おすすめ BOOKS



■「死体が語る真実」 エミリー・クレイグ(著) 三川基好(訳) 文春文庫

人間の体は死んだ後、固い部分と柔らかい部分に区別して調べられます。
柔らかい部分、皮膚や筋肉、内臓といった軟組織は、法病理学者が、
そして固い骨は、法人類学者が担当します。

法病理学者というと、医師なんですが、
法人類学者というと?
古い死体で遠い過去の人類の研究をしているのかという気もしますが、
そうではなくて、新しい死体でも、さまざまな理由(屋根裏部屋から
出てきた白骨死体や、墜落したセスナ機の中の焼け焦げ死体など)で骨しか
残っていない死体を調べます。

著者は、そんな法人類学者のひとりです。
最初は、医学イラストレーターという仕事についていて、だんだんと
司法の世界に心ひきつけられていきます。
そして、身元不明の死体の復顔作業で完全にこの世界にはまってしまい、
テネシー大学ノックスヴィル校の大学院で法人類学を学びます。
この学校は、実際の人間の死体を野外に放置して、その腐敗の経過を観察する
という実習を行う世界で唯一の教育機関です。
そこでは、死体を食い尽くすウジとの格闘もあります。

身の毛のよだつような思いをさせられることもあるが、この仕事が好きで、
事件を解決するのは胸躍ること、知恵と知識を総動員して複雑な謎に挑む
のは実にスリリング。
そして、この世に正義を実現しようと奮闘している警察組織および法医学
関係者のチームの一員として受け入れられていることを誇りにも思っている
著者です。

無名の一市民の事故死から、ワールドトレードセンターに対するテロ攻撃
まで、著者が関わった、さまざまな事例は、ノンフィクションにもかかわらず、
どこかミステリ小説を読む以上に、ユニークであり興味深いものがあります。


■「ベッドサイドのユーモア学」 柏木哲夫(著)メディカ出版

ふだん、私たちは、笑いやユーモアについて深く考えることはないと思います。
この本では、そうした笑いやユーモアって何だろうと考えさせてくれます。

ここで主にとりあげられているのは、ベッドサイド(病床)での笑いや
ユーモアです。
患者、家族、スタッフの3者がユーモアを忘れず、
「病気であるにもかかわらず笑うこと」ができれば、それは患者や家族は
もちろんのこと、スタッフにとっても、たいへん慰められることであり、
3者にとって、大きなプラスになります。

死と向き合うユーモア、緊張緩和にユーモア、などユーモアにもいろいろな
種類があります。
笑いやユーモアが病気の予防、症状の軽減、病気の短縮などに関係している
事例を紹介しています。
また、現在看護現場でスタッフがユーモアをどのように受け入れているか、
または、受け入れていないか、ユーモアの役割について考えます。

ユーモア(Humor)の語源は、ラテン語のフモールで、体液を意味します。
ユーモアは体液と同じようにそれなしでは「人間として」生きていけない
とも言えます。
この「人間として」という言葉は、「人間らしく」と言い換えられますが、
「人間らしさ」には笑いや感動が必要で、その源であるユーモアは、
かけがえがないものともいえます。

ユーモアは人間が単に生理的に生きていくためには不必要かもしれませんが、
人間らしく生きていくためにはどうしても必要なもの、そして、
人間を理解するうえで重要なものなのです。


■『ITエンジニアの「心の病」』
酒井和夫/立川秀樹(著) 毎日コミュニケーションズ

先月(2005年6月)には、「うつ病」などの精神障害で2004年度に労災認定を
受けた人が過去最多になったという厚生労働省の集計が発表されました。
しかも職種別でみると、システムエンジニアなどの専門技術職が最多とのこと
でした。
メンタルヘルス(心の健康)対策の強化が必要です。

どうして、ITエンジニアに精神障害が多いのか?
ITエンジニアの職場にあるストレス、IT時代という時代のストレスは、
何なのか?
企業のメンタルヘルスへの取り組みは進んでいるか?

