なんとなく家に篭ってんのが嫌で、外を歩いてみる。
陰気な雰囲気も嫌いだから、葬儀をしているだろう教会と、墓場とは
逆の方向へ歩く。
神の情けか、空は青く澄んでいて、白い鳩なんかが羽ばたいている。
ここ最近犠牲者が増えている、平和だったこの村も、暗い影が横たわっている。
子供は外で遊ばせない、女は一人で出歩かない。
大の男達でさえ、一人でいる時間を作らない。 こんな朝っぱらから・・・
その理由を考えると、むかついてくる。
村の人間達を。 彼らは被害者なのにな、彼らの怒っている原因が、
カレを含んでいることに腹が立つ。カレは何もしていないのに・・・。
「・・・?」
まただ、たまに知らない誰かを考えてしまう。
夢の中にいた男のような気もしないではないが、今まで一人で生きてきた
はずだ。 誰ともかかわらず、話もしないで生きてきたはずだ、
そんな自分に、心配をする相手なんかいるわけねーのに・・・
働きもせず、ほそぼそと生きてきた・・・はずだよな・・・?
ぴたり、と、今まで動かしていた足を止めた。 誰かが目の前に立っていた。
かしゃん と、軽い音をたて、小麦色の食パンが一枚出来上がった。
朝っぱらから 大量にメシなんて食えねぇから、毎朝、食パンとコーヒーいっぱいで終わる。
パンには何も塗らず、そのまま食べる。コーヒーにはミルクだけ。
朝食を食べ終え、テーブルの椅子に座ったまま軽く目をつぶる。
一瞬だけ今日見た夢が思い出される、ほんの一瞬だけ・・・
「だりー・・・」
目をつぶったままつぶやく。
ゆっくりと目を開けてみる、さっきまでと同じ空気の自分の家。
当たり前のことなんだが、なんだかその事に気落ちする。
バカらしい・・・目を閉じて開ければ何かかが変わるとか、そんなことを期待してしてんだろーか。
それとも、忘れた夢を思い出そうとしてんのか・・・。 あの男の夢を・・・。
・・・?
「あの男?」
たまに見る夢は、いつも全てを忘れて目覚める。 それがきっと悪夢だと言うことも。
悪夢だとは断言できる。 目覚めがいつも最悪だからだ、いい加減むかつくぐらいに。
それなのに、あの男? 夢の中にいたんだろうか?
「・・・だるい。」
ベットの上で目を覚まして、開口一番にそう言った。
ゆっくりと休んだはずなのに体が重い。
嫌な夢でも見たんだろうか?と思いながら、ぼうっとする頭を覚まそうと、
洗面所まで進んでいく。
蛇口をひねり、流れ出る冷たい水に両手を差し伸べる。
ふと、目の前の鏡を覗き込む。 じっと自分の目を覗き込んでいるのは、
冷たい月を思い出させる、銀の瞳。