ノンストップヒーロー!
             第11話

『あー、あー。こちらレアン。聞こえる?』
 
「ああ、聞こえる。大丈夫だ。」
 
「・・・それじゃあ始めるか。」
 
 
どこかの、だだっ広いだけで何もない公園で
正義のヒーローのギルとカインは、悪の秘密結社のクガイとアークと共に
隅の方に固まり、別のところで同じように生贄を仕掛けてきたレアンと
あのゴツイ腕時計で連絡を取っていた。
 
「だけど、可哀想だよね、あの人。」
 
『あの人?』
 
自分の時計は、今カノトを追いかけているラティスに渡してしまったため、
ギルの時計を使いながら、レアンは少し離れたところにいる、
今だ簀巻き状態の深影をほそく笑みながら眺めている。
 
「名前忘れちゃったけどさ、銀髪で目の色が違う人。
今だぐるぐる巻きの上に、理由も分らず放置だよ?」
 
そう言う言葉とは裏腹に、レアンはさっきから楽しそうに微笑んでいる。
どう見てもこの状況を楽しんでいるとしか思えない笑みだ。
 
『ああ、確かみーちゃんだっけ?名前。』
 
「みーちゃん?」
 
『うん、みーちゃん。』
 
時計を通じて会話をしているカインも、声音は変わらないが、
言動から楽しんでいるように見える。
 
『あんな格好してさ、カノトに襲われる前に助けてあげろよ?』
 
「そういや、そっちの囮の様子は?」
 
簀巻きの深影、もとい、みーちゃんに完全背を向けながら、レアンは向こうの様子を聞いた。
 
 
 
『そういや、そっちの囮の様子は?』
 
「リーヴァとキュアンはどんな感じ?」
 
レアンの質問に答えるべく、カインがこちらの囮の二人を見張っているギルとクガイに聞いた。
 
「・・・。リーヴァがひたすら泣いてっけど?」
 
同情の欠片もない、ギルのさらりとした答えにカインは頷くと。
 
「二人とも楽しんでるってさ。」
 
と、カインがレアンに伝えました。
 
 
 
 
 
「しくしくしく・・・」
 
さめざめと、囮と化したリーヴァは泣いていました。
何が悲しくて、大の大人がピッタリとした黒のタンクトップにこれまたピッタリとした黒の皮のパンツを着なければならないのでしょう。
しかも、タンクトップは丈が短い気がします。
これではおへそが丸見えです。
 
「・・・・・。」
 
もう一度、夢であればいいなと思ったリーヴァが自分の服装を見ますが、
何も変わるわけがありません。
強制的に着せられた、囮用の服装のままです。
 
「しくしくしく・・・。」
 
泣き止まないリーヴァに、同じ格好をさせられた―ただしこちらは白色だが―キュアンが、
ポン、とリーヴァの肩を叩き、
 
「いつまでも泣いていると・・・カノトが喜ぶぞ?」
 
にっこりとした笑顔で言われた言葉に、リーヴァはピキッと凍りつきました。
 
「もうそろそろ、何かが起こっても良い時間だからな。」
 
明日の天気は晴れだろう。てき雰囲気でさらりと言われたキュアンの声に反応して、
リーヴァが不安な声を上げます。
 
「な、何かが・・・?」
 
「何を恐れている?後ろには大勢人がいるだろう?」
 
「そ、そうだな!」
 
「ただ、この罠が発動したときは、かごが上から落ちてくるわけだから、密室になるな。」
 
「・・・。」
 
「しかも、私たちは武器を取り上げられ、丸腰だ。」
 
「・・・・・・・・・・・。」
 
「しかし、このざるは一体何処から持ってきたのだろうな。」
 
腕を組み、不思議そうに頭上に広がる大きな大きなざるを見上げるキュアンの横で、
リーヴァがその場にへたり込んだと思えば、
 
「しくしくしくしく・・・」
 
また泣き始めました。
 
 
 

           帰る。    進む。