■ じれったくて


「ただいまー」
「おっせーぞ、銀次!」
「だって混んでたんだもん、ハンバーガー屋さん」
「たかだか一個買うのに、チンタラしてんじゃねえよ」
「だって、蛮ちゃん。一個買うんだって、並ばなきゃなんないから一緒だよー?」
「・・・なーんか、テメー、最近やけに口答えしやがるな」
「そーいうわけじゃないけど・・」

ハンバーガーの入った袋を抱えてスバルに戻ってきた銀次が、サイドシートについてドアを閉めるなり、蛮に言う。
「ねー、蛮ちゃん。やっぱり士度の依頼受けようよ。ねー」
その言葉に、蛮は”また、その話か”と、うんざりした顔で銀次を睨む。
「テメエなあ。マジでしつけーぞ」
「だって・・。オレたち、ここんとこ特に仕事もないわけだし。ヒマしてるわけだし、金だってほら、もうこんなハンバーガー一個しか買えないくらい底ついてんだしさ」
「金の問題じゃねーだろ」
「・・わかってるケド」
あっさり切り替えされて、ふうと銀次がため息をつく。
そんなのオレだって、わかってる。
士度から金取る気なんて、全然ないけど。
でも蛮ちゃん、そうでも言わないと受けるって絶対言ってくんないもん。
ビジネスだって、そうでも言わないと。
思いつつ、銀次がまた肩を落として息をつく。
「だからさ」
「オイ、それよかメシはぁ!?」
「え・・・!? あ、そっか」
蛮に言われて思い出したように、袋の中からたった一個のハンバーガーを取り出して、銀次が蛮に手渡しながらさらに食い下がる。
「士度はさ。昔、無限城にいた頃に、おまえは闇が怖くないか?ってオレに言ったことあったんだ。人間は闇を恐れるけど、士度たち魔里人は動物たちと一緒でそれを恐れたりしないんだって。でも、それってさ。・・・・・あ」
「あんだ?」
「あの・・・・蛮ちゃん。1ついいですか?」
言いかけた話をひとます置いておいて、銀次が蛮の口元をじとっと見つめる。
「んだよ」
「ソレって、そのハンバーガーって、一個しかないわけだよね?」
「だな」
「ズルしないって言ったよね? かわりばんこにかじろうって・・!」
「・・おう」
「だーったら、なんで1人でそんなに食べてんの!! オレの分は、ねえ、オレの分は?!」
「テメエ、猿マワシのこと、くっちゃべんのに忙しそうだからよー。オレが食っといてやろうかと」
「なんでえ! もお、一口ずつって言ったじゃない〜?! なんで三口連続で食べんの! オレにもちょうーだいってば!!」
「ああ、うるせえな! わーったよ、おら」
「あああ、もう、半分以上かじっちゃってえ」
「オメエ、食いもんのことになると、友情そっちのけだなー」
「だってさ、これ逃すと、今度いつ食べもんにありつけるかわかんないもんー! だからさ、この際、士度の依頼を受けて金を・・」
「やなこった。ああ! テメエこそ、そんな大口開けて食うんじゃねえ! よこせ、この!」
「えー? オレまだそんなにかじってないよお! 蛮ちゃん、ズルイ!」
「一口食ったんだろうが!充分だと思え!」
「あーー!! そんなに!!! ねえ、残しておいてよね! ちょっと蛮ちゃんったら! ええい、ばくっ」
「おわ、横からかじるんじゃねー! コラァ!」
「わーん、あと一口〜! 蛮ちゃん、せめて好物のピクルスはおいといてー!」
「はあ?」
「ピクルス!」
「ったく、テメエ妙なもんが好きだよなー おら」
「わあいv」
「ったく」
「おいちv」
「ガキ・・」
ポイと口にピクルスを放り込んでもらって、それだけで満足げに銀次が満面の笑顔になる。
それを「やれやれ」と呆れたように見つつ、蛮が小さく笑みを漏らす。
まったく何でもかんでも、すぐムキになりやがる。
本当にガキみてーな野郎だぜ・・。
が、それも銀次の次の言葉で、一瞬で憮然としたものになってしまった。