ITエンジニアがとりつかれやすい30の疾患では、うつ病をはじめとして、
頭痛、慢性疲労症候群、エコノミークラス症候群、自律神経失調症など等、
いわれてみれば、かかりやすそうな疾患がぞろぞろ出てきます。

また、破綻に走る兆候の見分け方では、破綻にいたるまでには、1〜4の
ステージに分けられるデフコン(Defence Condition=警戒態勢)のサインが
あるといいます。
危ない兆候は、どう見分けたらよいのか?

予防法は、どうしたらいいのか?

ITエンジニア、管理者、IT企業の経営者に読んでおいて欲しい本です。


■「スパマーを追いかけろ」
 ブライアン・マクウィリアムス(著)夏目大(訳)オライリー・ジャパン

「スパム」というのは、ジャンクメール、迷惑メールのことです。
そして「スパマー」というのは、そんな「スパム」を無差別にばらまいて
ビジネスをする人たちのことです。
また、「スパマー」に対して、自ら武器をとって断固戦おうとする人たち
を「アンチスパマー」といいます。

この本では、学校時代は優等生で、チェスが得意というホークが「スパマー」
になっていく過程や、コンピュータ技術にもさほど詳しくなかった40代
女性のスーザンが「アンチスパマー」として何十人ものスパマーの正体を
暴いていく活動、他にも特異な「スパマー」達が登場します。

金儲けを目的としている「スパマー」もいれば、金儲けを目的として
いない「スパマー」もいて、驚きあきれることもあります。

「スパマー」と「アンチスパマー」の戦いに終わりはあるのだろうか?
また、ストーカーのようにお互いを探り、お互いの個人情報をばらまく
戦いなどからは、「スパマー」と「アンチスパマー」との境界線ってなん
だろうと考えさせられます。

世界的に増加している「スパム」について知りたい人に、おすすめです。


■『コンピュータを「着る」時代』 板生清(著) 文春新書

コンピュータを「着る」というのは、衣服やめがね、シューズ、ベルト等と
いったものによってコンピュータを中心とする情報機器を気軽に持って
運べることです。

こうしたウェアラブル技術によるサービスは、すでにいくつかは、実現され
ていますが、まだまだこれから様々なサービスがうまれてくることは間違い
ありません。

そもそものはじまりは、カラスの生態調査。
カラス一羽一羽に、足跡、行動が把握できるような装置を取り付け、その
装置か送ってくる情報によって、行動範囲を調べていた調査が、ある企業の
目にとまります。
「情報装置をカラスに装着できるのなら、物流用パレット(荷台)にも
つけられるのではないか」と、パレット追跡システムを開発したこと。

また、ヘルスケアで、ウェアラブル機器を使うと、1年365日中、
1日24時間を通して、フルにケアができます。
そうした実例について。

そういえば、アップルが発売した携帯音楽プレーヤー「iPod」だって、
りっぱなウェアラブル情報機器だといえます。

いろいろな分野で、ウェアラブル技術によるサービスは考えられます。
他には、どんなサービスが考えられるか、想像してみませんか?


■『「万病」虫くだし』 病気・バイ菌・寄生虫たちとの上手なつきあい方
 藤田紘一郎(著) 廣済堂出版

日本人は昔、回虫と「共生」していましたが戦後、体から追放され、
1950年、62%であった、日本人の回虫感染率は、1965年には、
5%をきりました。
と同時に、アトピーやぜんそく、花粉症といったアレルギー性疾患が日本に
出現してきました。
これは、回虫がアレルギー反応を抑えていたともいえるのです。

現在日本人は、私たちを守っているバイ菌やウイルスまでも追放する
「キレイ社会」に住んでいます。
キレイにすることは、いいことですが、それも行き過ぎると、免疫力が
低下し、アレルギー性疾患になりやすいのです。

著者は、そんなことから(?)おなかの中にサナダ虫(寄生虫)を飼って
いて、「カイチュウ博士」として有名でもあります。

体にいい寄生虫もいれば、悪い寄生虫もいます。
例えば、北海道で流行した「エキノコックス」はサナダ虫の一種で寄生虫です
が、この寄生虫は?

