第73話「パブロフの無職」


 第45話で映画に出演したいと夢を語ったのだが、先日遂に映画の撮影現場に乗り込み、出演する事に成功してしまった。

と言っても所詮エキストラなのだが、撮影していたシーンの性質上、朝8時から夜まで1日中撮影現場にいる事が出来たし、何度もエキストラとして演じる事が出来たので、スクリーンに僕の姿が写り込んでいる可能性はかなり高くなる。何の映画の撮影だったかはとりあえず現時点で公表せず、完成した映画を観た上で改めてレポートと一緒に発表したいと思う。ちなみに、その映画の中では季節が真夏であり、撮影をしていない間、エキストラの面々は上着を着て待機しているのだが、もし「本番でーす」の声を聞こうものなら10月の寒い日だったにも関らず全員上着を脱ぎ、夏の格好になるのだ。そして「OKでーす」と聞くと同時に皆上着を着る。こんな事を1日繰り返していたものだから、エキストラの面々はパブロフの犬と化し、撮影終了後もどこからか「本番です」の声を聞こうものなら上着を脱いでしまう様になったのだ。

 

 とまあ、くだらない冗談は良いとして、まさか無職でいる最中に自分の人生の大きな夢を叶える事が出来てしまうとは思ってもいなかった。こりゃ無職もまんざらじゃないスね。肩身が狭いとは言え、朝のワイドショーを最後まで見られるし、森田一義アワーを会社で見ている人は少なくないだろうが、無職の場合は続いてごきげんようを見る事も可能なのである。また、プロ野球球団を経営する某大企業の子会社で働く大学時代の後輩は、この無職で哀れな先輩にカレーを食わせてくれた。そして、荒井注が「失業手当もオツなモノ」と歌っていたが、その通りで、無職でもお金を貰う事だって出来るのだ。ただし、僕の様に自分の都合で退職した場合は退職後3ヶ月待たないと支給されないらしい上に、僕は今日から再度会社員として世に放たれる事になった為、つまり無職暦が1ヶ月で終了したので失業手当を手中に収める事は失敗に終わってしまった。

しかし案ずる事無かれ。早期の再就職者には職業安定所から早期再就職支援金が支給されるらしいのだ。聞くところによると結構な額が貰えるらしく、早速貰いに行こうと思い条件を見たところ、前の会社を退職時にその旨を職業安定所に届け出ておく必要があるらしい。はい、僕はそんな事してません。3ヶ月先に貰える手当ての存在しか把握していなかったものだから、まだ届け出なくても良いと思っていたのだよなー。とほほ。

 

 と言う訳で、これから職業安定所に行って「なんとかしてよ」と言ってから新しい会社に出社します。

 

[完]


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