「それでさー。さっきの話の続きだけど、蛮ちゃん。だから、士度はさー」
(・・・このバカ、まだ猿のコト、くっちゃべる気か・・!?)
思うだけで、なんだか無性にムカついてくる。
だいたい、テメエ、オレがなんであの猿マワシに依頼を受けねーか、ちったあ考えたのかよ!?
この低能が!
イライラすんぜ、ったく!
イライラついでに、思ってることが、ついそのまま蛮の口からストレートに出てしまう。
「ああ、もう! 士度士度士度士度って、ウルセーんだよ!!」
どうも言葉に感情が入りすぎたのか、銀次がちょっと一瞬驚いて、それから不思議そうな顔をした。
蛮の顔をのぞき込むようにして、首を傾げる。
「だって・・。んあ? もしかして、蛮ちゃん。ソレって、ヤキモチですかぁ?」
思わずタレて無邪気に言う銀次に、蛮はピク!と反応すると、ギロリ・・ともの凄い形相でそれを睨み付けた。
「・・・・・あんだと?」
「あ、いえ・・・・別に」
「テメエ・・・言うに事欠いて・・! このオレ様が猿に何だと?!」
「あ、いえ! 何でもないです! 何でも・・・・」
「おい待て! いい度胸じゃねーか! テメエ、いったい何様のつもりだぁ、この!! 」
「うあー、いでででで! 痛いよお、蛮ちゃん!」
「ったく、いい加減にしねえと、いっぺんオカすぞ、ゴラァ!!」
「うわあ、ごめんなさい、ごめんなさい〜!」
さすがにオカされるのは、ちょっといやです。
無理矢理されると、やっぱ痛いし!
いや、オレ、オカされた経験がないからよくわかんないケド。
・・・いや、そんなこと言ってる場合じゃないか。
拳骨で両側のこめかみを思い切りぐりぐりされて、銀次が思わず涙目になる。
「蛮ちゃあん」
「猿のことは、金輪際口にすんじゃねえ! わーったか!」
「・・・・・・」
「文句あんのか?」
それでもまだ不服げに蛮を横目でちろっと見る銀次を、蛮が思わず睨み返す。
その目に、銀次はちょっとしょぼん・・としたしぐさで俯いた。
「・・・だって、蛮ちゃんはそう言うけど。オレ、士度のことやっぱ昔の仲間だし、放っておけないし・・・・」
思い詰めた顔でそう言われると、どうにも、さすがの蛮もちょっと邪険にしすぎたかと反省しそうになってしまう。
「あのな、銀次」
とりあえず、俯いた顔を上げさせようその顎に手を伸ばしたところで、自分から何か言おうとしたのか、銀次が唐突に顔を上げた。
そこで、何かを見つけたようにぴたりと視線が止まる。
「・・・・・あ、ねえ。蛮ちゃん、指にケチャップついてるよ?」
「あ゛?」
銀次が目の前にきた蛮の手の先を見て、ふいに言う。
なるほど、中指の先にさっきピクルスをつまんだ時についたらしいケチャップが少し・・。
何だ、落ち込んでたんじゃねーのかよ?と拍子抜けしつつも、何気なくその指をなめようと口にもっていく途中で、蛮はいきなりその手首を銀次にひっぱられ、ぐいっと引き寄せられた。
「お、なにすんだ?」
「ちょうだい、ソレ」
「あ゛?」
「ね、なめさせて。 へへ、ケチャップだいすきー」
「あのなあ・・」
蛮の手を自分の口元に持っていき、何のためらいもなく、ぱくっと口に含む銀次に、さすがに蛮がぎょっとなる。
「おい・・」
いきなり銀次のあたたかい口中に引き込まれるなり、指先に舌が絡まり、ちゅ・・と吸い上げられる。
爪の間にまでちろっと舌を入れて、銀次はおいしーvと嬉しそうだ。
蛮の脳内でどかんと噴火が起き、同時に、一瞬にして下半身に血流が集中していくのを感じる。
なんの意味も含みもなく、無邪気にこんなことをしてるのだろうが、やわらかい粘膜に包まれた何ともいえない心地よい感触が、あらぬコトを連想させてしまう。
それも正常なオトコなら、まあ無理からぬことといえるだろう。
(・・・・・挑発してやがんのか、このヤロー)
