「世界中のどこよりも」





マドカ嬢ちゃん奪還の仕事が終わった後から、なんだかやけに、このバカは、前より一層甘えったれになりやがった気がする。
どこに行くにもくっついてきて、とにかく本当にべったりだ。
片時も、オレのそばを離れようとしやがらねえ。

おかげでコッチは、最近じゃ、パチンコまでガキ同伴だ。
(言っても、頭の中身がガキなだけで、図体はどう見てもガキじゃねえが)


ったく。
なんとか、ヤローの誕生日までに部屋を借りるのも間に合わせてやれ、内心ほっとしているオレの気なんざ知りもしねぇでよ。
「ねえ、パジャマはコレにしていい?! かわいいよ、鈴までついてるし! ねえ、この牛さんのパジャマお誕生日に買ってよ、蛮ちゃあん!」
などと脳天気にほざきやがって。
アレをレジに持ってくのは、鬼里人の総本山に乗り込むよりずっと度胸がいったんだぞ、アホが。

まー・・。
んなことをテメエのためにしてやろうかと思うぐれぇだから、谷から帰ったオレも、相当テメェにゃ甘くなってんだろうけどよ。


>「そうですかぁ? 蛮さんは前からそんなだったと思いますけどぉ?」
ウルセェ、夏実。

>「ま、すっかり銀次の保護者が板についてきたってトコロだな」
誰が保護者だ、誰が誰の! えぇ!?波児!

ついでに、「誕生日はちょっとぐらい我が儘言っちゃってもゆるされちゃうんですよーv」なんて、ウソこきやがるから、アホが本気にしてやがるじゃねえか!



「ばーんちゃあん。お風呂上がったよー」
「おう」
「髪の毛、拭いてーv」
「・・・・テメェなあ・・」
「だって、オレ誕生日だもーん」
「・・・・日付変わった途端、後悔すんぜ?」
「いいもん、年に一回のことだもんねー。ちょっとくらい甘えてもいいでしょ?」
「そういうのは、普段甘えてねぇヤツの言うことだろが?」
憮然としているオレを、まだ濡れたままのぼさぼさの髪のままで、上目使いにちろっと見やがる。
「・・・・だって、オレ・・。マドカちゃんの奪還の仕事の時とかさ、蛮ちゃんと離ればなれで、蛮ちゃん怒って、オレのコト置き去りにするし、すごいつらくて・・・ 思い出すとさ、今でも・・・」
「だ〜っ!! 泣くなぁ! わーった、わーった! 甘えでも何でも好きにしろっての!」
「うん!」
「あん? なんだ、その手は?」
「抱っこして、ベッドまでつれてってーv」
「・・・・・・・・・あのな・・・・・・」
「オレ、誕生日v」
「・・・・・・チッ・・! ・・・・・・ったく。オラ、来い」
「わーいv」
しようがなしに手を出すと、正面からサルみてぇにどばっ!と飛びついてきやがる。
「うわ!」
ああ、もう。
なんで、こんなにデカイ野郎を抱いて、ベッドまで運ばねーといけねぇんだよ。
「重ぇんだよ、テメー! ケーキ食い過ぎたろ」
「へへv 美味しかったもん。イチゴ全部蛮ちゃんに取られちゃったけど!」
「1個残してやっただろうが!」
「でも、12個ものっかってたんだよ!? そのうちの一個だけだよ、ねえ!」
「ああ、るせーな。もう、いいからとっと上も着替えろ! おら、牛着ろ、牛! ・・ったく、何が嬉しくて大の男が、んな牛のパジャマ・・・」
パジャマの下だけ履いてベッドに腰掛け、オレに髪をがしがしとバスタオルで拭われながら、銀次がにっこり笑って言う。
「ばんちゃーん、着るの手伝ってv」
「あ゛〜〜〜〜〜〜〜もう!! ・・・・・・へいへい・・ わーったよ、さしていただきます!」
「わー、なんかふわふわだよ、このパジャマ。肌ざわり気持ちイイ〜v」
「いーから早く着ろって。オラ、手こっち出せ」
「んあ〜! 鈴に髪の毛ひっかかったよう、蛮ちゃん!」
「ああ、もう! 世話やけんなぁ、テメエは!」
「わ〜、ほら耳があんのv 耳〜v どうどう? 似合う? へん??」
「・・・・いや、まあ、それなりに似合うっつーか、妙に似合ってるっつーか・・ なんで似合うんだっつーか・・」
「えへへv」
「喜ぶな」
「あ、蛮ちゃんのそのパジャマも、なかなかカッコいいよね! オレが選んだだけあるよね」
「そっか? まあ、牛にくらべりゃあな」
「んじゃ、寝よっとv」
「あ、テメー、歯磨いたかよ?」
「磨いたよーだ。蛮ちゃんたら、まるでお父さんみたいだよ?」
「ウルセエ・・。おら、電気消すぞ」
「はーい」