「嫌われもの」の虫たちも役に立っていることがあります。
そのひとつに「ウジ虫療法」が好評らしかったり。

といった、寄生虫、虫、細菌、ウイルス等に関する話題の数々。

また、肥満、頭髪、心臓病、脳卒中、がん等に関して、「健康ジョウシキ」と
思っていたものが、実はそうでななかったという事例を紹介します。

それにしても著者の「カイチュウ博士」は、ダジャレ好きですね。
頻繁にでてくる「ダジャレ」も楽しめます。


■「CPUの謎」 坪山博貴(著) 株式会社ソーテック社

「動作クロック」は、処理能力を判断する基準として利用されてきました。
現在CPUの処理能力を表す表記として利用されているのは、主に
「モデルナンバー」や「プロセッサナンバー」と呼ばれる新しい性能指標です。
どのCPUがどの位の性能なのか判断することは非常に難しくなっています。
CPUの性能について、どう考えるのか?

また、CPUを問わずに処理能力を示す性能指標、いわゆる絶対指標に
「MIPS値」がありますが、これは1970年代のミニコンを基準にした
性能指標で、現在では、これも利用しにくくなっています。

現在のCPUを「速い」「遅い」という形で単純に性能比較することは、ほどんと
不可能なのです。
結局のところ公開されている大規模ベンチマークのスコアなどから、各CPUの
得意、不得意、異なるCPUとの傾向の違いを見抜くことが大切になります。

CPUは、どんな仕組みで動いているのか?
CPUは、何からできているのか?トランジスタとは?
また、「8086」「80286」「80386」「80486」
「Pentium」と発達してきた歴史からCPUを探っていきます。
そのCPUがなぜ開発されたのかがわかれば、CPUの機能や、その周辺装置が
どう進化する必要があったのかもみえてきます。
されには、将来のCPUはどうなっていくのか?
マルチプロセッサが注目されるわけも説明しています。


■「UMLによるオブジェクト指向モデリングセルフレビューノート」
 荒井玲子(著) ディー・アート

UMLを勉強したものの、モデルの良し悪しがよくわからない、
本当にこれでいいのか?
という技術者を対象としています。

UMLには豊富な表現力がありますが、その表記に振り回されていませんか?

UMLモデルだけがすべてではないし、UMLのモデルを使わないほうが
よいものもあります。
UMLによるモデリングはあくまでも手段であって、UMLを使った
モデリングが目的となっていてはいけないのです。

この本では、UML表記のうち、もっとも基本的な範囲、業務で使用頻度の高い
表記を中心に扱い、開発プロセスを知ると同時に、モデリングの良し悪しを
検証する方法を知ることができます。

そして、さらにスキルアップするために技術書の選び方、読み方に対する提案
をしています。


■「看護師(ナース)がいなくなる?」
 フェイ・サタリー(著) 田中芳文(訳) 西村書店

アメリカでこんな統計結果がでたそうです。

看護師たちがあまりにもたくさんの患者たちのケアをしなければならない場合
には、手術後に患者が死亡する危険性が、患者一人につき7パーセント上昇
します。
よりわかりやすくいえば、4人の患者を担当している看護師よりも、7人の
患者を担当している看護師にケアしてもらっている患者は、死亡する危険性が
21パーセント高いということです。

この本では、アメリカにおける看護師不足について、その原因と解決法を
病院経営者、医師、患者、看護師自身などの面からさぐります。

入院期間は短くなり、かつて致命的だった病気が慢性的なものになりました。
患者たちはより長く生きるようになりましたが、病状はより複雑になっていると
いえます。
新しい医療器具や新薬は、ものずごいスピードで導入されますが看護師は、
理解する時間がとれず、書類作成に時間がとられ、実際のケアにかける時間が
少なくなっています。
同時に、生と死の定義があいまいになり、看護師たちにとって、特に重症管理
の分野で難しい倫理上のジレンマを生み出しています。