だが、食い気を前にした銀次に、もちろんそんな性的な意味含みなどあるはずもなく。
「んでね、さっきの話だけどさ」
ケチャップをしっかりとなめとって、満足した顔で蛮の指を口から抜いて、何事もなかったように話を続ける銀次に蛮が思わず頭を抱え込んだ。
「あれ? どったの?蛮ちゃん」
「テメエなあ・・」
思い切り不機嫌な表情で顔を上げた蛮に、銀次が驚いて言う。
「あ、オレ、なめちゃいけなかった? 蛮ちゃんもなめたかった?」
「いや、そうじゃなくてよ」
「そんならいいけど・・・。でね、さっきの続きだけど。士度はさー。やっぱ、マドカちゃ・・・・んっ?」
言葉の途中でいきなり項に手を添えられて、はっとなった所で唇を塞がれる。
一瞬、何が起こった?という顔で、目を見開いたまま蛮に口づけられて、銀次の頭が混乱した。
・・・あれ? なんでオレ、いきなり蛮ちゃんにキスされてんの??
「おい・・」
「・・・・ふぇ?」
「ふぇ、じゃねえだろ。テメー、ヒトの指をしゃぶるだけしゃぶってその気にさせといて、まだ猿の話をしやがるとはいい度胸じゃねえか」
「へっ?」
耳元でそう低く囁かれ、いきなり舌を耳の穴に差し入れられて、銀次がぴくっ!と身体をふるわせる。
「え? あの、蛮ちゃん?」
「うっせえ」
「あ、でも、あの」
「しゃべるな」
耳の中を奥までたっぷりと舌先で侵されて、耳朶に軽く歯を当てられ、その下の窪みを吸われる。
「や・・・・・ 蛮ちゃん・・・たら」
「しゃべんなっつってんだろ」
「・・・・・・・・あ!」
「んだよ、耳だけで結構感じてんじゃねーか」
言いながら、滑らかな首筋を味わいつつ、空いた手ですらりと伸びた脚を撫で上げる。
ぴくと膝が跳ねて、思わず腿に力を入れるのも構わずに、ハーフパンツの裾から手を入れて、内腿を割るようにして手のひらで撫でた。
「あ!・・・・・・ねえ、やめて・・よ・・・・・・あっ・・!」
「逃げんな、コラ」
腰を浮かしてシートの上をドア側に逃げるのを、許さずに身体ごと引き寄せて、さらに奥へと手を伸ばしていく。
「だって・・! アア・・・・ッ」
下着の上から、いきなりソコにふれられて、銀次が腰を上げて大きくのけぞった。
「へっ・・・。もうこんなかよ。早ぇな」
「いや・・だ・・・ってば。蛮ちゃん・・・・・! あああ・・・・っ」
布の上から形を確かめるようにふれられて、軽く握られ、銀次が苦しそうにその手を押さえる。
「あ・・・っ・・・あっ」
「イイ声じゃねー」
「ぁ・・・・・ンっ! ね、嫌だ・・・ってば」
「嫌ならやめてもいーけど。テメエがつらいだろが?」
声はやさしいけれども、ちょっと残忍な響きも含んで、蛮が銀次の耳元に囁く。
蛮の左手はTシャツの下に入り、背中からひっぱるようにしてシャツを上げさせ、胸を出させて、固く隆起したそこに指を引っ掻ける。
「や・・・!」
「コッチももう勃ってんぜ・・?」
オメー、本当に感度いいよな?と呟きながら、その桜色に蛮が唇を寄せて、ちゅ・・と音をたてて吸い上げる。
「ふぁ・・・」
「こうされんの、好きだよな・・・。ったく、オンナの胸よか、感度イイぜ・・」
”オンナの・・”という言葉に、銀次の頭の隅が、ぴくっと反応する。
もちろん、一日中べったり一緒にいるわけだから、蛮が他のオンナとどうこうするなんてことは今の状況では有り得ない。
だから、わざと言ってからかわれてるんだと知っているけれど、それでもやっぱり悔しいと思ってしまう。
こういう時の蛮を知っている、他の誰かがいたということが。
悔しまぎれに、脚の間を自在になぶりものにしていた蛮の手に、自分の手を伸ばしてそれを遮るようにする。
虚しい抵抗だとわかってはいても。
「やめてったら・・・ぁ・・・なんで・・・・っ・・・蛮ちゃん・・・・車じゃしないって・・・・」
「言ったか、んなこと」
