ボツ4後半



これが、愛を交わす、という行為なのだろう。あの夜、初めて受け入れた時は痛みしかなかったのに今日のは・・・・・・。
疲れ果て、ぐったりと褥に沈み込んでいた花梨は、ぼんやりと考えていた。
頼忠が何を考えているのかは分からない。だが、この素晴らしいひと時を与えてくれた事には感謝しなければ。だが、この京を離れる決心を最初からもう一度しなければならないのは辛すぎる。いや、出来るのか、自信は無い。
温かな手が頬を撫でているのに気付いて眼を開けた。
「な・・・んで?」
散々鳴かされ、掠れた声しか出ない。
「何がです?」
「何で、何で頼忠さんがここにいるの?」
傍にいてくれるのは嬉しい。嬉しいが、何故ここにいるのか。屈辱を与えた女の、花梨の、傍に。
「あの夜に申し上げた筈ですが。」身体を起こし、花梨の唇に口付けを落とした。「貴女がどんなに泣き叫ぼうとも、途中で止める事は出来ないと。」
「あれは・・・。」顔を赤らめる。「その・・・えっとその、するコトを、でしょう?」
「貴女があんな言葉をおっしゃるから。」今度は深めの口付けを贈る。「貴女への想いを抑える事が出来なくなりました。」
「私、何か言ったっけ?」
口に受ける心地良さにぼうっとなりながら尋ねる。
「えぇ。私を受け入れて、と。従者じゃない頼忠を見せて、と。そして。」蕩けるような長い優しい口付けを贈る。「早く、と。」
覆い被さると、再び元気さを取り戻したそれを少女の足の間に入れる。
「あんっ!」未だ敏感になったままの場所を掠め、びくりと跳ねるとそのまましがみ付いた。だが。「ちょっと待って!」
二人の身体の間に腕を入れて邪魔する。何だか違和感がある。重大な事を見逃していると言うか、忘れているような。
「何でしょうか。」
少女の腕をどかす。身体をぴったりと重ねると、腰をゆっくり動かしながら擦り付ける。耳たぶを優しくかじる。
「さっき言った言葉、どういう事?貴女への想いを抑える事が出来ないって。」
快楽から逃げたいのか、溺れたいのか、混乱し始めている。それでも、どうしても聞きたい。その言葉の意味を。
「そのままの意味です。」真っ直ぐに瞳を見つめる。「貴女を求めるこの心を抑える事が出来なくなった、そう申し上げたのです。」
「求めるって・・・。」震える。見開いた瞳から涙が溢れてくる。「まさか・・・。」
「はい。ずっとお慕いしておりました。貴女が頼忠を好きだとおっしゃる以前からずっと。」
「でも・・・だって、だって頼忠さんは・・・・・・・。」
言葉が出て来ない。貴方は私に近寄る事は無かったのに。好きだとも言った事も無かったのに。私を女の子として扱った事は無かったのに。
「龍神に愛されたやんごとなき貴女に、天女のごとく美しく清らかな貴女に、触れてはならないと・・・そう思っていたのです。」
「やんごとなきって・・・私はどこにでもいる一人の女の子なのに・・・・・・。」
「いえ、やはり貴女は特別な方です。こんなにも甘い肌と。」首筋をぺろりと舐める。「芳しい匂いのする女は。」胸元に鼻を擦り付け、思いっきり嗅ぐ。「そして熱い女は。」擦り付けている部分に手を添える。「何処にもいません。」
「待って・・・・・・。」
言葉とは裏腹に、身体は強請る。欲しいと叫ぶ。
「だから申し上げたでしょう?抑える事が出来ないと。」
一気に貫いた。
「あっ!」
仰け反りくねりながら受け入れる。
「ずっとこうしたかったのです。花梨、貴女を・・・・・・愛したかった・・・・・・・・・。」
快楽の海に飛び込んだままの会話は辛い。腰を掴んで突き上げる。一度溢れた想いを堰き止める術は無い。手加減出来ずに伝え続けた。



「申し・・・訳、ありま・・・せ・・・・・・ん。」
息が整わないまま、懐深く抱き締めた。
「な・・・に・・・・・・?」
思い詰めたような口調が気になり、重い瞼を無理矢理こじ開ける。
「私は貴女を、貴女の世界にお帰しする事は出来ません。京に、この頼忠の元にお残り下さい。」
頼忠が初めて口にした願い。だが、この強い口調は―――命令。
「え・・・・・・?」
「貴女と離れて生きて行く事など、私には出来ません。ご意志に反すると承知致しておりますが・・・・・・腕の中から放す事は出来ないのです。」
貴女を抱き締める歓びを知ってしまった以上、失う事には耐えられません。
「よ、りただ・・・さん・・・・・・?」
苦しそうな、しかしどんなに拒絶しようが逃がさないとの強い決意を隠さない瞳・・・。花梨はふっと微笑み、身体を預けた。
「私が・・・眼、覚ますまで・・・・・・このまま、抱き締めて、いて、くれ・・・る?」
「花梨・・・?」
「起きた時・・・・・・・・・最初に・・・頼忠さんの、顔・・・・・・見たい。」
「・・・畏まりました。貴女のお望みのまま、夢路をもお守り致します。」
「そう、ありがとう・・・・・・・・・。」
それだけ言うと、安心しきった花梨は深い眠りに沈み込んだ。
「ありがとう・・・御座います・・・・・・・・・。」



何時までも起きない神子を心配して様子を窺いに来た女房が見たのは。
頼忠の裸の胸を枕代わりにして穏やかに眠る花梨、だった――――――。






注意・・・花梨×頼忠。ゲーム最終日を挟んだ三日間。
      第4章後半部分の手直しする前。ボツ。

2006/10/15 03:18:00 BY銀竜草

正直に言って、これだと他の作品と大して変わりないなぁ、と思った。無難と言うか、普通と言うか。折角出だしは激しい花梨ちゃんだったのだし、頼忠も恋心を爆発させたのだし、そう、違う終わり方の方が作品として自然ではないかと。

一部分、気に入っている箇所があるのでただ捨てるのでは惜しく、参考としてUP致します。(参考と言うよりも、自分への記念に。)

BY銀竜草


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