パラガスxブロ母2-オンセン惑星湯けむり超慰安旅行そのC

-惑星オンセンへ-


そして慰安旅行当日
欠席する者もおらず、ベジータ国際宇宙港に集合していた
「今回はまあ天災に見舞われたことが幸いした形だが―」
セミサ所長が今回の趣旨を再度説明している
なんだか修学旅行に行くような気分ですごく懐かしい
「―で、今日からうちでともに働いてもらう子を紹介する、プルア君だ」
セミサ所長の横に小柄な背丈の女性が立っている
期待の助っ人さんだ
「プルアです。王立ベジータ総合研究センターから配属されましたよろしくお願いします」
腰あたりまで赤みがかった髪を伸ばし、知的な顔立ち
どことなく少女のようなあどけなさを感じさせる風貌だか
表情を変えず凛とした姿勢でまっすぐ私たちを見つめている
緊張しているわけではないようだ
さすがはエリート研究者だけのことはあると感心する
「まあ、ここにいるのがウチのメンバーだ
 受付と事務担当のレスタ、工場担当のボンザ、ジオ、レン、それに研究室担当のルーケ、そして工場・研究所主任のカリフだ」
セミサ所長が簡単にみんなの紹介をする
私が入ってから新人がいなかったということで思ってみれば一年以上人員が増えていなかったのか
「一応工場、研究兼ねてということだけど、研究一筋のようなのでカリフが主に工場を担当、プルアが研究所で・・・そろそろ船の時間っぽいな」
今からチケットを渡すから名前と席を確認してくれ
カリフ、じゃあよろしく」
セミサ所長の言葉にあわててウエストポーチからみんなのチケットを取り出す
普通であれば、事務を担当しているレスタのやることのようだが
見た目は落ち着いている感じなのだが結構抜けているので
セミサ所長は私にチケットの管理を頼んできたというわけなのだ
名前を確認しながら船のチケットをみんなに配る
そして最後にプルアにチケットを渡す
「ふーん、カリフさん・・・ね」
「はい!カリフといいます、よろしくね」
にこりと笑いチケットを渡すが
私の言葉にプルアは返事もなく、表情一つ変えずチケットを受け取り、チケットに視線を落とす
「カリフは国立サイヤアカデミーを首席で卒業してるんだぜ、戦闘評価はひどかったけどな」
工場所属のレンが自慢するようにプルアに説明する
双子の兄であるジオもうなずく
その言葉にぴくりと反応するプルア
「へぇ・・・そうですの・・・」
その瞬間ゾクッとする感覚を覚えた
ちらりとプルアが私を見るがその視線はすごく冷たく感じた

搭乗手続きを終え
オンセン行きの宇宙船に乗り込む一行
宇宙船は大量輸送用に楕円形をしており区画が割られており
非常時は区画を切り離すことにより非常用ポッドの役割も果たすらしい
私たちはちょうど8人ということで1区画を貸しきり状態で席を振ってくれたようだ
8人いると少し狭い感じはするがエコノミークラスというがそれなりの広さである
タタミ8畳ほどの空間で
奥には固定席が9つ外を一望できるように窓側に備え付けてある
席は当然回転も出来る
入り口付近には簡易冷蔵庫や暇つぶし用のゲームやカラオケ、大型スクリーンなどが備え付けてある
つかつかとセミサはまっすぐ入り口に一番近い手前席に座る
「この個室で席は取ってあるから席は好きに座っていいぞ。私はしばらく眠らせてもらうからな」
とセミサは後は任せるといった感じで手を軽く振っ他と思うとその手は席に消え、席から寝息が聞こえ始める
(は・・・早い・・・)
多少の驚きを覚えながらもふと周りを見る
ジオとレンは星外旅行は初めてらしくものめずらしそうに室内を調べている
レスタが冷蔵庫を開き飲み物を選んでいる
大半は経費で落ちるということで入り口付近冷蔵庫にはボンザとレスタがいる
ルーケはすでに席について書籍に目を通している
所長の隣は嫌らしく斜め前の席に座っている
プルアは奥の窓から外を眺めている
(ふふ・・・みんな聞いてないな!)
