『―――催眠術―――』 偽りの果てに・B編・後日談 |
頼忠さんは褥の中では私を深く抱き締めたまま離さない。いえ、離す瞬間もある事はあるけど、その時の自分を思い出すと、必ず後悔する事になるのだ。 「・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・。」 一度そういうコトが終わった後、頼忠さんは私を抱き締めたまま離してくれない。お互いに裸だし、頼忠さんの裸の胸に顔を埋めているのは恥ずかしいのだけど。でもこれが頼忠さん流の愛情表現だから嬉しい。それに、男としての頼忠さんの匂い・・・嫌いじゃないし・・・・・・ね。 「(ちゅ)」 「・・・・・・・・・ふっ。」 口下手なのは相変わらずで、今も甘い囁きはほとんど言ってくれない。だけど時々、触れる程度の軽いキスをおでこにしてくれるようになった。男っぽい頼忠さんの可愛いキスに、つい笑みが零れてしまう。柔らかく優しいそれは、くすぐったくて。 「どうかなさいましたか?」 「ん?何が?」 「今、笑いましたよ。何を考えていたのですか?」 「あぁ。ただ・・・。」 「ただ?」 「頼忠さん、変わったなって思っただけ。」 「・・・・・・・・・。」 「強引で容赦なかったけど、今は優しいなって。」 「以前の私は。」囁き声になる。「お厭いでしたか?」 「全然。」首を振る。「あの頼忠さんも好きだったよ。あれはあれで色々と気を使ってくれていたから嬉しかったもん。」 「気付いておられたのですか?」 「そりゃあ、ねぇ。私が嫌がる事は二度としないから。」 もそもそと動き、自分の顔に掛かった髪の毛を耳に挟む。 「・・・・・・・・・。」 「でも手加減してくれる分、意識がある時間が延びたのが嬉しいの。」 再び手を頼忠の胸に置く。そして置いた手の横、裸の胸に唇を押し付けた。 「(ぴくっ)」 「頼忠さんを長く感じていられて。」 そのままぺろりと舐めると、しょっぱい味がした。翻弄された私だけでなく、余裕ぶっている頼忠さんも、うん、一生懸命だったって分かって密かに喜ぶ。 「・・・・・・・・・。」 腰に回された腕に力が籠もる。そして更に引き寄せられた。手がゆっくりと背中を滑る。片手は肩甲骨から首筋、後頭部へと。もう片方は背骨に沿って下へ。 「頼忠さん?」 身体、緊張している?吐息、熱い? 「花梨は・・・・・・。」掠れ気味な声に艶が混じる。「強引な頼忠もお好きなのですね?」 「え?」 どきっ。 心臓が、期待と恐れで跳ねた。 「ならば、覚悟なさい。」 「きゃっ!」身体が離されたと思った瞬間、片足が抱え上げられた。「ちょ、ちょっと!」 あられもない格好にされ、恥ずかしい場所に無遠慮な視線を感じ、全身が真っ赤に染まる。 「誘ったのは貴女、花梨ですよ・・・・・・?」 内腿に唇を這わす。騒々しい音を立てて強く吸い上げながら。 「誘ってなんか・・・・・・いな・・・い・・・・・・っ!」逃げようとするが、身体はどんどん準備を始めてしまう。「ぁんっ。」 「私を見て下さい。」 「―――え?」 「花梨。」強い願いを込めて囁いた。「もっと我が儘に頼忠を欲しがって。」 「・・・・・・。」恐る恐る視線を合わせる。ただの欲望だけで求めていない頼忠の瞳―――これに逆らえる女などいるのか?―――全身から愛しさが湧き溢れる。恥ずかしさもプライドもどこかに消え去った。「頼忠さ・・・ん・・・・・・。大好き。」 腕を伸ばした。 「―――花梨。」 顔を歪める。と、一気に捻じ込み、そのままの勢いで想いの全てをぶつけ始めた。 その夜、何度も何度も追い詰め、そして突き落とす。 花梨が疲れ果て、自分では指一本持ち上げられなくなると、ようやく頼忠は花梨の隣に横たわった。再び胸深く抱き締め、瞼に口付けを落とす。 「花梨。私も・・・お慕いしております。」 「・・・・・・・・・。」 その囁き声に導かれながら眠りに落ちていった。 頼忠さんは褥の中では私を深く抱き締めたまま離さない。いえ、離す瞬間もある事はあるけど、そんな時は可愛い妻でいられなくなる。頼忠さんに強く求められるのは嬉しいのだけど・・・複雑な気持ち――――――。 |
注意・・・B編『ただあなたが欲しくて』のその後。 甘くて可愛いピロートークのようなものを書こうとして挫折。 どうして狼さんが登場するかなぁ!? 2006/07/27 03:34:18 BY銀竜草 |
後書き
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