「言ったよ・・・シート、汚れ・・るから・・・・」
確かに車の中じゃあ、狭いし動きにくいし、シート汚れりゃどーしよーもねえし、誰かに覗かれてもムカつくし。
というわけで、成り行きでソノ気になってしまった場合は、金に余裕のある時は風呂に入りがてらラブホに行ったり、後は仕方なしに公園のトイレですませたり、アウトドアだったりしたこともあったけど。
「へえ、それで車ん中じゃ、襲われねーとタカくくって、オレを挑発したワケだ」
「そ、そんなの・・・知らな・・・・・」
「今さら、知らん顔はねえだろ? ただでさえ、オレは、ここんとこずっと、テメエから猿の話ばっか聞かされてよ、機嫌が悪りぃんだ」
「そんな・・」
「シート汚してマズイって思うんなら、テメエで勝手に気ぃつけな」
冷たく言われて悲しそうにしつつも、銀次が目でとりあえず、後部座席のティッシュの箱の位置だけは確認する。
その何ともいえないわかりやすさに思わず笑ってしまいそうになるが、蛮はそれでもまだもう少し、サド心に忠実に銀次を責めてやりたい気分だったので、それはシカトすることにした。
そして、銀次の身体の上に覆い被さるようにして、シートの横のレバーに手をかける。
いきなりバタン!とシートを倒され、銀次が思わず驚いて大きく瞳を見開いた。
怯んでいるうちに素早くベルトを外され、抵抗する間もなく、蛮の手によって下半身を裸に剥かれる。
「蛮ちゃん・・!」
「ダッシュボードに片足上げな」
「え・・?」
「オラ、思いきり開け」
「な、何す・・・・ あ!ソコ、やだ・・・っ!」
「どこ、だよ」
「どこって・・・」
「ココか?」
霰もない格好で足を広げられ、その奥まった所に無遠慮に触れられ、指を突き立てられて銀次が喚く。
「ああああ・・ッ!・・・・くっ」
「いきなりじゃ、痛てぇか? んじゃ、さっきみたいに自分で濡らしとくか」
体内から引き抜かれた蛮の指に唇を開かされ、銀次が瞳を潤ませながらも、大人しくその指を口中に招き入れる。
「・・・・・う・・・・」
「たっぷり濡らしとけよ。足りねーと、テメエがツライだけだかんな」
指先で、口の中の粘膜をやさしくなぞるようにしてやると、それだけでもうどうにかなりそうだという表情をして、懸命に指を舐める銀次に蛮がほくそ笑む。
(ガキくせえ割にゃ、そういうカオは妙に色っぺーんだよな・・ コイツ)
思いつつ、ピチャ・・と銀次の口から指を抜き取り、その濡れたままで、銀次の体内に一気に差し入れる。
「うあ!」
「・・・・どーよ?」
全身を強張らせつつも、だんだんに深く侵入してくる指先に、蛮に教え込まれた身体が敏感に反応して締め付ける。
快楽の場所を指先をくっと曲げるようにして強く刺激され、腰が思い切り跳ね上がった。
「あ・・・!!」
「ココ、テメエの好きなトコだろ?」
「ん・・・・・あ・・あっ・・・・あっ・・・・・く・・っ・・・はぁ・・・・ぁ・・ぁああぁあ!」
背中をシートを上滑りしていきながら、大きく反らして顎を上げる。
両手をシートの横に回して堪える指先が、もどかしくそこを引っ掻くようにしつつ、力を込められ白くなる。
「後ろだけで、イケそーだな」
「うう・・・・!・・ん・・・・もう・・・・」
臨界点を向かえ、ほとんど無意識に、もう今にもはじけそうな自分のモノを何とか最後まで登りつめさせようと手を伸ばして、その手を寸でのところで、蛮の手に捕らえられる。
「コラ、この手は何だよ?」
「や! 蛮ちゃん・・! 離し・・・て」
「自分ですんのか? オレの目の前で」
「・・・・うー・・・ 蛮ちゃん、イジワル」
「おうよ、イジワルだぜ、オレは。今更、何言ってんだ?」
「あ・・・・お願い」
「ん?」
「蛮ちゃん・・・」
「んだよ?」
「く・・・・」
「はっきり言ってみろや? 自分ですんのか、それともオレにして欲しいのか」