アメリカの看護師たちの状況、医療制度の話とはいえ、日本にもあてはまる
こと、これからあてはまっていくことは多いと思います。

著者は、癌専門看護師や認定登録静注看護師の資格を持ち、登録看護師として
20年近い勤務経験があり、現在ヴァージンア州シャーロッツビルにある
マーサ・ジェファーソン病院で癌専門医療班長を務めています。


■「動物たちの心の世界」
 マリアン・S・ドーキンズ(著) 長野敬 他(訳) 青土社

この本では、動物たちの心がどうなっているのか、人間以外の生物の
心の中のできごとをさぐります。

他の動物も私たちと同じく意識経験を持つのだろうか。
持つとしたらそれはどんなものか、思考や感情はあるのか。
動物は自分をとりまく世界を自覚しているのだろうか。

人間以外のどんな動物にも意識経験がないと考えている人には、
あると考える方がより単純であり妥当性があるということを、いくつかの
証拠をもとに説明します。
逆に、動物には、意識経験があると考えている人には、あらためて疑いを
もって貰いたいといいます。
というのは、本当に存在するのかどうかを知ることは実はとても難しいこと
だからです。

ダチョウは、自分の産んだ卵と他の雌が産んだ卵を、単純ではない複雑な
識別をしていたり、
ラット(ネズミ)は、自分たちにとって何が安全で何が毒になる食物が調べる
ためにお互いを「毒味役」にしていたり、
吸血コウモリは、互いの貸借勘定を忘れていなかったり、
などなど、

ちょっと驚く動物行動の例がたくさん出てきます。


■「明日の記憶」 荻原浩(著) 光文社

佐伯雅行(さえきまさゆき)は、50歳になったばかり、
広告代理店の営業部門の部長です。
部下やクリエイター達といった若者には、すこしばかり世代ギャップを感じ
たり、クライアントの課長の接待はたいへんなものの精力的に仕事をこなして
います。

妻、枝実子(えみこ)と娘、梨恵(りえ)は24歳を家族にもちます。
娘はもうすぐ結婚して、孫も何カ月かすればうまれます。

陶芸教室に通い湯呑みをつくっています。
ときどき、2年前に肝臓がんでなくなっている学生時代の友人を思い出します。

そんな毎日を過ごしていますが、最近、物忘れが多くなってきたと感じます。
不眠がちで、めまいがあります。
疲れているのだろうかと、不安を感じ病院にいきます。

何回かの検査で若年性アルツハイマーの初期症状だと診断されます。

症状が進んでいきます。

こわいんだけど結末がしりたくて、どんどん読んでいける本です。

全国書店員が選んだという第2回本屋大賞2位(2005年本屋大賞)を
受賞しました。


■「科学実験キット&グッズ大研究」
 左巻健男(監修)赤羽根充男、池田圭一、櫻井昭三(著) 東京書籍

この本では、科学実験キットやグッズを紹介しています。

紹介されているキットやグッズは、ただ単に商品として売られているものを
集めたのではなく、科学を遊ぶ達人(監修者や著者)が、とくに興味深いと
判断し選んだものになっています。
そのため、それぞれの商品についてのレポートは、実際に製作した個人的な
経験に基づいています。

たとえば、「からくり人形を作ろう」では、
大人の科学「大江戸からくり人形」学習研究社、
(お盆に茶碗を乗せると前進して、お辞儀をするので、茶碗を取って、また
乗せると旋回してもとの場所に戻ってくる人形)
が紹介されているのですが、

説明書には「パチンとはめる」と書いてあるのが、パチンではなく、ストンと
はめる感じであったり、金属製のピンセットは、100円ショップでも売って
いるので、できるだけ先のとがったものを買っておくと楽にできるとといった
実際に組み立てたならではのレポートになっています。
また、材料等についての、このキットを企画した人たちのこだわりまでが
伝わってくる内容でもあります。