私の目がキラリと光る
そして素早く私は動いた
「一番前の席いただきー!」
私は名乗りを上げ一番前の席に座る
「ああ!俺が狙っていたのにカリフ諮ったな!!」
一緒に冷蔵庫を物色していたレンが気づき声を上げる
「ふふ・・・レン君、遅い君が悪いのだよ、後ろが開いてるよ」
私は背もたれから頭を出してニヤニヤ
「ぐぬぬぬ・・・こうなったら・・・」
わたしに飛びかかろうとするレンの頭をボンザがガシリと掴む
生粋の(惑星侵略)営業マンからこちらに転職して来たボンザ
力では勝ち目はないレンはおとなしくなる
「とはいえカリフ、抜け駆けとは関心にかねぇなぁ」
ボンザがジロリと私をにらむ
たはは・・・やっぱりそう思いますか・・・
はしゃぐ私に釘を打つかのように、ここはくじ引きで席順を決める事となる
「むぅ・・・2番・・・」
私の引いた紙には2と書かれてあった
ぐ・・・ここでレンが1を引いていたら窓に近い先頭席は確実に取られてしまう
(1番は誰?)
2番のくじを持つ手が微妙に震える
「1・・・」
ボソリとつぶやくように1番を引いた人が名乗りを上げる
プルアであった
いったいどこの席を選ぶのか
私とレンだけがものすごい剣幕でプルアを見ている
「・・・私はどこの席でもいいわ、うるさい人が近くにいなければ」
冷たい目で私とレンをちらりと見る
うっ・・・私たちですか・・・
少し恥ずかしい気持ちになるが今はそんなときじゃないと自分に言い聞かせる
プルアはすたすたと所長の隣の席に座る
「ここで私はいいわ、続きをどうぞ」
席に座ると端末書籍を開き読みはじめる
「2番は私、当然先頭いただきますよ」
今度は文句なしの先頭席確保
私はニコニコしながら席に座る
すわり心地は悪くない
固定席の肘置き部分には電源や番組受信コネクタなど備え付けてある
「へー・・・移動は個人ポッドばかり使ってたから、民間はこんなになってるんだ・・・」
私は今後何度触れる機会がるかわからない機器に感動していた
みんなの席が決まる
レンはくじ運がなかったようで
後ろから一つ前、所長の前の席となった
9つの席があるのだが
プルアの前の席は騒がしいレンだとだめだということで
1位優先ということで横にスライドとなったわけである
「B688便、オンセン行き出発準備が整いました、席につきになられましたら安全装置が作動します・・・」
機内アナウンスが流れる
その後客室乗務員が安全装置の確認に来た後、出発となる
前の窓に半透明のシャッターが下りる
大気圏脱出の際の摩擦熱を機内に伝えないための防熱シャッターである
シャッターが下りるとそのシャッターに内蔵された透過スクリーンから出発前の案内アナウンスが流れ始める
「なんかどきどきするなぁ」
「温泉地か、楽しみだな」
各々出発を前に期待を膨らませる
室内の照明が非常灯のみになり薄暗い闇に包まれる
続けて安全装置が自動的に作動する、背もたれが水のようにやわらかくなり埋もれるような感じになる
個人ポッドにも同じ機能があるのだが
ポッドの方が素材がよいのか少しこちらは硬く感じた
「安全確認が取れました、B688便出発いたします」
機内アナウンスとともに期待が出発のだめの出力を上げはじめる
「なお、機体の安全安定確認できるまでは大変危険です、安全機能を解除しないようお願いいたします」
ごうん
ロックの外れる音とともにゆっくりと機体が前に進み始める
天に向かって緩やかに延びるトンネルの前で一度とまる
民間旅客機は垂直発射ではなくリニアモーターの付いた荷台で加速をつけてからエンジン加速で重力圏を抜ける方式で打ち上げられる
こちらのほうがはるかにコストが少なく、安定して打ち上げが出来るということらしい
