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次の朝。 頼忠は全身の痛みと寒さで眼を覚ました。 「痛・・・・・・。」 頭がズキズキする。二日酔い、か。しかし、頭以外の顔や全身の痛みは一体何なのだろう?冷たい風が腫れあがった頬の痛みを和らげてくれるのはありがたいが。 ぶら〜〜〜ん。 「え・・・・・・・・・?」現実とは思えない。未だに夢の中を彷徨っているのだろうか?「何があったのだ?」 ぶら〜〜〜ん。 蓑虫のように、袿と紐で簀巻き状態となって木にぶら下がっていた。 「・・・・・・・・・記憶が無い。」 こめかみをドクドクと脈打つ痛みは、考える事を妨げる。だが、今の状況は普通ではない。思い出そうと必死に考える。 確か、昨夜は屋敷の中で宴があった筈だ。勝真が注いでくれた酒は少し強かったが、数杯しか飲んでいない。泉水殿と幸鷹殿が妙な菓子を勧めたから一つ二つと食べたが、他は何も口にしていない。その程度で酔う事など有り得ない筈なのだが。 ぶら〜〜〜ん。 だが、その後に何があったのかまるっきり覚えていないのだから、酔っ払ってしまった事に間違いは無い。 失態。後悔。反省。 シ〜〜〜ンと静まり返った屋敷。何事も無かったようだから良かったものの、神子殿に万が一の事が遭ったらと想像するだけで身体が震える。 「しばらく禁酒だな。」 ぶら〜〜〜ん。 しかし、記憶を無くすほど酔ったのは初めてだ。こんなに酷い二日酔いも初めてだ。頭痛その他の痛みはあまりにも激しすぎる為、気を紛らわそうと他の事を考える。 ぶら〜〜〜ん。 残念な事にはっきりとは覚えていないのだが、とても幸せな夢を見ていた気がする。翡翠の言葉を真に受けた訳ではないが、杯に月を映して飲むのは良かった。そのせいだろうか、夢の中で酔いに任せて月の姫を抱き締めたのは。理性など捨て去り、望むままに魅惑的な唇を味わった。かぐわしい香りとクセになる甘さ、そして罪の苦さに夢中になった。 「・・・・・・・・・・・・。」 夢の続きを見たくなる。 ぶら〜〜〜ん。 カタン。 「はっ!」物音に気付き、我に返った。こんなのんびりしている場合ではない。「そ、そうだ。降ろしてもらわねば。」 物音がした方を見れば、呆然と立ち竦んでいる花梨と眼が合った。 「・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・。」 ぶら〜〜〜ん。 「あ、あの――――――。」 誰か人を呼んで頂けないかと話し掛けようとしたのだが。 「っ!」 少女の頬がさっと真っ赤になったかと思うと、そのまま身を翻して戸の向こう側へと消えた。 「み、神子殿・・・・・・・・・?」 ぶら〜〜〜ん。 「・・・・・・・・・?」どうなさったのだ?なぜ頼忠から逃げたのだ?「・・・・・・・・・。」 ぶら〜〜〜ん。 「ま、さか。」 血の気が引いていく。 ぶら〜〜〜ん。 「まさか・・・・・・。」夢じゃなかった?だから私は、このような姿を晒しているのか?「まさか・・・・・・・・・。」 夢ではなく現実だったのか?憧れの神子殿の唇を貪ったのは―――事実? 「嬉し―――じゃなくてっ!」 酔っていて覚えていない、などという言い訳など通用しない。守るべき主を襲ったなど、言語道断。 「と、兎も角、謝罪をしなければっ!」走ろうと身体を前に進めるのだが、このような状態で動ける筈も無く。「―――うわっ!」 ぶんぶんぶら〜〜〜ん!ぶら〜〜〜ん! 揺れが大きくなっただけ。 「どどど、どうすれば・・・・・・・・・。」 降りる方法を考えねばならぬ事はならぬのだが、それよりも遥かに重大な問題が。 「・・・・・・・・・どう償えば良いのか?」この頼忠の生命で償うのは簡単だが、神子はそれを望んで下さらないだろう。だとしたら、他にどんな方法があるのか?「いや・・・・・・・・・・・・そもそも償って済む事なのだろうか?」 大混乱に陥った頼忠、今の己の状態を忘れ去って考え込む。 ぶら〜〜〜ん。 ぶら〜〜〜ん。 七葉の怒りが天に届いたのか、みぞれ交じりの雪が降り始め、頼忠の身体と心を冷やしていく。 ぶら〜〜〜ん。 ぶら〜〜〜ん。 神聖なる神子を穢したのだ。どのような償いをしようが――――――許される筈が無い。 「・・・・・・・・・・・・。」 ぶら〜〜〜ん。 ぶら〜〜〜ん。 ぶら〜〜〜ん・・・・・・・・・・・・。 |
注意・・・第4章半ば。 八葉→花梨。 頼忠の酔っ払いネタ。 さて、ここで問題です。銀竜草の好きなキャラは誰でしょう? ―――そんな疑問が浮かぶような内容ですね。何処でどう間違えたのだろう??? 2005/10/30 16:23:58 BY銀竜草 |