他にも
プログラム・ロボット
電子ブロック
手作り万華鏡
酸・アルカリ 色がわりの研究
液晶作り
アリ飼育セット(アリの巣作りや生活のようすを立体的に観察できる)
鉱物の結晶をつくるキット
地球環境分析キット
など、物理、化学、生物、地学の分野に分け、原理やしくみも紹介しています。


■「もしも月がなかったら」 ニール・F・カミンズ(著)
 竹内均(監修)増田まもる(訳) 東京書籍
 (1999年7月第1刷発行、2005年2月第6刷発行)

「もしも月がなかったら」と、考えたことはありますか?
ただ夜が真っ暗になるだけなのでは・・・それだけではありません。

月がなくて、太陽だけによって生じる潮汐は、毎日の満潮と干潮の幅がずっと
小さくなります。
自転速度がずっと速くなって、1日は8時間になります。
そして時速300キロメートル以上の強い風がふきます。

生命の進化はずっと遅くなるだろうと考えられますが、植物・動物はどんな
影響を受けるのでしょうか?
また、月による暦がなかったらどうなるのでしょうか?

月に関する新発見が、ここ数年いくつかありますが、その中のひとつに、
アメリカの月探査機ルナプロスペクターの観測によって、月のコアの大きさが
半径220キロメートルから450キロメートルで、質量では月全体の
約2パーセントである(地球のコアが地球の質量の約30パーセントであるのに
比べて、きわめて小さい)ことがわかったというのがあります。

これは、月の生い立ちが、地球が誕生して内部にコアができたころに、火星ほど
の大きさの天体が衝突して、地球表面の岩石だけがはじき飛ばされ、その破片が
集まって月になったと考えると説明がつきます。

もし、この衝突がなかったら、地球は現在どうなっているのでしょうか?

「もしも月がなかったら」「もしも月がもっと地球に近かったら」
「もしも恒星が地球の近くで爆発したら」などと想像力をめぐらせ考えてみる
のも悪くないです。

著者のニール・F・カミンズ(Neil F. Comins)氏は、米国、メーン大学の
天文学・物理学教授です。同大学でスーパーコンピューターを用いて、
銀河系モデルの研究を行っています。


■「プログラマの数学」 結城浩(著)ソフトバンクパブリッシング

この本は、ふだん何気なくプログラミングしている中にも、数学的な考え方が
ずいぶん含まれていて、しかも面白いということに気づかせてくれます。

例えば、「0」ゼロが果たす役割というのを、考えたことありますか?

ゼロは「何もない」ことを表しているだけのように見えます。
でも、実はパターンを作りだし、規則をシンプルにまとめるという役割を
果たしているのです。

また、剰余(割り算)はグループ分けだなんて、いわれてみればそうだなと
思うのですが、ふだんはそんなふうに考えませんよね。
手品師の話やクイズ仕立てで、問題を解きながらパリティチェックなどを
わかりやすく説明しています。
最初から大きな数で考えるのではなく、小さな数で考えてみることがポイント
です。

他にも、ドミノ倒しにたとえた数学的帰納法(0以上のすべての整数について、
ある主張が成り立つことを証明する方法)の考え方は、プログラマがループを
構成するときに重要になるものだったり、
順列、組み合わせは「もれなく、だぶりなく」数え上げるための法則で、
この「数え上げの法則」は「数えないですますための法則」でもあります。
考え方を少し変えてみると、面白いですね。

指数のことは、まるで爆発を起こしたかのように急激に数が増加することで、
ほんのちょっと繰り返しただけで倍倍ゲームになって、大きな数に膨れ上がって
いくことといえます。
自分が立ち向かっている問題の中に指数的な爆発が含まれているときは要注意
です。
その問題は解決できないほど大きな規模に膨れ上がってしまう危険があると
いうことです。
けれど、逆に、そのような「指数的な爆発」を自分の味方にできれば、難しい
問題に立ち向かう強力な武器になります。
そんな武器には、大きな数を扱うための道具「対数」というものがあります。

