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ショーンは貴族に使える召使、のようなことをしている。
 召使と言う言葉に曖昧なのは、一般的に言われる召使の仕事をしていないからかもしれない。
 幼いときに館につれてこられ、英才教育を受けた。礼儀や文学、音楽、外国語。ドブの中に生れ落ちたような身分のショーンが、こんな上流の教育を受けられるのは、ご主人様のおかげだと幼心に尊敬と感謝の念、そして両親を愛するように館の主人を愛した。
 いや、「愛してた」
 裏切られたなんて思ってはいけないのだ。彼らはショーンを裏切ったわけではなく元からそのつもりで引き取ったのだから。
 
 きらびやかな部屋と音楽、そしてドレス。紳士淑女たちは夜の帳を楽しむように、軽やかな機知に飛んだ会話をしている。生まれ持った貴族的な面を持っているため、一見誰もショーンを下層階級の者と思わない。
 「ショーン、用意はいいね」 
 主人はニコニコと人好きのする笑顔を浮かべると、隣のショーンの腰を撫でた。
 「あちらに行っても、ちゃんと主人に尽すんだ。教えられたとおりにすればいいんだよ」
 「Yes.Master」
 従順なショーンの態度に満足して笑うと、輪に戻るようにホールに歩いていった。
 ショーンは震える指先を隠すようにキュッと握りこんだ。
 彼は、ショーンを同情して引き取ったわけではない。ショーンを飼ったのだ。
 つまり、貴族間で取引される娼夫と言う名の性奴隷に育て上げるために。
 12を過ぎたことから性的なことを色々と仕込まれた。30近くまで主人が決まらないのは、ショーンを育てた男がショーンを手放そうとしなかったからだ。様々な性技を仕込まれた身体をきらびやかな衣装で隠す。
 ショーンの精神はもう限界に近かった。
 「ショーン!」
 「・・・ヴィ、ゴ?」
 人ごみの向こうから、見知った男がショーンに優雅に歩み寄る。
 彼はヴィゴ・モーテンセン。モーテンセン伯爵の一人息子だ。ショーンが幼い時、館の近くの森でよく一緒に遊んだ。彼はショーンを地方の貴族が館の主人に引き取られた思い込んでいて、幼い時からショーンに本当によくしてくれた。ショーンが絶望という波に押し潰されそうになったとき、そっと花をプレゼントしてくれた。
 ショーンが大好きだよ。と、いつもはにかんだ様に笑う姿に、いつの間にかショーンは彼に恋心を持っていた。
 ショーンの汚れた世界で唯一の美しいもの。それが彼だ。
 「ショーン!なんだ、壁の華か?」
 「ヴィゴ・・・」
 「どうした?」
 無邪気に首を傾げる彼は知らないのだ。今日、ショーンが他の貴族に売られることを。
 「ヴィゴ、俺は」
 「うん?」
 「俺は・・・遠くに行かなくちゃ行けないんだ」
 「え?と、遠くって・・・どこに!?まさか、もう会えないのか?」
 「会えない」
 もう会うことはないだろう。貴族に飼い殺しにされる。40まで生きれたら御の字だ。人間性も何もかも一つずつ潰されていく。性奴になるのだから。
 ・・・だから、ヴィゴ、
 「その胸の薔薇をくれないか?」
 その、ヴィゴのように真っ白い薔薇を。


 一人になりたくて、引き止めるヴィゴを振り切って庭に出た。
 胸に付けた白い薔薇をそっと撫でると、暖かい気持があふれかえる。彼が愛しくて仕方がない。
 バルコニーからバラ園に入る。むせ返る臭いが、ショーンを包んだ。
 バラ園を歩いているのは一人だと思っていたが、背後に気配を感じて振り返る。誰か薔薇を見に来たのだろうか。
 「やあ、君が気になってね」
 「えっと、どこかでお会いしましたか?ミスター」
 でっぷりした好色そうな男だ。年は50は過ぎているのか、それとも年を取って見えるのか。判断がつかない。 薔薇よりも濃い香水の臭いに、眉をしかめた。
 男はショーンの手を取ると、ねっとりとした感触の親指で手の甲を撫でる。
 「ミスターはないだろう?これからはご主人様、と呼んで貰わなくては」
 「!!」
 「ああ、こんなに美しいとは、これからが本当に楽しみだ」
 手の甲に唇を押し付け、チュッと吸い付き、余韻を残して手を離した。そのまま耳元に顔を近づけると、耳に息を吹きかける。
 「いやらしい身体らしいな。昼も夜もSEX漬けにしてやる。私がいなくては小用もたせないほどにな」
 背筋に悪寒が走る。今のショーンを包むのは絶対的な嫌悪感だ。
 男とどう別れたのか覚えていない。
 気がついたら噴水の近くに来ていた。ここはバラ園と館をはさんで反対側にある。
 ショーンは服が濡れるのもかまわず、手を水にひたしごしごしと洗う。何度も何度も何度も、手が真っ赤になっても擦り続けた。
 「は・・・・ははは・・・あははははははははっ!!!!」
 風で乱れる髪がショーンの狂気を煽っているようだ。
 「あははははははははっ!!!」
 男に口付けられた手を空に翳すと、その手首を強く握った。
 金髪は乱れ顔を覆い隠す。髪の間から覗く翠は、瞳孔が開ききっていた。
 風と共に狂気の笑い声がするが、それを聞く者はここに誰もいなかった。


 ざわざわと外が騒がしい、ヴィゴは不審に思い、慌てて外に出た。
 ショーンを待っていたヴィゴだが、ふいに胸騒ぎがしたのだ。まさか・・・と思いながらも、胸に押し寄せる不安は消えない。
 エントランスを抜けると、玄関から階段につながり表に出ることが出来る。階段の下には人だかりが出来ており、皆が上を向いていた。
 ヴィゴも慌てて上を向くと、屋根の上に一人の男が立っていた。
 「ショーンッ!!!!!!」
 ヴィゴは声の限りに叫ぶ。何故彼があんな所にいるのかが理解できなかった。
 「ショ―――ン!!!!!!」
 ショーンは夜空に薔薇を掲げると。うっすらと笑う。
 冷たい風が身体に突き刺さるが、おかしいほど気にならない。真っ白い薔薇から視線を少し落とすと自分の手の甲が目に映る。
 「もう綺麗だ。だって、洗ったから・・・。この薔薇のように真っ白になった」
 よかった。ヴィゴとの最後の思い出は汚されなかった。
 汚れは綺麗に落ちたからもう心配ない。
 もう心配ない。
 ショーンは片足を自然に前に出した。下で悲鳴が聞こえたが、風の音が邪魔してショーンには届かなかった。
 「あんな男のところに行くなんて・・・・いやだ・・・」
 夜空に一瞬薔薇の花が一輪咲き、そして散った。




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イヤッハ〜ッ!!(鼻血)
どーうですかこれ!!
んもう、遠矢さんの掲示板にコレがアップされてたとき、このgucci、どうしようかと…っ!!
性奴隷として育てられちゃって、あまつさえ売られちゃうなんて…!
…かわいそすぎて萌え死ぬ!!vvvvv


え?人非人?……

なんとでも言えぃ!


遠矢さんはドSgucciのためにこれをくださったばかりか、なんと、続きまで書いてくださいました!!

さあさあさあ、ドS仲間のみなさま、ごらんアレ!