ブラザーフッド(原題:太極旗を翻して)
この映画を観るにあたって無視しちゃいけないのが『シルミド』ですね。
追求すれば、特にテーマが近い訳ではありませんが、最初に受ける印象はどちらも似た物です。いや、それだけではなく、この映画は『シルミド』が持つ観客動員数や制作費の韓国内最高記録を、ほんの数ヵ月後に抜いているのです。ただでさえ、『シルミド』が尋常ではない記録を叩き出したと思った直後のこの映画ですから、先日『シルミド』で大いに感動した人間にとっては到底無視出来ないでしょう。
本当に、最近の韓国のテレビドラマや映画の持つパワーには感心させられます。人気ドラマの視聴率が50%だなんて、平気で言いますもんね。ま、これはテレビ局数が少ない事等も理由になっているんですけどね。それでも凄いです。多分、今の日本の映画・テレビ業界では韓国のパワーには絶対に勝てないでしょう。この『ブラザーフッド』を観ていても随所で痛感させられました。こんな映画、絶対に日本では作れない。
パンフレットやチラシを見ていると、この映画は随分と『プライベート・ライアン』を意識している事が分かります。「『プライベート・ライアン』を凌ぐ戦闘シーン」との事ですが、とりあえずこの文句に関しては否定しないでおきましょう。意識しすぎて「真似か?」と思える場面も登場しますが、『プライベート・ライアン』以降の戦争映画の中では最も良い出来だったと思います。ただしこれは個々の戦闘シーンのみでの評価です。
どうもこの映画、朝鮮戦争の悲惨さを伝えようとするメッセージ性があまりにも強すぎる気がしてなりません。
一応、物語りは朝鮮戦争によって引き起こされた兄弟の悲劇が主軸なのですが、この兄弟愛のドラマ部分がどうも戦争と言うテーマにしっくり来ていない気がしてしまって。どうして兄は戦闘訓練も受けていないのに、最前線の危険任務をバリバリこなす事が可能だったのか?なぜスナイパー並に射撃が上手いのか?そして兄弟愛を描くにあたって、兄を狂気に走らせる必要性は有ったのか?そもそも何故兄は、自分の嫁よりも弟を大事にしようとしていたのか?せめてそこがしっくり来るエピソードだけでも追加してもらえれば兄の一連の行動にそれとなく納得がいっただろうに。
そして個々の戦闘シーンは後半になる頃にはもう観慣れてしまって、欠伸を出す余裕まで・・・
『シルミド』の方が良かったなぁ。
2004年6月27日鑑賞