ノンストップヒーロー!
             第3話
 


 
「どう言うつもりだ、アーク。問答無用で俺たちを引き上げさせた、
ちゃんとした理由ぐらいあるんだろうな・・・。」
 
「別段、理由など無い。
強いて言うなら、そう言われたからに過ぎない。」
 
「てめぇ、誰に言われたか知らねぇけど、
向こうとの決着を付けられる、良い機会だったんだぞ?」
 
「落ちつけ、クガイ。
起こってしまった事は仕方が無いだろう。」
 
「リーヴァの言う通りだ。
今は次の策を考えよう。」
 
 
明るい場所に置かれた円卓を囲み、
悪の秘密結社の4人、クガイ、アーク、リーヴァ、キュアンは
暖かい紅茶を飲みつつ、会議を開いていた。
 
「はい、クッキーが焼きあがりましたよー。」
 
その円卓に、大きなお盆に乗った美味しそうなクッキーを運んできたのは、
白い長い髪をした、女のように綺麗な顔をした男、ハクロである。
 
「そう言えば、クガイ様。最近マトリ君を見かけないんですが、どうしたんですか?」
 
「俺が知るか。」
 
「ああ、マトリなら「しばらく実家に帰らせてくれ」と、出ていったが。」
 
「ええ!そうなんですか?キュアンさん。」
 
「前にバスに引かれた事を、根に持っていたようだな。」
 
リーヴァの呟きに、ハクロが悲しそうに顔を顰めるが、
そんなことは気にも止めない、クガイとアークはハクロをほっとき、話を進めた。
 
「確かに、向こうとの決着に水を差したことは分かっている。
向こうが邪魔者だと言うことは、私も思っていることだ。」
 
「なら、それなりのものを見せてくれるんだろうな。」
 
「ああ。既にやってある。・・・悪者らしく行くのだろう?」
 
「何をしたんだ?アーク」
 
「手っ取り早く、人質だ。」
 
 
 
 
「ごめんね、学校お休みなのに付き合ってもらっちゃって。」
 
「いや、俺も暇だし。プレゼント選びぐらい丁度良い暇潰しになるし。」
 
休みの日に賑わう町の中。
深い緑色のフードを深く被っているラティスと、
私服姿で、町中を歩くラティスに付き合っているカインの2人は、
あっちのお店、こっちのお店、と歩き回っていた。
 
「疲れた〜!良いのが見つからないよ〜!」
 
「同居人への誕生日プレゼント捜してるんだったよな?
そーいや、何で俺なの?」
 
ショッピング通りを、目をキョロキョロさせて歩くラティスの後ろ姿を眺めつつ、
カインはふと、疑問に思った事を聞いた。
 
「えー?そりゃ、ギルやレアンじゃ、付き合ってくれなさそうだし。
カノトは論外。」
 
「ふ〜ん・・・。」
 
カノトの何が論外なのか気になったカインだったが、
取り合えず聞き流す事に決めたようだ。
 
「どっかで休憩でも入れるか?」
 
「う〜ん。・・・そうだね。」
 
と、その時である。
カインの腕の、いやにゴツイ腕時計が震え出した!
正義のヒーローへの呼び出しである!
 
「・・・・。おい、何でお前は付けてないんだ?コレ。」
 
「え?その趣味の悪いもの?
リクがさ、「そんな大きいもの腕に付けてたら、腕が変な風に成長しちゃうよ!」って言って没収した。」
 
自分を見上げるフードの中のラティスが、その時にやりと笑ったように、
カインは感じた。
 
 
 
「それで?今回もビデオテープ?」
 
銀行からくすねて来たお金で建てた、ギルの新しい豪邸での一室。
大きなソファに沈みつつ、レアンはゆったりと寛いでいた。
 
「また、終ったと同時に爆発するのかな?」
 
「させるか。」
 
レアンと同じように、ソファに沈むラティスの言葉に、敏感に反応したギルが、
何かに気付いたように、辺りを見まわし
 
「そーいや、カノトがいねーな。」
 
「あー・・・。そーいや、確かに。」
 
「まあ、良いか。ビデオ見るぞ。」
 
何事も無かったかのように、ビデオを流し始めた。
 
 
『あ〜・・・。久しぶり。と言うほど久しぶりでもないんだけど。
大変な事が起こっちゃった。』
 
テレビ画面に現われた、茶色い髪の少年、ケアルは、
開口一番にそう言った。
 
『どうしよう?カノトが誘拐されちゃったんだけど。』
 
心配している、と言うよりは、ひたすら困っているようなケアルが画面に映っている。
 
『悪の秘密結社に・・・。』
 
静かな空気が、部屋の中に流れた後、
ケアルはもう一度話し始めた。
 
『まあ、場合が場合だから、今回の事はそっちに任せるよ。
好きなように動いてくれて、俺は構わないから。
・・・なお、このビデオテー・・・。』
 
ピッ! ガシャン。ガー・・・。
 
スタスタスタ。
 
ブンッ!!
 
ひゅるるるる〜・・・・・。
 
どっかーん!
 
 
因みに、今の一連の音は、
 
 
ピッ! ガシャン。ガー・・・。 
 
 ↑ ギルが再生を止め、ビデオデッキからビデオを取り出した音。
 
スタスタスタ。
 
 ↑ ギルがビデオテープを掴み、足早にベランダに向かった音。
 
ブンッ!!
 
 ↑ ギルが力いっぱいに、ベランダからビデオテープを投げた音。
 
ひゅるるるる〜・・・・・。
 
 ↑ ギルが投げたビデオテープが、弧を描いて遠くに飛んでいく音。
 
どっかーん!
 
 ↑ 案の定、ギルの投げたビデオテープが空中で爆発した音。
 
 
前のビデオテープの怨みが、どれほど深いか、
少しばかり垣間見えた瞬間である。
 
 
ベランダから戻って来たギルは、
それぞれ、思い思いの恰好でソファに沈んでいる3人を見渡すと
 
「悪の秘密結社に連れてかれた、カノトの事だが・・・」
 
そこで一度、軽い溜め息を吐くと
 
「めんどくせぇから、ほっとく。」
 
と、きっぱりと言いきった。
 
ソファに沈み込んでいる3人は、
神妙な顔つきのまま、同時に頷いたようです。
 
 
 
 
「きゃ〜vv 美形がいっぱ〜い!!」
 
カノトが、悪の秘密結社が開いていた会議に連れてこられての開口一番。
 
この言葉を聞き、悪の秘密結社が
 
「人選を誤ったんでわっ!!?」
 
と、思ってしまっていても、仕方ありませんね。
 
  
 


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