『―――似た者親子―――』



にこにこにこ〜〜〜〜〜〜。
頼忠が簀子に座って庭を見ている。ご機嫌の理由は、庭に愛しい妻がいるからである。
「可愛いなぁ、花梨殿は。うん、本当に可愛い。何時見ても可愛い。何時まで経っても可愛い。」
目尻が下がり、頬も弛む。にこにこにこ〜〜〜〜〜〜。

「父上。何て顔をなさっているのですか。」息子が近付いて来て、隣に座る。そして、呆れたように言う。「そんなみっともない顔は、外では見せないで下さい。源家の恥です。」
「しかし、ここは屋敷の中だ。気にするな。」
「屋敷の中には女房もいます、武士団の者も来ます。棟梁にも、院にも帝にも信頼されている優秀な武士と評判の源頼忠の、本当の姿を知られてはなりません。これからの任務に支障をきたす恐れがあります。」
「そんな事を言ってもなぁ・・・花梨殿があんなにも可愛いのだから仕方が無いだろう?」
「そんな事は、父上に言われなくても承知しております。この忠直の母上なのですから、可愛らしい女(ひと)だという事は存じております。」
「だろう?」にっこり。
「しかし、このような軟弱な男の妻となった事が世間に知られては、母上が恥ずかしい思いをします。」
「・・・・・・・・・。」沈黙。
「母上の御名前に、傷を付けるおつもりですか?」
「・・・・・・・・・。」それは確かに・・・・・・避けたい、かもしれない。
「全く・・・あんなにも素晴らしい母上が、このような父上となぜご結婚されたのか、理解に苦しみます。」
自分にそっくりな顔を顰める息子を、頼忠は複雑な思いで見つめる。

と。

「忠直!」花梨が声を掛けた。「ちょっと手伝ってくれないかしら?」
「はい、母上っ!」パッと立ち上がると、高欄から飛び降り走り出した。「どうなさったのですか?」
「忠直、靴!」裸足で駆け寄ってくる息子に、慌てて声を掛ける。「靴を履いて来なさい!そんなに急がなくても良いから。」
「うわっ!」言われて初めて自分が裸足だという事に気付き、驚きで目を丸くした。「御免なさい!履いたらすぐに行きます!」
再びバタバタと頼忠の側に走り戻って来た。
「父上!靴を借りますっ!!」
自分の靴を用意する時間が勿体無いとばかりに、汚れた足のまま父の靴に足を突っ込む。そして、大きすぎる靴のせいで蹴躓きながら母の元に走る。

「偉そうな事を言っても、やはり私の子だな。」嬉しそうにはちきれんばかりの笑顔で母の手伝いをしている息子の姿を見て、頼忠は苦笑した。「お前のやっている事は、私と変わらん。」






・・・・・・・・・何ですか、これ?
『―――喧嘩〜数年後〜―――』の後ぐらい、かな?

子供がどういう生き物か知らないんだから、書くなよ、ワレ。

2005/02/14 16:39:28 BY銀竜草