「美人を追ってはいけません」 苑田勇一九段

  

 1952年大阪の生まれ。関西棋院に所属。碁聖戦、天元戦、棋聖戦等で活躍され、そのスケールの大きい棋風は「苑田流」として一家をなしている。今回「碁聖戦」の挑戦者になられ、依田紀基碁聖と戦ったのだが、残念ながら碁聖獲得はならなかった。

 

 1983年、1987年の二回訪中囲碁団に参加され、その後すっかり中国ファンとなった彼は、何回も中国へは旅行で来ている。中国語も少し話せる。

  彼の飾らない人柄を慕った門弟達によって「勇石会」という勉強会が堺市で作られている。その会の人達が毎年夏道後温泉に遊びに来られる。その折りを利用して私達松山在住の苑田ファンが30人程集まり、指導を受けている。

 

 彼の基本に忠実でありながら、なおかつ独特な指導方針は定評がある。

 「攻めず守らず」、「先手は悪手」等々。言葉だけ聞くと怪訝に思われるかもしれない。しかし指導は常に具体的で分かり易い。例えば、大場に対する考え方。

例えば、

白黒互いに小桂馬締まりで相対している辺の中点Aと

星に一つ石が有るだけで対峙している辺の中点が有る。

どちらが大きいかと言う問題である。

確か、双方締まりのある中点は最大の大場と習ったと思うのだが、

つまり正解はAだと思うのだが、

苑田先生の教えによると、

「Aは形が決まっています。可能性の大きいBの方が大場なのです。」

 といった具合。目から鱗が落ちると言うのはこのことか。

 

その他

「美人と弱い石は、追っかけてはいけません。追うと逃げられます。遠くから眺めているのがいいのです」

 というのがある。

なに?あなたは「いつも美人に追っかけられているから分からない」。実は私もこれだけが分かり難い。

 攻めているつもりが、逆に攻められているということにすぐなる。

 8月末から瀋陽で行われる「日中韓三国アマ囲碁対抗戦」に、お忙しい中を、特に顧問として参加して下さることになった。彼はまた子供好きでもある。瀋陽の少年少女棋士は指導碁を楽しみにして頂きたい。

 そうそう。先生は碁以外に、お酒も相当なものである。「瀋陽の酒価を高むる」。瀋陽滞在中に「老龍口」(瀋陽の地酒)の値段が上がるかもしれない。

 

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