「そ・・・そんなの・・」
そんなの、どっちにしたって、恥ずかしすぎて口になんて出来ない。
けれど、身体の方はもうぎりぎりのところまで来ていて、最後のチェックメイトを待っている状態で。
あと少し、もう僅かでいいから、達するためのより強いシゲキが欲しい。
苦しそうに首をふる銀次の顔を見下ろして、からかうように蛮が言う。
「さっさとしねぇと、コッチだけではじけちまうんじゃねーか? ええ?」
「あう・・っ」
尚も中をいたぶられて両足にぐっと力が入り、殊更に蛮の指を締め付けてしまい、余計にリアルに体内にその存在を感じて、銀次がぎゅっと切なげに目を閉じる。
眉間が苦しげに寄せられ、閉じられた目尻から一筋涙がこぼれ落ちた。
「・・・・!」
「蛮ちゃ・・・ん」
呼ぶ声が、まるで助けを求めているかのようだ。
苦しいから、つらいから、もう、蛮ちゃんが助けてよ・・と。
銀次を抱く時はいつも、苛めて泣かせてとことん追いつめて、その上で自分を欲しいと言わせたいと、そんな残虐な心が疼くように胸にあるのに、ひとたび、こんな風に本当に泣かれてしまうと、そんな気が全部根こそぎ萎えてしまう。
泣くな、オレが悪かったと、そんな心境に陥ってしまうのだ。
(・・・・この期に及んで、泣くなんてヒキョーだぞ、てめー)
泣かせたいのに、泣かれるとつらい。
・・ったく、いったいどーすりゃいいんだよ?
ヒトの気も知らねーで、と蛮が心で悪態をつく。
どれだけ、このオレ様に、想われてるかなんて、知りもしねえで。
猿の依頼のことだって、そうだ。
オレが守りたいのは、テメエなんだぞ。
この美堂蛮様が、なりふり構わず守ってやろうとしてんのは、銀次、オマエだけなんだぜ?
思う蛮の身体の下で、苦しい息を吐き出しながら銀次が言う。
「蛮ちゃん・・・・・っ・・・・も・・入れて・・よ」
「あ?」
「ね・・」
・・・いきなし、そうきたか。
ちょっと意外な銀次の台詞に、喉元で低く笑う。
余裕のあるような所を見せてはいるが、コッチとて、本当はもうぎりぎりだ。
自分の雄が痛いほど銀次の中を求めて、そのズボンの中で張りつめている。
「しゃあねーな・・」
指を引き抜き、自分のズボンの前をはだけ、大きく銀次の足を割って、その間に自分の身体を入れる。
「テメーも、どーでもいいとこで強情だよな。ったく」
狭いわ、動きにくいわで、確かに「てんとう虫」でヤるのは好きじゃあないが、まあ、そういう不自由さも悪かないか。
どこでヤろうが銀次のカラダの中の、あの絡みついてくる心地よい肉のやわらかさと、甘い熱は一緒だからよ。
思いつつ、銀次の足を抱えながら、ソコに熱く脈打つ自分をあてがう。
「く・・・・!」
「力、入れんな・・・」
「ア・・・・アア・・・・ッ!!」
身体を裂いてピリピリと広がっていく痛みと圧迫感に、思わず逃がれようとする腰を押さえつけて、蛮が強く引き寄せる。
入りきってしまえばそう痛みはないのに、入り口をこじ開けられる痛みだけは、どうやっても慣れられなくて思わず涙が落ちてしまう。
「銀次・・」
やさしく呼ばれて少しだけ目を開けて、自分の中にいるのが蛮だと確かめるかのように顔を見て、覆い被さってくる燃えるような熱い体に腕を回してしがみつく。
「動く、ぜ?」
「ん・・・・」
頷くなり、身体の中で蛮がゆっくりと動きだし、銀次の体内の快楽の場所を探り出して、そこを突き上げるように激しく銀次の身体を揺すぶり始める。
「あ・・! はあ・・っ・・あっ! う・・あ・・・ぁ・あ・・・・!」
腕の中に、骨を砕きそうなくらい強く銀次を抱きしめて、唇を合わせて悲鳴を激しいキスで奪う。
絡みついてくる愛おしい体内の熱に溶かされるような錯覚に陥りながら、蛮はいつものように、ただ夢中でその身体を貪っていた。
汗が流れ落ち、息が弾む。

