ノンストップヒーロー!
             第9話
 
大きな日本家屋の一室に、
正義のヒーローと悪の秘密結社たちは集まっていた。
 
「クガイ、ここは?」
 
皆をこの場所へと連れてきたクガイに、リーヴァが疑問を投げかけます。
 
「あの場所意外にも、幾つか広い場所が合った方が便利だろ。
ここはその一つだ。奴は百済(くだら)深景(みかげ)、この部屋の持ち主だ。」
 
クガイの視線の向こうには、崩れた姿で椅子にもたれている
短い銀の髪に、左右の瞳の色が緑と青と言う珍し目をした男だった。
 
「深景、これをどっかに隠しておけ。」
 
クガイがこの部屋の主に、あの毒々しい色をした、ハクロ入りのハートを渡しました。
手渡された深景は、顔を顰めましたが、
ため息を一つ吐くと、そのまま何も言わず、部屋から出ていきました。
 
それぞれ思い思いの恰好で畳みの上に座り込んだ、彼ら一同は、
 
「それで?どうするんだ?」
 
というアークの声から、会議を開きました。
 
「取り合えず、カノトを追っているラティスには、僕の通信腕時計を渡しておいたから、
すぐに連絡は取れるよ。」
 
レアンの言葉に、さっそうとギルがごつい腕時計を使って、ラティスと連絡を取りました。
 
「ラティス、聞こえるか?」
 
『あ、ギル?』
 
腕時計からは、少し声が荒くなって聞こえてしまいましたが、
確かにラティスの声が部屋に響きました。
 
「カノトを押さえるために、悪の秘密結社と協定することになった。
今、奴が何処にいるか教えろ。」
 
『え?協定?・・・。うん。カノトは今、町中で男狩りしてる。』
 
 
「は?」
 
それを聞きたくなくとも聞いてしまったこの部屋の空気が、
一瞬にして固まりました。
 
「え?何?どう言う事?」
 
ラティスに尋ねると言うよりは、口を突いて出た、という感じでレアンがラティスに尋ねます。
 
『あの赤いハートで次々と捕まえてるんだ。カノトの籠の中には、
赤いハートが零れそうなくらい、たまってるよ。』
 
『ほーっほっほっほ!世の中の男は、全て、このカノト様のものよー!』
 
遠くで、問題児の声が響いています。
 
その声を聞き、思わず鳥肌を立ててしまったリーヴァが、
 
「どうやって、あいつを捕まえるんだ?人質をたてにとり、逃げる可能性も出てきてしまったぞ?」
 
といって、自分の両腕を擦っています。
どうやら、一番カノトを毛嫌いしているのは、彼女と口喧嘩したリーヴァのようです。
 
「そうだね、カノトがそのつもりなら、こっちにだって手が無いわけじゃないよ。」
 
そうやって、クスリと笑う、レアンに悪魔の角と尻尾が見えたのは、リーヴァの気のせいでしょうか。
 
「囮を使えば、カノトはすぐに掛かると思うけど?」
 
「お、囮?」
 
恐る恐る聞く、リーヴァの目には、レアンからはえている悪魔の角が、左右に揺れている幻覚が見えています。
 
「そう。囮はもちろん、悪の秘密結社の方々だよ、それが一番有効でしょ?」
 
 
 
 
 
 

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