ノンストップヒーロー!
             第7話
「別に良いじゃない。」
 
この不景気にどうやって建てたのか聞きたくなるような豪邸。
正義の味方のリーダー、ギルの家の広間に ギル・レアン・カノト
そして、悪の秘密結社から伝言を持って来たラティスが座っていた。
 
のんびり紅茶やコーヒーを飲みながら、ラティスが皆に取引の話しをした直後の、
カノトの一声である。
 
「まあ、俺もそう言われると思ったんだけどさ、一応言っておこうと思って。」
 
暖かいミルクティーを飲みつつ、ラティスはチラリと左右に座っているギルとレアンに目配せをした。
 
「・・・。」
 
「なるほどね〜。」
 
ラティスとの目の会話をした後、
ギルは無言で、レアンは納得した様子でそれぞれソファから立ち上がった。
そして、そのままカノトを挟むように隣に座り、
ガシッ。っとその手の中にあった毒々しい赤いハートを掴んだ。
 
「ちょ、ちょっと!人のものに何するのよ!」
 
『誰がお前のだ!』
 
綺麗にギルとレアンの声がかぶった直後、
やはり男と女。力の差は歴然としており、毒々しいハートはすぐにカノトの手から離れた。
 
「やだー!私のー!!」
 
「逃げろギル!僕とラティスで抑えとくから!」
 
「早く!カノトが怒ってる!!」
 
毒々しいハートを手に入れたギルが、一歩一歩カノトから離れるのと比例するように、
カノトが威嚇するようにダサヒロインステッキを取り出そうとしていた。
そこへ、慌てて止めに入るレアンとラティス。
その身を省みず、ギルを悪の秘密結社へ行かそうと必死だ。
 
「良いか。最悪こいつをこの家から出すんじゃねぇぞ?」
 
少しずつ扉へと近づくギルがそう言うと、
 
「分かってるよ。これ以上面倒なこと起されたくないもんね。」
 
「うん!俺も頑張るよ。」
 
ギルとカノトの間に分け入るように立っている、レアンとラティスがそう答えた。
 
一方のカノトは、ギルを睨みつけたまま、二股の下が出てきそうな空気を纏わせている。
うっすらと、その茶色い髪が逆立っているのは、三人の見間違えではないだろう。
 
「行け、ギル!!」
 
大きく響いたレアンの声に、ギルは毒々しいハートを抱え、その身を翻した。
 
 
 
 
 
 
「人質とハクロを交換?場所の指定は?」
 
「既にしてある。後はしてい場所に行きゃあ良いだけだ。」
 
悪の秘密結社の廊下を、リーヴァとクガイが足音高く歩いていた。
リーヴァは何処かイライラと、クガイは楽しんでいるのか、面倒くさがっているのか分からない様子で
 
「二人とも、用意は出来たが、アークはどうした?」
 
「キュアン。これから呼びに行く。」
 
廊下の途中で出会ったキュアンと共に、
3人は入り口付近のアークの部屋へと向かった。
 
「先に行ってるぞ。」
 
部屋の前に立ち止まったリーヴァとキュアンに声をかけ、クガイはそのまま立ち止まらず悪の秘密結社を出て行った。
その様子を横目で見つつ、リーヴァはアークの部屋を叩いた。
 
「アーク。今から出るぞ。・・・いるのか?アーク」
 
閉められた扉を叩いても、部屋の主の返事は無い。
しかし確実に部屋の中に人の気配はしている様子、
 
「・・・?開けるぞ。」
 
リーヴァは声をかけた後、小さく扉を開けて中を覗き、
 
すぐに扉を閉めた。
 
「リーヴァ?」
 
隣で様子を覗っていたキュアンが、扉の取っ手を握ったまま固まっているリーヴァに声を掛けた。
 
「顔が赤いぞ?」
 
「・・・何でもない。・・・行こう。」
 
明らかに様子のおかしいリーヴァに、キュアンは首を傾げたが、
あえて何も聞かずに、アークの部屋を気にしつつも、先に歩き出したリーヴァの後に付いていった。
 
人質の交換を指定した場所、
そこは悪の秘密結社の入り口だった。
 
 

 

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