過去に誰ともこんな風に、交わったことはなかった。
相手を悦ばせてやりたいとも感じることもなく、どこか冷めて自分の身体の下に居る者を見つめていたし、本能と欲しかなかったから、自分が我を忘れるくらい夢中になることもなかった。
早い話、吐き出せればそれでよかったのだ、自分の性欲を。
こんな風に、切なく甘い快楽に酔いしれる繋がり方は、銀次で初めて覚えたものだ。


「おい・・・」
「・・・・」
「銀次・・・?」
「・・・・ん」
達した後で、意識を飛ばしたようにぐったりとなってしまった銀次を、まだ身体は繋げたままで、少し心配げに蛮が呼んだ。
それに答えるように、ゆっくりと銀次が瞳を開く。
「大丈夫か・・?」
「うん・・・」
「悪ィ・・・ ちょっとヤリすぎたか?」
蛮の言葉に、真っ直ぐにその蒼い瞳を見上げて、銀次が微笑んで小さく首を横に振る。
生理的な涙が、とたんに銀次の両の瞳から溢れて目尻を伝い、蛮がそれに驚いたように唇を寄せた。
そっと、キスでそれを掬い取る。
「蛮ちゃん・・・」
「ん?」
「・・・なんか・・らしくないよ?」
「・・・ケッ、悪りかったな・・」
「・・・えへ」
”でも、やさしくされるのだいすき”と、叫び過ぎてちょっと掠れた声で小さく呟いて笑う銀次に、何とも言えない愛おしさがこみ上げてくる。
「蛮ちゃん・・・怒ってた?」
「あ?」
「オレ、士度のコト、しゃべりすぎたかな・・」
「いや・・・。仲間を想うテメエのお人好しなとこは・・・・嫌いじゃねーよ」
言って、そっと髪を撫でてくれる蛮の手に、銀次がくすぐったそうに片目をつぶる。
「・・・うん」
「むしろ・・・・。あ、いや、いいけどよ、別に」
「うん・・・? ねえ、蛮ちゃん・・ さっきの話、もうちょっとだけ、聞いて?」
「ああ・・」
「士度は、闇が怖くないってそう言ってたけど、マドカちゃんに出会って、初めて自分の心の中にある闇に気づいたんだと思う。マドカちゃんは、そんな士度の心を照らす光になってくれたから、今度は、それを無くすることが、また闇の中に戻ることが士度は怖くて、だからあんなに必死だったんだと思うんだ・・」
「・・・・・・・ああ」
「オレもそうだから、わかるんだ・・。オレには蛮ちゃんが、オレの心の闇を照らす光になってくれたから。だからオレも、蛮ちゃんを失って、また心が闇に包まれんのが、たまらなく怖い・・。士度と同じ気持ちだから、だから、蛮ちゃんにもそれをわかって欲しくて・・」
「・・ああ、わーってる・・」
やさしく頷かれて、ちょっと驚いた顔をする。
けれども、すぐにおだやかに笑んで、銀次は自分の頬に降りてきた蛮の手にそっと頬擦りをして言った。
「ん・・。だから、士度を助けんのは、オレを助けるのと一緒なんだ」
「銀次・・」
「オレを、助けてよ・・。蛮ちゃん・・」
抱き合った後で、そんな風にじっと真っ直ぐな瞳で見つめられて、涙ながらに懇願されて、どうして「嫌だ」と言えるだろう。
・・・くそ・・・。
卑怯だ、やっぱり、テメエは・・!
オトコの涙を、んなとこで使うんじゃねー!
オトコの、いや、テメエの涙にオレが弱いって、知っててやってやがんのかよ?
「・・んなわけねーか。そんな計算できりゃ、もーちょい脳ミソも発達してるわな・・」
低く呟いて、クス・・と笑う。
「え・・?」
「オメーよ、シリアスにキメてるけど、状況わかってっか?」
「ん?」
蛮のコトバにきょとんと見上げ、ニヤリとされて、その顔がぴくりと引きつった。
・・・なんか、そういや、下半身に違和感が・・。
思ったとたんに、くい!と腰を入れられて、みるみる銀次が真っ赤になる。
「ば、蛮ちゃん・・。あの、まだ、入ってますけど・・?」
「おう」
「おうって」
「気づかねーか、フツー」
「ま、麻痺してて感覚が・・」
「ほー、感覚が麻痺しちまうくらい良かったか」
「あの・・・」
なんとなく、いやーな予感に、銀次がだらだらと汗を流す。
蛮はそれを見下ろして、再びニヤリと笑った。
「んま、その件に関しては、保留な」
「え?? なんでえ?」
「結果で考えてやる」
「け、けっか・・・?って、なんの・・・???」
蛮が、銀次の狼狽ぶりに楽しげに嬉しげに言う。
「ノルマこなせたらな!」
「・・・と、言いますと?」
「あと、抜かずで三発な!!」
「ひええ〜〜〜え〜〜〜!」
「んじゃ、やっか」
「ちょ、ちょ、ちょと、タンマタンマ! ばばば蛮ちゃん!」
「んだよ、助けてほしいんだろ?」
「ほ、ほしいけど、いや! 欲しくはない・・けど、ど、ど」
「どっちだよ?」
「わーん、だから、士度をお〜」
「うるせえ! だから受けてやるっつってんだろ!!」
「受けてやるって、受けてやるったって、あのね・・! ・・・え・・・? う、受け・・?」
「おっしゃあ、じゃームスコも復活してきたコトだし、いっちょーおっぱじめっかぁー!」
「わーん、蛮ちゃんって、どーしてそう素直じゃないんだよお〜」
「ウルセエ」