トンネルを使うことで市街地のど真ん中でも港が置けるという利点がある
キュウゥゥ・・・
独特な音を立てながらどんどん加速していく
遠くに見えたトンネルの出口の光が一瞬にして迫ったかと思うと
吸い込まれるような青色の空が目の前に現れる
カコーン
台車から機体が外れる音だろうか
何かが外れるような軽い音が響く
そして一瞬の無音の後
キュイーン
機体のエンジンに切り替わる
Gが体に重くのしかかるが
座席の安全装置によるG軽減機能で沈み込むよう埋まる
水の中にいるかのように感じる特殊素材が体にかかる負担を軽減する
青い空が紺に染まり、そして一瞬赤く染まったかと思うと漆黒に染まった
あっという間に重力圏を突破し宇宙空間に出たのである
ポッドの色の付いた小さな小窓から見るそれとはまったく違う空間である
非常灯の光だけのほんのりと照らす室内から
吸い込まれるような漆黒が目の前に広がっている
しばらく加速を続ける、安全確認のアナウンスがあるまで席を立つことが出来ない
防熱シャッターが上がり闇に潜んでいた星の光がちらちらと輝きを見せはじめる
やっぱり先頭の席を取って正解だった
私はすごく感動していた
ふと思い出したようにいつもつけているウエストポーチに手を突っ込む
スカウターを取り出す、前に受け取った試作品のスカウターである
耳にかけようとGが多少あるためつけにくい
なんとか微調整を済ませ電源を入れる
ピピッと起動音が鳴る
センサーを通常から切り替える
望遠モードに設定してみるが特に闇しか見えない
電波や放射線など目に見えないものを捉えるセンサーに切り替え可視化モードする
何も無いようでいろんなものが飛び交う宇宙
今まで見ていた闇だった部分はなりを潜め、色とりどりの光の帯や筋、踊るように動く光、不思議な色をした雲のようなものなどが目の前に広がる
可視外でも色をつけ手くれるようにつうられているので、こういう風に見えることはわかっていたのだがリアルでこういう光景を見るのは初めてである
私は無意識にスカウターの録画モードを入れる
しばしの闇に潜む光の芸術を楽しむ
ふっと非常灯から室内灯に切り替わる
照明の灯る機内に今まで見えていた光はほとんど見えなくなる
「うわわ、なんだこれ」
無重力の室内ジオとレンは初めての感覚に驚きの声を上げ無重力の中を泳ぐように移動している
「おい席についていないと危ないぞ、もうすぐ―」
ボンザが2人に何かを伝えようとしたとき
「機体加速を終了し、通常運航モードへの確認しましたので簡易重力モードに移行します、なお機内サービスは―」
機内アナウンスが流れるとともに重力発生装置が作動し
ゆっくりと床に落ちる2人
そのまま突っ伏している、哀愁が漂う
ため息をつくボンザ
「・・・せっかく空を飛ぶ感覚みたいだったのに」
自分の気の力で飛ぶことの出来る技、武空術が使えないジオとレンは新鮮な感覚だったのであろう
研究所で武空術の出来ないのはジオとレンくらいである
もともと気が強くもなく調整も苦手な異星種族で機械が発達した惑星(ほし)の出身なだけに
気を使うという習慣もなかったのであろう
ボンザが床に突っ伏している2人に船内に無重力の遊戯ルームがあることを伝えると
2人は飛ぶように室内を出て行く
オンセンまで半日ほどかかる
セミサ所長は寝息を立てて眠っているし
ボンザはジオとレンが心配らしく2人の後を追うように出て行った。さすが最年長
レスタは土産物を見に行くと出て行った・・・出発なのに・・・
「れ・・れすたさん・・・」
ルーケの弱々しい声が聞こえる
宇宙酔いだろうか?顔が真っ青である
レスタについていきたかったみたいだが席でぐったりしてうなされている、かわいそうに
