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経絡辨証       1.001    2001.10.18

十二経絡病症 奇経八脈病症

 外邪が人体に侵入すると経気失調となり、体表の衛外機能が弱くなるために、病邪は経絡を通じて
徐々に臓腑に侵入する。また逆に内臓の病変が経絡を通じて体表に反映される場合もある。
 経絡辨証は十二経脈病症及び奇経八脈病症に分けられ、臨床所見に基づいて疾病がどの経、臓腑に
あるのかを分析し、診断する辨証方法である。

 経絡辨証では問診等はもちろんですが、按診等での体表の経絡上等に現れる様々な反応をとらえる
力が必要になります。按診は簡単にいえば経穴部位等のコリ、弱り、その他の異常を診察するもので
鍼灸師に最も必要な能力の一つです。患者さんごとに微妙に異なる経穴の位置を正確に取穴する能力
にもつながり、教科書を勉強するだけでは身に付かない力です。
 しかし一方で按診に頼った診断や取穴は、経絡や経穴を無視した単なる阿是穴治療になる危険もあり
ますので、やはり経脈の走行や経穴の基本的な部位を勉強することが前提となります。基本と応用を
わきまえて使いこなす必要があるでしょう。

@十二経脈病症

 十二経脈病症は十二経脈や関連する臓腑の機能失調によりおこる症候であり、十二経脈病症の特徴
を把握すれば疾病の部位や虚実を診断できる。

 1.手太陰肺経病症 

 肺脹〔脹満感〕、咳喘、胸悶、欠盆中痛、息切れ、肩背痛、悪寒発熱、自汗等、上腕・前腕内側前面部痛

2.手陽明大腸経病症

 歯痛、頚部腫脹、咽喉痛、鼻出血、肩・上腕部の疼痛、示指痛等

3.足陽明胃経病症

 発熱、鼻痛、鼻血、歯痛、頚部の腫脹、膝蓋脹痛、乳房部痛、気街・股・大腿下腿前外側・足背痛等

4.足太陰脾経病症

 舌の強ばり、嘔吐、腹脹、体の重だるさ、心煩、泥状便、股・膝内側部の腫痛や冷え、母趾の麻痺等

5.手少陰心経病症

 心痛、口渇、目黄、脇痛、前腕内側の冷痛、手掌部の熱痛

6.手太陽小腸経病症

 下顎部が腫れ首が回らない、肩部痛、上臂痛、難聴、目黄、頬部の腫れ、頚・顎・肘・上肢外側後方部痛

7.足太陽膀胱経病症

 悪寒発熱、鼻閉、頭痛、項部の強ばり、背腰部痛、膝裏・ふくらはぎ・外踝の疼痛、小趾の麻痺等

8.足少陰腎経病症

 空腹だが食欲はない、顔が黒い、咳や唾に血が混じる、口内の熱感、咽頭腫痛、脊柱・大腿内側部痛等

9.手厥陰心包絡経病症

 手掌の熱感、臂・肘部の痙攣、腋下の腫れ、面赤、心煩、心痛等

10.手少陽三焦経病症

 難聴、多汗、外眼角や頬部の痛み、耳後・肩・上臂・肘外側の痛み、小指・薬指の麻痺等

11.足少陽胆経病症

 口苦、溜息をつく、片頭痛、胸・脇・肋・髀・膝外側・脛骨外側痛、足第四趾の麻痺等

12.足厥陰肝経病症

 胸部の膨満感、嘔逆、少腹部の膨満感や痛み、陰嚢の腫痛

十二経脈病症とは主に経脈上の病証を指していますので、経脈の走行を理解していれば難しくはありません。
臨床上常見される様々な〔痛み〕については特に即効性があります。慢性ではない簡単なものでは、経脈上に
1本の刺針で治癒する例も多くあります。

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A奇経八脈病症  

 奇経八脈は正経十二経脈の順行や関連器官とは異なる経脈であるが、正経十二脈や五臓六腑と間接的に
関わっている。特に衝・任・督・帯脈は人体の生理、病理とも密接な関係がある。

1.督脈病症

 脊柱部の強ばり等、頭重感、頭痛、ひきつけ〔小児〕

2.任脈病症

 疝気〔男性〕、帯下〔女性〕、月経不順等〔女性〕

3.衝脈病症

 気急〔呼吸困難〕、気逆、胸腹部の脹痛

4.帯脈病症

 腹部の脹満、臍から腰周りの痛み、赤白帯下〔女性〕

5.陽維脈、陰維脈病症

 陽維脈・寒熱に関わる病症〔冷え、発熱、悪寒等〕

 陰維脈・心痛

 両脈のバランスを失うと生気が失せたり、脱力して力が入らない

6.陽きょう脈、陰きょう脈病症

 陽きょう脈・身体の内側の筋肉が弛緩し外側の筋肉が拘急する、狂走、目が閉じない

 陰きょう脈・身体の外側の筋肉が弛緩し内側の筋肉が拘急する、下肢厥冷

奇経八脈病症は一部の例外を除いて実証の病症となるため、例えば衝脈病の気急や気逆等にみられる
ように激しい症状を示す例が多く見られます。私も臨床経験の浅い勤務時代に、強い胃痛を訴える患者さんに
内関、中かん、足三里、梁丘といった胃痛治療の定石で試みてうまくゆかず困った時に、院長先生が公孫
〔衝脈〕に刺針したところ、一瞬で胃痛が消失したケースがありました。一般に生殖器系疾患の治療に向くと
いわれていますが、特に実証の症状に対しての治療効果は優れたものがあります。

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