黄金律を支配する龍。
人の物欲を操り。人の求める宝を喰らい。人の見苦しいまでの金銭への欲望を見て楽しむという。
壊れてるともいえる性格の悪さでは恐らく現存する龍の中でも1、2を争うに違いない。
黄金律とは、この世の金運と財産の動き全てを総称した言葉。
そのくせソレイユの守護龍だけあって知識は相当なものであり、
溜め込んでいる凄まじい数の宝物のみならずこの世の全ての宝を知り尽くしていると言われている。
また、それを人間に譲る事は絶対にありえないとも、言われている。
そのくせ気紛れに作り出した黄金をばら撒いては自身の作った迷宮に人間を呼び込み、
その無様な姿を楽しむ事を興としていると言う筋金入りの金持ちである。
金持ちは自身の宝の価値のみならず、『歴史と栄光』をも求めると言う。
ゴールド・ケルケスもその例に洩れず、自身の宝に価値と歴史を求めるゆえ、多くの冒険家を迷宮へ誘っては喰らってきた。
その数は万を数える。
時折欲深き人間にはケルケスの声が聞こえるという、
『さぁ、ここに黄金があるぞ。さぁ、こちらには名誉があるぞ。
取りに参れ、全てお前の物だ。取りに参れ、お前にだけくれてやろう。さぁ、さぁ……』
自身に伝説を求める龍、それがケルケス。
心身共に比類なく人を喰らった龍、それがケルケス。
彼の者は知恵者であった。
深く聡い心を持っていた。そう、太古には賢者の龍とも言われた。故に神の書庫として働いた。
誰よりも人の事を考えられる、優しく大人な龍であった。
彼の者は考えた。
人を幸せに導くべく存在する神の下、同じことを考えた。
『最高の幸せとは何ぞや?』
導き出した答えは、欲望の文字。
物欲、愛欲、情欲、保護欲、食欲、献身………綺麗なものも、穢れたものも、幸せとはこれ即ち欲である。
満たされる、されないはこの際問わず。夢は追うことに意義があるように、欲も求める時が幸せであると考えた。
人に欲を与える事、それが彼の悟った事。
全ての人を幸せにする、自身も幸せにする、……理想ではないかと思った。
それが壊れたのは、ゼオと言う神が生まれた瞬間であった。
彼こそ、原初の一、イヴを殺した者。
最初に、ゼオに触れてしまった者。
最も、狂ってしまった龍。
ケルケスとソレイユはある提携を結んでいる。
それはソレイユが2倍の価値のある宝物を差し出した場合のみ、
ケルケスの持つ聖遺物以外の好きな宝物を与えるというものである。
または、同等の宝物を差し出し求める宝物の情報を与える事。
ソレイユが過去の戦争において危なくなると必ず起死回生してきたのは、ひとえにケルケスの後ろ盾が有るからである。
無論、そのことを知る者はソレイユでも王族くらいのものであるが。
<情報データデータ>
・体長:20m
・体高:15m(尾長:5m)
・体重:12000kg
・形状:縦に長いと十字と言えるロゼとは対照的に、ケルケスはズッシリと丸く重厚な体格である。
威風堂々とした筋肉の体を金で装飾したかのような強靭な四肢を持ち、
開けば25mはある翼は馬鹿でかいとしか言いようが無い。
眼の周り、踵から腿、首筋にエメラルドを砕いたかのような輝く緑の紋が有る。無論、それが意味するは富である。
龍なのだが装飾を好み、自身に大量の宝石やアクセサリーを着けている事が多い。どうやって着けているかは不明だ。
黄金の鱗はロゼの物の二倍の大きさ厚さ、優に100倍の重さを誇る黄金である。
しかし純金ではなく数%の鋼が混ざっており、鋼鉄並みの強度を誇る。
・備考:住処はソレイユ北方の『賢者の山脈』で最も高い山の頂上。
雲にも届くその山上は晴れた日には眩く輝いており、そこに在る『黄金迷宮』はかなり有名である。
しかし、龍が住んでいると知る人間は意外にも少ない、……喰われているからだ。
史上最高の難易度を誇る迷宮として、数千年前から知られているにも関わらず今だ誰一人として攻略した人間は居ない。
年に数人黄金の一欠けらを持って命からがら逃げてくるくらいである。仕える神はルーファ。
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