といった具合に、問題を解くということや、プログラミングにかかわりのある
数学の話を、いろいろな視点で面白くみせてくれます。
プログラマの人はもちろん、プログラマでなくても、数学に苦手意識をもって
いる人には、おすすめです。


■「考える脳 考えるコンピューター」
 ジェフ・ホーキンス、サンドラ・ブレイクスリー(著) 伊藤文英(訳)
 ランダムハウス講談社

この本の著者のジェフ・ホーキンス氏は、手書き文字認識プログラムをつくり
「Palm Pilot」を誕生させた「Palmの父」といわれた人です。
現在は、Palm OS搭載の PDAやスマートフォンを開発・販売する palmOneの
最高技術責任者(CTO)を務めています。

ジェフ・ホーキンス氏は、シリコンバレーで成功した優秀な技術者であり、
起業家の一人ですが、そのかたわらで、長年興味を持っていたことがあります。
それは、脳について研究し、機能を解明するだけでなく、その知識をもとに
新しい技術を開拓して、知能を備えた機械をつくることです。

「科学にせよ技術にせよ、複雑なものは気に入らない。その思想はわたしが
設計した製品にも反映されていて、しばしば使いやすいとの評価を受ける。
もっとも強力なものは、おしなべて単純だ。たから、この本では知能について
の単純明快な理論を提案する。」
として、脳(特に新皮質)と知能について解明していきます。

人間の脳は蓄積した記憶を使って、見たり、聞いたり、触れたりするもの
すべてを、絶えず予測しているのです。
人間の認識は、そうした予測が組みあわさった物。
予測は新皮質の「もっとも主要な機能」であり、知能の基盤なのだといいます。

知能の謎を解く鍵は記憶と予測にあるとは?
階層構造になっているとは?

ジェフ・ホーキンス氏の望みは、この本によって若い技術者や科学者が興味を
持ち、新皮質を研究するとともに、記憶による予測の枠組みを採用して、
知能を備えた機械をつくりはじめることです。
この仲間に加わり、すでに挑戦をはじめたほかの人々とともに、歴史上で
もっとも偉大な技術の一つを生み出すことです。


■「DNA」上・下
 ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー(著)青木薫(訳)
 講談社ブルーバックス

ジェームス・ワトソンがフランシス・クリックとともにDNAの二重らせん
構造を発見したのは1953年、ちょうど50周年を記念して、
この「DNA」は、2003年12月にハードカバーとして出版されました。
そして今回、より多くの人に手にとってもらえるようにと、「ブルーバックス」
シリーズに上巻・下巻として加わったのです。

1953年2月28日
大学生レベルの化学の知識すらもたない生物学者と物理学者の2人組、
ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックは、DNA分子の骨格と四つの
塩基、アデニン、チミン、グアニン、シトシンがどんなふうにらせんを形成して
いるのかを模索、DNAモデルの鍵となる特徴を明らかにしました。
生命とは、このうえなく精妙に秩序立てられているとはいえ、要するに物理学と
化学の問題にすぎなかったことがわかります。

1962年、フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンス、そして
ジェームス・ワトソンがノーベル医学・生理学賞を受賞。

2003年4月14日
「ヒトゲノム計画」におけるヒトゲノム解析が完了しました。
二重らせん構造の解明から50年後のことです。
「もしも1953年の段階で、ヒトゲノムの配列は50年以内に決定される
だろうなどと言う者がいたとしたら、クリックと私は笑ってその人物にお茶の
一杯もおごってやっただろう」と「ヒトゲノム計画」は、ワトソンにとっても
驚異的なものでした。

