「58888」番・課題出題者・ひよ様へ。



『―――夜を越えて―――』



序章



真っ暗闇の中、鞘から抜かれた一本の太刀がボウっと浮かび上がった。
カチャリ。
研ぎ澄まされた刃が、花梨に向けられる。
風が吹き、厚い雲が吹き飛ばされ、月が現れた。
太刀を持つ男も姿を現した。入道雲との表現がぴったりの、大きな大きな男。顔は無い。
キラッ!
太刀が高く掲げられると、刃に月の光が当たり、反射した。
その美しくも不気味な光から眼が離せない。足は地面に縫い止められたように動かない。
『た・・・け・・・・・・。』
喉の奥に声が貼り付いている。
ビュンっ!!
真っ直ぐ花梨に振り下ろされた。

「神子殿っ!」

何処からか現れた頼忠が、花梨の身体に覆い被さった。
『あっ!』
バシュっっ!
頼忠の右肩から背中、左腰へと斬り付けた。同時に、大量の真っ赤な血が吹き出す。それは、花梨に降り注いだ。
「っっ!!」
「頼忠さん!」
「神子・・・ど・・・・・・・・・。」
力を失い、瞳から光が消え、花梨を押し潰した。
「頼忠さん!!」



「っっ!!」
飛び起きた。
そのまま御帳台を飛び出し、御簾を跳ね除け、廂に出た。格子の隙間から庭を覗き見る。
階の側に、頼忠が建物に背を向けて立っていた。時折首を動かし、周りを見回している。
「夢・・・・・・・・・。夢だ、夢だったんだ・・・・・・・・・。」
崩れるように床に座り込んだ。夢で良かった、などとは思えない。あまりにも現実的な夢だった。太刀が振り落とされる音も、肌を斬り裂く音も聞こえたのだ。そして血は・・・・・・温かかった。
全身汗に濡れ、夜着は湿っぽい。心臓は激しく打ち、身体の震えは止まらない。
これは実際に起こりえる事だ。あの男(ひと)は武士で、そして頼忠なのだから。
「駄目だ。駄目だよ、頼忠さん・・・・・・。」
ぽたりぽたり。膝に置いた手に涙が落ちる。
「私、耐えられない・・・。ごめんなさい。ごめんなさい・・・・・・・・・。」
腕を回して自分の身体を抱く。床に頭を擦りつけるように丸まり、花梨は一晩中泣き続けていた―――。






注意・・・ゲーム最初から最後まで。序章はゲーム第4章半ば頃。

課題創作、捧げ物としてこの内容はどうなの?―――とか思いつつ、書き進めます。

連載、途中で止まらないように頑張ります。