ノンストップヒーロー!
             第10話
 
「しかし、彼女は私達の顔を知っている。罠だとばれる危険性があるぞ?」
 
ピコピコと悪魔の角を揺らしているレアンに、キュアンがそう問いかけました。
レアンはその言葉に、首をひねり
 
「じゃあ、何処からか新しく調達してくる?」
 
と、言い切りました。
ただ一人、正常な思考の持ち主であるリーヴァが、小さな声で唸っていますが、
誰も気にも止めません。
 
「別に、調達しなくても平気だろ。」
 
皆が、その言葉の意味を知るべく、
カインに視線を向けましたが、カインはクスリと小さく笑うと、
この部屋の入り口である障子を顎で示しました。
 
皆が視線を向けた、丁度その時、
 
「クガイ、あれは千鶴の部屋に置いて来た。
必要なら自分で取りに・・・?何だ?」
 
この部屋の主、百済(くだら)深景(みかげ)が入ってきたのです。
 
「なるほど。それじゃ、コレ使おうか。」
 
レアンが楽しげにそう告げるのと、アークとクガイが静かに動いたのとは同時でした。
 
 
 
円陣を組む、正義の味方と悪の秘密結社の方々の後ろで、
グルグル巻きにされた上、猿轡をかまされたこの部屋の主が、もがいています。
彼の使い魔が現われ、それぞれ悲しんだり笑ったりしていますが、
深景を助け出そうとしないのは、アークが深景の首筋に小さなナイフを当てているからに他なりません。
 
「これで囮は大丈夫だな。何処に彼を置くんだ?」
 
「おい、待てよ。囮は一匹だけかよ?足りなくねぇか?」
 
安心したようにいうリーヴァの言葉を、正義の味方のリーダー、ギルがあっさりと切ります。
 
「そうだよね〜、せめて二つ設置したいよね。」
 
「なら、リーヴァとキュアンとセットで置いとくのはどうだ?」
 
「あ、それ良いね。それで行こうか?」
 
「ちょっと待て、それは指定なのか。」
 
何故か盛り上るレアンとカインの会話に、リーヴァが恐る恐る聞きます。
 
『そりゃ、もちろん。』
 
案の定の二人同時の答えに、リーヴァは大きく肩を落とし、
キュアンは、何を考えているのか分からない笑みを浮かべました。
 
 
しかし、彼らの悪夢はまだこれで終わりではなかったのです。
それは、次のカインの一言。
 
「そうだ、どうせなら飾った方が、カノト喜ぶんじゃねぇのか?」
 
「どういう意味だ?」
 
尋ねるギルに、カインはグルグル巻きにされている深景を指差し、
 
「なんだっけ、名前。深景?そう、その人みたいに露出の高そうな服着せれば、
カノトは喜び勇んで、文字通り飛んで来そうじゃね?」
 
「ああ、なるほど。」
 
カインの言葉に、固まったのが約1名。
猿轡をしたまま、大きな声で唸っているのが約1名。
その唸っている彼の使い魔が、よりいっそうにゲラゲラ笑っていますが、
その多くは、何故かカインの言葉に納得して、行動に移そうと準備をし始めました。
 
 
そして、彼らはカノトが暴れている町へと、繰り出して行ったのです。
 
 
 
 
 
 

 

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