この本は、単に過去50年間の出来事を振り返るだけではなく、DNAの
これまでと現在、さらには未来をも展望できるようなものになっています。

遺伝学はどう始まり、社会の中でどのように利用されてきたのか?
バイオテクノロジー・ビジネスが誕生し、生物学に大金が絡むようになり、
その金のためにものの考え方は一変し、生じてきた新たな問題とは?
他にも、遺伝子組み換え農作物、 DNA鑑定など。
DNAを軸に人間や社会のあり方を考えさせられる本です。



■「複雑な世界、単純な法則」
 マーク・ブキャナン(著)阪本芳久(訳) 草思社

「この地球上のだれでも、たった6人分、隔たっているだけなんですって・・・
大統領でもヴェネチアのゴントラ乗りでも・・・有名人だけじゃないわ、
だれとでもなのよ。ジャングルの住民とも、ティエラ・デル・フエゴの
島民とも、エスキモーとも。私は六人の人をたどれば、地球上のだれとでも
つながるの。すごい考えでしょ」
(ジョン・グエアの舞台劇「あなたまでの六人」より)

このすごい考えは、実際そのとおりになっているらしいです。
私たちは、いろいろな機会に世間が狭いことを経験することがあるし
実験によっても人を結びつけるのに必要なリンクは平均6本で足りること
がわかっています。

「狭い世界」(スモールワールド)は、ネットワーク科学のひとつで最近
注目されている分野です。
さまざまなネットワークは、それぞれ異なる状況のもとで全く異なる要求を
満たすべく発達してきたのに、構造に関してはほぼ同一なのです。

ニューロンのネットワーク、脳のネットワーク、道路や鉄道の路線網など
さまざまな輸送網、電力網といった平等主義的なスモールワールド。
また、インターネット、ワールド・ワイド・ウェブといった貴族主義的な
スモールワールド。
それぞれのスモールワールドには、どんな特徴があるのか?

スモールワールドの見方を応用することで解決できる問題がありそうです。
例えば、
世界の生態系の健全さにとってどの種が決定的に重要なのか?
エイズをはじめとする病気の流行と闘うにはどんな戦略がもっとも有効なのか?
企業の情報収集能力を向上させるためには、社会のネットワーク構造をどの
ように利用すればいいのか?
電話網、電力網からインターネットにいたるまで、わたしたちが依存している
ネットワークを守る最善の方法は何か?

スモールワールド、この不思議な世界を、この本で感じてみませんか?


■「痛風はビールを飲みながらでも治る!」 納光弘(著) 小学館文庫

痛風患者になったのは、なんと痛風の専門医。
ビール好きな医師は飲酒をやめることなく痛風を治せないかと、自らの体を
実験台に研究した「痛風体験記録」です。

この専門医、ユニークです。

足の痛みと、お酒が飲めなくなる絶望感から、頭を切り替え、
「痛風にかかってしまったが、患者になったと同時に専門医であるのだから、
この際、痛風をよく調べる絶好の機会ではないか。
まずは、生活習慣を変えたり、変えなかったり、禁酒したり、飲みまくったり
と自分の体で実験しよう。それが済んでから、自分はお酒を飲むべきか
飲まないべきかを判断しよう」と決心。

痛風に関する実験をしていく過程で、どんどん実験がおもしろくなっていき、
研究が日々の大きな楽しみの一つになっていきます。
痛風になったおかげで、物事を探求するおもしろさ、毎日実験を継続すること
の充実感を得ることができたと、624回連続採尿した尿pHの記録紙を
テーブル一面に埋めて満足げです。(写真付き)
痛風とかかわりながらも、人生を楽しんでいるのです。

痛風とは、生活習慣病と呼ばれる、食習慣や飲酒などの生活習慣が原因で発症
する病気のひとつで、アルコールの多量摂取とは深い関係があります。

血液中の尿酸(「プリン体」という物質の老廃物)の濃度が高い状態
(高尿酸血症)が数年以上継続すると、体内にたまった尿酸が関節の内面に
沈着し、それが原因で関節炎が起こり、腎臓が侵されたりする病気です。