なんだかんだで、第二戦目に突入しつつ。
それでも、まー、いいかと銀次は、蛮に口づけを受けながら思っていた。
別に、やじゃないんだし。
キモチイイのは、いっしょだし。
何より、蛮ちゃんは、ちゃんとオレのいいたいこと、わかってくれてたんだよね?
やっぱり、
蛮ちゃんは、オレの光なんだもん。
あったかい光なんだから。


でも、
明日から、いざ行動に移るぜ!と言われても、オレ、たぶん動けないんですけど・・・。
どうしましょーか。蛮ちゃあん・・・。



そんなコトを思いつつ、蛮に揺り動かされながら鳴く銀次を、蛮はちょっとホッとしつつ見下ろしていた。
ヤバかった。
んなコト、いきなり言いやがるなんて思わねーから・・・・ まいった。
照れてたなんて、バレてやしねーだろな。オイ。
カッコつかねーかんな、コイツに、んな弱み握られちゃ。
ましてや、猿のヤローに嫉妬してただなんてよ。
ま、いっけど。
おかげでオイシイ想いしてんだし。


・・・しゃあねえ、受けてやっか。
厄介な仕事だけどよ。
しかしな、オマエ。明日、そんなで腰立つかよ?







2度目に登りつめて、正体をなくしていく銀次の耳元に、
蛮はわざと聞こえないくらいの声で、独り言のように呟いた。

「オレの光は、テメエだ。銀次」
よーく覚えておきやがれ、と。






END






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まだ、士度ネタやってます、私。
もう原作ではとっくに引き受けちゃってますよ、蛮ちゃん。
でも、あれもきっと銀ちゃんの説得あってこそだと思うし!(カラダでかい)
いや、今回、とにかくエロが書きたかったんです! カラダで語り合う蛮銀が・・!(ちょっとヒワイ?)・・が。なんか、あんまりエロくないのはどうしてでしょう・・?
何が足りないのだ。シリアスの部分デスか!?(それもあるような)
しかも、前置きにこんなに行を費やさないとエロにたどり着けない私って・・。
本当は、もっとイジメてみたかったのになあ。銀ちゃんv
鬼畜な蛮ちゃんというのは、ちょっとアコガレでありまして、特にベッドで鬼畜というのはイイかもvと思ってたのですが、私が書くと「泣かせてやらぁ」というのが、本当に泣かれた途端に「うわ、泣くんじゃねえ!」となってしまうので、ちょっとダメかもしんないです。
それでもとことん泣かすなんてこと、蛮ちゃんに出来るのでしょうか・・? 
あの銀ちゃん過保護な方に! いやそんな弱気になってないで、また、リベンジを!って、こればっかですが・・。
あ、フェラがダメな銀ちゃんとかも書きたいなー。
蛮ちゃんにしたげるのは「全然オッケーv喜んでv」なのに、自分がされるのがどーしても恥ずかしいからヤダ!と逃げ回るというのも、なんか可愛くないですか??v  
変な趣味かしら、私・・?

どーでもいい余談ですが、なんとなく、食べ物が一個だけあるとして。
この話の場合、ハンバーガーなのですけど。
フツーなら、最初から一個を半分に割って食べたらいいと思うのですが、なんか蛮銀は、やっぱかわりばんこにかじりっこしそうな気がします。林檎とかでもさ。
しかも、蛮ちゃんかじりすぎ! テメーのが一口多かったとか言いながら。
だったら最初から分けとけばいいやんと思うけど、なんとなく、そうやってイチャイチャやりつつ、一個のものを二人で共有するのが楽しいんだろなvって気がします。

えらい長いあとがきでスミマセン・・。






モドル