ノンストップヒーロー!
             第8話
荒れた岩場に聳え立つ、悪の秘密結社。
その大きな門の前に、クガイ・リーヴァ・キュアンは立っていた。
3人とも、特に話す事もせず、目的の人物が来ることを待っているようだ。
 
すっ と、リーヴァが真っ直ぐ前を見た時だった、
ゆっくりとこちらに向かい歩いてくる、正義のヒーローのリーダー、
ギルがやって来たのは。
 
 
「目的の物は持ってきた。」
 
ギルは3人から少し離れた場所で立ち止まると、
持ってきた、毒々しい赤いハートを3人に見せた。
ハートに中に閉じ込められたハクロが、
一生懸命にハートの壁を叩いている様子も、遠くからでも確認出来る。
 
「それをこっちに渡せ。」
 
一歩、リーヴァがギルに近づくが、
ギルはその毒々しいハートを下にさげた。
 
「カインはどうした?交換じゃねぇのか?」
 
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
 
ギルがもっともな事を告げた瞬間、
リーヴァの周りの空気が重くなった。
 
「・・・アークの部屋にいた。」
 
幾分小さな声で答えるリーヴァだが、
 
「だったら連れてこいよ、交換だろ?」
 
「・・・・・・。」
 
ギルの言葉に、押し黙ってしまった。
 
「リーヴァ?私が呼んで来ようか?」
 
「いや、行くな!」
 
押し潰れそうな空気に支配されてしまったリーヴァを案じ、
キュアンが助け舟を出した、つもりだったが、
リーヴァはその言葉に勢い良く反応した。
 
「何かあったのか?」
 
ついにはクガイにまで口を挟まれ、
リーヴァは冷たい汗を流した、その時、
 
「何をしているんだ、お前達。」
 
「あ、ギルだ。」
 
悪の秘密結社の門の向こう側から、
アークとカインが歩いてきた。
 
「カイン。さっさとこっち来い。このハートを向こうに渡す。」
 
ギルが毒々しいハートを振りまわし、カインを呼ぶ。
カインはそれに頷くと、ちらりと後ろに視線をやり
目が合ったリーヴァに、小さな笑みを送った。
どう考えても、「さっき覗いたお返し」みたいな笑いで、
リーヴァは更に冷たい汗を流す。
 
 
 
無事に物物交換が済んだ双方だったが、
キュアンがギルとカインに声をかけて来た。
それは、
 
「このハートはどうやって壊すんだ?」
 
と、言う、その場の人間の時間を一度止めてしまう言葉だった。
 
「そのままさっくりと切れば良いんじゃねぇの?」
 
「フォークで穴を開けてみるとか。」
 
ギルとカインのかなりいい加減な物言いを聞き、
もう少し、まともな答えは出ないのか、とリーヴァが口を開き掛けた時でした。
 
「ギル!カイン!」
 
ギルとカインの後ろから、レアンがやって来たのです。
 
「レアン。どうした?カノトとラティスは?」
 
「ごめん逃がした。カノトの奴、魔女のほうきに乗って窓から逃げたんだ。
今、ラティスが後を追ってる。」
 
人間を捨てたらしいカノトの行動に、
ギルは思わず舌打ちをしました。
 
「どうする?このまま放って置くわけにもいかねぇよな・・・。」
 
「それより問題なのは、今カノトが何処にいるか、だよ。」
 
視線で二人に先を促されたレアンは、
人差し指で、下の地面を指差しながら言った。
 
「カノトはこの場を知っているにも関らず、今、ここにはいない。
じゃあ、何処にいる?」
 
「・・・まさか。」
 
カインの漏らした呟きにレアンは頷き、
 
「そう。切れたカノトが町で暴れている可能性が一番高い。」
 
「やばいんじゃねぇのか。」
 
「やばいどころじゃないよ。」
 
3人は頷き、その場を走り去ろうとした時でした。
 
「私達も手を貸そう。」
 
悪の秘密結社・幹部の一人、キュアンが声をかけて来たのです。
 
「キュアン!」
 
もちろん、即座に声をあげたのはリーヴァです。
しかし、キュアンはリーヴァに未だ毒々しいハートに捕らわれているハクロを示し、
 
「これを解く方法は、本人から聞いたほうが良いだろう。
それに、このまま放って置くのも嫌だろう?」
 
ニッコリとした笑みを見せられ、リーヴァはしぶしぶ了解をしました。
 
「それなら、まずはこの場を離れた方が良いだろう。
いつ、あのカノトがここへ来るとも限らない。」
 
「なら、良い場所がある。」
 
アークの言葉に、声をあげたのはクガイです。
 
「別の屋敷が一つある。その場で話しをすが、
お前達も付いて来るんだろうな。」
 
クガイが少し離れた3人に声をかけると、
ギル・カイン・レアンの3人は、大きく頷きました。
 
「なら、行くぜ。」
 
正義のヒーローと悪の秘密結社が、協定を結んだ瞬間でした。
 

 

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