。

 

不思議な町の住民達が話し合いを終えた様で、ギルとリクの元に近づいて来ました。

「ゴメンね。僕達じゃ君達の村への行き方が分からないんだ。でも、この国の魔法使いさんならきっと帰り道を知っているはず。この黄色いレンガの道を辿って行けば、たどり着けるよ!」

そう言って、キリは自分達の下にある黄色いレンガの道を指差しました。

「後、この靴を。魔女の履いていた靴だけど、不思議な力があるはずだから。」

緑のローブを被った男の子が、ギルにブーツを渡しました。

「…女物?」

「いや、大丈夫。この魔女足大きいから。」

呟いたギルに、キリが即答しました。 

「良いから、履いて履いて! ハイ、履いたね。んじゃ、気をつけてね〜!」

何だか渋っているギルを連れ、リクは「ありがとー!」と、手を振るキリに手を振り返しながら、黄色いレンガの道を歩いていきました。

 

 

 不思議な村を出てどのくらいか、ギルとリクは黄色いレンガの道をただひたすら歩いていました。

小さな村は遠ざかり、目の前には畑が広がっています。何とものどかな風景です。

そろそろ休憩でもするかな。と、ギルが考えた時、この場には似合わない声が聞こえてきました。

「うわっ!痛い、痛いってば!! 止めろよ〜!!」

声のする方を見てみれば、何故だか鳥に突つかれ逃げ惑う人を発見しました。

「痛いよ!!」

余りにも悲痛なその声に堪り兼ねて、リクが鳥を追っ払いました。

「大丈夫?」

うずくまっているその人に声を掛けると、オレンジ色の長い髪をした、鳥に突つかれていた男の人は恐々と顔を上げました。

「う〜…。痛かった。ありがとう、助かったよ。俺の名前はリオン。名前を聞いてもいいかな?」

「俺の名前はリク。あっちにいるのはギルだよ。でも何で鳥なんかに追いかけられてたの?」

オレンジ色の長い髪を持ったリオンは、ニッコリと笑って自己紹介をしたと思えば、リクの質問にとても悲しそうな顔をしました。

「それはね、俺がいけないんだ。俺、この畑の番をしてるんだけど、馬鹿だから鳥にからかわれちゃうんだ。俺が逃げてる間に他の鳥が畑を荒して…。おかげで俺、この仕事止めさせられるかも…」

ずーん、と沈み込んだリオンの様子に、

「お前、鳥に馬鹿にされ… むぐ!」

ギルが何かを言いかけて、リクに口を塞がれました。

「あ、あははは…。…聞こえた?」

空笑いをするリクを不思議そうに見ているリオンの様子から、ギルの言葉は聞こえなかった様です。

「ギルとリクは何でこんな所に?」

「一応、家に帰るため、魔法使いに会いに行く途中だ。」

「…一応?」

リオンの質問にギルが答えました。リクはギルの隣で、ギルの言った「一応」意味を思わず考えてしまっています。

「魔法使いか〜…もしかして、魔法使いに会えば、鳥に馬鹿にされずにすむ方法、教えてくれるかな!?」

「いや、無理だろ。」

素っ気無くそう言うギルに、リオンが反発しました。

「何で!分かんないじゃん!何て言ったって、魔法使いだよ!?」

「魔法使いだろーが何だろーが、鳥に馬鹿にされるような奴を治すなんて無……」

「うわー!!行こう!一緒に行こうリオン!魔法使いに会いに行こう!ね!?」

半分泣き出しそうなリオンの様子に、慌ててリクが口を挟みます。

リオンが段々喜びの表情になるに比例して、ギルの様子が不機嫌になって行きますが、この際リクはそれを無視しました。

「んで、こんな馬鹿を…。」

「ま、まあ、旅は道連れって、言うし…。」

またも乾いた笑みを浮かべるリクに、不機嫌なギル。喜んで小躍りしているリオンを仲間に加えて、黄色いレンガの道を歩いていきます。

 

 

「うっわ〜…不気味な森だねー…」

そう呟くリオンの言葉通り、黄色いレンガの道は暗い森の中へ続いていました。

「何があるか分からないから、気をつけて行こうね。」

「…何かあった方が楽しいけどな。」

「……ギル。」

リクの恨みがましい言葉を無視し、ギルはさっさと不気味な森の中へと入って行きます。

薄暗い森の中。鳥はギャーギャーと鳴き、不思議な蔦が、木々のあちらこちらに垂れ下がっています。けれど、別段怖がりでもない三人は、何時もの調子でレンガの上を進んで行きます。

