「1111」番・課題出題者・甲本マヤ様へ。 |
『―――漁夫の利―――』 序章 |
紫姫を囲んで、八葉達が秘密の会議を開いていた。 議題は―――花梨の物忌み、付き添いの相手選び。 「花梨さんはまた、誰も選ぶ事が出来ないようですね?」彰紋が物足りなさそうに言う。 「じゃあ、今回も紫姫が選ぶ事になったんだろう?」イサトが期待を込めて尋ねる。 「はい。占いで選ぶ事も出来ますが。」紫姫が頷く。「まだ日にちが御座いますから、もう少し様子を見て、選べるようでしたら神子様ご自身に決めて頂こうかと思っておりますわ。」 「しかし神子は、物忌みの付き添いに呼びつける、とお考えになられているようです。あの優しい神子は誰かを呼びつける事なんて出来ないのではありませんか?」泉水が顔を曇らせる。 八葉の皆がみんな、奪い取ってでもその役目を引き受けたいと思っているのに、肝心の神子は解っていない。 「それなら、前回と同じく俺達で決めるか?」イサトが見回す。 「勝負をするのですか?」幸鷹が考え込んだ。 「前と同じ、神子の世界の『げえむ』とやらをやるのか?」泰継が問えば、 「それでは面白くない。他の事をしようぜ?」とは勝真。 「勝負事だと、得意不得意があって不公平になってしまうよ?」翡翠が問い掛ける。「課題を決めて、それに一番沿った答えを見つけた人が勝ち、と言うのはどうかな?」 「課題、ですか?」彰紋が首を傾げる。「花梨さんが一番喜ぶ贈り物をした人が勝ち、とかでしょうか?」 「いや、あいつはどんなに小さい事でも、してもらった事は喜ぶから勝負にならない。それより、前から疑問に思っていた事があるんだが。」勝真が思わせぶりに、一呼吸間を空ける。「あいつの苦手な事って誰か知っているか?」 「「「「「「「えっ?」」」」」」」 「怨霊にも逃げないし、あのエラそうな宮様にも反論するし、煩いシリンとか言うオバさんも怖がらない。夜に屋敷を抜け出すし、鳴神も怖がらなかった。この前は馬に乗りたいなんて言っていたぞ?」 「「「「「「「あっ!!」」」」」」」 「そういえば・・・知りません。文句も泣き言も聞いた事はありません。神子は私達を頼るという事があまりありません・・・・・・。」 泉水のその一言で、その場の雰囲気が一気に暗くなる。 だが、一人冷静な泰継が結論を言う。 「では、神子の苦手な事、怖い物を探し出した者の勝ちで良いな?」 「ちょっと待て!」今まで黙って聞いていた頼忠が慌てて言う。「神子殿を怖がらせるのか、我々が?」 「そうだ。」真面目な顔をして、泰継が頷く。 「一番公平だと思うぜ?」立ち直ったイサトが反論する。 「神子殿を守る役目の我々が、困らせてどうするのだ?!」 「姫君の苦手なものを知る事は、避ける上でも有益な事だよ?」とは翡翠。 「それは詭弁だ!」 「じゃあ、お前は参加しないのか?付き添い役は他の者がやる事になるが。」 「っ!!」勝真の一言に、思わず絶句してしまう。『付き添い役・・・・・・やりたいっ!』 「そうですね。前回のげえむとやらの勝負に勝ったのも、その前の紫姫の占いの結果も頼忠でしたから、今回は見送っていただいても宜しいではありませんか?」 普段、周りに気を使いすぎて遠慮している泉水が珍しく意見を言えば、自分の言葉の影響力の大きさというものを知っていて慎重な彰紋までもが、強い口調で言い出した。 「二回連続で付き添い役をやられたのですから、今回は譲ってくれても―――。」 「前は前、今回は今回だ!」普段なら身分というものにこだわるのに、慌てた頼忠は貴族の二人に思わず反論してしまう。 「じゃあ、全員参加という事で決定だな。」勝真が口論を終わらせると、彰紋と泉水は競争相手が減らなかった事にがっかりした表情を浮かべ、イサトは頼忠を睨んだ。 「それではこの勝負の約束事として、当然、神子殿には秘密、直接お尋ねになるのは反則。そして、挑戦は一人につき一回、早い者勝ち、という事として、判定は紫姫にお願いしても宜しいですか?」幸鷹は、余計な議論が始まる前に紫姫に尋ねる。 「わたくしが、ですか?」紫姫は、いきなり自分の名前が出た事を戸惑うが。 「そうだな。それが公平だな。」 「それが一番だな。」 「そうですね。無用な争いは避けられますね。」 次々に賛成されれば断りようが無く決定事項となる。 『神子様の物忌み、また妙な方向に進んでしまいましたわ。責任重大、困りましたわ・・・・・・。』 決定事項ともなれば当然、みんなそれぞれ考え始める。 そんな中で、頼忠だけは。 「守るべき従者の私が、主である神子殿を怖がらせるなどとは・・・。」未だに悩んでいた。 「頼忠の事は放っておけ。」勝真が言う。「一人グルグル悩んでいるのは何時もの事だろう?」 「そうそう放っておきましょう。頼忠が参加しなければ、その分、確率は高くなりますから。」と、真面目な顔をして頷いたのは、幸鷹。 「頼忠なんかに構っている暇なんてありません。」ときっぱり言い切ったのは、彰紋。 「そんな事より、良い案が思い浮かびません・・・。」と悩んでいるのは泉水。 「考えるよりも先ずは行動だっ!」と、走り出したのはイサト。 「・・・・・・・・・・・・・・・。」無言無表情で考え込んでいるのは、泰継。 「姫君を怖がらせるなんて無粋な事は性に合わないのだが。」とか言いながらも、周りの顔色を窺う翡翠。 次の日から入れ替わり立ち代わり八葉が訪ねて来るようになったが、その理由を花梨だけが知らない――――――。 各馬一斉にスタート!は書けませんでしたので、一人ずつ花梨に挑戦します。 ・・・・・・・・・・・・・。 何度考え直しても、書き直してもやたらと長くなってしまいます。よって、連載となります。ゆっくりとした更新速度になるかもしれませんが、のんびりとお付き合い下さいませ。 しかし、この題名って・・・・・・(汗)。 2004/06/23 23:41:54 BY銀竜草 |