具体的な症状としては、ある日突然、足の親指のつけ根にある関節部分が赤く
腫れて痛み出します。
痛みは激烈ですが、短期間で引き、その後再発、定期的に発作を繰り返すよう
になり、その裏で腎臓障害が進行します。

日本では、現在60万人を下らないと言われるまで、痛風患者数は急増して
います。
成人男性の約2割が痛風の基盤である高尿酸血症をもっていて、患者の98%
以上が男性、発症年齢の中心は30代、若年化しています。


■「データベース新たな選択肢―リレーショナルがすべてじゃない」
 吉田 育代(著)、梅田 正隆(著) キューフォー

岐阜大学医学部付属病院は、2004年6月移転、新病院を建築、
高度特定機能病院として生まれ変わって新たなスタートをきりました。
と、同時に「新総合医療情報システム」として、院内で利用する情報システム
をゼロベースで刷新、ベッドサイドまで光ファイバー回線を引き、カルテの
完全電子化で、ペーパーレス、フィルムレスを実現しました。

今回注目したいのは、旧システムの汎用機から過去22年分の医療データを
取り出し、メニューボタン一つ押すだけで、当該患者の病歴が画面に現れる
仕組みです。

圧縮のかかっていない生の画像データ(内視鏡画像)を表示するスピードと、
データの長期間保存(柔軟性)に適しているとして、データウェアハウスの
中核エンジンに採用されたのが「キャシエ」です。

「キャシエ」とは何か?

開発したのは、米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置く
インターシステムズ(設立は1978年)、
日本法人「インターシステムズジャパン」は2003年2月設立されました。

ユーザーは、世界88ヶ国400万人以上、約10万システムが稼動、
ウィンドウズ・プラットフォームのマーケットシェアでは、世界第四位です。

単なるデータの箱というだけではなく、アプリケーション開発ツールとして
いろんな要素を持っています。

「キャシエ」のコア「多次元データ・エンジン」は、
オブジェクト指向開発に最適である、24時間×7日の運用に適している、
ユーザー数の急激な増加にも十分に対応可能といった特徴を持ちます。

もともとの「キャシエ」の先祖というのは、MUMPS(マンプス)。
「マサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタル・ユーティリティ・マルチ・
プログラミング・システム」の略、
システムであると同時に言語(M言語)です。

1966年〜67年にかけてボストンのマサチューセッツ総合病院で
病名や薬品を扱う医師の発想から生まれ開発されました。

「速い」+「軽い」+「安い」という
<スマート・データベース>「キャシエ」の秘密を探ってみませんか?


■「イラスト図解 病院のしくみ」 木村憲洋+川越満(著) 日本実業出版社

「病院」は約30の職種が集まる専門職の集団です。
そうした病院の全体像を捉え、経営のことも含めて情報をまとめられる人は、
なかなか存在しません。

そのため、医療提供者が患者に向けて情報を発信するのが難しく、
情報の提供者側と受け手の間で情報の量と質・理解力に多大な差
(情報の非対称性)が生じているのです。

一般の人たちが病院のことを理解すれば、情報の非対称性が改善され病院も
変わる「患者が変われば医療は変わる」のです。

病院とは何か?

病院の基礎知識や、病院の各現場担当者の1日の仕事は?
検査(CT検査、MRI検査、PET検査、エコー検査、内視鏡検査など)
の仕組みとその原理をイラスト入りでやさしく説明。

外来医療、入院医療、在宅、急性期、亜急性期、回復期、慢性期などの
治療の内容と手順。

病院運営のアウトライン、診療報酬のしくみ、医療政策のこと。

手軽に読める「病院の入門書」です。

患者とその家族はもちろんのこと、病院関係者、病院経営者、医療関係の
営業マン、MR(製薬会社の医薬品情報提供者)、医療関係の就職を目指す
学生、すでに医療界で働いている人たちの「教科書」としても使えます。

アマゾンでの購入はこちら

[ 前 ] [ 後 ] [ Home ]