と、いきなりギルの目の前に、赤い固まりが飛び込んできました。

「!?」

思わず足を止めるギルに、リクとリオンも歩みを止めます。

「よお。」

ギルの目の前に現われた赤い固まりは、そう言ってギルに挨拶をしました。

よくよく見れば、赤い固まりは単なる人の頭で、視線を上にずらして行けば、木の枝に引っ掛けてある人間の足が見えました。

つまりは、枝にぶら下がった赤い髪の人間が、ギルの目の前に現われた。と、言う事です。

「…………。」

無言でいるギルに、その男はもう一度「よお。」と、声を掛け、右手を上げて挨拶しました。

「あ、あの〜、どちらさんでしょうか?」

「あ?俺?俺はランドって言うんだが、あんた等が悪い魔女をやっつけた御一行様?」

恐る恐る尋ねたリクに、ランドと名乗った男は上手く体を曲げ、リクの方を見てそう言いました。

「確かに。悪いんだか何だか知んねーけど、魔女は潰した。」

「へぇ。あんたが?」

「いや、俺の家が。」

「…………。よく分かんねーんだけど…。」

「俺にはお前の現われ方がわかんねー。」

確かに。と、ちょっと離れた所でリクとリオンが小さく頷きました。

「まあ、何でもいいわ。」

そう言うと、ランドは枝から飛び降り、軽々とギルの前に着地しました。

「俺もついてくぜ。楽しそうだし。」

何だか、こう言う人種は断っても必ずくっ付いて来る。と、言う事を理解しているギルとリクは、顔を顰めはしましたが特に何も言いませんでした。  

リオンだけが、「理由も無いのに、一緒に行くのか?」などとちょっと不服そうにしています。

「何だ?理由がなくちゃ一緒に行っちゃいけねーって?」

「そう言うわけじゃないけど…。」

不満気〜、なリオンをランドがからかい半分でお話をしています。

(リオンには悪いけど…。)

リクとギルは、リオンで遊んでいるランドがこちらに構い始めないうちにと、歩を進め始めます。

二人とも、ランドには余りかかわりたくないようです。痛い目を見ると、ちゃんと理解しているのでしょう。

そんな事は露知らず、リオンはランドにいじめられているのでした。

 

 

不気味な森の出口がやっと見えてきた辺りで、ギル・リク・リオン・ランドの四人は変わった人物を見つけました。

短髪の黒い髪の男が、立ったまま木に寄りかかって…、 寝ていました。

(何故こんな場所に…)

四人が、始めて同じ事を考えた瞬間でもあります。

「あの〜、こんな場所で寝てると風邪ひきますよ?」

例によって例の如く、リクがその黒髪の男に声を掛けました。

男はリクの声に目を覚ましたかと思うと、四人を観察する様に眺め、

「丁度良い、そこにあるやつを寄越せ。」

と、言い放ちました。

「え、え〜っと。これの事?」

「それ以外に、何がある。」

リクが、道を挟んだ丁度反対側に置いてあった、水筒のような物を手にしてそう言うと、男はリクを馬鹿にしたような目で見ました。

さすがにムカッと来たリクですが、それよりも堪忍袋の尾が短いのがいました。

「あんた、それが人に物を頼む時の言い方!?礼儀を考えろよ、礼儀を!!」

リオンがギャンギャンと吼えたてますが、男はそれをまるで無視すると、リクから水筒のような物を受け取り、蓋を開けその中身を自分の足元へ全て溢しました。

すると、男の足元から ジュッ!という音と共に湯気が立ち上ります。

「…?なんだ?」

わけが分からない、と言った風に声を上げたランドに男はチラッと視線を投げかけましたが、すぐにその視線を外しました。

そのまま、今度はギルとリクに視線を移し、

「黒い長い髪のガキを見なかったか?」

と、言いました。

「子供?ううん。見てないけど…。」

何で?と、リクが尋ねる前に、また男は視線を外しました。

「人にもの尋ねといて、その態度は何だ!!?」

「あー、はいはい。リオン君。少し黙ってような?気持ち分からなくもないが、あんま騒いでっと、殴っちまうぞ?」

ニッコリとランドに脅されて、リオンが口を閉ざします。

「で?あんた何なわけ?あんたも俺達にくっ付いて、魔法使いに会いに行くってくち?」

「魔法使い…?」

ギルの質問に、男は呟いて顔を顰めました。 何かを考えている様にも見えます。

「…魔法使いか。なおさら丁度良い。お前等に付いて行く。」

そう言い小さく笑うクガイを見て、一緒に行くなんて嫌だ!と、言いかけたリオンが体ごと一歩引きました。何だかその顔が怯えて見えるのは何故でしょう?

こうして、理由も性格も不明な男が新たに仲間に加わり、五人は様々な思いと共に黄色いレンガの道を進んで行きます。

 

 

「へー。それじゃあクガイは盗まれた物を取り返しに、魔法使いに会いに行くんだ。」

ついさっき仲間になったばかりの黒髪の男、クガイはリクの言葉に「ああ」と言ったきり黙り込みました。

ギルもそれなりですが、それに輪を掛けて、クガイと言う男は無愛想です。

そんなクガイを面白くなさそうに見ているのがリオンで、そのリオンをからかっているのはランドです。余りからかいすぎるとリオンが泣くので、途中、リオンを助けてやるのはリクの仕事となりました。ギルとクガイはそんな彼らに興味が無いのか、ただ黙々と歩いています。

そんなこんなで、個性豊かな五人は黄色いレンガの最終地点にまでついにやって来ました。

黄色いレンガの最終地点は、エメラルド城と呼ばれる立派な城の門前でした。

次へ