そんなルーケを気にする様子もなく静かに書籍を眺めているプルア
ここは新しい研究者同士、研究室をよりよいものにしていかないといけないな
と、私は思い静かに電子書籍を眺めているプルアに声をかける
「あの、プルアさん」
私の声に顔を上げるプルア
「カリフさん、何か?」
事務的な反応をされると少し困る
「い、いやぁ・・・せっかくプルアさんの歓迎の旅行なんだからお話でもと・・・」
プルアは書籍の電源を落とす
「で、何のお話?」
一人で居たいのか少し迷惑そうな感じのプルア
その反応に私は少し戸惑った
「え・・・えーっと・・・」
どう切り出していいかわからない私
私の様子を見てプルアは立ち上がる
「別に私は歓迎もされなくてもいいし、別にここに居つくつもりもないわ」
そういうとふわりと軽い重力で私を飛び越え扉近くに立つ
そして振り向きプルアは言った
「特にあなたがいるこの研究所なんかに居たくもないわ」
ななっ!?
何が言われたかかわからなかった
私、何か悪いことをしたのだろうか
プルアが出て行った扉がゆっくりとしまるのを呆然と眺めていた
それと入れ替わるように
小さな土産袋を持ったレスタが入ってくる
すぐに私を見つけ飛びついてくる
「カリフ〜かわいいお土産あったよ、見る?」
袋から小さな星の形をしたブローチを取り出す
「かわいいでしょ、かわいかったし安かったから買っちゃった、女性陣だけですから彼らには秘密ですよ」
軽くウインクし、4つ持っていたうちのひとつを私に渡す
深い青色をした石のはめ込まれたブローチである
ブローチはほかに赤い石と緑の石と黒い石のブローチをレスタは持っていた
「みんなのイメージカラーで買ってみました、私は緑ですよ、黒は所長、赤はプルアさん」
ニコニコしながらレスタは言いながらブローチのイメージを説明する
(・・・イメージカラーというより髪の毛の色じゃ・・・)
そう思ったが口にはしなかった
「あ、そうそう」
レスタが何か思い出したように口を開く
「ちょうど入り口でプルアさんとすれ違ったけど、機嫌悪そうだったけど何かあったの?」
ぎくりとする私
「さ、さあ・・・」
答えに困った私は、あいまいな返事でごまかす
理由はどうにしろ彼女を怒らせたのは私である
理由がわかっているならレスタに相談しようと思うのだが
よくわからない状況で下手に相談すると
余計ややこしくなりかねない
うーんと少し考えるレスタ
ぽんと手をたたき
「これ渡したいし、悩み事あるなら相談に乗ってあげないとね、うん」
レスタはうなずくと部屋を出て行く
「あ、レスタさん・・・行っちゃった・・・」
あわてて呼び止めるが行動に出たときにレスタはとてもすばやい
あっという間に部屋を出て行った
寝ている2人以外は私しかいなくなった
楽しみにしていたはずの慰安旅行だったがどうしたものだろう
窓から外を見る真っ暗な空間が広がる
はぁ・・・
私はため息をつく
プルアがなぜ怒っていたのか私には見当も付かなかった
私のことを前から知っているようだったが・・・
宇宙空間を眺める
空間にかすかに光る星や惑星
それを隠そうとするように広がる黒い空間
「少し休もうかな」
いくら考えてもしょうがない
オンセンまではまだ数時間かかることだし
少し自分を落ち着かせるために仮眠をとることにした
椅子に座りリクライニングモードに切り替える
背もたれがゆっくりと倒れるそれとともに
ほのかに暖かい空気が体を覆う
思いのほか心地がよい
しばらくプルアのことを考えていたが
心地よさにしだいにうとうとゆっくりと眠りに落ちた




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