まだろくに家具もない部屋の窓際に、ベッドだけを1つ置いて、別にそうと決めたわけでなかったが、気がついたら当然のように一緒に1つ布団にくるまって眠るようになっていた。
眠りにつく時は殊更、銀次のヤツはオレがそばにいねぇと不安がったし・・。

「ねー、蛮ちゃん。今夜は満月だねー」
「ああ・・・」
「星もきれいに見えてるし。明日も晴れっかなー」
「ああ・・・」
「ねえ、いつもよか、もっとくっついてもいい?」
「へいへい・・」
「あ〜、あったかいやぁ、蛮ちゃんって!」
そう言って、オレの胸に頬をくっつけ、すりすりと擦り寄せるようにする銀次に思わず苦笑が漏れる。

これじゃあ、まったく、親鳥と雛鳥のカンケーだぜ。
なんというか、無邪気に無防備にオレの胸で嬉しそうに微笑んでいる銀次が、コッチはコッチで無条件に愛おしいと思っている。
そうとうイカれてんな、二人して。
マジで。

「枕から、頭落ちてっぞ?」
「いいよ。くっつける方が嬉しいから」
「・・しゃあねぇな。ほら、ここに頭置け」
「え?いいの。痺れちゃうよ?」
「構やしねぇよ。来い」
「うん!! わーい腕枕〜v ・・・・あ、ねえ、あのね、蛮ちゃん」
「あ? いいから、もう寝ろって」
「一コだけ」
「んだよ?」
「ありがと・・・ね?」
「な、なんだよ、いきなし」

突然、至近距離で切なげに見つめられると、さすがにちょっとたじろいでしまうじゃねーか。

「部屋、誕生日に間に合うように、無理して探してくれてたんでしょ? ・・嬉しかった。だから、あんがと」
言って、ふわりと微笑んだ。

へッ・・ お見通しかよ・・。
ま、別にいいけどよ。

「・・・・・・ばーか」

・・・まったく。
可愛いヤローだよ、マジで、テメエは。
・・んな目で見つめやがるな。

「・・・・ね?」
「あ?」
「もう・・・どっこも行かないよね・・?」
「銀次・・」
「ね・・・ 蛮ちゃん」
「ああ・・・」
「本当・・・?」
「ったりめーだろ? 今更、言わすなよ」
「ん・・」
「もう寝ろ」
「うん・・。オヤスミ。蛮ちゃん」
「おう・・」





・・・・・・。
ったく。
いい加減にしろっての。
もう置いてくわけなんか、ねーだろが。
テメエがいなけりゃダメなことぐれぇ、コッチだって痛いほどわかったんだからよ・・。
バーカ・・。


まるで赤ん坊にするように、とん・・とん・・とゆっくり優しく背中を叩いてやっていると、妙に安心するらしく、瞬く間に銀次が腕の中で眠りに落ちていく。

オレの腕の中で。

ここは一番安心だと、世界中のどこよりも安心だと。
そんな無防備でやすらかな寝顔で・・・。



END














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勝手に合作〜vv
いいのかしら、いいですよね、武東さんvv
武東さんチのbbsでちろっとカキコした台詞を、「ソレ、書いて〜v」と言ってくださったのをイイコトにSSまでつけちゃった。
えへv
イメージくずれちゃったかしら。スミマセン〜!
一応、武東さんの、パパ蛮ちゃんで書いてみました。ので、こういう状況でも牛さんを襲ったりはしないのだv いくら美味しそうでもv
保護者な蛮ちゃんも大好きなので、とっても楽しかったですv
今、原作がツライから、余計に甘いのがいいですよねv 
というわけで、勝手に「永遠の絆〜」その後。武東さんにお礼なのですvvv しかし、一方的にファンしてるだけのクセに、本当によかったのかしら・・。(びくびく)

武東さんのイラストだけ、じっくり見たいという方はこちら


モドル