「私もプロです」   関山利夫九段

 

 関西棋院所属の棋士だった。過去形で言うのは、1992年9月2日、55の若さで亡くなったからである。心不全で突然のことだった。関山利一第一期本因坊は御尊父。現在関西棋院の若手有望棋士、関山利道六段はご子息である。利道六段は一九九一年訪中囲碁団の選手として参加したことがある。

 

 私の師匠故小山久義六段の娘さんが関山利夫氏の夫人、つまり小山師範の娘婿でもある。

 そんな関係で、関山九段とは、なにかと親しくして頂く機会が多かった。ある日先生が松山に来られて、稽古先に私が車でお供したときのこと、碁の「一手の大きさが」話題になった。先生が言われるには、 

 「一手の大きさは約11目と考えられる。それはコミが五目半であることに基づく。五目半がコミとして正しいと証明した人は誰もいないが、経験的にこれで大体釣り合っているから、仮にこれを正しいとすると、コミは先着の有利性を折半したものであり、実際に打たれる先着の大きさはその倍11目と言える」

 大体こんなお話だったと思う。

 

 そこで、私も日頃から思っているコミに対する考えを述べてみた。

 「七路あったら一応碁は打てる。もし七路盤で正しいコミが証明できたら、それは一九路盤を含め、七路以上の全ての奇数盤における正しいコミと言えるのではないだろうか。何故ならば、これらの盤は点対称で、七路以上から増える点は、全て観念的に同価値の二点を持ち、増えた分は価値比較を相殺できる」

 ところが、この七路盤が曲者。虱潰しの方法で調べる限り、単純変化は凡そ10の60乗(銀河系宇宙に砂粒を敷き詰めてその数に匹敵)となり、どんな優秀なコンピュータを持ってきても下手なやり方では手に負えない。

 

 「私もプロです。七路盤位なら決定版を出して差し上げましょう」

 それから待つこと数年、先生はこの世を去られた。約束を破るような方ではないから、先生も意外に手こずったのではないだろうか。

 何方か、私のこの考えを支持して下さる方で、七路盤の決定版を出して下さる方はいないだろうか。

 

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